井上孝司の「鉄道旅行のヒント」
夏の18きっぷシーズン間近。鉄道のきっぷで船に乗る、鉄道と船を組み合わせる
2026年7月15日 06:00
普通、鉄道のきっぷは鉄道を利用するためのものである。バスを鉄道路線と同様に扱い、通しで乗車券を発券できるようにしている事例もある(ただし運賃は鉄道とバスで別個に計算・合算する)。例えば、東日本大震災で被災した気仙沼線と大船渡線をバスに切り替えた、気仙沼線・大船渡線BRTが該当する。
では、そのほかの乗りものはどうか。
青春18きっぷで乗れる宮島航路
そこで、季節商品になるが「青春18きっぷ」で乗車できる対象について確認してみる。すると「全国のJR線の普通・快速列車の普通車自由席、BRT(バス高速輸送システム)、およびJR西日本宮島フェリーが、乗り降りできるきっぷです」とある。
BRTについては冒頭でも触れたが、もう1つの「JR西日本宮島フェリー」が本稿の本題。実は、有効な「青春18きっぷ」を所持していれば、それを使って宮島にも渡れるのである。
宮島フェリー(路線名は宮島航路という)は、山陽本線の宮島口駅近くに乗り場があり、そこから宮島との間を結んでいる。通常は大人200円、子供100円の運賃が必要だが、「青春18きっぷ」があれば、それが不要になる(ただし、宮島訪問税が別途、一人100円かかる)。
つまり、鉄道用のきっぷ(正確には企画商品か)で、そのまま乗れる航路というめずらしい存在。「青春18きっぷ」だけでなく、そのほかの企画商品でも宮島航路が対象に含まれる場合がある。
というのも、実はこの宮島航路、鉄道連絡船という位置付けになっているのだ。過去には青函連絡船や宇高連絡船のように、「海を挟んで離れた鉄道路線同士を船で結ぶ」鉄道連絡船があった。鉄道同士を結ぶ航路なら鉄道と同列に扱うのは納得がいくが、それと同じ話なのである。ただし、現在はJRの鉄道線と宮島航路を通しで、1枚の普通乗車券にまとめることはできない(過去にはできたそうだ)。
宮島口と宮島の間は、JR西日本の宮島フェリーに加えて、広島電鉄傘下の宮島松大汽船による航路もある。話の種に、行きと帰りで利用する航路を変えてみるのも一興であろう。
フネのきっぷで鉄道に乗れるパターンはあるか?
JR西日本の宮島航路は「鉄道の切符や企画商品で船に乗る」パターンだが、その逆、すなわち船の乗船券で鉄道にも乗れる場所はあるのだろうか。厳密にいうと存在しないが、それに近いケースはある。
それが、撤退の話が取り沙汰されて話題になってしまった、南海電鉄などとともにNANKAI傘下にある南海フェリー。
かつては「南海四国ライン」として大阪と徳島を結ぶメインラインになっていた。ところが、明石海峡大橋と大鳴門橋、そして神戸淡路鳴門自動車道の完成で状況は一変。こちらを経由する高速バスの方が速いのである。
JR四国バスの「阿波エクスプレス大阪号」は大人片道4100円、徳島駅と大阪駅の間の所要時間は2時間45分。これでは、和歌山港~徳島港だけで2時間5分を要する南海フェリーにとっては分がわるい。
また、和歌山側は駅と直結しているが、徳島側は徳島市営バスで街の中心まで移動する手間がかかる。もっとも、南海フェリーは「フェリー」であるから、クルマと一緒に移動できる強みはあるのだが。
そこに登場したのが、「船賃と同額で南海電車も乗れます」という企画商品「好きっぷ」(すきっぷと読む)。方向によって商品名が異なり、大阪→徳島方向は「とくしま好きっぷ」、徳島→大阪方向は「○○好きっぷ」という(○○には目的地の駅名が入る)。
お値段は大人片道で2500円。これは南海フェリーの徒歩乗船・大人片道運賃と同額である。それで難波にも関西空港にも行けるのだ。極端な話、高野山の玄関口である極楽橋にも行ける(大迂回になるので時間がかかる点は、この際無視する)。逆方向の場合、南海電鉄の全線を発地にできる。
南海電鉄側が発地となる「とくしま好きっぷ」は南海電鉄の駅窓口や自動券売機、徳島側が発地となる「○○好きっぷ」は南海フェリーの徳島港ターミナル窓口と、徳バス観光サービスの各営業所で購入できる。
なお、クレジットカードのタッチ決済を利用することで「好きっぷ」と同様の割引を受けられるサービス、「スマート好きっぷ」もある。きっぷを購入する手間を省けるので、スピーディな移動が可能となろう。
これは、南海電鉄の各駅~和歌山港~徳島港と、すべて同じクレジットカードを読み取り装置にタッチすると、全行程が大人片道2500円になる仕組みだ。同じクレジットカードを使わないと「同一人物・同一行程」の確認ができないから、こういう制約がある。
鉄道と海路の組み合わせ
JR西日本宮島フェリーや南海フェリーは、鉄道事業者の傘下に海運会社があってフェリーを運航している事例。現在、日本でこうした形態が残っているのは、この2社ぐらいだろうか。
鉄道事業者と海運事業者は別個の企業体だが、鉄道の駅と船の乗り場が近接あるいは隣接していて容易に利用できる。そういう事例もいくつかある。
東日本と比べると西日本は航路の設定が多く、「海で隔てられていて、陸路だと大回りを余儀なくされるが、海路でショートカットできる」場面がいくつかある。たまにはそういうのを試してみるのもおもしろい。
例えば、広島電鉄の広島港電停はその名のとおり、広島港のターミナルと隣接している。筆者はここから、瀬戸内海汽船の「シーパセオ」で松山に渡ったことがある。広島側は電停が隣接しているが、松山側は伊予鉄道高浜線の終点・高浜駅から少し離れていて、バスで数分、徒歩だと10分ほどかかる。
また、島原鉄道の終点・島原港駅は、熊本に向かうフェリーのターミナルまで数百メートルほど。ここから熊本と三池に向かうフェリーが出ている。同じ島原鉄道の途中にある多比良駅も、対岸の長洲との間を結ぶフェリーのターミナルが近い。長洲には鹿児島本線の駅がある。
こぢんまりしたところでは、香椎線の終点・西戸崎駅と博多港の間を福岡市営の渡船で渡れる。博多港から地下鉄の呉服町駅までは1kmほどあるが、ここは西鉄バスのお世話になる方が現実的か。
同じ福岡県で、筑豊本線(福北ゆたか線)の終点、若松駅から900mほどのところに、若戸大橋と並行する形で対岸の戸畑との間を結ぶ渡船の乗り場がある。戸畑側も、鹿児島本線の戸畑駅まで500mほどある。




































