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日本旅行業協会と国交省、インフラツーリズム実現に向け「関東地方整備局モニターツアー」
旅行会社の担当者と関東近郊大規模道路工事現場を視察。近日ツアーを企画
2016年12月26日 22:02
- 2016年12月15日 実施
JATA(日本旅行業協会)の関東事務局は、国土交通省 関東地方整備局と協力して、道路工事見学を旅行ツアーとして組み込む、いわゆるインフラツーリズムを実現させるための準備として、旅行会社から代表参加者を募り「関東地方整備局モニターツアー」と称して視察ツアーを実施した。当日は、首都圏の比較的大規模な道路工事現場を巡り、最後に実際にツアーとして実施する際にどのように見せたらよいかや問題点なども話し合われた。
今回見学できたのは、外環道(東京外かく環状道路)の三郷南IC(インターチェンジ)~高谷JCT(ジャンクション)間(千葉県区間)、東京港トンネル工事(東行き)、外環道の関越自動車道~中央自動車道~東名高速道路シールドトンネル工事の東名JCT(仮称)と、3カ所。このモニターツアーに同行した様子をレポートする。なお、詳しい工事内容に関しては、さらに別記事で続報する予定だ。
東京外かく環状道路の千葉県区間(三郷南IC~高谷JCT)
まずはJR松戸駅に集合し、バスに乗り込む。目指すはすぐ近くの外環松戸相談所。ここは、2004年7月に開所した、外環道の千葉県区間となる三郷南IC~高谷JCT間の概要、進捗状況告知や工事に関する相談窓口として使われているインフォメーション施設。
工事場所に隣接していて、平日昼間の開設時間には誰でも自由に訪問できる。内部には、工事区間の完成予想模型や概要のパネルなどが置かれている。ここで外環道千葉県区間の事業概要について説明があった。
外環松戸相談所
所在地:千葉県松戸市中矢切589-15
開所日:月~金曜、毎月第2日曜(年末年始、祝祭日は休み)
開所時間:9時~17時(12時~13時は休み)
まずは、外環松戸相談所のすぐ近くの矢切富士見公園に向かい見学。この公園はトンネルの道路上にあり、見晴らしのよい丘の上から、高架となる高速道路の外環葛飾大橋を見下ろすことができる。その外環葛飾大橋の上にも移動する。外環葛飾大橋では、少し離れた国道6号と平行して走るJR常磐線と交差する場所で見学した。
そのあとは、先に見学した矢切富士見公園の下を通る矢切トンネル内に入り、トンネル内では松戸IC付近を見学。ここは半地下構造になっていて、外光を効果的に取り入れる堀割スリット構造と呼ばれる、均等に並ぶスリットが美しい。また、道路標識を間近に見る展示も考えられていて、大きな道路標識も見ることができた。
東京港トンネル工事現場視察
次に向かったのは「東京港トンネル工事現場」。ここは首都高湾岸線の臨海副都心~大井間にある海底トンネル。首都高湾岸線ではお馴染みの海底トンネル区間だが、今回見学するのは並行する一般道路の国道357号の東行き側の東京港トンネル工事となる。すでに西行き側は3月26日に供用されている。工事現場に向かう際に、この西行き側を通過して完成後の参考として見せてくれた。
外環道(関越~中央~東名)シールドトンネル工事
最後に向かったのは、、外環道の大泉JCTから、中央自動車道と東名高速道路、これらほぼ全線を地下トンネルでつなげる予定となる東名JCT(仮称)。東名高速が環状8号を越える位置にある用賀出入口の近くになる。多くの部分で地下40m以上の深さの大深度地下トンネルを掘削する工事。そのため地上に見える工事は地下とつながる立坑が主となる。この大深度地下の利用では用地取得が不要で、用地取得は地上に出る部分だけになることがメリットだ。
現在同じような工事現場は関越自動車道の大泉JCTにもあり、見学した東名JCT側と大泉JCT側の双方から掘削していき、ちょうど中間地点で貫通させる。そのため、見学ツアーは大泉JCTの現場でも対応可能とのことなので、どちらになるかはツアーの企画によると思われる。
見学時にはちょうど、トンネルを掘削しながらセグメントと呼ばれるリングを組んでいくシールドマシンを立坑に降ろしたところで、まだトンネル掘削前の状態だった。見学時点には掘り進みセグメントが組まれ、東京港トンネルのような状態になっているはずだ。片側3車線道路を予定していて、トンネル断面は15.8mと東京港トンネルより大きなものになる。この大深度のトンネル内へ網で囲われた仮設エレベーターで向かうあたりも工事の迫力を感じられる見学となる。
外環道(関越~中央~東名)シールドトンネル工事の東名JCT付近
視察の最後には、JATA 関東事務局の鈴木伸一氏が進行役となり、関東地方整備局と今回参加したメンバーとの間で意見交換会も実施された。
関東地方整備局では、これまでこのようなインフラツアーを旅行会社から直接受け付けることはなかったが、今後は広域計画課が窓口となって対応していく。ただし、訪日外国人を今すぐに受け入れることは難しく、専門用語が分かる通訳をツアーに同行させるなど考える必要があるとのこと。
これまでも開通道路で一般向けに募集をかけてウォーキングツアーといったイベントはよく行なわれていたので、これが特別な日のツアーとして組み込まれる可能性も考えられる。雨天時など悪天候への準備として、カッパの準備程度は問題ないそうで、台風など工事自体が中止になるケースがあることは、あらかじめ了承しておいてもらう必要があるといった確認があった。
また、工事現場ならではの(たとえば海底から掘り出した土や石など)記念になるモノを配布したり、見学証明書のような記念品を考えてもいいという意見も出されていた。
これらを踏まえ、今回視察した工事現場を各旅行会社がインフラツアーとして企画する予定となっている。