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ANA、「空港カスタマーサービス スキルコンテスト」新施設「ANA Blue Base」で開催。約8000人の頂点はハノイ空港のリンさん

2019年11月1日 開催

第12回「空港カスタマーサービス スキルコンテスト」でグランプリに輝いたVU HAI LINH(ヴ ハイ リン)さん

 ANA(全日本空輸)は11月1日、「空港カスタマーサービス スキルコンテスト」を開催した。

 国内外の空港で働く仲間の磨き上げられたサービススキルを学ぶ場とし、それを自空港に持ち帰って波及することで、旅客部門全体の基本品質向上につなげていくことを目標とするもの。12回目となる2019年のテーマは「ARE YOU READY FOR 2020 ー磨き上げたスキルで世界を結ぶー」。

2019年から稼働開始した東京大田区にある総合訓練施設「ANA Blue Base」が会場となった

 空港カスタマーサービス スキルコンテストは「出発ロビー部門」と「ゲート部門」で構成されており、まずは出発ロビー部門の実技から。2018年と同様に国内・海外空港の計96空港を対象とし、全世界のグランドスタッフ約8000名から106名が9月の予選に参加。そのなかから国内線7名、国際線6名の合わせて13名が選出され、この日のファイナルに臨んだ。

「今回のコンテストに出場している皆さんも応援される皆さんも、何かに気づいて、これからのANAのサービス向上に役立てていただきたい」と開会式であいさつした全日本空輸株式会社 執行役員 空港センター長 要海昌樹氏
司会進行役を務めたセントレア(中部国際空港)勤務の田中さんと伊丹空港(大阪国際空港)の平塚さん
司会者からの「Are you ready?」に対して会場全体で「Let's Go!」と返すのが実技スタートの合図

 2018年にグランプリを受賞した北京空港のWENWAN QIさんより激励のビデオメッセージが流れたあとは、いよいよ実技がスタート。持ち時間は1人8分で、ステージに次々と現われる6組の「お客さま」の応対をする。審査はお客さま視点での気付きや、能動的な動き、コミュニケーション力が重点項目となる。

日常の出発ロビーが再現されたステージ
栄えあるトップバッターは成田空港の西村謙一さん。「フライトまで時間があるのだけれど」という男性客に対して「ぜひ電車で10分の成田の街へ」と、成田銘酒の長命泉も薦めて会場の笑いを誘った

 実技内容は「1時間後のフライトなのに株主優待券を忘れてしまった」や「このあたりでカメラをなくしてしまった!」などの臨機応変な応対や、「買い物をしてしまって荷物が3つになってしまった」などサービスについでの問い合わせ応対。

「天候不順の予報で飛行機が欠航になるかもしれず便を早めたいのだが、変更できない航空券らしいのだけれど」などといったお客さまのご希望に添えない場合の応対など5~6項目のパフォーマンスとなる。なお出題は全員同じ内容になるため、ファイナリストは自分の実技がスタートするまでは控室で待機している。

福岡空港の松隈優恵さん。大慌てで来た男性客の搭乗券を見て開口一番、「○○さま、ご安心ください」と返した対応が素晴らしかった
羽田空港の田中彩美さん。お客さまが買い物をしたというぬいぐるみを見て「これは大切なものですね~」と、とびきりの笑顔に
「フライトまで時間があるんだけどオススメのところは?」の質問に小松空港到着ロビーにある恐竜ロボットを紹介した小松空港の藤谷綾子さん
伊丹空港の玉城絢子さんは、「車いすのままお手続きができる低いカウンターがございます」と細かいところまでフォローしていた
徳島空港の高橋英聖さんは空港内にある徳島ラーメンのお店を熱く紹介。「お客さま」からは「食べたあとに感想を伝えにくるよ!」というアドリブも
長崎空港の杉町碧さんは、終始笑顔でわかりやすく丁寧な応対が印象的だった
会場には国内だけでなくも海外空港からも観覧者や応援団が集まった

 ステージの目の前には6名の審査員が座った。ゲスト審査員は東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織員会の江上綾乃氏と、高島屋 常務取締役 営業推進部長の安田洋子氏。

 社内審査員は、ANA 代表取締役社長の平子裕志氏、代表取締役 専務執行役員 安全統括管理者 オペレーション部門統括の清水信三氏、取締役 執行役員 CEマネジメント室長の功刀秀記氏、執行役員 マーケティング室副室長の高橋誠一氏の4名。各審査員が評価した点数の合計点数でグランプリが決まる。

ゲスト審査員の東京オリ・パラ競技大会組織員会 江上綾乃氏(左)と、高島屋 常務取締役 営業推進部長 安田洋子氏(右)
社内審査員として全日本空輸株式会社 代表取締役社長の平子裕志氏も真剣な表情でパフォーマンスを見守る

 国内線担当のファイナリスト7名の実技が終了したところで、社内審査員のANA 執行役員 マーケティング室副室長の高橋誠一氏から講評があった。

 高橋氏は「笑いあり感動あり。見ていて元気をもらうシーンをたくさん見せていただいた」と述べたうえで、事務局側の運営についても「工夫があって素晴らしい。お客さま役の演技がとてもリアルなのでロビーの雰囲気がよくでていて、それがファイナリストの皆さんの普段の仕事っぷりを引き出しているのではないかと思う」と言及した。

「ここまで非常にレベルの高いパフォーマンスを見せてもらった。審査員はかなり苦労するのでは」と述べた全日本空輸株式会社 執行役員 マーケティング室副室長の高橋誠一氏

 続いて国際線担当の出場者6名。ステージに現われるお客さまのニーズは同じだが、ここからはほぼ英語での対応となる。

羽田空港の松尾彩音さんは、お客さまに聞かれた「ボーディンググループ」について詳しく的確に説明。緊張したけれどいつもどおりできましたとホッとした様子だった
パフォーマンス中に何度も口にした「Thank you so much!」の声がとても優しかったマニラ空港のABEGAIL DELA CRUZ(アビゲイル デラクルス)さん
英語の応対で「Just in case(念の為)」というフレーズを何回か繰り返していた関西空港の西田七海さん。フライトまでに時間のあるお客さまには551蓬莱の肉まんをオススメしていた
物腰の柔らかい雰囲気を終始醸し出していたシンガポール空港のMUHAMMAD BIN OMAR(モハマド ビン オマール)さん。安心感のある優しい対応が好印象だった
パリ・シャルルドゴール空港のMARLYSE RENE CORAIL(マルリーズ ルネ コライユ)さんは、端末操作のアドリブを何度も駆使して個性的なパフォーマンスを披露
車いすのお客さまには低く腰を下ろして対応した人が何人かいたが、ハノイ空港のVU HAL LINH(ヴ ハイ リン)さんもその一人
各空港代表のパフォーマンスに、観覧席からの応援にも熱が入る
同僚のパフォーマンスを祈るような表情で応援する姿も

 国際線担当部門6名が終了し13名のファイナリストすべての実技が終わると、ANA 取締役 執行役員 CEマネジメント室長の功刀秀記氏が登壇し講評。「皆さんに共通して感じたのは人に対する愛情やリスペクト。サービスをしたあとにほか何かお困りのことはと聞く心がけ。お客さまの名前を呼ぶことや、待たせるお客さまへの一言などがファイナリストに選ばれた差なんだろうなと思った」と述べた。

国際線担当部門の講評をする全日本空輸株式会社 取締役 執行役員 CEマネジメント室長 功刀秀記氏

 続いて江上綾乃氏と安田洋子氏のゲスト審査員2名も登壇し、ファイナリスト13名のパフォーマンスを間近で見ての感想を興奮気味に語っていた。

江上綾乃氏は「日々のお仕事のなかで色々なことがあって、さまざまなチャレンジをされながらこの場に立たれているんだなと感じました。私自身これから飛行機に乗るときには意識して皆さんのお仕事を拝見しようと思います」と述べた
「お客さまの要望に対して全員が反射神経のように応対していたことがびっくり。そして皆さん、人に対する愛情がでていて素晴らしい笑顔だった。不安な気持ちを受け止めてくれる皆さんならでは」と述べた安田洋子氏

 いよいよ表彰式。まずは「ゲート部門」。こちらは「スムーズな搭乗がマネジメントできているか?」を基準に6空港がすでに選出さており事前に審査済だった。選出されていた国内線は伊丹空港、関西空港、松山空港、神戸空港の4空港。国際線はバンコク空港、大連空港の2空港。

ゲート部門に選出されていた6空港の代表がステージ上へ

 国内線最優秀空港を受賞したのは伊丹空港。「狭い限られたゲート空間の中で、上手に動き回ってロビーサービスを行ない、お客さまの搭乗をスムーズに快適にサポートしていた」ことが選出理由となった。

「伊丹空港ではプレミアムカスタマーのお客さまがたくさんいらっしゃるので、その方に向けての差別化を図っています。これからも快適に、かつ定時に飛行機を出発できるようにハンドリングしていきたい」と受賞スピーチをした伊丹空港

 国際線は大連空港が受賞。「スタッフ全体でこのゲートのオペレーションをよくしようという気持ちが伝わってきた一体感が決め手」だという。受賞空港にはトロフィーが手渡された。

国際線最優秀空港の大連空港は「とてもうれしい。まだまだ足りないところがあるかと思う。今後もさらにたくさんのお客さまが喜びを感じてもらいANAを選んでいただけるように頑張りたい」とトロフィーを手にスピーチをした

 続いていよいよ「出発ロビー部門」の表彰。ファイナリスト13名が再びステージへ上がると、審査員特別賞、準グランプリ、グランプリが発表された。審査員特別賞には長崎空港の杉町碧さん。準グランプリには伊丹空港の玉城絢子さんとシンガポール空港のMUHAMMAD BIN OMAR(モハマド ビン オマール)さん。さらに僅差の審査となった今年は、準グランプリがもう1人ということで、3人目の準グランプリに羽田空港の松尾彩音さんの名前が呼ばれた。

審査員特別賞は長崎空港の杉町碧さん。
準グランプリの1人目は伊丹空港の玉城絢子さん
準グランプリの2人目はシンガポール空港のMUHAMMAD BIN OMAR(モハマド ビン オマール)さん
準グランプリの3人目は羽田空港の松尾彩音さん
受賞の発表に盛り上がる会場

 そして出発ロビー部門のグランプリは、ハノイ空港のVU HAI LINH(ヴ ハイ リン)さんの手に。清水専務執行役員から「ハノイ空港の……」と発表されると会場にはどよめきと大きな拍手があがった。ふだんは職場の新人教育などにも携わっているという彼女は「私のこの受賞が同じ職場のスタッフの一つのモチベーションとなって、今後ANAのサービスを高めるきっかけになれたら」と喜びを語っていた。

グランプリの発表をする全日本空輸株式会社 代表取締役 専務執行役員 安全統括管理者 オペレーション部門統括の清水信三氏
清水専務執行役からグランプリトロフィーを受け取るハノイ空港のVU HAI LINH(ヴ ハイ リン)さん
喜びのスピーチでは涙をぬぐう場面も
最後まで笑顔がステキだったLINH(リン)さん。

 最後にANA 代表取締役社長 平子裕志氏が登壇。総評の冒頭で「このコンテストは年々レベルが上がっており、今年も昨年の北京空港に引き続き海外のスタッフがグランプリとなった。いよいよANAも国際化してきたなという印象を持った」と述べた。

「司会進行の2人、そしてお客さま役のANA社員の名演技がコンテストを盛り上げてくれた」と長い時間をかけて準備をしてきた運営側の苦労も労った全日本空輸株式会社 代表取締役社長 平子裕志氏

 そして「いよいよ来年は東京オリンピック・パラリンピックの年。それだけではなく、羽田空港で発着枠が増えて第3ターミナルと第2ターミナルでスプリット・オペレーションすることになる前の年に、このようなハイレベルなコンテストが開催されて自信を持つことができた」と、同コンテストの結果を高く評価した。

 さらに、「一番大切なことは、今日ここに来ている皆さんが何かを感じ取り自分の形に変換をし、次は自分がインフルエンサーとなって自空港のお手本になること。それこそがANAの品質がより高まっていく貴重なプロセスである」と盛り上がった同コンテストの総評を結んだ。

グランプリ、準グランプリ、審査員特別賞を受賞した出発ロビー部門ファイナリストの皆さん