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JR東海、超電導リニアL0系の改良型試験車両を公開。5月下旬に山梨実験線で走行開始予定

2020年3月25日 公開

L0系の改良型試験車を報道向けに公開した

 JR東海(東海旅客鉄道)は3月25日、リニア中央新幹線L0系の改良型試験車を、山口県下松市にある日立製作所 鉄道ビジネスユニット 笠戸事業所にて公開した。

 すでに営業線仕様として2013年より試験走行を行なっているL0系からの改良点として、先頭形状の最適化、誘導集電方式の最適化、ガスタービン発電装置の非搭載、前照灯・前方確認カメラの位置の変更、そしてカラーリングの変更などが挙げられる。

 3月下旬には笠戸事業所から搬出され、4月上旬に山梨リニア実験線へ搬入、5月末ごろに走行試験開始を目指して準備する。日立製作所は先頭車両の製作を担当しているが、他社が製作する中間車両1両と組み合わされる。

 現在、5両編成のA編成と7両編成のB編成が存在しているが、後者の7号車(東京方)に導入する。山梨方の1号車は従来型L0系の車両が継続する形だ。

山口県下松市の日立製作所 鉄道ビジネスユニット 笠戸事業所内にてお披露目された
従来のL0系から変更された点として、空力特性の向上のほか、誘導集電機能の高効率化などが挙げられる

寺井開発本部長「従来より丸くなった愛敬ある先頭形状」

 車両正面からデザインを確認すると、従来のL0系ではノーズ部にあたる空気が下から上にすくい上げる形状だった箇所が、改良型試験車では膨らみをもたせた流線型となった。さらに鼻筋のような峰をつくることで、空気を左右方向に流すデザインとなっている。また従来比でノーズ幅を緩やかに拡大していく形状とすることで、高流速領域の発生を低減し、微気圧波性能を維持している。改良型試験車の先端デザインはシミュレーションによって1万通りが試されたとのこと。

 改良型試験車は、L0系に搭載されていたガスタービン発電装置を非搭載とし、誘導集電装置を全面採用とした。こちらはL0系にも搭載されていたが、さらなる高効率化を実現し、試験走行にてデータを集積していく。従来型は集電コイルが1車両に6個搭載されていたが、集電効率が約1.5倍となったことで、今回の改良型試験車では4個で済むこととなった。

 この集電誘導装置によって、地上側のレールに敷設されたコイル(地上ループ)から、車体側の集電コイルへ非接触で電力を集電することができる。従来のガスタービン発電装置が担っていた車内の空調や照明への電力供給が、排気ガスを排出せず可能となる。

台車ユニットが収まるベイは空いたまま
全景
ノーズ部
L0系よりも丸みを帯びた先端形状
ノーズ部を真横から見たところ
ダクト部を拡大したところ
先端をクローズアップ。L0系よりも、空気を八方にかき分ける形状となっている
正面
全景
改良試験車はカメラと前照灯の位置が高い場所に変更された
台車が収まる箇所の前後は膨らみが設けられている
車体を真横から
客室部の窓
ロゴはL0系を踏襲しているが、サイズは縮小されているという
JR東海いわく「50番台の車両」とのこと
客室部の窓を拡大したところ
台車ベイと乗務員室の間に大型のダクトが設けられている。進行方向が逆になった場合の走行風を取り入れる機能を持たせている
ダクトを拡大したところ
前照灯窓
後尾灯を点灯したところ
集電コイルがカバーに隠れて配置されている。従来モデルの6個から高効率化によって4個となった
集電コイルのカバーの前後は斜めにスラントしており空気抵抗を低減する
東海旅客鉄道株式会社 リニア開発本部長 寺井元昭氏

 JR東海 リニア開発本部長の寺井元昭氏より「この新しい改良型試験車でさらなるブラッシュアップに努めていきたいと思います。従来型よりも丸くなった先頭形状によって愛敬も感じさせるような印象があります。愛らしいデザインではあるが、これが高速走行に最適化されているところが魅力。これから走行実験によって、どれだけ快適性が向上するのか期待していただきたい。

 現時点での完成度は8割。営業線開始に向けてさらなる快適性の向上を追求していきます。私自身、昭和63年よりリニア開発に携わってきております。2027年の開通に向けて早く営業している姿を見たいと感じています。その際、お客さまが笑顔で乗っていただけるように技術向上に励みます」とコメントした。