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ムーミンも祝福に訪れたフィンエアーの福岡~ヘルシンキ線就航会見

2016年春より週3便で運航、ゴールデンウィーク前後に初便を予定

2015年10月23日 実施

2016年春 就航

 フィンエアーは10月23日、10月7日(フィンランド現地時間)に発表した福岡~ヘルシンキ路線の開設にあたり、福岡市内で記者会見を行なった。2016年春の夏スケジュールに週3便で運航する予定。

 会見には地元からも県知事、市長らが参加し、祝辞を述べたほか、フォトセッションにはフィンランド生まれのキャラクターである「ムーミン」も祝福に訪れた。

福岡県知事 小川洋氏

 冒頭で祝辞を述べた福岡県知事の小川洋氏は、「今回の新路線の就航決定は西日本の拠点空港である福岡空港の利便性と、発展の可能性を評価していただいたものと考えている。ヘルシンキ・ヴァンター空港は、アジアからヨーロッパへの玄関口であると同時に、ヨーロッパ各地とを結ぶ重要なハブ空港。両空港が直接結ばれることで、福岡空港の重要性がますます高まっていくとともに、さらなる発展、飛躍に向けた貴重な機会を得たとうれしく思っている」と路線開設を歓迎。

 同路線開設に対し、県としては福岡、九州からのアウトバウンドを増やすために日本旅行業協会(JATA)や福岡商工会議所ら関係機関と連携して、観光、ビジネスの両面で需要喚起を図っていく姿勢を示した。また、2014年にヨーロッパからの訪日客が100万人を超えたことを踏まえて、インバウンドについても意欲を見せ、日本政府観光局(JNTO)の協力を得つつ、同路線を活用した九州プロモーションをヨーロッパで展開する。

 その第1弾として「私も今月末からロンドンへ行き、福岡、九州の魅力を精一杯アピールしてこようと思っている。今回開設される新路線が大勢の皆様に利用され、福岡、九州、フィンランド、ヨーロッパとの双方向の往来がますます盛んになり、繋がりが深まっていくことを心より祈念する」と挨拶を締めた。

福岡市長 高島宗一郎氏

 続いて挨拶にたった福岡市長の高島宗一郎氏は、「ヨーロッパのゲートウェイであるフィンランド、アジアのゲートウェイである福岡。この2つを結ぶ初めての路線の就航を心から歓迎したい。今年度の初めから福岡市としては、フィンエアーと協議と始めて、調整を行なってきたので喜びもひとしお」と話を切り出し、福岡市とフィンランドの取り組みについて紹介した。

 高島氏は福岡市とフィンランドの「スタートアップ」という共通点があるとし、「北欧はいまスタートアップで盛り上がっているが、その中心はフィンランド。そして日本のスタートアップムーブメントの中心地である福岡が手を組むのは意義が大きいこと」とした。

 さらに、フィンランドと湾を挟んで隣国となるエストニアについても注目しており、フィンエアーとの交渉が進むなかで就航に手応えがあったことから、すでに福岡市の飲食店を中心とした経済訪問団を派遣し、マッチング事業を行なったという。

 加えて、「福岡市は新たな国家戦略特区として、外国人創業人材等の受け入れ促進『スタートアップビザ』が10月に認定されたばかり。海外から福岡、日本への創業を促進するタイミングで路線ができたのも非常に大きな意味がある。ぜひ北欧、ヨーロッパの皆さんの福岡での創業に弾みがつけばと思っている」と、主に経済面における就航効果に期待した。

福岡商工会議所 会頭 礒山誠二氏

 福岡商工会議所 会頭で福岡空港利活用推進協議会の会長も務める礒山誠二氏も歓迎の挨拶を行なった。「ヘルシンキは石畳に包まれた素晴らしい街並みで、マーケットプレイスを散策すると北欧のいろいろなものを食べられる。フィンランド正教会の素晴らしい教会もたくさんあるし、バルト海の静かな海をまわるクルーズも素晴らしい。そういったフィンランドを楽しんでいただくとともに、それをベースに北欧ならびにヨーロッパとの交流が繋がることが重要」と自身のフィンランド訪問の思い出を交えて紹介。

 さらに同氏は、九州全体の商工会議所連合会の会長も務めていることから、「九州は鹿児島まで新幹線が繋がっている。オール九州でインバウンドの方を歓迎したい」とヨーロッパ、北欧からの訪日客増加にも期待を示している。

 このほか、広島からも1時間で福岡空港へアクセスできることなどを紹介し、九州以外のマーケットや、福岡アイランドシティからの物流、貨物などでのフィンエアー活用も促した。

 最後に「フィンランドというとオーロラが見たいですよね。今回は夏のダイヤ限定なので、ぜひ冬のダイヤを使いたい。年中直行便があること、そして海外の空港で出発のボードに到着地として『Fukuoka』の文字があることが大切だと思う。今回は直行便で、ヘルシンキの空港に『Fukuoka』の名前が出ることを心から喜んでいる」と改めて就航に喜びを表わした。

日本政府観光局 海外プロモーション部長 亀山秀一氏

 訪日プロモーションを担当する日本政府観光局(JNTO)海外プロモーション部長 亀山秀一氏は、「一昨日(10月21日)に発表した2015年1月から9月までの訪日外国人数が昨年度比49%増の1449万人に達し、すでに過去最高だった昨年(2014年度)の(年計である)1341万人を超え、このペースでいくと年内に1900万人の大台に届く勢いである」とインバウンドがますます順調に伸びていることを紹介。

 このインバウンド増加については、アジアからの訪日客数の伸びが大きいものの、一方でヨーロッパからの訪日客数も増加傾向にあり、「フィンランドからの訪日では同国の人口の少なさもあり1万6000人となっているが、フィンエアーが市場としているヨーロッパ全体で見ると、昨年度比20%増の90万人と増加を示している」と説明した。

 一方、欧州からの訪日客は東京や大阪が中心で、九州などを訪れる人は多くないことから、JNTOとしてはフィンエアーや九州と連携して、ヨーロッパにおける九州のプロモーションを強化していく意向を示している。同氏は「九州が誇る温泉や自然はヨーロッパの人にも魅力ある観光資源だと映っているので、これからのプロモーションによる九州観光促進に期待できると思っている。航空路線の維持発展のために、JNTOはインバウンド促進に頑張るので、福岡、九州の皆様もフィンエアーをどんどん使っていただくことが大事だと思う。JNTOとしては、皆様とともに福岡~ヘルシンキ線を盛り上げていくよう頑張っていくことを約束する」と決意を表明した。

 会見ではフィンエアー バイス・プレジデント、グローバルセールスのPetri Vuori(ペトリ・ヴオリ)氏が、フィンエアーの概要を説明。続けて、フィンエアー 日本支社営業総支配人の永原範昭氏が福岡路線の取り組みについて紹介した。

フィンエアー バイス・プレジデント、グローバルセールス Petri Vuori(ペトリ・ヴオリ)氏
フィンエアー 日本支社営業総支配人 永原範昭氏

 ヴオリ氏は、フィンエアーの特徴として「6年連続でワールドエアラインアワードの北欧ベストエアラインに選出されるなど品質と信頼にこだわっている」「厳しい北欧の気象条件にも関わらず、定刻到着率がヨーロッパでもっとも高い」「乗り継ぎの信頼性が99%」といった点をアピール。

 2000年ごろからはヨーロッパとアジアを一番の近道で結ぶという戦略を確立。北東アジアからヨーロッパに飛ぶと必ずヘルシンキの上を通過する地理的優位性を活かすもの。いわゆるメルカトル図法などの平面的地図では遠く感じる北欧も、地球儀や正距方位図法で日本からパリやフランクフルトへ線を引くと、ヘルシンキがその線上にある。永原氏は「ヨーロッパ各地へ旅行いただくのに、無駄のない行程でご利用いただける。直行便がない都市であれば、間違いなくヘルシンキ経由が最短最速」と紹介した。

 また、ヴオリ氏によれば、この地理のおかげでアジアのほとんどの都市とヘルシンキを24時間以内に往復でき、1機の飛行機でまわすことできることからコスト効率を高められる点も優位性として挙げている。

フィンエアーの品質と信頼へのこだわり
ヨーロッパとアジアの一番の近道で結ぶ、フィンエアーのアジア戦略
アジアからヨーロッパへの距離が近いヘルシンキ
日本には福岡で4都市目の就航。ヨーロッパでは60都市以上に就航し、ヘルシンキ経由で乗り継げる
世界で初めて、ソ連上空を避けて北極圏を通過する東京~ヨーロッパ線のノンストップ直行便を1983年に就航

 そして、この戦略のゴールとして、2020年までにトラフィックを現在の2倍にするという目標を打ち立て、福岡~ヘルシンキ線の就航を、その目標達成に向けた第1歩と位置付けている。

 福岡空港は同社が検討するアジアの就航地として社内のリストに長年載り続けていたそうで、2013年にJAL(日本航空)、ブリティッシュ・エアウェイズと日本~欧州路線における共同事業に参画したことで日本市場の可能性が高まり、福岡に注目。就航が決まったという。

 福岡~ヘルシンキ線の運航ダイヤは下記のとおり。機材は263席(ビジネス45席、エコノミー218席)仕様のエアバス A330-300型機を利用する。日本人クルーも乗務する。

AY76便:福岡(09時30分)発~ヘルシンキ(13時55分)着、水・金・日運航
AY75便:ヘルシンキ(16時30分)発~福岡(08時00分/翌日)着、火・木・土運航

 福岡発着の就航日については、現時点では2016年5月8日(ヘルシンキ発は5月7日)を予定しているが、永原氏は「5月8日はゴールデンウィーク最後の日なので、ゴールデンウィークに旅行へ行きたい人に応えるためにも、できればゴールデンウィークの頭から飛ばしたいと思っており、最終の調整を本社と行なっている」とし、正式な就航日は追って発表すると告知した。

 福岡路線の戦略については、九州や中国地方の各機関、JNTO、JATAとの連携でのプロモーションを中心に据える。スタート時点ではレジャー、観光での利用がほとんど占めると予想しており、永原氏は「ビジネス用途は5%もあればよいと思っている」としているが、福岡県南部付近の自動車産業や長崎の造船業ほかフィンランドと取引のある企業もいることから、いろいろな可能性を探っていきたいとした。

 福岡空港からの乗り継ぎなどについては、スケジュールが朝早く繋がりにくいとはしつつも、JALなどとの連携を検討。具体化は今後の課題となるが、インバウンドに対して福岡を起点とした次のデスティネーション(目的地)、例えば沖縄とのプロモーションを行なうなど、こちらも今後、可能性を探っていきたいとした。

フィンエアーによる福岡~ヘルシンキ線の概要
福岡からヘルシンキを経由した主な都市への乗り継ぎ例
福岡路線における戦略
福岡路線に使用するエアバス A330-300型機のビジネスクラスサービス
福岡路線に使用するエアバス A330-300型機のエコノミーコンフォートサービス
福岡路線に使用するエアバス A330-300型機のエコノミークラスサービス

 このほかヴオリ氏、永原氏ともに、ヘルシンキ・ヴァンター空港の利便性についても会見で強調した。ヴオリ氏はヴァンター空港を「パートナーとして鍵を握っている空港。乗り継ぎ時間(※)が35分からと例外的に短く、乗り継ぎを主眼にして作られた空港と考えてもよい」と紹介(※最低乗り継ぎ時間=MCT:Minimum Connecting Time)。

 日本語対応についても充実しており、空港内掲示板の日本語表示のほか、日本語を話せるスタッフが4名いることから問い合わせや手伝いも日本語で対応できるとした。

 また、日本のICパスポートを所持している人は、自動入出国ゲートを利用できる。従来はシェンゲン圏(ヨーロッパで出入国審査を撤廃した協定参加国)からヘルシンキ空港で乗り継いで日本へ出発する際にのみ利用できたが、2015年1月15日から日本からヘルシンキ空港を経由して、シェンゲン圏へ入国する際にも通過できるようになった。

 質疑応答では、福岡とヨーロッパを結ぶ便のニュースとして、KLMオランダ航空が福岡~アムステルダム線を2016年1月5日から運休することが10月に発表されたばかりであることも指摘されたが、「競合が厳しいデスティネーションに対しては利便性を考えた商品提供をし、また、ほかの航空会社では行きにくいバルト三国や東欧地区など、ヘルシンキから近いところをプロモーションしていきたい。需要を喚起できると考えており、我々には能力があってチャンスもあると考えて福岡線就航を決めた」と同路線に自信を見せた。

フィンエアーが拠点とするヘルシンキ・ヴァンター空港
ヘルシンキ空港の概要
ヘルシンキ空港における乗り継ぎ時間
ターミナルマップ。到着ゲートから出発ゲートまで最長約400mの直線的な動線
ヘルシンキ空港にあるフィンエアーのラウンジ。サウナもある
ヘルシンキ空港での日本人向けサービス

(編集部:多和田新也)