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NEXCO東日本、6月2日の外環道千葉区間全通を前に廣瀨社長が「約半世紀を要した大事業」を語る

東関東道、常磐道、東北道、関越道が接続。「私も1人の千葉県民として開通はとても待ち遠しい」

2018年6月2日16時 開通

外環道 三郷南IC~高谷JCTが6月2日16時に開通するのにあたり、東日本高速道路株式会社 代表取締役社長 廣瀨博氏に話を伺った

 NEXCO東日本(東日本高速道路)は、外環道(東京外かく環状道路)三郷南IC(インターチェンジ)~高谷JCT(ジャンクション)間(延長15.5km、4車線)と、国道298号の国道6号~国道357号間(延長11.4km、4車線)を6月2日16時に開通すると発表した。

 1969年に東京区間、千葉区間の計画が決定されてから約半世紀かかった事業のゴールが見えてきたが、一方、2017年2月に東名JCT(ジャンクション)からシールドマシンが発進した外環道の西側区間も進捗が気になるところ。そこで、NEXCO東日本 代表取締役社長の廣瀨博氏に、外環道の東側全通に対する思いや、西側の状況などを聞いた。

三郷南IC~高谷JCTが結ばれ、外環道の東側が東関東道まで全通となる
外環道(東京外かく環状道路)千葉区間開通の概要

 埼玉県三郷市にある三郷南ICから千葉県市川市にある高谷JCTまでの区間が開通して、外環道全体の計画である約85kmのうち約6割が完成。関越自動車道(大泉JCT)、東北自動車道(川口JCT)、常磐自動車道 (三郷JCT)、東関東自動車道(高谷JCT)が結ばれることになる。

 都心の交通の円滑化、物流の生産性向上が期待され、例えば高谷JCT~大泉JCTの所要時間は都心ルートだと約60分のところ、外環ルートだと約42分と約18分短縮、同じく高谷JCT~川口JCTが約54分から約28分へ約26分短縮、高谷JCT~三郷JCTが約43分から約17分へ約26分短縮されるという。

高谷JCT~大泉JCTの所要時間は都心ルートだと約60分のところ、外環ルートだと約42分と約18分短縮、同じく高谷JCT~川口JCTが約54分から約28分へ約26分短縮、高谷JCT~三郷JCTが約43分から約17分へ約26分短縮されるという

ここまでよくこれたなと感慨深いです

──外環道 三郷南IC~高谷JCTと国道298号の国道6号~国道357号間の開通に向けての思いは?

廣瀨氏:外環道の当該区間については、首都圏の道路交通の骨格である3環状道路の一部として、約50年前の昭和44年(1969年)に都市計画が決定され、その後、事業用地の取得、高速道路工事の施工と、開通までに約半世紀を要した大事業です。

 住宅地密集地や複数の道路、河川、鉄道が交差する路線であり、国道298号と併設して整備を進めるという非常に難しい区間でした。非常に大規模な工事であり、日本の土木技術の粋を集めてやり遂げた、歴史的な大変な工事だったと思います。

 約3000件あまりの用地を地権者の皆さまからご提供いただき、地元の皆さまのご協力のもと、生活道路を確保しながら工事を行なってきました。京葉JCT付近では交通量が多い県道などを13回もの切り回しを行ないながら、高速道路を地下に構築するとともに、鉄道の交差箇所についても鉄道の交通はそのままに工事を行なうなど非常に困難な工事を、最新の技術を駆使しながら行ないました。そのため当初は3月末の開通を目指していたのですが、安全に慎重に難工事にあたりつつスケジュールを精査し、6月2日の開通となりました。ここまでよくこれたなと感慨深いです。

 地域の皆さまをはじめ、関係機関や施工会社の皆さまの多大なるご理解、ご協力がなければ、到底成し遂げることができなかったものであり、深くお礼申し上げます。

開通する外環道 三郷南IC~高谷JCTと国道298号の国道6号~国道357号間の平面図

私も1人の千葉県民として開通はとても待ち遠しい

──外環道と国道298号の開通による整備効果は?

廣瀨氏:外環道は約6割が完成することになり、東関東道、常磐道、東北道、関越道の4つの放射道路が接続し、所要時間の短縮などが期待されます。周辺道路から国道298号に交通が転換し、沿線地域の渋滞緩和に加え、生活道路への迂回流入が減少することで、通学路などの安全性の向上が期待されます。

 観光面においても、テーマパークなど人気の観光施設が点在する湾岸エリアと、埼玉や北関東エリアとのアクセス向上、経路の選択肢の増加による広域的な観光交流も促進されるでしょう。

 私も千葉県民なのですが、東関道が交通事故で渋滞すると、京葉道路も混雑して、通学路・生活道路として使われている一般道の交通量が増え、道路を歩くお子さんや自転車に乗ったお母さんなど、とても危ないと思っていました。一般道の混雑を緩和して、市民生活の安全な環境を整えていくことはとても重要で、経済面だけではなく重要な効果をもたらす開通だと思っています。

 私も朝の通勤で例えば7時に自宅をクルマで出たとすると、道路が空いていれば霞が関まで約40分で到着するのですが、事故があったり、年末などの渋滞があったりしますと、1時間や2時間かかることもあります。私も1人の千葉県民として開通はとても待ち遠しいですし、きちっと仕上げて、ご期待に添う運営をしていきたいです。

「私も1人の千葉県民として開通はとても待ち遠しい」と語る、NEXCO東日本 代表取締役社長の廣瀨博氏

半地下の外環道に東京ドームの屋根と同じ素材を張って光量を調整

──開通区間の特徴は?

廣瀨氏:外環道を南下してきて高谷JCTで地上約30mの箇所を通り、東関道に入るところはダイナミックだと思います。また、国道298号と併走するのも見どころです。この区間は主に半地下構造で、下を外環道、上は両脇を国道298号が挟むように併走していますが、半地下の外環道へ採光しつつドライバーが眩しくないように、特殊ガラスや東京ドームの屋根に使われているあの白い素材と同じものを張って光量を調整し、走りやすさに配慮しています。

 最初の計画ではこの区間は高架橋でしたが、環境問題を考慮して半地下で通すことになりました。国道298号の外側には遮音壁があり、緑地帯や副道、自転車道、歩道などが続く構造で約60mという全幅になり、地域の皆さん、環境との調和にも気を付けています。10km以上の長い距離を半地下構造でというのは、大きな特徴だと思います。

国道298号と併走する約10kmの区間は半地下構造。、下を外環道、上は両脇を国道298号が挟むように併走し、外側には遮音壁があり、緑地帯や副道、自転車道、歩道などが続く構造で、約60mという全幅になる

外環道の西側は「少なくとも2020年東京オリンピック・パラリンピックまでの開通は困難」

──外環道の西側の状況は?

廣瀨氏:東京外環の西側、関越道 大泉JCT~東名高速道路 東名JCT間は本線シールドの工事を進めているところです。東名側が先行していて(関連記事:「外環道、関越道~東名高速間のトンネル工事に使用するシールドマシン発進式を開催」)、大泉JCT側はシールドマシンをこれから組み立てを行なおうというところです。

 当該区間は用地・工事それぞれに課題が多くあり、具体的な開通時期を見通すことは困難で、中央JCT地中拡幅工事の発注手続きも当初の想定より相当遅れています。国土交通省 関東地方整備局、東京都、NEXCO中日本(中日本高速道路) 東京支社、NEXCO東日本 関東支社によって、3月28日に行なわれた「第6回 東京外かく環状道路(関越~東名)事業連絡調整会議」において、「少なくとも2020年東京オリンピック・パラリンピックまでの開通は困難」とされました。

 西側の遅れは用地の問題もありますが、工事の難しさに尽きると思います。安全を確保しつつ工事を行なう技術的難易度への対策に特に時間を要しています。総合的に見て残念ながら2020年東京オリンピック・パラリンピックまでの開通というのは難しく、ではいつなら完成するのかということも検討・調整中というところです。

外環道の概要
2017年2月19日取材時の東名JCTの工事現場

──6月2日の開通に向けてメッセージを。

廣瀨氏:高速道路が開通するまでには大変なご協力をいただかないとできないものですので、6月2日には地域の皆さん、関係者をお招きして式典を開催して、開通をお祝いしたいと思います。皆さまにご活用いただいて、開通後にはいろいろとご要望も生まれると思いますので、どんどんお申し付けいただいて、我々も改善してよりよい高速道路にしていきたいと思います。