井上孝司の「鉄道旅行のヒント」

社員・軍関係者専用も? 日時・対象限定で利用できる改札口が存在する

以前にも取り上げた、西鉄貝塚線の香椎花園前駅。2026年現在、2番ホームに発着する電車は朝の上り・3本のみ。それ以外の時間にここからホームに入ったところで、列車は来ない

 駅には「改札口」が付き物だが、大都市圏の大きなターミナル駅ならともかく、小駅だと改札口が1か所でもおかしくない。ところが、近隣に従業員が多い会社、あるいは学校、あるいはなんらかの施設があるにもかかわらず、それが改札口から遠くて大回りを余儀なくされることがある。

 そんなときに登場する「臨時改札」が、今回の主なお題。臨時改札が開いている時間帯に当該駅を利用すると、駅から目的地に向かうのに少し楽ができることがあるかもしれない。

ラッシュ時だけ開ける臨時改札口

 臨時というからには、初電から終点まで常に開いているわけではない。その開け方はいろいろだ。もっともポピュラーなのは、通勤・通学時間帯に合わせて朝夕のラッシュ時にだけ開ける臨時改札口。

 筆者は過去に東京の狛江市に住んでいたことがあり、小田急小田原線の喜多見駅が最寄りだった。今は立派な高架駅になったが、昔は対向式2面2線の構成で、新宿側の端部に駅舎があった。だから、西方の狛江市方面から駅に来る利用者は、東側までぐるっと大回りしなければならない。

 実は、地上時代の喜多見駅では、上下ホームとも小田原寄りに臨時改札口を設けていた。ラッシュと逆方向になる下りホームに?と疑問に思われそうだが、近くに学校がある関係だろう。

 この手の臨時改札口は、「駅舎が端部に寄って設置されていて」「多くの人が行き来する施設が、その駅舎とは反対側にある」場面で設置されることが多い。たぶん、いちいち実例を挙げ始めるとキリがないぐらいの数がある。

御茶ノ水駅の東京駅寄りに、平日の午前中だけ開く臨時改札口がある。使わないときにはこのようにシャッターが降りている
その臨時改札口を出たところ。写真の右手には、かつて日立製作所の本社ビルがあった

大きなイベントがあるときだけ開ける臨時改札口

 多くの人が集まる施設が駅の近くにあるときに、その施設に近いところに改札があると便利だ。ところが、その施設で毎日のように何かやっているとは限らない。イベントがなく、利用が期待できない改札を稼働させておくのはムダである。

 そこで、「大きなイベントがあるときだけ開ける臨時改札口」が出現する。これで筆者がパッと思いついたのは、阪神競馬場の最寄り駅、阪急今津線の仁川駅。ちなみに「にがわ」と読む。「インチョン」ではない。

 阪神競馬場は仁川駅の東側にあるが、普段から「東改札口」は稼働している。しかし競馬の開催日には臨時改札口も開けて、通路数を一挙に増やす。似たような運用をしている駅として、京王電鉄の府中競馬正門前駅がある。

 おもしろいのは、1年に1日だけ臨時改札口が出現する駅。それが西武池袋線の稲荷山公園駅。ここは航空自衛隊入間基地のなかを西武池袋線が突っ切る形になっていて、駅舎と改札口は公道に面した西端にある。

 しかし年に一度の「入間基地航空祭」開催時には20~30万人の人が押し寄せて大変なことになるので、上りホームの池袋寄りに臨時改札が出現する。この臨時改札は基地内に面しており、いったん基地のゲートから外に出て、通常の改札口に向かうよりもずっと早い。

 その使命は、航空祭から帰る人を早く電車に乗せてしまうことにある。そこで、単に改札を設けて入場を可能にするだけでなく、基地内に臨時出札まで出現する。もっとも、今は交通系ICカードが多数派になったから、いちいちきっぷを買う手間はいらないことが多そうだが。

ある年の入間基地航空祭の帰りに、稲荷山公園駅の上りホームから撮影。柵の向こう側は入間基地の敷地

 ついでに関係ない話を書くと、この稲荷山公園駅の東側にある踏切は、公道ではなく入間基地内の道路を横断する踏切である。

早朝・深夜を除いて開いている改札口

「臨時」というには利用可能な時間帯の幅が広くなるのだが、早朝・深夜以外は開いている改札、という形態もある。需要が少ない時間帯には閉めてしまい、管理・運用の負担を軽減するという話になろうか。

 また、駅に隣接する店舗と直結している改札口は、当然ながら店舗の営業時間帯でなければ出番がない。よって、店舗の営業時間に合わせて稼働する。駅ビル併設の駅では、この手の改札口を設ける事例がよくあり、その一例が秋葉原駅のアトレ1改札。

 最近は、交通系ICの普及と合理化の観点から、こうした時間限定の改札は無人化されて、交通系IC専用になることが多くなった。

秋葉原駅の「アトレ1改札」。かつての「デパート口」である。ここはアトレ1の店舗内に直結しているので、当然ながら店舗が開いている時間帯しか利用できない

特定の人だけ出入りできる改札口

 最後に取り上げるのはけっこう有名な話であるし、一般の乗客が利用できないのでは何の利便性にもつながらない。そのため「こういうモノもある」という話に留める。

 もっとも有名なのは、鶴見線の海芝浦駅だろう。東芝京浜事業所の敷地内にあり、事実上、そこに勤務する社員のために存在する駅だ。だから、改札の外はただちに東芝の敷地であり、社員証がない人は外に出ないでUターンを余儀なくされる。ただし、ラチ内に隣接して設けられた「海芝公園」に入ることはできる。

海芝浦駅。駅舎の頭上に「TOSHIBA」のロゴが書かれている時点で異色。Suica簡易改札機が置かれているので、「出場→入場」の順にタッチすることになる
この駅、すっかり有名になったので、鶴見駅の鶴見線乗り場に入るところで、すでに注意喚起の看板が出ている
駅から外に出ることはできないが、隣接する「海芝公園」の利用は可能

 もう1つの有名事例が、京浜急行逗子線の神武寺駅。ここは米海軍の住宅施設に隣接しており、2008年10月1日に、その米軍池子住宅に通じる「米海軍口」ができた。ここは在日米軍に承認された人でなければ出入りができない。そんな場所だから、駅舎の駅名も横文字の標記しかない。

神武寺駅の駅舎を外から
改札を通って右に曲がると、上りホームに向かう構内踏切がある
上りホーム側の頭上に「米海軍専用改札口」との看板。この改札を出た向こうは米海軍の住宅施設だ。ちなみに、駅舎に書かれている「CFAY」とは、Commander, Fleet Activities Yokosukaの略

 変わったところでは、団体客が来たときだけ使用する臨時改札もある。団体利用なら、事前にきっぷを購入しているのは自明の理であるから、専用通路の柵を開けて通してしまう運用でも差し支えはない。

 この種の臨時口として有名なのは、身延線の富士宮駅。普段は使用していない1番線に隣接する形で設けられている。もっとも、現時点でこの駅に団体が押し寄せる場面はまずないのだが。