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「けがをして日付変更したい」「犬と一緒でいい?」ANA、電話応対スキルを競う第17回「よりそいの達人コンテスト」

約1100名の頂点が決まる

2019年11月6日 開催

コミュニケーター部門で優勝した東京支店の中川栞さんと(左)と、コントローラー部門で優勝した東京支店の宮脇由紀子さん(右)。どちらの部門も東京支店が独占した結果となった

 ANA(全日本空輸)グループのANAテレマートは11月6日、電話応対の品質向上を目的とした「よりそいの達人コンテスト」を開催した。

「応対コンクール」として2003年度から毎年開催していたもので、2018年から名称が「よりそいの達人コンテスト」に変更。2019年で17回目と、ANAグループではもっとも歴史のあるコンテストとなる。

羽田空港国際線旅客ターミナル4階にある「TIAT SKY HALL」で行なわれた

 ANAテレマートは、ANA利用者からの航空券予約やマイレージの問い合わせなどを電話で受ける「コンタクトセンター」としての業務を担っており、東京、札幌、長崎と3つの支店を持つ。

 この「よりそいの達人コンテスト」は、各コンタクトセンターから選出された代表が、日頃の電話応対スキルを社内外審査員7名の前で披露するというもの。今年は「コミュニケーター部門」と「コントローラー」部門の2部門に分け、それぞれ4名ずつ、合計8名がパフォーマンスを行なった。

開会式で「ベストを尽くして今まで培ってきた能力を存分に発揮してください。今日の経験が皆さんの成長につながることを願っています」とあいさつした、ANAテレマート株式会社 代表取締役社長 梶田恵美子氏

 2019年のテーマは「ANAテレマートだからこそできる~顧客体験価値の創造~」。5つの「S」であるSpeedy(速さ)、Solution(解決)、Suggestion(提案)、Sophistication(知識)、Satisfaction(満足)が短い時間でいかに発揮できるかを競い合う。

グループ代表であいさつした全日本空輸株式会社 代表取締役社長 平子裕志氏は「寄り添うという言葉は私も好きな言葉。“寄り添う”ことの難しさは日頃皆さんが一番感じているのでは」と選手にエールを送った
東京支店 国際グループの関紗規子さんによる選手宣誓

判断力、課題解決力、コミュニケーション力が試される「コミュニケーター部門」

競技開始前にはステージ上のスクリーンに各支店のリアルタイム応援団の姿が映し出されて盛り上がった

 まずは「コミュニケーター部門」から。選手は順番に1人ずつ登壇し、ステージ上に設けられたデスクに着席。ヘッドセットを装着して、入電する「お客さま」からの模擬通話に対応する。「お客さま」の声は会場にも流れる。

 今回は「ポイントって何かに使えるんですか?」という「お客さま役」からの第一声と、「仙台在住、5歳の娘がいる、32歳の夫婦」という設定のみを、事前に選手に開示している。よって「お客さま」の真意が会話ごとに微妙に違うため、選手ごとに会話展開が変わることになる。

デスクと端末が用意されたステージ。「コミュニケーター部門」の出場選手は大半が入社3年未満の人
各コンタクトセンターから集まった仲間や関係者らが見守る

 審査のポイントは「会話をしながらお客さまの真意を聞けているか?」「お客さまの状況や心情にあわせて効率よく対応できているか?」など。あらかじめ分かっているお客さま情報を活用した提案やアドバイスも注目ポイントとなる。

緊張のトップバッターは東京支店 AMCグループの中川栞さん。落ち着いた声で分かりやすく対応していた。最後にクレジット機能が付いたカードへの切り替えを提案する場面も
東京支店 国際グループの関紗規子さん。心温まる丁寧な応対でANAが就航したばかりのパースに行ってみたいという「お客さま」に対して、現地情報などを含めた盛りだくさんな案内も
長崎支店 国内グループの松田花鈴さんはマイルの利用方法について詳しく説明。応対の最後にアップグレードポイントの使い方を丁寧に紹介していた
札幌支店 国内グループの中岡彬さんは伊丹空港のラウンジの紹介、スーパーフライヤーズカードの説明も。最後は「うるう年のご旅行が楽しいものになるといいですね」でキメてみせた
各コンタクトセンター代表のパフォーマンス前は、同僚による応援で盛り上がった
ANAの平子社長も社内審査員の1人

責任者としてお客さまの状況や心情にどう対応するかが重要なコントローラー部門

競技の前には各コンタクトセンターからの応援中継も

 続いて、責任者資格のあるスタッフが出場する「コントローラー部門」の競技がスタート。コミュニケーターを上回る判断力が求められ、責任者としてイレギュラー案件やトラブル、要望などあらゆる状況に臨機応変に対応しなくてはならない。

 コントローラー部門への第一声は選手ごとに違い、コミュニケーターからの内線をバトンタッチする形になっている。今回は「お客さまがけがをしたとおっしゃっていて、とりあえず上に代わってほしいと言われています。代わっていただけますか?」や、「お客さまが届いたご利用券のことで、とりあえず上に代わってほしいと言われています。代わっていただけますか?」など。

長崎支店 国際グループの森綾美さんは、ロンドンで足をけがをして今日のフライトは無理そうという「お客さま」の応対。「ビジネスクラスだから日付変更できるでしょ?」と言われるが……
子供が熱をだしてしまって予約している明日の便に乗れないかもしれない、でも明後日は結婚式だからどうしても那覇に行かないと、という「お客さま」にスマートに応対していた東京支店 国内グループの宮脇由紀子さん
札幌支店 AMCグループの児玉麻紀さんは「5万マイル貯めて先日交換した利用券、届いたのが3万円足りないんだけど」という年配男性からの問い合わせ。相手を慮った丁寧な応対が好印象だった
営業サポート室 ADDチームの伊勢知子さんには秘書をしている女性からの問い合わせ。パニック障害の疑いのある上司のためにエモーショナルサポート犬を考えているというが……

 なおコントローラー部門は制限時間が決められいて、1人7分。超えた場合はその時点で競技終了となるのだが、親身に「お客さま」に寄り添った結果、全員が会話の途中で時間切れとなっていた。

社員のパフォーマンスを温かい目で見守るANAテレマート株式会社 代表取締役社長 梶田恵美子氏
「お客さまの声」役をやったANAテレマートの社員3名が紹介され、代表の佐藤さんが「選手の皆さんがあらゆる角度で回答、提案してくることを予想して、私たちもいろいろなパターンを練習してきた」とあいさつ。リアルな演技だった

 すべての競技が終了したあとは、審査員の講評へ。まずは社外審査員として日本IBM(日本アイ・ビー・エム)から常務執行役員 クラウド&コグニティブ・ソフトウェア事業本部長の伊藤昇氏が登壇し「素晴らしい応対を目の当たりにした。そして選手の方々への応援も素晴らしい。温かい社風に感動した」と述べた。

 社内審査員のANA 代表取締役副社長執行役員 志岐隆史氏は、メモを片手に、選手一人一人に対して総評を述べ、常に寄り添ってお客さまの心をつかんでいた質の高いパフォーマンスに賛辞をおくっていた。

社外審査員の日本アイ・ビー・エム株式会社 常務執行役員 クラウド&コグニティブ・ソフトウェア事業本部長 伊藤昇氏。同社は、ANAテレマートの新顧客管理情報管理システムを担当している
社内審査員の全日本空輸株式会社 代表取締役副社長執行役員 志岐隆史氏

結果発表と表彰式、優勝は東京支店の中川さんと宮脇さん

 休憩・審査を挟んでいよいよ結果発表。2019年の優勝賞品は、国内線搭乗券とダイヤモンド会員が利用できるスイートラウンジ体験。これには「お客さま」として実際にANAのサービスを体験し、今後の応対に役立ててほしいという狙いがあるという。

「コミュニケーター部門」の優勝は、トップバッターだった東京支店 AMCグループの中川栞さんの手に。プレゼンターを務めたANAテレマート株式会社 代表取締役社長 梶田恵美子氏から表彰状と賞品、そして花束が贈られた。入社2年目だという中川さん、この日は「まだ受賞は信じられないが、聞かれたことを的確に答えたことがよかったのでは」と語っていた。

コミュニケーター部門で優勝した東京支店 AMCグループの中川栞さん。「これからもANAのファンを増やしていけるように頑張りたい」と受賞スピーチ

 続いて「コントローラー部門」。プレゼンターのANA 代表取締役社長 平子裕志氏から、東京支店 国内グループ 宮脇由紀子さんの名前が呼ばれると、応援席から大きな歓声があがり、涙ぐみながらの受賞スピーチに大きな拍手が送られていた。「今日の勝因は?」と聞かれた宮脇さんは「お客さまの気持ちに共感しながら自分らしくできたことが一番よかった」とコメント。

 中川さんも宮脇さんも「お客さまの真意をつかむ難しさ」をこのコンテストを通じて感じたという。今後はそれを自分なりに勉強して、さらに上の応対を目指しますと頼もしい言葉も飛び出していた。

ANAの平子社長から花束を渡され感極まった様子だったコントローラー部門の優勝者、東京支店 国内グループの宮脇由紀子さん。「今日は自分で自分を褒めてあげたい」と感動のスピーチ

 最後はANAテレマート 常務取締役 東京支店の北村支店長が登壇し、閉会のあいさつ。北村氏からは「今回は特にコントローラー部門が難しい内容だったと思う。でも実際の業務では、もっと複雑でもっと難しい内容を日々対応してもらっていることを知っています」と選手へ労いの言葉も。この「よりそいの達人コンテスト」、2020年は長崎支店で開催する予定だ。

「東京支店長としてはとてもうれしい結果になりました」とにこやかにあいさつしたANAテレマート株式会社 常務取締役 東京支店の北村支店長
「よりそいの達人コンテスト」に参加した8名