井上孝司の「鉄道旅行のヒント」

わざと途中で乗り換えていろんな列車・車両を楽しむ

山陽「こだま」の500系7000番代(V編成)。2027年の引退が決まっているから、その前に乗っておきたいという方もいらっしゃるのではないか。しかし山陽新幹線内しか走っていないので、東海道新幹線の沿線からだと乗り換え必須である

 筆者は国際線の飛行機を利用するとき、「直行便があるならその方がよい」という主義である。遅延で乗り継ぎが崩壊するリスクや、ロスバゲのリスクを避けたいからだ。では鉄道旅行はどうだろうか。

楽に移動するか、バラエティを楽しむか

 昔は、半日あるいは一日がかりで走る長距離の特急列車や普通列車がいろいろあったが、最近は数を大幅に減らしている。特に幹線の普通列車は主要駅ごとに系統分断する形が一般的になり、そもそも直行便にあたる列車がないといっても過言ではない。

 そのため、片道の乗車が3~4時間を超えれば「長い」というのが現状であろう。5時間近くを要する東京~博多間の「のぞみ」は例外的存在だが、これを全区間乗り通す人は、多数派とはいえない。筆者はしばしばやっているが。

 ところが意外なことに、案外と長時間になる列車はあるものだ。それが、筆者が先日に「SL大樹『土津』(はにつ)」の取材で訪れた、東武鬼怒川線~野岩鉄道会津鬼怒川線~会津鉄道会津線のルートである。

 特急「リバティ会津」に乗れば、浅草や北千住から会津田島まで直行できる。その所要時間はなんと3時間超。私鉄特急としては長い部類だ。確かに時間はかかるが、いったん乗ってしまえば、食事をしようが、同行者と談笑しようが、寝ていようが構わない、という気楽さはある。

 しかし、「鉄道そのものを楽しみたい」という観点からすると、時間はよぶんにかかってもバラエティを楽しみたい、という考え方も成立する。同じ一度のおでかけでも、さまざまな列車、さまざまな車両に乗れる方がおもしろい。

野岩鉄道会津鬼怒川線の中三依温泉駅で交換する、東武500系リバティ(左)と野岩鉄道の6050系(右)。この路線、運転本数のわりに車両のバラエティが豊富だ
浅草~鬼怒川温泉間では、東武N100系スペーシアXという選択肢もある。デビューからしばらく経過した現在でも人気があるので、きっぷの確保はお早めに

乗り継ぎでバラエティを増やしてみる

 実は、野岩鉄道会津鬼怒川線~会津鉄道会津線には、それに乗ること自体を目的にできそうな列車がいくつかある。

 例えば、野岩鉄道の6050系がそれ。東武鉄道の6050系と同形の車両を、直通運転のために野岩鉄道や会津鉄道も導入した。しかし近年になって廃車が進み、野岩鉄道保有の2編成を残すのみだ。この車両の、2扉でボックスシートが並ぶ車内は、かつての国鉄急行型電車を思わせるものがあり、鉄道好きの間では今でもけっこう人気がある。

 また、「AIZUマウントエクスプレス」で使用する会津鉄道のAT-700形気動車は、車内に回転式リクライニングシートが並んでいる。特別料金不要の快速列車としてはハイグレードな内装の持ち主。

 2026年現在、「AIZUマウントエクスプレス」は、朝に会津若松から鬼怒川温泉に向かい、折り返して会津若松に戻る1日1往復の運行。下りは浅草発の特急「リバティきぬ」と接続しているから、1回の乗り換えで会津若松まで行ける。

 日によっては下今市~鬼怒川温泉間に「SL大樹」も走るから、これをスケジュールに組み込む手もある。また、東武鬼怒川線(下今市~新藤原)を走る普通列車は、かつて日比谷線直通系統で使われていた20000系電車を転用した20400系だ。

6050系の車内
湯西川橋梁を通過する「AIZUマウントエクスプレス」。右側の赤い車両がAT-700形だ
そのAT-700形の車内。これだけ見ると特急用の車両かと思ってしまう
新藤原の駅で並ぶ東武20400系(左)と野岩鉄道6050系(右)

 これだけバラエティがあるなら、次々に乗り継いで楽しむのも一興であろう。

 実際、筆者は「SL大樹『土津』」の取材を済ませた帰りに、6050系の区間快速(会津田島~新藤原)、20400系の普通列車(新藤原~下今市)、そして殿にN100系スペーシアX(下今市~北千住)と乗り継いで帰って来た。実は鬼怒川温泉で特急「リバティきぬ」に乗り継ぐ手もあったが、そこはスペーシアXを優先した。

 会津若松の先についても、磐越西線で郡山あるいは新潟に出て新幹線とつなぐルートを形成できる。こうなると、さらにバラエティ豊かなルートのできあがりだ。車種のバラエティという点では、この東武鬼怒川線~野岩鉄道会津鬼怒川線~会津鉄道会津線を主軸とするルートは出色かもしれない。

ほかにバラエティを楽しめそうなところは?

 では、このほかに何かバラエティを楽しめる場所はないだろうか、と思案した結果、出てきたのがなんと東海道・山陽新幹線であった。これも筆者は実際にやったことがあるが、東京から新大阪以西に向かうのに、直行しないで新大阪で乗り換えるのである。

 山陽・九州新幹線の直通列車「みずほ」「さくら」で使われているN700系の8両編成は、普通車のうち指定席車だけ2列-2列配置になっている。山陽新幹線の「こだま」で使われている700系7000番代「レールスター」、N700系6000番代、それと引退が近い500系7000番代も同様だ。

 もっとも、筆者みたいな痩せ型だと、腰掛の幅が広くても左右がガバガバに余るのだが、そこはそれ、気分的なゆとりは楽しめるというやつである。

 ちなみに、山陽新幹線の車両を担当したメーカーのデザイン担当者は「博多行きの『のぞみ』に乗っていても、あえて新大阪で乗り換えたくなるような質の高い車両が必要だと考えました」と語っている。

「さくら」「みずほ」などで使われている、8両編成のN700系。JR西日本所属車とJR九州所属車があるが、JRマークの色や車内放送チャイム以外は基本的に同一仕様
その8両編成のN700系の指定席車。4・5・7・8号車と6号車の半分がこれである
引退が近い500系は、4~6号車が指定席車で2列-2列配置。そのうち6号車(写真)はグリーン車の転用
同じ500系でも4・5号車はあとから2列-2列配置に改座したため、腰掛が異なる

 実は、新大阪で乗り換えを入れると、そのついでに新大阪駅でお弁当や飲み物などを補充できる利点もある。車内販売がなくなってしまった昨今、食べるものの確保は乗車前に、となってしまう。しかし、途中で別の列車に乗り換えると、そこでも調達のチャンスができる。

 ただし、通常の3列-2列配置に対して2列-2列配置になるということは、単純計算で席数が2割は減るということである。しかも編成両数が短ければ、16両編成と比べると指定席車の数も減るので、それだけ指定席の確保は難しくなる。繁忙期・超繁忙期には、1か月前の発売に合わせて直ちに指定席を確保する意気込みが必要だろう。

 JRの幹線を走る普通列車も、系統分断で乗り換えの回数は増えたが、裏を返せば車両のバラエティを楽しめるという見方もできる。特に東海道本線~山陽本線をたどると、JR東日本・JR東海・JR西日本にまたがるだけに、各社の車両の個性が顕著に出る。

東海道本線のうち東京~熱海間はJR東日本。写真はE233系。グリーン車の組み込みもある
熱海~米原間はJR東海。主力は写真の313系で、パッと見の華々しさは乏しいが堅実かつまじめに作られた、いかにもJR東海らしい車両
米原以西はJR西日本。写真は225系だが、数の上では223系の方が多いか。3扉転換クロスシート車が多くを占めている特徴がある