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新デザインの客室を導入したフィンエアーのA350-900機内をチェック
トゥールーズからヘルシンキへのフェリーフライトを搭乗取材
(2015/10/10 00:00)
- 2015年10月7日(現地時間) 受領
フィンエアーはフランス時間の10月7日、フランス・トゥールーズにあるエアバス工場のデリバリーセンターで、同社初の「エアバス A350-900」型機を受領した。その式典の模様は別記事でお伝えしたとおり。本稿では、フィンエアーが導入したA350-900型機の機内を紹介する。
「A350 XWB」シリーズは、「eXtra Wide Body」の名が示すとおり広い客室が特徴の1つ。エアバスの紹介では、「18インチ幅のシートを使い、3-3-3の9アブレストを実現できる」としており、詳しくは後述するが、フィンエアーもエコノミークラスは3-3-3の9アブレストのシートレイアウトを採用している。
客室はビジネスクラスが46席、プレミアムエコノミークラスとなる「エコノミーコンフォート」が43席、エコノミークラスが208席の計297席仕様。フィンエアーのこれまでの保有機材は、4基のエンジンを搭載するA340-300型機が266席、263席、257席の3種類、同ボディで双発(2個のエンジン)のA330-300型機が289席、263席の2種類となる。同社にとってA350-900はシート数の点でも保有機材のなかで最大となる。
同社では「unique Nordic experience」という名称で、快適な客室を乗客に提供するとアピールする。客室デザインは、フィンエアーのラウンジのデザインなども手がけたdSignのVertti Kivi氏が担当し、白と青、グレーで構成された落ち着いた色合いとした。また、A350-900に搭載されているフルカラー(1677万色)のLEDを用い、24シナリオのライティングパターンによる客室照明を行なう。
このほか、A350-900では2~3分単位で客室内の空気の入れ換えが行なわれており、室内温度、室内気圧の調整などを行なった場合も、短時間でその設定が客室内に反映されることも特徴として挙げられている。
フェリーフライトに搭乗して飛行中の機内も体験
今回、セレモニー後に行なわれた駐機中の機内見学に加え、デリバリー式典が行なわれたフランス・トゥールーズにあるエアバスのデリバリーセンターから、フィンエアーの拠点であるフィンランド・ヘルシンキ空港までのフェリーフライトを搭乗取材し、実際に飛行中の機内も体験することもできた。これらの内容を合わせて紹介していく。
飛行中の機内に対して印象に残ったのは大きく2つ。1つはとにかく静かなことだ。成田~ヘルシンキ間でエンジン4発のエアバス A340-300型機に搭乗した記憶が新しかったことも印象には影響しているとは思うが、音楽を聴く時や、同行したカメラマンと会話する時など、バックグラウンドのノイズの少なさの違いは顕著に感じられる。
もう1つは室内の広さと湿度だ。客室の広さについてはエアバスもアピールしている通りだが、頭上が広く、左右の壁も曲線がゆるやかで圧迫感が少ない。湿度については、3時間程度のフライトでも、喉の乾燥が抑えられていることがはっきりと分かる。
このあたりはボーイングの最新鋭機であるボーイング 787型機でも似た傾向があり、現世代の新造旅客機のトレンドとなっている。いつか両機を乗り継いで細かな違いを体感してみたいところだが、明確に感じられたのはA350の客室内の圧迫感の少なさで、この点にはA350に明らかなアドバンテージがあると思う。
ビジネスクラスシート
ここからはクラス別にシートを紹介していく。まずはビジネスクラスだ。ビジネスクラスは1-2-1の4アブレストで、全席通路側の座席レイアウトを採用。座席数は46席。
従来のA330-300やA340-300のビジネスクラスシートは、ライ・フラットと呼ばれる傾斜のあるフラットシートが採用されていたが、A350-900型機には水平のフル・フラットシートを導入した。
「マリメッコ」ブランドのアメニティポーチやスリッパは同様だが、ノイズキャンセリング機能付きヘッドフォンはボーズ製を用意。電源は110V/60HzのユニバーサルコンセントとUSBポートを1個ずつ装備。シートモニターは16インチで、壁と一体になるように折りたたんで収納することができる。機内エンターテイメントシステムの内容については後述する。
このほか、ビジネスクラスには女性用のトイレも設置される予定という。
エコノミーコンフォート(プレミアムエコノミー)
プレミアムエコノミークラスに相当する「エコノミーコンフォート」は、3-3-3の9アブレストで、43席を用意。座席そのものはエコノミークラスと同等だが、シートピッチは35~36インチ(約89~92cm)ほどで、エコノミークラスの31~32インチ(約78~81cm)に対して4インチほど広い。プレミアムエコノミーとエコノミーでシートそのものが異なる航空会社も多いが、同じシートで足元を広くアレンジしているのが特徴だ。
フェリーフライトへの搭乗取材では、この席が割り当てられたが、機内誌や安全のしおりなどが上部のポケットに入っていることもあって足元が余計に広く感じる。シートの横幅も18インチと余裕があり、エコノミークラスの上位クラスとしては十分に快適に過ごせるシートだ。
このほか、エコノミークラスとの違いとしては、マリメットデザインのアメニティグッズが提供される点と、ノイズキャンセリング機能付きヘッドフォンが用意される点が挙げられる。
シートモニターは11インチで、これはエコノミークラスも同様。機内エンターテイメントシステムとの連携やデバイスの充電が可能なUSBポートも備える。ただし、ACコンセントはエコノミーコンフォート、エコノミーともに装備していない。特にエコノミーコンフォートはノートPCを快適に使えるだけの空間があるだけに、AC電源を利用できないのは惜しい点だ。
エコノミークラス
エコノミークラスは、3-3-3の9アブレスト。シートピッチは31~32インチで、208席を提供する。
前述のとおり、エコノミーコンフォートとのシートの違いはなく、機内誌などのシートポケットが上部にあり、シートそのものも薄型なので、スペックの数字から抱く印象よりは足元が広く感じられた。
エコノミーコンフォート同様に11インチのシートモニターとUSBポートを備えるが、ACコンセントは備えない。ノートPCの利用はちょっとキツめで、利用しようとする場合は、前席の人がリクライニングしなければ、という条件が付きそうだ。
そのほかの設備
そのほか、ハードウェア面での機内設備を写真中心で紹介する。
フィンエアーの客室で特徴となるフルカラーLEDによるライティングシナリオは、フェリーフライト中にいくつかのパターンが実演され、色とりどりの照明で室内を包み込んだ。照明はビジネスクラス、エコノミークラスそれぞれに設定可能で、ライティングのシナリオは「巡航中」「食事中」といったサービス中の照明パターンや、「サンセット」「北欧風」といったイメージのパターンが用意されていた。
機内エンターテイメントシステム
機内エンターテイメントシステムもA350-900型機で新たなシステムを導入した。大きな特徴は、出発から到着までのタイムラインを表示する点。今回のフェリーフライトでは詳細が表示されていなかったが、機内食を提供するタイミングや、ショッピングのための時間、就寝したい人のために機内照明を暗くするタイミングなどを、フライトごとに表示する。乗客が機内で過ごす時間の計画を立てやすくするためのものだ。
このほか、映像コンテンツにBBCやディスカバリーチャンネルなど新たなプログラムを加えたほか、ルートマップも好みの表示方法を選択できるものを導入。さらに機外の下部と後方にそれぞれ搭載するカメラの映像を好きなタイミングで表示させることもできる。
機内Wi-Fiインターネットシステム
フィンエアーとしては初めて機内Wi-Fiインターネットサービスも提供する。システムはパナソニック・アビオニクス製。料金プランは、1時間利用で5ユーロと、フライト時間内に無制限に利用できる15ユーロという2種類のプランを用意。ただし、ビジネスクラスの乗客と、フィンエアーのマイレージプログラム「FINNAIR PLUS」のゴールドとプラチナムメンバー、ワンワールドのサファイアとエメラルドメンバーには無料で提供される。
もちろん自分のノートPCやスマートフォンからアクセス可能で、機内モードに設定したうえでWi-Fi機能のみを有効にして使用する。初期設定は、アクセスポイントに接続→ポータルサイトにアクセス→プランを選択→ユーザーアカウントを作成してログイン、というのがおおまかな流れとなる。継続的にフィンエアーを使う人でない場合は、ユーザーアカウントの作成が少し手間に感じるかも知れない。ビジネスクラス利用者などにはバウチャーコードが渡されるので、こちらを入力することで無料アクセスが可能になる。
ただ、インターネットアクセスそのものについては、今回のフェリーフライトでは十分な体験ができなかった。200名近い乗客の多くがインターネットアクセスを体験することも仕事のうちという記者のような人達なうえ、全員に無料のバウチャーコードが渡されて一斉にアクセスをするような環境では致し方なく、この点はご了承いただきたい。
フェリーフライトでトゥールーズからヘルシンキへ
さて、前半で紹介したとおり、今回の取材ではフィンエアーがエアバスのトゥールーズ工場で受領したA350-900型機をヘルシンキへ回航するフェリーフライトに搭乗した。
トゥールーズを現地時間の14時01分に離陸した直後には、バンクを振って地上のエアバスメンバーに挨拶。「バンクを振る」とは、パイロットが機外の人に対してなんらかの意思を表示したいときに、機体を何回か左右に傾けることを言う。乗客が乗った旅客機ではなかなか見られるものではなく、デモンストレーションフライトなどで見られる程度のもの。記者もバンクを振った旅客機の機内にいたのは初めてで、正直言って、あまり気持ちのよいものではなかったのだが、それを知ることができたことも含めて貴重な体験だった。
フライト時間は3時間7分で、ヘルシンキ空港の現地時間18時8分に着陸。到着ゲートでは消防車が待機しており、ウォーターキャノンによる出迎えがあったほか、多くの地上職員が集まっており、関係者によるA350-900型機への期待と歓迎のムードをひしひしと感じることができた。
さて、最後にヘルシンキ空港からヘルシンキ市内へのアクセスについて紹介しておきたい。ヘルシンキ空港と市内を結ぶ鉄道は現在建設中で2015年内に開設する予定とされているが、現時点で空港から市内へはバスを利用することになる。フィンエアーによるアクセスバスも運航されており、搭乗した航空会社に関わらず6.3ユーロで利用できる。
空港~市内間は渋滞の度合いにもよるが30分から1時間程度。スーツケースはバス下部のトランクへ預けられるほか、バスのなかでは無料のWi-Fiインターネットサービスも提供されている。市内は中央駅脇のほかに、主要ホテルが集まる地域にバス停があるので活用するとよいだろう。