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NEXCO東日本、6月2日開通の外環道 三郷南IC~高谷JCT間を事前公開

東京都側橋梁区間や千葉県内の函体内の安全設備など

2018年5月15日 実施

NEXCO東日本は5月15日、6月2日に開通する外環道の現場公開を実施したのでその模様をレポートする

 国土交通省 関東地方整備局とNEXCO東日本(東日本高速道路)は、外環道(東京外かく環状道路) 三郷南IC(インターチェンジ)~高谷JCT(ジャンクション)間(延長15.5km)と、国道298号の国道6号~国道357号間(延長11.4km)を6月2日に開通する。

 埼玉県三郷市にある三郷南ICから千葉県市川市にある高谷JCTまでの区間開通により、1969年に東京区間、千葉区間の計画が決定されてから約半世紀かかった外環道全体の計画である約85kmのうち約6割が完成することになり、関越自動車道(大泉JCT)、東北自動車道(川口JCT)、常磐自動車道 (三郷JCT)、京葉道路(京葉JCT)、東関東自動車道(高谷JCT)が結ばれる。これにより従来の都心ルートだと約60分かかった高谷JCT~大泉JCTの所要時間が外環ルートだと約42分と約18分短縮(高谷JCT~川口JCTが約54分から約28分へ約26分短縮、高谷JCT~三郷JCTが約43分から約17分へ約26分短縮)されるなど、都心の交通の円滑化や物流の生産性向上が期待されているのは既報のとおりである(関連記事「NEXCO東日本、6月2日の外環道千葉区間全通を前に廣瀨社長が『約半世紀を要した大事業』を語る」)。

 この開通に先がけ、NEXCO東日本による現場公開が実施されたので、その模様をレポートする。

車窓からの眺めも考慮した外環葛飾大橋の橋梁区間

 外環道千葉区間の開通により、三郷南ICから東京都葛飾区の江戸川を渡る外環葛飾大橋を越えて千葉県松戸市に入るところまでは、国道298号の上を走行する橋梁区間、国道298号の矢切トンネルと並走する地点から市川市の東関東道 高谷JCTの手前までは環境問題を考慮して国道298号の内側を走る半地下構造となっている。車線については追い越し、走行車線ともに3.5m幅、路肩は2.5mを確保。

 現場公開で最初に案内されたのは、外環葛飾大橋近辺の橋梁区間。今回開通する15.5kmのうち約5kmが橋梁区間であるが、松戸市内としては初の料金所となる松戸ICから開通前の外環道に進入し、南向きの外回り車線ではあるが逆走するかたちで外環葛飾大橋に向かった。西向きで外環葛飾大橋に着くと、右手(北東)には国指定名勝の戸定邸庭園(旧徳川昭武庭園)がある小高い丘があるが、この場所が「富士百景」にも指定されていることや、左手に東京スカイツリーが見えることなどもあり、通常のメタルタイプの吸音板だけでなく景観に配慮し透明なポリカーボネート製の遮音壁を採用しているとのこと。

江戸川や都県境であることを示す標章。外環道は大泉JCTを起点としているので、この場所は36.6kmポストとなっていた
外環葛飾大橋のプレートと、東金町高架橋のプレート。外環葛飾大橋以外の橋梁区間も、上部はメタルタイプの吸音板だが下部は透明なポリカーボネート製の遮音壁となっていた
外環葛飾大橋から眺めた松戸市中心部。緑の多い小高い丘が戸定邸庭園、一番手前が国道298号線の葛飾大橋

環境やドライバビリティに考慮した半地下道路の函体区間

 1969年(昭和44年)、高速道路部(東京外環道)を高架構造による都市計画を決定したが、千葉県区間では、生活環境の悪化などを懸念する反対運動を受け、松戸市議会、市川市議会、千葉県議会において、凍結・再検討の要請が採択され、1975年(昭和50年)、千葉県知事から当時の建設大臣に対し再検討要請となり、1987年(昭和62年)建設省関東地方建設 局長(当時)から千葉県知事に対し「ルートは当初の都市計画のとおりとしつつ、“半地下構造を基本、植樹帯などの環境保全空間を確保" とする再検討案が提示されたあと、自治体と検討を進めた結果、1996年(平成8年)に都市計画を変更している。

 スリット構造と呼ばれる半地下道路は、まったくのトンネル構造ではなくスリットと柱を設けた造りであり、今回開通する区間では2.5mの柱と併せて2.5mピッチで空間があり、万が一のトンネル内火災などの場合でも煙が上空に放出されるのはもちろん、長いトンネルに不可欠となる換気所が不要になるなどのメリットもあることから採用したとのこと。既存主要幹線道路や鉄道などがあり回避しなければならない場所は完全なトンネル構造となっているが、それ以外の場所は函体(かんたい・大きな箱型のトンネル構造物)をつなげて構成されたスリット構造となっているとのことだ。

 半地下構造には、ドライバーの負担を軽減するための考慮もされている。トンネルでの先詰まり渋滞時における先行車の早期発見・認知を支援するため、進行方向に向けて照射し先行車背面の視認性を向上させる「プロビーム照明」や、掘割区間のスリット構造で起きる太陽光の明暗繰返しによるチラつきから生じる不快感を軽減するために掘割ストラット上部に「遮光ルーバー」を設置するなど、自然換気を可能としながら昼間のトンネル照明を不要とする採光性を確保したルーバーを開発・採用している。

実際の半地下区間の明るさはこんな感じ。「遮光ルーバー」により、スリット構造による直射日光のフラッシュ現象を避ける減眩対策に加え、よほどの横殴りの雨でなければ、本線車道に雨は吹き込んでこないとのこと。今回の開通区間で、南北に走る区間はガラス製のルーバーで30度の傾斜角、斜めに光が入る区間ではルーバーを伸ばすことで重量が増えることを回避するために、軽い素材の膜で15度で設置しているとのこと

 また、市川市内の地下を通過する必要があることや、成田空港と都心を結ぶ北総線の地下部分を回避するために最大で4%の上り勾配となるが、急激な速度変化による追突事故を防ぐために、走行速度が低下した場合の速度回復支援として、道路脇に設置された青いライトが一定速度で流れて点灯し、スピードダウンに起因する渋滞などを防ぐ「ペースメーカーライト」が設置されている。なおこのペースメーカーライトは、通常時は橙色点灯、非常時は赤点滅に切り替えることが可能となっている。

今回の開通区間では約100mの間隔でカメラを配置し交通異常を素早く察知しており、勾配のきつい区間での速度低下が確認されると「ペースメーカーライト」を点灯させるとのこと。点滅速度は40km/h、60km/h、80km/hに設定可能とのこと
「ペースメーカーライト」点灯のデモンストレーション。前半は40km/h、後半は80km/hなので違いも確認できる

 半地下構造で視認性がわるくなりがちな掘割区間の標識については、視認性に優れながらメンテナンスの省力化が図れる新外照標識システムを初採用。従来の内部照明標識では灯具などの維持管理(電球などの光源の交換)時に車線規制が必要となっていたが、ロードサイドから照射する照明と乱反射する拡散プリズム型反射シートを採用することで、メンテナンス時の車線規制なども不要となり、混雑緩和にもつながるとのことだ。

 さらに2車線を跨ぐ幅の標識については、それぞれの車線の上で分割する構造にしたことにより、地上高違反の車両が接触してしまった場合の補修時でも1車線の規制のみで作業が行なえるような配慮もされている。

新外照標識システムを採用したパネルとロードサイドの外照ユニット。これなら照明の交換なども車線規制を行なう必要がない
左右2分割されている標識。裏側を見ればどのような構造か分かりやすい
現場を案内するNEXCO東日本 関東支社 千葉工事事務所 工務課長の金子博氏。「鉄道や幹線道路など、混雑を避けるために国道298号と交差させられない場所については、298号が地下のアンダーパスとなり、外環道はさらにその下の地下2階になっています。京成線の交差部にはR&C(ルーフ&カルバート)工法で、本工事のボックスカルバートは高さ18.4m×幅43.8m×延長37.4mの4連2層の構造、R&C工法のなかでは世界最大級です」と、函体だけで18.4mあることを分かりやすく教えてくれた

 ここで紹介している写真は京葉道路と地下でつながる京葉JCT。ランプ内の一部は、京葉道路の下をくり抜く必要があったため、円形のセグメントをはめ込みながら進めるシールド工法で施工された。千葉から三郷に向かうAランプは507m、三郷から千葉に向かうHランプは347mの区間に及んだとのこと。また京葉JCTは、高谷JCTから外環道に進入してきた場合は、京葉道の千葉方面に向かうGランプは事業中のため利用できないので注意。

地上35mの高谷JCT Aランプから高速湾岸線を眺める

 今回開通する区間では一番高い場所となる高谷JCT Aランプからの眺めも見学した。NEXCO東日本 関東支社 千葉工事事務所 工務課長の金子博氏によると「東関東道の交通量は1日10万台、国道357号の交通量も10万台なので、高谷JCTは1日に20万台が通過している路線とつながるジャンクションとなります。Aランプについては勾配は最大4.5%、横断勾配は7%、半径はR100でギュっと曲がる設計となっています」とのこと。曲がった先が渋滞しているなんてこともあり得るので、速度超過には注意を。

 また「高谷JCTの橋脚数はNEXCOだけで123本、国交省の国道357号と298号に伸びる部分で56本の橋脚が建てられています。国交省の国道の橋梁は水色、茶色のものがNEXCOの橋梁です」とも教えてくれた。

外環道 高谷料金所と高谷JCT Aランプ橋のプレートや湾岸線の行先を示す標識
湾岸エリアのため強風時を考慮しワイヤーでつながれている標識と、昨今主流になりつつある高欄照明
高谷JCTの最高地点から見下ろす湾岸線。NEXCO東日本の金子氏が「深夜に国道357号や高速湾岸線の車線規制をして、日本に数台しかない大型クレーンで作業をしました」と写真を見せて解説してくれた。高谷料金所近くにある高架に挟まれた工場は、外環道建設のため専用に設置されたアスファルトプラントとのこと
高谷JCTの最高地点から見下ろす湾岸線

安全を第一に設計されている半地下道路の函体区間

 今回開通する千葉県内の半地下道路となる函体区間ではあるが、やはり地上区間よりも安全設備などが気になるところ。もちろん非常時には受話器を取ると道路管制センターにつながる非常電話が約200m間隔で設置しているほか、避難経路となる脱出用の出口は掘割構造で1km毎(最大でも前後500m以内)に設置している。また約100m間隔でカメラを配置して交通状況を監視、消火器は約50m間隔で設置している。本線・ランプ部には万が一の際に避難者に情報を伝えるためのスピーカーが設置されているが、今回、NEXCO東日本で初の採用となったのがトンネル内「赤色警告灯」。10km近く続く地下部分での火災発生などがあった場合に赤く発光し、ドライバーに危険を認知させるものであり、実際に点灯されたが、日中でもそのインパクトは大きかった。

トンネル入口部で赤い警告灯を点灯させ、ドライバーに危険を知らせる「赤色警告灯」。そのインパクトは大きい
トンネル区間入り口の「赤色警告灯」点灯シーン
トンネル区間入り口の「赤色警告灯」点灯シーン
函体区間に設けられている避難経路には、地上から送水できる連結送水管が設置されていて、ポンプ車が入れないような場合でも消火用の送水が可能。単にパイプが設置されているだけだが、地下部分に多くの車両が停車している場合には有効な設備だろう
トンネル部分に設置されている、煙が溜まらない「独立避難通路」。避難経路の上に高めの気圧のエリアがあり、そこから空気を圧送することでトンネル内火災時にも煙が入り込まないような設計。右の写真が圧送用の通気口
視認しやすい非常口の掲示や非常電話。取材時は設置作業が完了していなかったが、本線上にも非常電話や消火器は完備される

 またこの路線では松戸市、市川市だけでなく浦安市や東京都まで連携したネットワークによる安全体制を構築している。取材当日、NEXCO東日本と千葉県警と松戸市と市川市が合同で、市川北IC付近の函体区間でトラックとバスが接触しトラックのドライバーが脱出できない状態を想定しての救助・消火訓練を行なっていたが、実際に地上から送水できる連結送水管を使用しての放水も行なわれた。

取材時に行なわれていた消防訓練の模様。内回り市川北IC近辺の左コーナーでトラックとバスが接触、トラックのドライバーが自力で脱出できない想定だったので、市川消防署のレスキュー隊が到着してトラックのボディーを切断するためのエンジンカッターまで始動させる内容だった
消防訓練でのドライバー救出シーン

もっと便利に快適になる、道路ネットワーク

 筆者は千葉県の京葉地区で生まれ育ち、現在も外環道に近い場所で生活しているが、国道14号・市川広小路交差点を中心として慢性的な渋滞となっている県道・市川松戸線には困っているので、今回の外環道の開通に併せ周辺道路から国道298号に交通が転換し、沿線地域の渋滞緩和に加え、生活道路への迂回流入が減少することによる通学路などの安全性の向上は喜ばしい限りである。

 取材時に、NEXCO東日本の金子氏も「最盛期は1日4000人の方が従事されていたので、掘削からコンクリートの流し込みなど数千台のダンプカーを走らせて、均せば1日2000人働いたとして、年間300日稼働が5年間続いたと考えれば、延べ300万人の力でこのプロジェクトが達成されています。もちろんNEXCOだけでなく国交省や建設業者さんのお力添えもありますが、やはり地元の方の工事に対するご協力やご理解、ご支援がなければ、このプロジェクトも達成できなかっただろうなと感じています」と語っていた。

 まだ事業化はされていないが、将来成田空港方面に道路をつなぐ可能性があることから「北千葉JCT」(仮称)のための入出路もあらかじめ設けられていた。今後も住民と事業者の連携によるさまざまな効果が、ほかの地域にも広がってくれることを切に願っている。

【お詫びと訂正】記事初出時、一部情報に誤りがありました。お詫びして訂正いたします。