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外環道 三郷南IC~高谷JCTと同時開通した国道298号。松戸IC北から高谷JCTの高架下までレポート

沿線エリアの慢性的な渋滞が劇的に改善

2018年6月2日16時 開通

国道298号の国道6号~国道357号間が開通した

 NEXCO東日本(東日本高速道路)は、外環道(東京外かく環状道路)三郷南IC(インターチェンジ)~高谷JCT(ジャンクション)間(延長15.5km、4車線)を6月2日16時に開通した。

 そして同日、並行する国道298号の国道6号~国道357号間(延長11.4km、4車線)も開通した。筆者は沿線エリアの住民なので外環道の開通はもちろんだが、国道298号の開通も実はかなりうれしく、交通渋滞緩和や安全性の向上など、地元に劇的な交通の変化をもたらしている。

 外環道については、5月15日に行なわれた事前現場公開をレポートしており(関連記事「NEXCO東日本、6月2日開通の外環道 三郷南IC~高谷JCT間を事前公開」)、開通後も連日関連記事を公開しているのでそちらをご参照いただき、本稿ではこの国道298号についてレポートしたい。

外環道 三郷南IC~高谷JCTとともに、並行する国道298号の国道6号~国道357号間も開通した

 国道298号の松戸IC北~田尻(高谷JCT高架下)区間 外回りの様子を北側から南下しつつ紹介する。まずは千葉県松戸市三矢小台の県道1号市川松戸と交わる、松戸IC北交差点。関越自動車道、東北自動車道、常磐自動車道、国道6号から、南の湾岸エリアに向かうために、開通前は外環道の三郷南ICから国道298号を利用し、ここから県道市川松戸線に流入するのが一般的で、松戸市の矢切エリアから市川市の国道14号 市川広小路交差点までは慢性的な渋滞となっていた。

 しかし、整備された国道298号は住宅密集地を回避し、かつ国道14号をアンダーパスできる構造のため、取材した6月4日の午後に現地を訪れると、渋滞は一切なしだった。県道市川松戸線が狭幅で制限速度が40km/h、住宅地ならではの信号多数の対面通行だったのに対し、片側2車線の道路が追加されたのだから、市川市の市街地への用事がなく、レジャーや仕事などで通過するだけであれば、迷うことなく国道298号の利用をお勧めしたい。

松戸IC北交差点を矢切南台歩道橋から眺めた写真
交差点の信号機。今回の開通区間はすべて薄型信号機だった。この交差点だけでなく、開通区間の信号は現状青の点灯はなく、赤点灯プラス矢印表示の交差点が多いので注意
交差点手前にあった外環道の起点である和光から33km地点を示すポストも設置されていた
松戸IC北交差点の外環道内回り向けの道路標識
外環道外回りの松戸IC。今回の開通区間で、1つのICに出口と入口両方が備わっているものはないので注意
外環道外回りの松戸ICから坂を下りていくと小塚山トンネルがある。「道の駅いちかわ」まで2kmの看板
4月にオープンした道の駅いちかわ。外環道外回りからは信号を左折して入れるが、内回りの信号は右折可のタイミングが短い印象で、休日は右折待ちのクルマで混雑している。駐車場は入ってすぐのエリアが大型車、奥が小型や二輪車用なので、駐車マナーには注意。売店には千葉県らしく、鯨のしぐれ煮缶詰や特産のビワ関連の商品が豊富。夜は売店・レストランエリアは閉店し、トイレ棟のみがオープン。喫煙所は露天。路線バスの停留所もある
道の駅いちかわから南に向かうと、市川市国分6丁目で県道264号と交差するので、JR市川駅方面に向かう場合は右折。鎌ヶ谷方面に向かう場合は左折するか、その先の菅野通りから左折すれば鎌ヶ谷方面に進める
写真の鉄道高架は北向きに見たJR総武線、その奥のアンダーパスは国道14号との立体交差
市川市大和田1丁目で県道6号と交差、浦安方面に行くなら右折
続けて稲荷木(とうかぎ)小学校前交差点で県道283号と交差、東京都内に向かうなら右、船橋の湾岸エリアに向かうなら左に曲がる
県道6号との交差点を内回りから。駅近くのタワーマンション見える
さらに外環道外回りを南下すると見える高架が、京葉道路との分岐である京葉JCT。接続しているのは県道6号なので、右折すれば浦安・行徳方面、左折すると船橋方面
高架を降りて進んでいくと市川市田尻2丁目に県道179号との交差点がある。こちらも右折すると浦安方面、左折すると船橋方面
市川市田尻5丁目まで南下すると東京メトロ(東京地下鉄)の東西線の高架をくぐる。その少し先は国道357号との接続ポイントなので、左車線は国道357号、右車線は市川港への分岐となる
国道298号の終点となる田尻交差点から、高谷JCTを見上げた写真。橋梁の色でNEXCOのものと国土交通省のものとが分かれている
せっかくここまで来たので、田尻交差点から南の市川港まで進んでみた。天気がよく、数人の釣り人が針を下ろし潮風に吹かれていた
6月2日の開通初日に試走した際にも感じたが、国道298号内回りの小学校前交差点で、高架から降りてくる際に信号が「稲荷夕焼け歩道橋」に隠れて見づらいように思えたので注意してほしい

開通前まで大渋滞していた県道市川松戸線が劇的に変化

 開通した国道298号の松戸市三矢小台から国道357号へ抜けるためには、従来は千葉県道1号市川松戸線を利用し、国道14号を越えて向かう以外のルートがなかった。そのため、松戸市三矢小台から市川市国府台、市川市市川エリアは国道14号市川広小路交差点を先頭に日常的に渋滞していた。その反対となる国道357号から東京都葛飾区、足立区、国道298号で埼玉県三郷市側に抜けるのも同様で、市川広小路交差点を先頭として連日渋滞していた。

 前述のように、関越道、東北道、常磐道と湾岸エリアを行き来するには、外環道 三郷南ICで国道298号に降りて松戸市内から県道市川松戸線を利用するしかなかったためであり、一般道を大型トラックなど車両が頻繁に行き交う状況が続いていた。そのため市川市国府台の和洋女子大、東京医科歯科大、千葉商科大やいくつかの学校などへの通学時の安全への懸念、救急指定されている国立国府台病院、国際医療福祉大市川病院への緊急車両の移動時間などが問題視されていた。

 外環道の開通式典で、国土交通大臣の石井啓一氏が「国道298号は千葉県松戸市、市川市の慢性的な渋滞の改善や、生活道路の安全性の向上のための歩道や自転車道の整備工事によって、快適な市民の暮らしに貢献できると考えております」とあいさつしていたが(関連記事「当初計画から約半世紀後の開通。石井国交大臣も登壇した外環道 三郷南IC~高谷JCT開通式典」)、松戸市民や市川市民にとって大きな問題だった渋滞の緩和を待ち望んでいた住民は多く、筆者もその1人だ。

 国道298号の松戸~市川高谷区間 外回りの実走後、国道298号開通前に主要幹線道路として大渋滞していた県道市川松戸線を走行してみたところ、先週までとはまったく異なる風景を目の当たりにして驚いた。これまでは常に大型トラックが行き交い渋滞していた道路がスムーズに流れ、信号などのタイミングもあると思うが、場合によっては数十秒間はクルマが通過しないほど。国道298号の開通は交通安全、騒音減少など、周辺住民にとって喜ばれるに違いないと感じた。

今までクルマの列が途切れたことのない県道市川松戸線が、国道298号の開通によってこのとおり。タイミングを狙って撮影したのではなく、平日の午後(6月4日13時30分ごろ)でこの状況は、近隣住民からすると「ありえない」状態だ
6月4日の13時10分に撮影した大洲防災公園前の県道市川松戸線。これまで大型トラックが頻繁に行きかっていたことがまるで嘘のよう
日中は常に国道14号市川広小路交差点を先頭に渋滞していた、京成国府台駅近くの県道市川松戸線。千葉県の京葉地区で生まれ育った私は、こんな光景を初めて見た
こちらも京成国府台駅近くの県道市川松戸線。これなら路線バスも定時運行が可能になる
常に渋滞している和洋女子大近くの市川市真間山下歩道橋前で撮影。この30秒間に数台しか通過しない
北総線矢切駅前交差点で撮影したもの。青信号で15秒間1台も通過しないのは驚き

側道、歩道、自転車道などの整備も進行中

 開通した国道298号の松戸~高谷区間では、近隣への騒音対策や安全性向上のため、防音壁、側道、歩道、緑化などの整備も合わせて行なわれている。開通当日にNEXCO東日本のパトロールカーで巡回していた職員が、側道で遊んでいた小学校低学年と思われる児童に「今日からクルマの通りが多くなるからね、遊ぶときも気を付けるんだよ」と話しかけている場面を目撃し、近隣への配慮を感じた。緑化についてはまだ作業中のエリアも多く残っているようだが、完成すれば近隣住民の憩いの場、子供たちの遊び場になるのだろう。道路整備は、このような配慮が必要となる事業ではあるが、やはり地域住民の理解と協力があってこそ成り立つものであり、地域住民や用地を提供された方々に、筆者も感謝の気持ちを伝えたい。

松戸市三矢小台付近の整備された側道・歩道・自転車道。これなら安心して利用できそうだ。
松戸ICを見下ろす場所に設置された「矢切っ子歩道橋」は、自転車が通りやすいようになだらかなスロープが設けられ、足の不自由な人向けにエレベータも完備。歩道橋の命名は地元の矢切小学校の児童
たまたま取材前のロケーションチェックで見付けた、国道298号 矢切トンネルの上にある緑地。外環道 葛飾大橋や国道6号と国道298号のジャンクションを見下ろせる場所であるが、東京スカイツリーはもちろん空気が澄んでいれば富士山も眺められる。「養成中」の立て札や植え込みなどの様子から、公園として整備中のようだ

 6月2日、一般開放されたばかりの国道298号の松戸~高谷区間を走ってみたが、これまで混雑状況によっては1時間かかっても到着できなかった場所に、20分程度で着くことができた。

 千葉県在住の同乗者も「松戸から本八幡まで10分ちょっとなんてありえない」と驚いていたほどである。数百メートルおきに設置された歩道橋の上から多くの住民が道路を眺めていたが、交通インフラの整備によって生活環境が改善されることを心から喜んでいたようだった。

 コインパーキング(市川市新田の国道14号沿い)にクルマを停めて周囲を取材していると、歩道橋の上から外環道と国道298号を眺めハンカチで瞼を押さえていた高齢のご婦人を見かけた。話しかけると「嫁いできたころに、しばらくしたら高速道路が通って便利になるって言われてたんです。それがやっと叶ったのでうれしくて」と答えてくれた。

実際には自動車専用道部分はシェードにより遮られていて歩道橋から覗き込むことはできないのだが、どの歩道橋も開通した外環道と国道298号を眺める人々が多かった。単なるひとつの公共事業ではなく、地域の人々にとって数十年越しの念願だった道路の開通ではあるが、これだけの老若男女が歩道橋に集まるのを筆者は今までに知らない