旅レポ

北欧フィンランドの冬を満喫する至福の5日間(その2)

ラップランドの山々で遊びまくり、食べまくり

クーサモの街の国際的スキーリゾートであるルカをベースにラップランドの大自然と食事を堪能してきました!

 フィンエアーが主催するラップランドでの「サウナプレスツアー」の第2回。第1回でお伝えしたように現地では朝に夜にサウナ三昧の日々でしたが、今回はラップランドの自然を満喫する雪遊びと現地ならではの食事をお伝えします。

 前回から引き続き、舞台はクーサモ(KUUSAMO)の街のスキーリゾートであるルカ(RUKA)とその周辺の自然豊かな山々です。ルカ周辺は海外からも多くの観光客が訪れるスキーリゾートだけあって、スキーはもちろん、スノーモービルによるスピード感あふれる自然体験や氷上のカート、ハスキー犬による犬ぞり体験「ハスキーサファリ」など、さまざまな冬のアクティビティが揃っています。また冬の湖でのマス釣りなども楽しむことができます。

 そのなかで今回のツアーでは、スノーシューハイキングや、フローティングスーツとライフジャケットを着用し体1つでプカプカ浮かびながら冬の川を楽しむ川下りを体験しました。

昼に、夜にラップランドの山々を味わい尽くす雪山ウォーキング

 見知らぬ土地を体で感じるには、やはり歩くのが一番だと思っています。それゆえ今回のスケジュールで夜のスノーシューハイキングと、昼のウォーキングトリップという2つの山歩きがあらかじめ予定されていたのは筆者にとって幸いでした。

 ただし初めての冬の北欧ラップランドで過ごすためにはどの程度の装備が必要なのかまったく見当がつかなかったので、とりあえず今回は北海道旅行、特に道央辺りにいくようなイメージで臨んでみました。結論から言うとその想定は大ハズレではなかったもののやはり大自然のなかで過ごすには少々不足していた部分もあり、今回はすべて現地でレンタルすることになりました。

 ルカのスキーリゾートにはそうした観光客に向けた冬の装備やレジャー用品を用意している施設も多く、実はそれほど多くの装備を日本から持ち込まなくても現地で不都合はないようです。最適な装備で臨めば冬の雪山はさほど寒くないし、体調を崩す心配もないので心置きなく大自然を満喫できます。荷物が多くなりがちなこの季節の旅にはこのようなレンタル施設は本当にありがたいですね。

ルカのスキーリゾートではウェアや靴はもちろん手袋やマフラー、帽子などの小物まで防寒具はなんでもレンタルでき非常に便利です。もちろんロッカーや更衣室も完備していて何の不自由もありません

 さて1つ目の山歩きは夜のスノーシューハイキングです。時間的には16時前後と夜というには少々早い時間なのですが、この季節のフィンランドの日没時刻は早く、感覚的にはすでに夜です。まずレンタルショップに用意されている完全防備のスノーウェアに着替えスノーシューも当然レンタル。かなり本格的な装備です。ちなみにスノーシューとは日本の“かんじき”のようなもので、雪上用の歩行具です。

 身支度が整ったら車で標高の高い山へ。山頂に着いたら即ハイキングスタートです。明かりといえば近隣のスキー場のナイター設備から漏れる明かりくらい。そんな夜の山をただひたすら歩きます。特に何か特別な仕掛などなく、比較的広い雪原をただひたすら歩くのです。最初は少々驚きましたが現地のガイドさんが説明するフィンランドの自然保護の取り組みなどを聞き、たまに出くわす野生動物(うさぎ?)の小さな足跡にほっこりしながら夜の雪山をスノーシューで歩く非日常的な散歩は、筆者にとって思いのほか楽しい時間でした。雲が厚く垂れ込め星が見えなかったのが少々心残りではありましたが、ゴールの少し手前でガイドさんが用意してくれた甘いホットドリンクを、暗いなかでツアーのメンバーと一緒に飲み干した時に感じた美味しさは格別でしたのでよしとしましょう。

車で山頂近くまで行ったら「ハイ! 早速みんなで歩きましょう」という感じで即スノーシューハイキングのスタートです
実際は写真よりはるかに暗いのですが、近隣スキージョーのナイター設備の明かりで風景は楽しめます
スノーシューを履いているので足が雪に埋もれることはありません
途中眼下にうっすらと街の明かりが見え、ここはまだそれほど山奥ではないことに気付きます
ツアーガイドさんが用意してくれたホットドリンクは疲れた体に至福の一杯
これが西洋かんじき「スノーシュー」です
ちょっとしたところに昼とは違う自然の造形を発見できるのも夜のハイキングの楽しさかもしれません

 もう1つの山歩きは日中に楽しみました。夜のスノーシューハイキングとは趣が異なり、湖や川を眺めたり、吊り橋を渡ったりと、こちらのハイキングの方が多くの人にとってイメージしやすいかもしれません。

 ハイキングの後半には現地のスタッフが温かいスープやパンを用意してくれていて、ツアーで知り合った仲間との大自然のなかでの食事は充実したものでした。ちなみにこの2つのプログラムは自然のなかを本当にただ歩くだけですから大自然を体いっぱいに感じたい人にはうってつけの反面、ほかのアクティビティと比べると少々地味ですので好みが分かれるかもしれません。スノーモービルや犬ぞりも体験してみたかった、とちょっぴり思ったのも正直なところです。

こちらはハイキングコースです
道が狭いので常に1列になって前へ進みます
川はちょっと怖いくらいの水量です
途中少し疲れたので横になって空を眺めましたが、この日は鉛色の空で残念
歩いていると現地のスタッフの方が我々の昼食を用意してくれているのが見えます
こういうローケーションでいただく温かいスープは本当に美味しく幸せな気分になります
現地では頻繁に見たこの木の器。薄くて軽くて硬くて気に入ったのですが今回は買い物する時間がなく探せませんでした。お土産にほしかったです
やはり自然が作る造形は美しいものです
ハイキングコースの雰囲気は終始このような感じでした

全身でフィンランドの自然を感じる川下り

 ひたすら歩いた後は川下りを体験しました。よくあるボートに乗って下る川下りではありません。フローティングスーツという完全防水のスーツとライフジャケットを身に着け、ヘルメットをかぶり、完全防備で自ら川にザブザブ入っていき、十分な水深のところまでたどり着いたら、あとはただプカプカ浮かんで川の流れに身を任せ下っていくという驚くほど単純かつ全身で冬の川を感じるアクティビティです。

 真冬の冷たい川に入るのですから準備は少々手間がかかりますが、仕事漬けの毎日から解放されるようなプカプカしてるだけの浮遊感と、全身で水の流れを感じる単純明快なこのアクティビティを筆者は気に入りました。

 前日に引き続き雲が立ち込めたグレーの空を恨めしく思いつつも、ダイエットが必要な重量級の筆者が地球の重力から解放される気持ちよさは最高。実は、出来ることなら浮かび続けて河口の街までこのまま旅したいとさえ思いました。

まずは十分な水深のところまで歩いていきます
あとは川の流れに身をまかせるだけです。装備が充実しているので寒くはありません
あとは下るだけです。これが実に気持ちいいのです
このような風景が広がります。青空が見えていたらさぞ綺麗だったでしょうね
何にもしない、ただ身を任せているだけなのに何だかやたらに楽しいのです
フクロウでしょうか。なにやら遊びほうけている我々をじっと見ていました

 余談ですがフィンランドはレーシングドライバーやラリードライバーを多数輩出している地で、世界的に成功した選手はフライング・フィンと呼ばれ尊敬されています。ラリードライバーなら世界最高峰のラリー選手権であるWRCで、共に4度ものチャンピオンを獲得しているユハ・カンクネンやトミ・マキネン、F1ならミカ・ハッキネンやキミ・ライコネンはまぎれもないフライング・フィンで、いずれも日本の自動車ファンにも馴染みのある名選手ばかりです。

 なかでもユハ・カンクネンはこのルカ周辺で氷上ドライビングレッスンを開催しているとのことで、現地の何人もの方からその名前を聞きました。ユハ・カンクネンがこの地で走っていることは地元の人にとって誇りなんですね。

 余談ついでにもう1つ。フィンランド人ラリードライバーにとってのホームグラウンドのラリー「ラリーフィンランド」は、かつて1000湖ラリー(1000 Lakes Rally)と呼ばれた北欧最大のモータースポーツですが、その名のとおり舞台は無数の湖(現地の人もその数は把握していないらしい)と森のなかで行なわれるラリーで、今回訪ねたクーサモの街から450kmほど南にあるユバスキラで行なわれます。

クーサモの街で世界的なラリードライバー ユハ・カンクネンが行なうドライビングレッスンのパンフレットを発見
まるで和牛のサシのように湖が点在するフィンランド。1000湖ラリーという名前も納得です

トナカイの可愛い姿に癒されながらホテルへ

トナカイの牧場に立ち寄りました

 1日遊んでホテルへ帰る道すがらトナカイの牧場に立ち寄りました。クリスマスイブにサンタクロースを乗せたソリを引き、空を飛ぶあのトナカイです。立派なツノにつぶらな瞳の顔立ちは、子供達の夢を運ぶのにふさわしい雰囲気を持ち、特にウサギのようにフニフニ口元を動かしながら餌を食べるさまはとても可愛いです。

牧場で見たトナカイはどことなく優しい目をしていて、口元をフニフニ動かしながら餌を食べるさまはまるでウサギのようで可愛いものです
ちなみにトナカイは道端でもよく見かけます

目一杯遊んだら、あとは食べるだけ! の至福の日々

 さて、旅の醍醐味と言えばやはり食事。せっかくだから、やはり日本ではあまり食べられていない地元ならではの食事も味わってみたいと思っていましたが、心配は無用でした。今回の旅では地元ならではの料理が多く、食事の度にしっかり異国情緒を感じていました。牧場でトナカイの可愛さに触れた話の後にナンですが、毎日のようにトナカイ食べてましたし……。

 そう、この辺で肉と言えば主にトナカイだそうです。野趣溢れるとでも言えばいいのでしょうか、豚や牛を使った日本で馴染みの肉料理とはちょっと違った味で、美味しく舌で異国情緒も楽しめます。またヘルシンキなど都市部では、比較的サーモンを食べる機会が多かったように記憶してますが、ここルカ周辺では白身の淡水魚(マスの1種?)や魚卵の料理もあり、その多くは地元の湖や川で獲れたものだそうです。

フィンランド滞在中の肉料理は圧倒的にトナカイが多く、今回の旅を振り返ってみると毎日食べていたような気がします
クーサモではコテージやレストランの内装など、いたるところでトナカイを目にすることが多く、地元の人にとってトナカイはとても身近な存在なのだと感じます

 クーサモ滞在の最終日には、陶芸家にしてシェフ、JARMOさんのレストラン「TUNDRA」で地元食材にこだわった素晴らしい料理をいただきました。シンプルかつモダンな北欧デザインにも通じるシェフの手による、素晴らしい器に盛られたこだわりの料理は、見た目、味ともに思い出深いもので洗練されているなかにもどこか素朴さも漂い、何より筆者が日常的に食べている魚や肉とは微妙に味付けが異なるところも新鮮、かつとても美味しく充実した時間を過ごせました。これぞ旅の醍醐味ですね。

森の中の小さなレストラン「TUNDRA」
こちらが陶芸家にしてここのシェフのJARMOさん
彩りも美しいTUNDRAの料理
陶芸のスタジオでもあるこのレストランは食器や調度品に統一感のある美しさを感じます
地元の新鮮な食材にこだわった料理がここTUNDRAの売りだそうです。味は素材の持ち味を活かしつつも、さまざまなハーブなどで香り付けをしたような結構複雑な味で、美味しいと同時に楽しい食事でした
見た目にも楽しいデザート

ラップランドとサンタクロース

 モミの木、雪、トナカイ、この時期に聞けば多くの人が思い浮かべるのはクリスマスでありサンタクロースではないでしょうか(トナカイには別の側面があることを今回の旅で実感した部分もありますが)。サンタクロースについてはその起源について時代、場所ともに諸説あるようですが筆者が子供の頃からイメージしていたクリスマスやサンタクロースの姿は、このラップランドの地のイメージそのものです。

 実際クーサモの街から170kmほど西へ行くとサンタクロースの公認ホームタウンがあり、世界中からサンタクロースに会いに来る人がいるそうです。今回のツアーでも、我々ツアー一行をサンタクロースが迎えてくれて、食事を共にしました。いや、我々が会ったのはサンタクロースに扮したコテージのおじいさんだったのですが、フィンランド人の恰幅のいいおじいさんが扮すると、筆者が子供の頃から絵本の中で見続けたサンタクロースそのものです。

 真っ白な雪とモミの森のなかにポツンと建ったログ造りのレストランで、ロウソクを灯しながらサンタクロースと一緒に、フィンランドの歌を教わりながら歌い、食事を共にする時間は童心に帰ったようなひと時でした。

 そんなひと時こそがラップランドが我々にくれた最高のクリスマスプレゼントだったのでしょう。

クーサモでの最後の夜、食事をいただいたコテージではサンタクロースが我々を迎えてくれました。それにしてもクーサモの街は、その風景や家の造り、どれをとってもわずかな装飾でクリスマスムードたっぷりの風景になります
食事をした1人1人にサンタクロースからカードが手渡されました。決して若くはない筆者ですが、こういう旅の思い出はなかなかうれしいものです。いや、かなりうれしかったデス

 クーサモの街で経験したサウナ、大自然の中での雪遊び、美味しい食事、どれもが素晴らしい大満足の日々でしたが、たった1つ心残りなことがあります。

 オーロラです。

 フィンランド政府観光局の公式ホームページ(http://www.visitfinland.com/ja/)によると、9月から翌年3月までの間なら、ラップランド北部では空の澄んだ日には必ずオーロラが輝き、南部でも10~20晩は見られるとのことですが、今回は滞在期間中は常に厚い雲に覆われていて見ることができませんでした。

 ツアーでお邪魔した我々1人1人にクリスマスカードを手渡してくれたサンタクロースが「また、おいでよ」って言ってくれているような気がします。筆者自身も今度は家族と一緒に訪れたいと思った場所、それがラップランドでした。

 それでは皆様、Merry Christmas!

高橋 学

1966年 北海道生まれ。仕事柄、国内外へ出かける機会が多く、滞在先では空いた時間に街を散歩するのが楽しみ。国内の温泉地から東南アジアの山岳地帯やジャングルまで様々なフィールドで目にした感動をお届けしたいと思っています。