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バニラエア初の容器2個を使った機内食。函館商業高校コラボの「スープカレー」最終選考会実施
12月から国内線、国際線のほぼ全路線で提供
2018年7月18日 20:29
- 2018年7月18日 最終選考会実施
- 2018年12月~2019年2月 提供
バニラエアは7月18日、北海道函館商業高等学校(以下、函館商業高校)と共同開発を行なっている機内食の最終選考会を実施した。最終選考で選ばれたメニューは2018年12月~2019年2月に実際に同社機内で提供する。
この取り組みは、函館商業高校 流通ビジネス科の3年生37名が6チームに分かれて、それぞれが1品ずつ機内食の搭載メニューを提案。5月に同校で開かれた発表審査会で採用が決まった「スープカレー」のメニュー案をもとに、成田空港近隣の機内食会社が試作品を用意し、提案した高校生、パイロット、CA(客室乗務員)らが試食して評価。実際に機内に搭載するメニューを選出するというもの。
このコラボレーションのきっかけは、バニラエアの機内食開発を担当するインフライトサービス部のスタッフが2017年にパシフィコ横浜で開かれた「商業高校フードグランプリ」に出場した同校の発表を見たのがきっかけ。函館に対する熱い思いと、メニューの斬新さに興味を持って、企画が生まれたという。函館商業高校では、流通ビジネス科で行なっている商品開発や観光に関する授業の一環として、この企画に取り組んだ。
選考会の冒頭で、バニラエア 代表取締役社長の五島勝也氏は、航空運賃を低価格で提供するために機内食などがすべて有料であるというLCCの特徴を説明したうえで、「(有料であるがゆえに)お客さまが『食べてみたい、美味しそうだな』と思う魅力的な機内食を提供するのは大事な仕事になっている」と、機内食開発の重要性を説明。
一方で、メニューに選ばれたスープカレーについて、「食したことがないので、どのようなものが出てくるか楽しみ」と期待を述べた。
五島氏のあいさつに続いて、メニューを考案した函館商業高校の生徒6名のチームによるメニューのプレゼンテーションが行なわれた。
「北海道を広めたい」をテーマに、バニラエアの搭乗客実績などを調べたうえで、20~30代の女性、台湾人を中心とした外国人観光客にターゲットを絞り、そこから北海道が発祥であるスープカレーを考案。
一方で、機内食にスープを使うことに対し、こぼれてやけどする恐れや、容器が深くなる、ご飯とスープをどう分けるか、などの課題が挙がり、1度はスープカレーを諦めたというが、バニラエアへの質問を繰り返すなかで、課題をクリアする容器があることで続行したそうだ。
スープカレーというと札幌のイメージが強いが、函館市内にも多くのスープカレー店があるとのことで、生徒の理想にもっと近い味のイメージとして、辛いものが苦手な人でも食べられるよう「スープがマイルド」、栄養バランスを気にする人が多い若い女性向けに「たくさんの野菜が入っている」という2つのポイントから、「ころっと!ほっこり!スープカレー」を考案した。
その商品内容は、素揚げした野菜のゴロゴロ感が残るよう機内でトッピングできるようにすることや、彩り豊かなターメリックライスの使用、チキンベースのマイルドなスープを提案。レンコンには保湿効果のあるムチンが含まれることや、鶏肉には冷え性改善や血行促進効果があるなど、栄養素にもこだわって多くの野菜を使っている。
また、原価、販売価格も試算しており、想定売価は750円。この価格はあくまで高校生からの提案となるが、バニラエアの機内食はおおむね500~1000円程度の商品が多いことから、現実的な価格帯を想定していることが分かる。
チームのプレゼンは「機内食として搭載されるのは冬なので、温かいスープで身も心も温まっていただけるのでは。スープカレーをとおして北海道により興味をもってもらい、函館に足を運んでくれる方が増えてほしい」とのコメントで締められた。
「辛さ」「容器形状と盛り付け」「容器の色」を高校生とパイロット、CAが審査
最終選考会では、高校生チームから提案のあったお店の味のイメージや、採用したい野菜の優先度などをもとに、機内食会社が、辛さの異なる3種類のスープカレー試作品、容器は、形状と盛り付け3種類と、それぞれに色の異なる2種類の計6パターンを用意。会場で関係者全員が試食をした。
この試作品にチームメンバーからは「実際に試作品を見て、自分たちの理想のスープカレーでうれしかった」や、「3種類食べたが、どれも美味しくて、僕たちの理想以上のスープカレー」といった声も。
この試食を受けて、高校生チームの6名とパイロット2名、CA 2名と、機内食開発を担当するバニラエアのインフライトサービス部スタッフが審査会を実施。
3番が最も辛口となる3種類の辛さの審査は、「辛いのが苦手」「辛いと1食は食べきれない」などの意見がある一方、「辛いのは苦手、(多くの世代に受け入れられるよう)あまり辛くない方がよいのではないかと思っていたが、食べてみると辛い方が美味しかった」「台湾人がターゲットなので3番の辛いものもよいのでは」など、意見が大きく割れた。
A、B、Cの3種類が用意された容器の形状や盛り付けについては、「Aの丸い容器はかわいい。写真映えする」「BとAで悩んだがAの方が量が多く見えた」「Cのように具材が分かれていると彩りがよく、チキンもよく見える」などの意見が出た。
容器の色は、白または茶色の2食から選ぶことになるが、これは10名中9名が同じ意見でまとまっていた。
この審査の結果を、別会場で待機していたバニラエア 代表取締役社長の五島勝也氏、同 常務取締役 オペレーション本部長兼インフライトサービス部長の猪木康正氏、函館商業高校 商業科教諭の志平剛史氏の3名へ、CAに扮して提供。
結果は辛さは中間の2番、容器は丸い容器を2種類組み合わせたAのパターン、色は茶色に決定。チーム代表は「辛さは2番にして、幅広い年齢の方に食べていただけるようにした」。バニラエア インフライトサービス部の寺島氏は「容器は丸い、見た目が一番かわいらしくて食べやすそうという理由。容器の色は高級感で選ばれた」と、それぞれ選定の理由を説明した。
決定を受けて五島氏は、「辛さは2番ということで、ターゲットが若い女性なので、大人の味覚とも少し違った新鮮なセレクション。丸形の器で、見た目も二重丸でかわいらしく、飛行機のなかのテーブルにも合うのでは。選んでいただいたメニューは私たちが国際線、国内線で発売する。北海道を思い出していただいて、多くの方に足を運んでいただきたいと思う」と話した。
選考会の最後にあいさつした、副操縦士の鈴木氏は、「バニラエアはお客さまを目的地に送り届けるだけでなく、さまざまなサービスもあり、機内食もそのうちの1つ。年に4回、機内食の委員会を行ない、デザイン性を変えたり、各就航地にあったデザインに取り組んだりしている。皆さまが栄養素から容器のデザインまで考えてくださって感銘を受けている」と携わった高校生に感謝。
併せて、「函館には乗務でしか訪れたことがないが、以前にお客さまから『五稜郭が見えますか?』と質問を受けたこともある。ぜひ1度訪れたいと思う」と話した。
選考会終了後、チームメンバーからは「よい経験になった、これからたくさんの人に食べてもらえたらうれしい」「一から企画した案が国境を越えて国際線まで乗せていただけるのをうれしく思う」「企画を進めるなかでピリピリした部分もあったが、それを超えて最後までたどり着けた。このメンバーで企画できてよかった」などの感想が挙がった。
また、5月に行なわれた同級生6チームによる審査会では、6品のメニューが並んだが、「(あるチームが提案した)かぼちゃプリンには負けたと思った」という。函館市の隣にある森町はかぼちゃの産地として知られている。そのかぼちゃを使ってバニラエアのコーポレートカラーやロゴマークをイメージしたメニューだったそうだ。志平教諭によると、そのかぼちゃプリンは発表の内容もよく、今回のチームメンバーも高く評価しているとおり生徒間のウケもよかったという。
一方、機内食開発を担うバニラエア インフライトサービス部長の猪木康正氏は、「スープカレーが当社のイメージにも合い、北海道らしいということで選ばれた」と説明。今回のような教育機関とのコラボレーションによる機内食開発は初めてとなるが「北海道らしさを考えていただいた。これでまた函館を訪れる方が増えればよいし、函館の方にもバニラエアをもっと知っていただければ」と効果に期待した。
函館商業高校とのコラボメニュー「ころっと!ほっこり!スープカレー」は、今回の選考結果で容器の方向性も決定したことになるが、バニラエアではこれまで、ご飯とお味噌汁のように2品をセットにして2つの容器で提供するメニューがあったというが、2つの容器で1つの料理として提供する機内食メニューは初めてとのこと。
2018年12月~2019年2月に、那覇~石垣線を除く国内線、国際線の各路線で機内販売されることが決まっており、11月ごろに価格などを含めたより具体的な販売予定が発表される見込みだ。