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北極冒険家と小学6年生9名が別府温泉~熊本城の100マイルを歩く「100milesAdventure」(ゴール編)

参加メンバー全員が10日掛けて100マイルを踏破

2017年8月5日~14日 開催

修復中の熊本城を前に100milesAdventureの参加者で記念撮影

 日本でただ一人の北極冒険家、荻田泰永氏が2012年より実施しているのが夏休み期間を利用して子供たちと歩いて旅をする「100milesAdventure」だ。これは100マイル(約160km)の距離をキャンプ泊などしながら10日間かけて踏破するというもの。参加するのは全国から集まった小学6年生の男女で、今回は男子8名、女子1名の計9人が参加した。

世界的な北極冒険家、荻田泰永氏。カナダ北極圏、グリーンランド、北極海など計15回にわたり北極を歩いている。日本で唯一の北極冒険家である。2017年11月からは南極の極点を目指して無補給単独歩行に挑戦する
100マイルの旅は大分県別府市から始まった。スタート地点は別府市の中心に近い“的が浜公園”。ここで子供たちは10日間一緒に旅をする仲間と初めて顔を合わせた
100マイルの旅に向けて始めの一歩を踏み出した瞬間
初日は約11kmの道のりを歩く。スタート時は曇り空だったが台風の影響で途中から雨が降り出す。台風通過後も不安定な天候が続いて今回の100milesAdventureは雨の日が多い行程となった

 2017年の実施ルートは大分県別府市をスタートし阿蘇を抜けて熊本へ向かう約170kmとなっていた。トラベル Watchではスタート編の記事でスタートの様子をレポートしたが、今回は熊本へのゴールの模様を写真を中心にお伝えする。

メンバーと一緒に過ごす最後の夜

9日目の宿泊地は熊本県菊陽町にある「ふれあいの森公園キャンプ場」だ。予定していたスケジュールでは5日目に休息日を設けていたが、台風の影響で足止めがあったため台風通過後は遅れを取り戻すことを優先し歩き続けた。その甲斐あってスケジュールに余裕が戻ったのでゴール目前の9日目を休息日とした。午前中はキャンプ場でゆっくりし、午後からは川をせき止めて作った天然のプールに全員で遊びに行ったとのこと
100milesAdventureのことは地元で報道されているし、荻田氏のFacebookではその日の様子が毎日アップされていた。そうした情報を見た人からの差し入れも届いていた
キャンプ場では電源確保が難しいことが多い。そこで100milesAdventureにはホンダから家庭用カセットガスを燃料とする発電機「EU9iGB(エネポ)」が2台提供されている。エネポの動作音は静かなのでキャンプ場で使用することに適している
プールから戻るとサポートメンバーは炊事場で食事の用意。今回の旅で最後の夕食になるため食材を使い切る豪華メニューとなり、そこに応援してくる人が差し入れてくれたウナギの蒲焼きが追加された
食事の準備が整うまでの時間はキャンプ場内に隠した「宝」を探すゲームを開催。ちなみに「宝」とはスナック菓子。子供たちはヒントを手がかりに場内を探し回ったがなかなか見つからない。そこでヘルプが必要かと大人組が考えていると「あった!」の声が響いた
みんな揃っての夕食もこれが最後となる
食事前に荻田氏から今日までのことについて話があったが、興奮した子供たちはなかなか静まらない。すると荻田氏から厳しい声で「静かにしろ!」とひと言。続けて「気持ちが昂ぶるのは分かるけど気持ちに流されてはダメだ。“お前らはもうガキじゃない”のだから抑えるところでは抑えなさい」と語りかけた。この言葉で全員、真っ直ぐ座り直す。そして「最後の日も頑張っていこう」とお味噌汁で乾杯!

いよいよ最終日がやってきた

いよいよ最終日の朝がきた。取材陣がキャンプ場へ着いたころには朝食も終えてテントの撤収中。子供たちももちろん手伝っていた
「100milesAdventure」のサポートカーである「ステップワゴンModulo X」も荷物の積み込みのため公園管理事務所の許可を受けて園内へ乗り入れていた。ステップワゴンの3列目シートはフロアに収納できるので広くフラットな床が生まれる。また、フロア高も低く設定されているので荷物の出し入れはしやすかったとのこと
子供たちは指示されなくても自分で仕事を探して動いていた。ステップワゴンの特徴であるリアゲートが横に開く「わくわくゲート」は積み込み完了後に「これも積んでおいて~」となったときにも便利。追加の荷物はわくわくゲートから入れることで積み上げた荷物が崩れる心配がないのだ
出発前ミーティングのあとは円陣を組んで「頑張るぞ!」のコール。そしてキャンプ場スタッフの見送りを受けながら熊本城を目指してスタートした
最終日に歩く距離は約15km。朝9時過ぎに歩き始めて、適度に休憩を挟みつつゴールの熊本城 加藤神社には13時過ぎに到着するペースで進む。2台のサポートカーは昼食の買いだしと伴走に分かれて走行
大津街道を熊本へ向かう。途中、菊陽杉並木を通る。ここの杉は慶長6~7年ごろ、加藤清正公が街道沿いに植えたもので樹齢400年を越える大木だ。この杉並木は“日本の道 百選”にも選ばれているようで顕彰碑が建っていた。サポートカーはお弁当屋で合流。先にゴールの加藤神社に向かい受け入れの準備をする
ゴールの加藤神社は熊本城の城内にある。主祭神は熊本城を築城した加藤清正公。加藤神社から見える熊本城は地震被害からの修復中だった。天守閣は2019年までの再建。城全体は19年後に地震前の状態に戻すという長期にわたる修復計画がある
城内は至るところに地震による被害が見られるが、復旧工事も始まっているのであちこち壊れていても悲壮感はなく復旧へ向けての勢いを感じる。大きな地震にも耐えたお城をひと目見ようと国内外から観光客も増えているとのこと
加藤神社の社務所前には子供たちを迎えるため父兄が集まっていた。スタッフからは熊本城内の二の丸広場で子供たちを出迎え、そこから加藤神社まで一緒に歩くという予定が伝えられた
子供たちは堂々とした足取りで二の丸広場に現れた。10日ぶりの再会で親元に駆け寄りたい気持ちはあっただろうが、ゴールはここではない。待ち受けていた父兄には手を振るだけで歩き続ける姿に肉体的だけでなく心も強くなったことが表われていた
別府を出発したあと台風や雨、霧、そして暑さという厳しい環境が続いたが、それに負けずに歩き続けてついにゴールの瞬間を迎えた。加藤神社の鳥居をくぐる前に横に並んで手をつないでみんなで一緒にゴール。この瞬間の気持ちはきっと忘れらないものになるだろう
ゴール後、自分の上半身ほどある大きなリュックを背負って約100マイル(約170km)を歩いた子供たちに向けて荻田氏から「この10日間は今日で終わりますが、10日間の間で感じたこと、学んだことは家に持ち帰って何かに活かせてもらえたらいいなと思います。みんな連絡先を交換していると思うので、仲間同士、今後も友だちでいて下さい」という言葉がかけられた
加藤神社の好意で休憩所を使わせてもらいお弁当を食べる。休憩所では100milesAdventureを応援する地元の方がかき氷と自分の畑で獲れたスイカで作ったスイカジュースを子供たちに振るまってくれた
100milesAdventureのメンバーが道中に着ていたメンバー用Tシャツ。最後に新品が用意され荻田氏が一人一人に向けてメッセージを書き込む。その後、メンバー同士の寄せ書きがはじまった
出発のときに撮った集合写真(上)と、ゴール後に撮った写真(下)を見比べてみる。表情がずいぶん柔らかくなり、お互いの距離感がすっかり仲間同士のものに変化している
100milesAdventure2017 最終夜~ゴール

100milesAdventureの参加メンバー9名のコメント

質問にハキハキと答えてくれた米内柚稀くん「大変だったのが阿蘇のミルクロードを歩いたときです。登り坂が多いので疲れました。初めて会う人との10日間の共同生活については「最初のころはみんなとあまりしゃべらなかったけどいまはすごく仲よくなった」とのこと
今回の紅一点である鈴木心優ちゃん。カメラを向けるといい笑顔を返してくれた。「最初は大変だと思っていましたが、高校生のお姉さん(サポートスタッフの阿部さんと荻生さん)がいてくれたことがよかったし、長い距離でもみんなで乗り越えられたことがうれしかったです」と語ってくれた
出発時と比べて日焼けして逞しくなっていた奥谷一輝くんからは「一番きつかったのが阿蘇山のミルクロードを歩いたときでした。上り下りも多く暑かったしクルマの通りも多かったので歩きにくさもありました」とのこと。次に楽しかったことを聞くと「たくさんあるけどとくに楽しかったのは休息日に行った川のプールです」というコメントをくれた
今回のチームにおいてムードメーカーだったという管隆ノ祐くん。思い出はたくさんあると思いますが一番はなんですか?と聞いたところ「楽しかったのは毎晩寝る前にみんなと遊んだことです」とのこと。これは仲間と過ごすことを大事に考えていたからでは。参加してよかったと思いますか?という問いには即答で「ハイ」と言ってくれた
出発前に右手を骨折してしまったがケガに負けずに参加した木村凱斗くん。「手をケガしていたので、ザックの中からものを取ることが大変でしたけど、キャンプをしたのも初めてで料理をしたのも初めてなので楽しかったです」とこと。旅のなかで印象に残ったことは「休息日にみんなで行ったプールです」と笑顔で語ってくれた
三浦亜人くんは途中で体調を崩しまった。それだけにコメントも「体調を崩した日は歩き通せなかったことがすごく悔しいです」というものだったが、こういうところでのコメントに「悔しい」という気持ちを出してくるところに完歩したメンバーとは違った成長ができていると感じた。スポーツは水泳をやっているとのことなので、体力的には厳しくなかったという
地元熊本から参加の下村聡太郞くん。歩くためになにか準備したのか?ということについて「運動はテニスとサッカーをやっています」という答え。また「初日は慣れてないから11kmの距離でもすごく疲れたけど、毎日歩いていると慣れてきてきつさは感じませんでした」とのこと。旅の間の食事で一番美味しかったのは「昨日の夜に食べたウナギです」とのこと
順番がきて、話しかけるとまわりから冷やかしが入るという人気者の木村友哉くん。長い距離を歩くことについては「剣道をやっているので足腰は鍛えてます」とのこと。旅全般については「いろいろな人がいて、みんな特徴もあることがいいなと感じたし、荻田さんたちからたくさんのことを教えてもらったのが楽しかったです」という最高のコメントを語ってくれた
狩野友孝くんはシャイな面もある。旅で楽しかったことは?の問いには「みんなと仲よくなれたこと」とひと言。これを聞いた仲間からは「お~」という声と拍手が上がった。次にご飯で一番美味しかったのは?と聞いたところ「7日目」とひと言。するとまわりの仲間が「なんだっけ?あ、バーベキューだ!」と代わりに答えてくれる。仲よくなれたという言葉どおりでとてもいい雰囲気だった

ステップワゴンModulo Xの印象をサポートスタッフ聞いた

10日間、ステップワゴンModulo Xを運転したサポートスタッフにクルマの印象を伺ったところ、一番に挙げたのが「1日中運転しても疲れない」ということ。また、ブレーキの効きがペダルの踏み込みに対して素直なので「安心感があった」というコメントもあった

「100milesAdventure」を支えたサポートスタッフが期間中に使用していたのがホンダアクセスが用意した2台の「ホンダ ステップワゴンModulo X」。今回のチャレンジのためにボディ両サイドに「100milesAdventure2017」の文字とModulo Xのロゴを入れた特製グラフィックがあしらわれているのが特徴だ。

 この「100milesAdventure2017」が別府から熊本までの間で開催されていることは地元メディアで紹介されているので、歩いている子供たちだけでなく、移動中のステップワゴンModulo Xもあちこちで注目されていた。

 さて、10日間、九州を走り回ったステップワゴンModulo Xだが、そのステアリングを握ることが多かったサポートスタッフにステップワゴンModulo Xの印象を聞いておいたのでそのコメントを紹介しよう。

 まずは唯一の男性スタッフであり管理栄養士の国家資格を持つ清野氏のコメントから。「ボディサイズがそこそこ大きいのに小回りが効くと感じました。とくに今回の行程では道幅が細い山道を通ることが多かったのですが、そんな道でも扱いやすかったです。それにカーブでの安定感もあったので初めての山道でも安心して走らせることができました。積みこむ荷物が多かったので重さが加速に影響するかなと思いましたがそんなこともなく、山道でも苦もなく走ってくれました。後ろに荷物をたくさん載せた状態でもふらつくことがなかったのも印象的でした」とのこと。

 続いて同じくサポートスタッフの中田さんに伺うと「サポートカーはあちこちを走りまわったので全部で300~400kmほど運転しました。普段もクルマに乗りますが連続して長い距離を走ることは初めてです。それだけに最初は運転疲れもあると思っていましたが、なんと最終日まで運転で疲れたと感じたことはなかったです。このクルマのシートは背中が固定される感じなのでカーブで身体がずれにくく、ここも運転しやすいと思った部分です。それとブレーキの効きがよかったです。いつも乗っているクルマよりずっと大きいのでブレーキの掛け方も最初は戸惑いましたがすぐに慣れたし、踏み込み方を強くするとしっかり止まってくれるのでそういうところにも安心感を感じました。あと使い勝手がいいと思ったのは後ろの横に開くドア(らくらくゲート)です。荷物をたくさん積んでいる状態で追加でなにかを入れたいときあのドアを使うとすごく便利でした」とのことだった。

荻田氏に10日間の総評を聞いた

荻田氏は今年の11月より南極大陸の極点を目指して約60日間の無補給単独歩行に挑戦する。詳細などは荻田氏のFacebookを見ていただきたい。なお、来年も8月に100milesAdventureは開催予定とのこと。場所については未定と言うが、荻田氏からは「海外でもやってみたい」という言葉もでた

 まとめとして、荻田氏に10日間の総評を伺ったところ「しっかりとコメントを言いたいのですが、終わったばかりのいまは反省点ばかりが頭に浮かんくいるので……」と前置きしたあと「今回で6回目の開催になります。進め方などについては以前の開催と変えたところはないのですが、今回はいままでで、参加人数の最も多い回となりました。これは新しい試みといえるかもしれません。ボクとしては歩くことでなにかを掴み、夢を持ってほしいと思っています。そのためにはやはり会話することが必要です。それだけに旅のなかでは子供たち一人一人との会話の時間は長く取るようにしています。10日間もあると時間はたっぷりあるように思いますが、歩いているときはあまり会話ができないのでじっくりと話ができる時間は夜寝る前とか意外と少ないんです。そういうことから見て9人はちょっと人数が多くてみんなの気持ちの核の部分まで届くことができただろうか、という気もしています。今回の旅においてそこがとても気になるし反省点でもあります」と語った。

 では、これだけはしっかり伝えられたと思うことはなんですか?の問いには「この旅において重要なのはみんな揃ってゴールするということですが、これは達成できました。10日間の間には体調を崩してしまった子や足が痛いと訴える子などいろいろとありましたが、その都度、みんなで話し合ううちにチームとしてのまとまりが生まれ、一致団結して前へ進むということは果たせています。難しいこと、辛いことでも一歩一歩進んでいけばゴールにはたどり着くんだよ、ということは体験してもらえたでしょう。遠い目標に対しての“たった一歩”なんて大した意味を持たないように思えますが、その一歩を重ねていくことが大事であって、重ねていけばどこまででも行けるということを知ってくれたと思っています」とのこと。

 さらに「目標が遠ければ途中の変化が体感しにくいので不安になることもあるかもしれませんが、そこで強く持ってほしいのが自分を信じる気持ちです。続けていけば変化がある、なにかが起こっていくんだ、と信じることが大事なんじゃないかと思ってます。それだけに参加してくれた子供たちがみんな“自分のことを信じられる人”になってくれていたらうれしいです」と語ってくれた。

2台のステップワゴンModulo Xのうち、1台は陸送されて埼玉県新座市にあるホンダアクセスの本社へ戻るが、もう1台は荻田氏がスタッフを乗せて自走でホンダアクセスまで運ぶ。10日間歩いたあと、熊本から埼玉までの距離を自走とはやはりタフな人でした

提供:株式会社ホンダアクセス

深田昌之
Movie:石岡宣慶