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フィンエアー、A350 XWBの就航路線拡大や機内食新メニューなど複数の施策を発表
キャパシティ増を控え、新シグネチャメニュー、短期滞在プログラムなどを提供
(2016/4/8 13:59)
- 2016年4月5日(現地時間)実施
フィンエアーは4月5日(現地時間)、エアラインにおける2016年以降の新しい取り組みについて発表した。各国のプレスやジャーナリストらをヘルシンキのフィンエアー本社に招いて行なわれたもので、すでに世界4路線で就航しているエアバスの最新鋭機「A350 XWB」の採用路線拡大、一流シェフが手がける新しいシグネチャメニューの提供、行政機関の協力のもと実施する短期滞在プログラム「StopOver Finland」の開始などを明らかにした。
エアバス A350 XWBシリーズは2023年までに19機へ
発表が行なわれたプレスミーティングでは、初めにフィンエアーの成長戦略として、新規路線開拓、(既存のA340型機と比較して)乗車定員が増えるA350 XWBの就航路線拡大によるキャパシティの増加、カスタマーエクスペリエンスへの投資という、大きく3つのポイントを挙げた。
同社のネットワークは、主にアジアとヨーロッパをつなぐ動脈としての役割を果たしている。現在のところ日本を含むアジアの17都市、欧州の70以上の都市、北米の3都市をカバーしており、各都市間からの直行便をもつだけでなく、同社の拠点となるフィンランドの首都ヘルシンキを軸にした欧州各国への乗り換え路線も充実している。2015年の搭乗者実績は1000万人を超え、中国をはじめ新たな路線を開拓することにより、さらなる規模拡大を図る。
2015年10月に納入され、同社が欧州キャリアとして初めて運航を開始したエアバスの最新鋭機A350 XWBは、2016年4月現在、バンコク、北京、香港、シンガポールのそれぞれからヘルシンキ間の往復4路線に、計4機を就航させている。同社によれば今後2016年末までにこれを7機に増やし、さらに老朽化した現在のA340型機を退役させつつ、2023年までにA350 XWBを19機へ増やす計画。比較的新しいA330型機と、最新のA350 XWBという2本柱での運航を目指す。
A350 XWBでは静粛性の向上や座席スペースの拡大、機内エンタテイメント用モニターの大型化などが図られ、ビジネスクラス向けにはWi-Fiによるインターネット接続サービスが無料提供されるなど(エコノミークラスでの利用は有料)、さらなる利便性の向上も実現している。なお、A350 XWBの日本への就航は2017年を計画している。
また、機材以外でもカスタマーエクスペリエンスの向上を狙った大きな投資を進めることを明らかにした。これについては具体的な施策がいくつか同時並行で進んでおり、同社はその1つとして、フィンエアーの一部の機体やアメニティに採用されている、フィンランドのアパレルブランド「マリメッコ」のデザインを今後も積極的に採用することを挙げた。
フィンエアーのイメージに近いライトなカラーを体現し、フィンランドの豊かな自然も表しているとして、2013年からスタートしたフィンエアーとマリメッコの協業の成果は、機内で提供されるブランケットやピロー、ナプキン、食器類などさまざまな小物アイテムのデザインにも見ることができる。
そのほかには、主にビジネスクラスにおける機内食の新メニュー、各種アクティビティを体験できる短期滞在プログラムといったものがある。それぞれの詳細は以下のとおり。
一流シェフの手による新たな機内食が登場。オーガニックアイスクリームも
機内食については、ビジネスクラスにおいてフィンランドや世界の一流シェフが手がけるシグネチャメニューが登場する。その1人であるサス・ラウコネン氏は、ヘルシンキでレストランを営むシェフ兼ソムリエであり、地元で獲れた魚介類やオーガニック野菜などを活かした、北欧を存分に感じさせる創作料理を担当する。
例えば春メニューは魚卵、フェネル、リンゴ、エンドウ豆を使ったサラダ、スモークサーモンを添えたキュウリの冷製スープ、川魚のテリーヌ、レモン風味を加えたマッシュドポテトなど。ヘルシンキ発の長距離国際便で4月6日より提供される。
同じく4月6日より、北京および上海からの長距離国際便ビジネスクラスにおいて、“西洋と東洋の融合”を図った中華風創作料理をスティーブン・リウ氏が担当する。インドやほかのヨーロッパ諸国でキャリアを重ねてきた同氏が生み出した料理は、まさに“異文化の交流”というべきもので、フィンランドならではの塩漬けサーモンにキャラメルソースを添えたものや、中華風に味付けされたロブスターにインドを思わせるスパイシーな風味のあるマンゴーベースのサルサソースをあえたもの、牛のショートリブと上海風ライスのニンジンムース添えなどを堪能できる。
さらに、ジャーコ・ソルサ氏によるフィンランド伝統料理の機内食も、すでに2月から香港発の長距離国際便で味わえるようになっている。フィンランドやノルウェーをはじめとする北欧諸国に加え、香港にも店を構える同シェフの料理は素朴な味わいが人気とのこと。機内食では、燻製や塩漬けなど同国の昔ながらの調理手法を施した素材はもちろんのこと、生鮮素材を用いた品々も用意。ヘーゼルナッツオイルとキノコのスープ、西洋ワサビのソースを添えた塩漬け野菜、あるいはトマトやキュウリなどの新鮮な野菜にスモークサーモンを加えたサラダ、マッシュルームソースとともにいただくサーモンフィレといった、主にサーモンをメインにしたメニューが提供されている。
こだわりのオーガニック素材で丁寧に作られた、フィンランド生まれのホームメイドアイスクリーム「JYMY(ユム)」も、4月6日からフィンランド発の長距離国際便において、従来のハーゲンダッツから切り替わる形で提供が開始される(ヘルシンキ空港のフィンエアーのラウンジでも提供されているのを確認できた)。JYMYは地元のベンチャー企業や農場などが共同で設立した「Suominen's Milk(スオミネンズ・ミルク)」というメーカーの商品で、北欧市場において特に優れたイノベーションや製品を表彰する「Natural & Organic Awards Scandinavia 2015」において、「BEST NEW ORGANIC FOOD PRODUCT」および「BEST NEW ORGANIC BRAND」の2部門を受賞した実績を持つ。
市場で販売されているフレーバーは、バニラ、ストロベリー、コケモモ、ブルーベリー、カフェラテ、チョコレート、レモンに加え、北欧の伝統菓子サルミアッキの素材としても用いられるリコリスの根を使ったものの計8種類。ただし、エアラインで提供されるものはビジネスクラスがバニラとリコリス、エコノミークラスがバニラのみとなる。
乗り継ぎの合間に組み入れられるフィンランドのアクティビティプログラム
短期滞在プログラム「StopOver Finland」は、同国の労働・経済産業省の支援のもと、フィンエアーがトランジットなどで訪れた旅行客にフィンランドの魅力を体験できる各種アクティビティを割安で提供するもの。公式Webサイトを4月10日以降に正式オープンし、5月にはアクティビティプログラムをさらに充実させた形でサービスの本格提供を開始する。
StopOver Finlandのサービスを利用するには、公式Webサイトか各国の旅行代理店を通じてヘルシンキ空港経由の乗り継ぎ便、またはヘルシンキへの直行便とともに予約を行なう。ヘルシンキ周辺から北部のラップランドまで、フィンランドの全域で体験可能な都市観光、サウナやマッサージなどのリラクゼーション、湖でのフィッシングやボート、森林のトレッキング、オーロラ鑑賞など、50種類以上のアクティビティプログラムから選ぶことが可能だ。
例えば日本からヘルシンキで乗り継いでほかの国を訪れる場合、ヘルシンキでの乗り継ぎの際の数時間、あるいは滞在時間を数日間延ばして、フィンランドの観光スポットを巡ることができる。随行する添乗員をフィンエアーが用意することはなく、自分でバスや鉄道、あるいはレンタカーなどを使って目的地まで移動する必要があるため、ハードルの高い部分もあるかもしれないが、1つのアクティビティプログラムの利用であれば手数料はかからないとしており、手軽に旅程に組み入れることができる点でもメリットがあるだろう。
これ以外に、5月24日に「Match Made in HEL THE RUNWAY」というファッションショーが開催予定。フィンエアーとヘルシンキ空港が共同で、ヘルシンキ空港の滑走路の1本を使って行なうもので、欧州とアジアの7人のデザイナーによる作品が集い、モデルらが滑走路上を実際にウォーキングする。
こうしたさまざまな取り組みにより、フィンエアーはA350 XWBの就航で増えることになるキャパシティにキャッチアップしうる集客を図る構え。ビジネスクラスを対象にした施策が多いものの、機内食の一部やマリメッコデザインのアメニティなどはエコノミークラスでも提供される(シグネチャメニューは有料)ことから、フィンエアーで旅行する楽しみがますます増えるだろう。