井上孝司の「鉄道旅行のヒント」

折り返しの特例があると途中下車で追加運賃が必要

函館本線と千歳線の分岐駅・白石駅を通過する特急列車。函館本線または千歳線で特急や快速を利用する場合、両線の乗り換えは札幌で行なうことになる。その際に往復する白石~札幌間の運賃はどうなる?

 JRの乗車券における「途中下車」の制度については、以前に取り上げたことがある。今回は、その途中下車に区間外の乗り越し・途中下車が加わる話を取り上げる。単純にA地点からB地点に向かうのではなく、その途中で経路を外れて寄り道する使い方になる。

途中で区間外にはみ出して往復する場合

 以前に、函館本線の迂回別線「藤城線」のことを書いた。もちろん、現地を訪れて、実際に乗ってみたうえで書いたのだが、その際に使用した乗車券は「東京都区内→旭川」。経由はこうだ。

 東京都区内→(東北本線)→大宮→(東北・北海道新幹線)→新函館北斗→(函館本線)→長万部→(室蘭本線)→沼ノ端→(千歳線)→白石→(函館本線)→旭川

 なお、沼ノ端は苫小牧から札幌方の隣駅で、ここが室蘭本線と千歳線の分岐駅になっている。

 実際には新函館北斗からそのまま北上せず、物資補給のために、いったん函館に寄り道した。このとき、新函館北斗~函館間は、用意した乗車券の区間外となる。

文字だけだと分かりにくいので、経路を図にしてみた。使用した乗車券の経路は青線で、途中で“はみ出し乗車”した経路は赤線。沼ノ端と札幌を結ぶ矢印が白石を素通りしている理由はあとで記す
北海道新幹線で新函館北斗に到着したあと、いったん「はこだてライナー」で南下
函館駅で、休憩と物資補給を実施してから折り返した。このとき、新函館北斗~函館間の往復は原券の区間外である

 だから、函館駅では改札の有人通路(精算所があれば、そちらでもよい)で乗り越しを申し出た。そして、新函館北斗~函館間の運賃を現金で支払って出場した。すると、原券には「新函館北斗駅下車代 函館」という印が押された。

 普通の途中下車印は駅名だけだから、それとは異なる。文面から「新函館北斗で途中下車して函館まで乗り越す処理を函館で代行した」と読める。

 実はこのとき、途中で札幌に宿泊した。すると、白石~札幌間も同様に区間外となる。だから札幌駅でも函館駅と同様の手順を踏んで、白石~札幌間の運賃を現金で支払って出場した。こちらも、原券には「白石駅下車代 札幌」という印が押された。先の例と同様に、「白石で途中下車して札幌まで乗り越す処理を札幌で代行した」と読める。

「新函館北斗駅下車代 函館」と「白石駅下車代 札幌」の印が押された乗車券

 この「下車代」の印を押すことで、新函館北斗あるいは白石までは原券を使用しましたよ、という記録にもなっている。

きっぷを買い直す代わりに精算処理とした

 実際に乗車する経路どおりに乗車券を購入すると、三分割されてしまって割高になる。そこで、発地から着地までの全体をカバーする乗車券と、はみ出し区間の乗り越しを組み合わせたわけだ。

 乗り越しの際に、新函館北斗、あるいは白石でいったん出場して、函館あるいは札幌までの乗車券を買い直しても同じことになるが、よけいな時間がかかってしまう。そこで駅係員のお手を煩わせた次第。

 なお、はみ出した経路を戻るときも、函館で新函館北斗まで、あるいは札幌で白石までの乗車券を買って入場する。新函館北斗あるいは白石から先は、原券を使うからだ。

 こういう場面で、交通系ICで入場すると原券の経路に復帰する駅で出場処理が必要になってしまうので、ここは紙のきっぷを買うべきであろう。

分岐駅を通過する列車に乗車する場合の特例

 新函館北斗は全列車が停車する駅だから問題ないが、白石は事情が異なる。ここは一部の例外を除き、普通列車しか止まらない。

 では、「新千歳空港→旭川」の乗車券を持っていて、快速「エアポート」で札幌まで行って特急「ライラック」に乗り継いだらどうなるか。白石~札幌間の往復は無賃乗車になってしまうのか?

 そこで登場するのが「分岐駅を通過する列車に乗車する場合の特例」。分岐駅を通過する列車に乗っていたのでは、そこで乗り換えることは物理的に不可能だから、こういう特例ができた。ただしこの特例には「途中下車は不可」という条件がある。

白石駅を発車する千歳線の普通列車。ここは通常、普通列車しか停車しない駅である
これも白石駅。札幌に向かう千歳線の快速や特急は、ホームがない通過線を走り去る

「新千歳空港→旭川」であれば、折り返し乗車となる札幌~白石間の往復を含まない、「新千歳空港→(白石)→旭川」という経路の乗車券になる。そして途中下車はできないから、札幌で函館本線の列車と千歳線の列車の乗り継ぎを行なう際に、改札の外には出られない。

 もちろん、この特例が適用される場所はちゃんと決められており、どこでも好きなように使えるわけではない。「分岐駅を通過する列車に乗車する場合の特例」とキーワード指定して検索すれば、JR各社のWebサイトで確認できる。

 こんな特例が必要になったのは、分岐駅が必ず、優等列車が必ず停車する、あるいは新幹線の駅ができるような主要駅とは限らないからだろう。

 そこで、新幹線が絡む「分岐駅を通過する列車に乗車する場合の特例」の例を1つ示す。東京方面から東海道新幹線で名古屋まで来て、特急「しなの」あるいは中央本線の普通列車に乗り継ぐケースだ。

 東海道本線と中央本線の分岐駅は名古屋ではなく金山だ。ところが金山には東海道新幹線の駅がないから、乗り換えは物理的に不可能。そのため、乗車券としては「東京~金山~(中央本線の駅)」として、金山~名古屋間は「分岐駅を通過する列車に乗車する場合の特例」を適用する。

 出場せずに名古屋駅で乗り換えるなら問題ないが、問題は名古屋で途中下車する場合。このときは先の札幌の事例と同様に、金山~名古屋間の運賃を支払って出場する処理が必要になる。よってここでも「金山駅下車代 名古屋」の印が登場する。

 そして名古屋で再入場する場合には、金山までの乗車券を買うことになる。

東海道本線と中央本線の分岐駅は、名古屋ではなく金山。しかし東海道新幹線で東京方面から来ると、名古屋で乗り換えるしかないため、名古屋~金山間が区間外の折り返しになる。そこで特例が適用される
東海道新幹線から中央本線に向かう乗車券で、名古屋で途中下車したために下車代印が押された乗車券。ちなみにこれは先日の、385系の取材に赴いたときのものである

 分岐駅を通過する列車に乗車する場合の特例(JR東海のWebサイト)。ちょうど、名古屋と金山の件を例として示している。