トピック

北極冒険家と7人の小学生が新潟駅~猪苗代湖までの100マイルを歩く「100milesAdventure2018」(ゴール編)

磐梯山をバックに猪苗代湖でゴール

2018年8月1日~11日 開催

北極冒険家の荻田泰永氏と小学校6年生の子供たちが100マイルを踏破する冒険の旅「100milesAdventure」がゴールを迎えた

 2000年~2017年までの18年間に15回もの北極冒険を行ない、2018年には南極点無補給単独徒歩到達にも成功した北極冒険家の荻田泰永氏。その荻田氏が2012年から毎年夏に開催しているのが、小学校6年生の子供たちと100マイル(約160km)の距離を踏破する冒険の旅「100milesAdventure」だ。

 この100milesAdventureはこれまで6回開催され、第7回となる2018年の新潟~猪苗代湖ルートは、新潟駅前のスタートから初日のゴールである秋葉キャンプ場までについては、すでにレポートしたとおり(関連記事「北極冒険家と7人の小学生が新潟駅~猪苗代湖までの100マイルを歩く『100milesAdventure2018』(スタート編)」)。今回は、新潟~猪苗代湖ルートのゴール前日とゴールの模様をお伝えする。

北極冒険家の荻田泰永氏(センター後方)と小学6年生が11日間かけて100マイルの距離を歩く「100milesAdventure」。前列が今回挑戦している子供たち。女子6名、男子1名の計7名

 11日間も歩き続けるとなると、すべての日程で晴天を期待するのは難しく、2017年に続いて今年の100milesAdventureも台風の影響を受けることになった。そこで後半の行程を組み替えて対応。台風が来ていた8月9日、裏磐梯のラビスパ裏磐梯いこいの森グリーンフィールドにある古民家を借りることで、荒天を安全にやり過ごした。

 そして天候が回復した10日は裏磐梯のラビスパ裏磐梯いこいの森グリーンフィールドから再スタート。予定では約20km先の五色パラダイスキャンプ場がゴールだったが、子供たちの歩くペースが早いということもあり、少し先の裏磐梯スキー場をゴールに設定。

 この日歩く国道459号は、山の中を通る道なのでアップダウンが続く。さらに付近に民家がほぼない区間なので、車道と歩道が分かれているところが少なく、ほとんどが車道の脇に白線が引いてあるだけの設定。そのため一行は特に注意しながら道路の右端を一列になって歩いていた。

 途中、裏磐梯道の駅でお昼休憩をしたが、ここまでのペースもよく、疲労や体調不良を訴える子供もいない。今回メンバーはタフである。ゆっくり休んでもゴールの裏磐梯スキー場には予定より早めに到着できそうだった。

国道459号を歩くメンバー。車道と歩道が分かれていない難所なので、先頭と最後尾の大人はクルマへの合図をするための誘導棒を持つ
サポートカーは数kmごとに先行して水の補給や体調不良など不測の事態に備える
こうしたブラインドコーナーが続く区間なので、安全には特に気を使っているとのことだった

 裏磐梯スキー場へは国道459号から反れてアップダウンがある未舗装路を歩くことになる。舗装路と違って歩きにくい道なので子供たちは顔を下向きにすることが多かったが、ペースは落ちないのが改めてスゴイ。そして先回りしてみんなの到着を待っていたスタッフとハイタッチして無事にゴール! この日はここでサポートカーのステップワゴン Modulo Xに乗りこみ山を下り、宿泊地である国立磐梯青少年交流の家へ向かった。

サポートカーが先にゴール地点へ向かう。未舗装路でときおり石が出ているところもあるが、ドライバーによるとそんな道でも丁寧に走ればさほど乗り心地がわるいとは感じなかったとのこと
クルマはめったに通らない林道だが右端を一列に歩く。登りがきついところではさすがに厳しそうに見える
視界が開けてゴールが見えた。みんなの表情が柔らかくなる
出迎えるスタッフとハイタッチ。ここでステップワゴン Modulo Xに乗り宿泊地へ向かう。元気に歩いていた子供たちだが、クルマに乗ってしばらくすると全員パタンと寝てしまったという。10日間の疲れも溜まっているのだろう
国立磐梯青少年交流の家に到着。駐車場から玄関までは登り坂&階段。思わず「え~まだ上がるの~」と声が出ていた
宿舎の部屋でゆっくり休む……と思いきや、すぐに敷地内にあるグラウンドで荻田氏から教わったボール遊びが始まった。ここにきての全力疾走、子供の体力は底なしである

 いよいよ最終日の朝が来た。ゴールの猪苗代湖には12時に到着するスケジュールだが、距離は10kmほどなのでこの日はのんびりペース。朝は少しゆっくりして9時過ぎに宿舎に集合。磐梯山の麓にある宿舎からは遠くに猪苗代湖が見える。メンバーはそこを目指して最後のスタートを切った。

 ゴールまではのどかな田園風景のなかを歩き、途中、道の駅猪苗代で休憩。そこから湖畔に沿って走る国道49号線を東へ向かい、出迎えの親御さんたちが待つ猪苗代湖畔の志田浜へ到着する予定。天気はよいが気温は27℃ほど。酷暑日すら歩ききった子供たちは余裕の表情で最後の「みんなでの歩き」を楽しんでいるようだった。

上半身より大きいリュックを背負って歩き続けた11日間がいよいよこの日で終わる。どんな気持ちで朝を迎えたのだろうか
スタート前にはいつものように円陣を組んで声を出す
最後のゴールへ向けて出発!
農道や裏道を通り、その地域の雰囲気を味わう
サポートカーものどかな風景なかを走っていく
通りかかる列車に手を振る
先頭を歩く荻田氏は小まめに振り返り後続のペースをチェック。今回のメンバーは「歩くのが速い」と語っていた
休憩場所である道の駅に到着。女子チームはお揃いの髪型でゴールしたいということで、この休憩時に全員三つ編みに
サポートカーのステップワゴン Modulo Xを提供しているホンダアクセスから広報の石井氏もゴールを見届けるために現地入り。道の駅で荻田氏一行と合流した
石井氏が乗ってきたのは発売間もないN-VAN +STYLE FUNのホンダアクセス用品装着車。早期に予約した人の元にようやく納車され始めたころなので、まだ見かけないクルマ。道の駅でも注目度満点だった
数km先のゴールを目指して国道49号線を歩く
ゴールの志田浜にはメンバーの家族が出迎えのために待機
子供たちの姿が見えた。出迎えの家族だけでなく、事情を聞いたまわりの人からも拍手を浴びる
ついにゴール! 誰1人欠けることなく11日間、100マイルを歩ききった
荷物を降ろして久しぶりに会う家族のもとへ……と思いきや、みんなで手をつないで湖に走り出し、そのままザブーンと飛び込む。最後まで元気なメンバーだった
着替えてからおむすびを食べてほっとひと息。そしてメンバーTシャツに寄せ書きをしていく。明日からはそれぞれの生活に戻るが、この旅を一緒にやり遂げた仲間との交流はこのあとも続くはずだ
最後にみんな一言ずつ感想を語った。ここで子供たちは元気に発言していたのに対して、サポートの大人チームは感極まって涙を見せる。荻田氏も言葉に詰まって見上げるシーンがあった
株式会社ホンダアクセス 広報の石井氏。ホンダアクセスは2台のステップワゴン Modulo Xを提供している

 2年続けてステップワゴン Modulo Xを100milesAdventureのサポートカーとして提供しているホンダアクセス。今回は広報の石井氏も現地入りしゴールを見届けていた。その石井氏にゴールシーンに立ち会った感想を伺ってみた。

「まずは、皆さんには無事にゴールできたことにおめでとうございますと伝えたいです。我々と荻田氏とはたまたま縁があって知り合ったことをきっかけにクルマを提供させてもらっていますが、ホンダもチャレンジし続ける会社であるので、このイベントの趣旨には大いに共感できます。今回参加した子供たちもこれから中学生、高校生、大学、そして社会へと出ていくわけですが、その過程にはさまざまな冒険が待っていると思います。そのどれを選んでいくかは本人が決めていくものですので、この旅で得た気持ちを忘れず成長し、これからも挑戦し続けてほしいと思います。昨年はゴールの場面に立ち会えませんでしたが、今年は来ることができました。ホンダという会社には現場、現実、現物の3現主義というのがありまして、とにかく現場が大事とされています。今回、この場に来られたことは自分にもよい刺激になりました」と石井氏は語った。

 続いて、歩ききった子供たちに一言ずつ感想を聞いてみた。急に話を振られて答えに困っていたようだけど、みんなそれぞれよい笑顔で素直な気持ちを言ってくれた。スタート編でも子供たちの顔の写真を取っているのでゴール後の顔と見比べてほしい。

 唯一の男の子だった竹内謙太郎くん。女子チームとは「まだ打ち解けてはいないけど、まあ、一緒に旅しておもしろかったです」ととても男の子っぽい回答。そして「一番きつかったのは1日目の一番最初」とのこと。初日、熱がある状態でスタート地点に来ていたので厳しかっただろう。しかし、彼は遅れることなく弱音も吐かずに歩ききり、キャンプ場での仕事もちゃんとこなしていた。立派である。そして一番楽しかったことは?には「休養日に遊んだこと」とのこと。夜は荻田氏達と一緒だったので男同士の話はした?には「ちょっとはした」とのこと。ただ、ザンネンながら内容は教えてくれませんでした。

竹内謙太郎くん

 加賀千尋ちゃんに一番楽しかったことを聞いてみると、「25kmの距離を歩いた3日目が楽しかった。途中で川遊びができたので」とこと。今回のメンバーでは小柄なほうなので、ついていくのは大変ではなかったですか?には「自分が疲れてくるときはみんなも疲れていてペースが落ちるので大丈夫でした」と余裕を感じさせる返答。この旅では女子チームは早い段階でみんな仲良くなっていた印象だったので特に誰と仲良くなったか?の質問には「誰かとというよりみんなと同じくらい仲良くなりました」と答えてくれた。最後に来年、100マイルに挑戦する人へのアドバイスを聞くと「根性があれば最後まで頑張れると思います」だった。

加賀千尋ちゃん

 武井葵音ちゃんにこの旅で一番楽しかったことを尋ねると、かるたを作ったり、荻田氏直伝のボール遊びをしたりして1日を過ごした「6日目の休養日」と答えてくれた。反対に11日間の旅で一番きつかった日のことを聞いてみると「一番長い距離を歩いた日です」という。ここでサンダル履きになっていた葵音ちゃんの足先を見ると数か所、豆がつぶれて絆創膏が貼ってあった。痛くないの?と聞いてみると「大丈夫です」と一言。とはいえ歩いているときは遅れてしまうこともあったという。それでも「待って」というようなことは言わずに頑張ってついていった葵音ちゃんだった。来年参加する「後輩」へのアドバイス聞いてみると「疲れるけど頑張れば着きます」と答えてくれた。

武井葵音ちゃん

 想像していた以上に「歩くのが大変だった」という鈴木結菜ちゃん。楽しかったことは6日目の休養日、みんなで遊んだときとのこと。ただ、みんながやっていたボール遊びは3つのサークル(安全地帯)の間を相手チームが投げるボールに当てられないよう全力で走るものだけに、疲れないか?と思うが、結菜ちゃんは普段からテニスをやっているというので体力はある。そこで「遊んでいるときは疲れているのは忘れます」と頼もしい回答。来年参加する人に向けてのアドバイスは「持っていくモノは多過ぎないのと、軽いモノを選んだほうよい」ということ。これは自分の荷物が多かったことからの実践的なアドバイスのようだ。

鈴木結菜ちゃん

 スタート前に「歩ききりたい」と言っていた青木凜果ちゃんも立派に歩ききった。とはいえ「ペースが早かったので着いていくのが大変でした」という。特に2日目が厳しかったそうだ。でも、凜果ちゃんは遅れず弱音も言わず歩いた。彼女もがんばり屋さんである。楽しかったことは4日目、角神湖畔で泊まったときの川遊び。凜果ちゃんも早い段階から打ち解けていたようだが、特定の誰かとでなく「みんなと仲良くなれた」という。するとまわりから「初日の温泉のときからだよね」と声がかかり、これで女子チームは盛り上がった。ホントに仲良しだ。来年の人へのアドバイスは「つらいけど楽しいよ」と言ってくれた。

青木凜果ちゃん

 池本結ちゃんは、「参加する前はほかの人と仲良くなれるか不安だったけど、すぐにみんなと仲良くなれて楽しかった」とのこと。厳しかったのは磐梯山で「途中に急な階段があって、もう疲れたーとなってました」という。それでもみんなが頑張って登っているので負けないように着いていった結ちゃん。今回は歩きが早かったと引率側からコメントがあったが、余裕があったわけではなく子供たち全員が頑張った結果、よいペースが維持できていたということだ。夜は「みんなでワイワイしてました」ということだが、騒ぎ過ぎて荻田さんから注意されたこともあったという。来年の人へは「お互い助け合えるので、まず友達を作った方がよいと思う」とのこと。

池本結ちゃん

 今回のメンバーでは一番小柄だった鈴木愛果ちゃん。2017年はお姉ちゃんが100milesAdventureに参加していたので、その影響で自分も出たとのこと。感想を聞いてみると「疲れたけど楽しい」と笑顔で一言。ほかの人と身長差があるだけに、歩幅も違うので着いていくのも大変だったと思うところだが「大変だったけど着いて行けた」という。一番楽しかったのは4日目の川遊びとのこと。一番厳しかったのは7日目の磐梯山に登ったときという。小柄だっただけにおそらくほかのメンバーより苦労して歩いていたと思うが、引っ込み思案にならず最終日は荻田氏のすぐあとで列を引っ張った。身体は小さいが気持ちは大きい愛果ちゃんなのだ。

鈴木愛果ちゃん

 参加した子供たちはそれぞれに何かを得たようで、急な質問に対してすぐに言葉は出なくても、活き活きとした目が言葉以上に自信や充実感を語っているように見えた。そこは写真を見てもらえば分かると思う。

 さて、最後はそんな子供たちを率いた荻田氏にこの旅の総括を伺ったので、このコメントで2018年の100milesAdventureの紹介を締めさせていただく。ただ、荻田氏はこのあと猪苗代湖~日光までの第2ルートが控えているので、しばしの休息のあと再び100マイルの旅が始まる。

 なお、2019年の夏も100milesAdventureは開催される予定だが、募集時期などは例年のように非公開。しかも「メンバー選びに主催側の意図を入れたくない」という考えから先着順なので、参加を検討するご家族は荻田氏のWebサイトのチェックを欠かさず行なっていただきたい。

北極冒険家/100milesAdventure主宰者 荻田泰永氏

「今回は女の子が6名ということで内心、どうなることかと思っていましたが、女の子の方がコミュニティを作るのがうまいので、集団生活は男の子が多いときより上手にこなしていた印象です。まあ、楽しいときはワーッとなりますが、6年生ともなるともう大人っぽい考えもできるので騒ぎ過ぎることもなく、輪を乱さないような行動もできていました。これは歩いているときも出ていたようです。

 メンバーの共同生活で印象的だったのは、ただ1人の男子であった謙太郎に対する葵音という女の子の行動です。彼女は目配りがすごくできる子で、1人でいることが多い謙太郎のために男の子の役を一生懸命やってくれるんです。例えばボール遊びでは葵音が謙太郎に一生懸命ぶつけようとしたり、謙太郎をやっつけようとするんです。だけどホントの葵音は女の子らしい女の子なので、謙太郎を相手にしているときはおそらく気配りなんですね。見ていてとてもよかったです。

 葵音のことを例に挙げましたが、ほかの子もそれぞれ個性があって、日が経つにつれてそれらが見えてくるのが楽しくて仕方なかったですね。謙太郎には葵音のやっていることの説明をしましたが、まあ、いま納得できるわけがなく「なんだあいつ」みたいなことを言ってましたが、大きくなれば彼も分かってくると思います。謙太郎もいいやつですよ。

 この100milesAdventureは現在、私1人がメインでやっていますが、それだと夏の2回が限度です。すると1年で14人ほどしか見られないので、先々はこのイベントが同時多発的に開催できるようにしたいと思っています。ただそうなると僕は現場に居てはいけないと思うんです。荻田泰永の100milesAdventureではなくて「100milesAdventure」であるべきなんです。

 そうなったときに力になってほしいのが、これまで100milesAdventureに参加して、このイベントの空気感とか雰囲気、目的を身をもって理解してくれた子供たちなんですね。実際、2017年からは過去の参加者をスタッフとして起用して一緒に歩いています。こうしたことも続けていけば、10年もするとスゴイ力になってくれることを期待しています。これは私が100milesAdventureを始めたときから思っていることです。100milesAdventureへ参加してくれた子たち、そして応援してくれる人たちのためにも、「100milesAdventure」に人が集うようになってほしいです」と語ってくれた。