井上孝司の「鉄道旅行のヒント」
普通乗車券で特急に乗れる特例区間がある
2026年8月26日 06:00
日本の鉄道では、鉄道の利用そのものの対価となる運賃(それの証となるのが乗車券)と、列車あるいは設備の対価となる料金(特急料金、指定席料金、寝台料金など)を組み合わせる形になっている。
よって、特急など追加料金を必要とする優等列車を運行している会社や路線では、特急列車が到着する際の案内放送で「乗車券のほかに特急券が必要で~す」などと放送して注意喚起している場面をよく見る。ところが、何事にも例外は存在する、というのが今回のお題。
JRグループでは現在、5区間の設定がある
私鉄では、追加料金不要の「特急」を走らせていることもあるが、それはまた別の話なので措いておくとして。まずは具体的に、乗車券と特急券の現物を出してみよう。
ところがJRグループには「普通乗車券だけ所持していれば特急列車に乗れる」という特例を設定している区間がある。2026年7月現在、この特例の対象になっている区間は5か所。対象となる特急列車もあわせて示す。
石勝線(新夕張~新得): 「とかち」「おおぞら」
奥羽本線(新青森~青森): 「つがる」「スーパーつがる」
室蘭本線(東室蘭~室蘭): 「すずらん」
日豊本線・日南線・宮崎空港線(宮崎~宮崎空港): 「にちりん」「にちりんシーガイア」「ひゅうが」
佐世保線(早岐~佐世保): 「みどり」「みどり(リレーかもめ)」
このうち石勝線は、普通列車の設定がないという理由で特例の対象になった。この区間を走るのは、特急「おおぞら」「とかち」と貨物列車だけなので、特急列車が普通列車の代役を務めるしかない。貨物列車に乗客を乗せるわけにもいかない。
なお、同じ石勝線でも南千歳~新夕張間は、数はきわめて少ないが普通列車の設定があるため、特例の対象から外れている。
そのほかの区間は石勝線と異なり、特急列車と普通列車が混在している。ただ、両者をそれぞれ十分な本数だけ走らせるほどの輸送需要がないとの判断であろう。普通列車の間隔が空いた時間帯に、特急列車に普通列車の代わりを務めさせている。
この特例で乗車できるのは普通車自由席のみが原則だが、JR北海道のように、全車指定席の列車しか設定していない場合もある。そのときには指定席車の空席を利用する。満席なら立席である。
民鉄でも同じような話がある
JRグループだけの話かと思うと、さにあらず、民鉄でも同様の事例がある。
それが、東武鉄道の鬼怒川線から、野岩鉄道の会津鬼怒川線~会津鉄道の会津線まで直通している特急「リバティ会津」。対象区間は鬼怒川温泉~会津田島間で、この区間「のみ」を利用する場合に限って、乗車券だけで利用できると定められている。
SL大樹「土津」の試乗レポでも言及したが、特に野岩鉄道の沿線は人口が少なく、普通列車の利用が少ない。そこで普通列車と特急列車を別個に設定するのは非効率的かつ不経済だから、特急列車が普通列車を代行している。
特例の区間外にまたがる利用は特急券が必要
いずれの特例も、当該区間内で完結する乗車が対象で、区間外まで同じ列車で乗り通す場合には、特急券が必要になる。趣旨からすれば当然であろう。その特急券は、乗車する全区間の特急券を必要とする場合と、特例の対象外となる区間についてのみ特急券を必要とする場合がある。
前者に該当するのが、室蘭本線(東室蘭~室蘭)、石勝線(新夕張~新得)、奥羽本線(新青森~青森)。例えば、青森~新青森間の乗車なら当該区間の普通乗車券だけで特急「つがる」の普通車自由席に乗れるが、青森~弘前間の乗車では、青森~弘前間の普通乗車券と特急券の両方が必要になる。
東武鬼怒川線~野岩鉄道会津鬼怒川線~会津鉄道のケースも同様で、鬼怒川温泉以南の各駅との間で乗り通す場合には、乗車する全区間の特急券が必要になる。
一方、九州の2路線は後者。宮崎空港線の場合、特急料金は特例区間外となる宮崎以北の分についてのみ計算する。佐世保線の早岐~佐世保間も、早岐以東まで乗り通す場合の特急料金は早岐以東の分についてのみ計算する。
特急の「車両に」乗車券だけで乗れる間合運用
最近はあまり見かけなくなったが、特急用の車両を用いて運行する普通列車が出現することが、まれにある。
特急列車の設定がなくて車両が余っている時間帯に、普通列車の設定はあって、「それなら、そちらで使おう」となるパターンが多い。これを「間合運用」という。もちろん、普通列車として運行するのだから、車両が特急型であっても特急料金は要らない。
特急用の車両ではなく、有料着席サービス用の車両で同じことが起きることがある。
JR北海道の「快速エアポート」は指定席車「uシート」を1両連結しているが、この「快速エアポート」用の6両編成を「快速エアポート」以外の普通列車に充当することもある。もちろんその場合にはほかの車両と同じ扱いなので、指定席券を購入しなくても「uシート」の車両に乗れる。これは筆者も何回か経験がある。






























