旅レポ

MotoGPを開催したタイ・ブリーラムの宿泊施設と観光スポット

2019年に向けて押さえておきたいサーキット周辺環境

ブリーラムの宿泊施設と観光スポットを簡単に紹介する

 10月7日にタイで初めて開催された、二輪ロードレースの最高峰MotoGP世界選手権「PTT Thailand Grand Prix」(MotoGP タイグランプリ)。決勝レースの1日だけで10万人の観客動員数を記録し、タイで最もエキサイティングなイベントの1つとなった。筆者はタイ国政府観光庁が主催したプレスツアーに参加し、前回はレースをレポートしたが、首都バンコクからはサーキット近くのブリーラム空港まで飛行機で移動でき、アクセスも容易だ。

 あとは、そのイベント中に利用する宿泊施設や、レースの前後で楽しめる観光スポットなど、周辺の環境が気になるところ。少なくとも2019年と2020年はブリーラムのチャーン・インターナショナルサーキットでMotoGPが開催されることが決まっている。2019年以降、タイにMotoGP観戦に訪れるならぜひチェックしておきたい宿泊・観光スポットをここで紹介しよう。

サーキット周辺の宿泊事情は?

 正直に言うと、ブリーラムには十分な数の宿泊施設はまだない。サーキットがある市内はもともと3万人弱の人口しかおらず、そこに1日で10万人を超える観客が訪れれば、必然的に宿泊場所が不足してしまう。この状況はタイに限らず、日本のMotoGPなどのレースイベントでも同様だ。

 ブリーラムでは今回のMotoGP開催に合わせて新しいホテルが建設されていたりもする。今後も宿泊に関わる改善は地域全体で進めていくようだが、2019年にMotoGP観戦を計画しているなら、できるだけ早めにツアーやホテルの手配をすませておきたい。

 ちなみに、サーキット周辺に用意されるキャンプサイトもある。実際に目にした限りでは少なくとも3か所、かなり規模の大きいキャンプサイトが存在し、1~2人用と見られるテントが無数に並んでいた。わざわざテントを持っていかなくても、設置済みのテントを借りて宿泊できるようだ。

 2019年以降も同様のキャンプサイトとテントが用意されるかは不明だが、ホテルを確保できない場合の最終手段として使えるかもしれない。サーキットまで徒歩圏内なので、移動に時間がかからないのもメリットだ。

サーキット至近に用意されていたキャンプサイトの1つ
同じテントが数多く並んでいる
別の場所にあるキャンプサイト。とにかくテントの数が多い
迷彩柄のテントも

 なお、今回のプレスツアーで利用したホテルは、サーキットから南へクルマで約30分のところにある「Hotel de l'amour Buriram」。屋外プールがあってリゾート気分を味わえる、優雅なひとときを過ごせる四つ星ホテルとなっている。宿泊料金は平常時1泊1万円前後。隣には大型スーパーの「TESCO」があり、食品や日用品、お土産を手に入れやすい。ちなみにすぐ横にホンダの二輪販売店もあり、ここでもMotoGP開催を意識したPOPが飾られていた。

Hotel de l'amour Buriramの入口。幹線道路に面したところにあるが静かだ
エントランス
敷地内には大きな池
ホテルの室内
浴槽はないが、シャワーは完備。バルコニーもある
すぐ隣にあったホンダの二輪販売店。マルク・マルケス選手、ダニ・ペドロサ選手の等身大POPが飾られていた
Hotel de l'amour Buriram

クメール王朝時代の貴重な遺跡を自由に歩き回る

ムアンタム遺跡

 ブリーラムの定番の観光スポットとなっているのが、市中心部からもそれほど遠くない場所にある2つの遺跡。1つは11世紀ごろに建立された「ムアンタム遺跡」で、ヒンドゥー教の破壊の神であるシヴァ神の象徴となる石柱が祀られていたとされる。ブリーラムのすぐ南に隣接する現在のカンボジアで勃興したクメール王朝時代の遺跡だ。

ここは敷地内に入るゲートとなっている場所。石積みで造られた荘厳な建物となっている
隅にあるブロックを見ると、あえて石を削り込んでコーナーに設置していることが分かる

 砂岩からなる石積みの塔が5つあり、その塔の外壁には意匠を凝らした彫刻が施されていた。が、現在では中央のシヴァ神を祀っていたとされる最も重要な塔が完全に崩れ、見る影もない。残る4つの塔も外壁にあった彫刻の多くが盗難などで失われてしまった。今やその下のレンガのような赤肌がむき出しになり、わずかに残された装飾から当時の装いが想像される。

ゲートをくぐると庭園のような光景が広がる
本来は5つの塔が建っているが、中央の1つは崩れ去っている
ほかの4つの塔は原型をとどめている
ただ、実際にはこのレンガのような地肌の上に彫刻が施された外壁があったという
塔の入口の右側に見える彫刻は、かつては左側にもあったはず
頭上にはまだくっきりと装飾が残されている

 もう1つは10世紀ごろから400年ほどかけて建設されたという「パノムルン歴史公園」の寺院遺跡。同じくシヴァ神が祀られているものだが、こちらは大きな破損が見当たらない保存状態のよい外観で、外壁の美しい装飾もいたるところで目にすることができる。

パノムルン歴史公園
敷地内から見渡せる平原。数十km先がカンボジアの国境だ
ここも盗難に遭ったが、ムアンタム遺跡よりは比較的装飾が多く残されている

 サーキットのあるブリーラム中心部からはクルマでおよそ45~50分ほど。ムアンタム遺跡とパノムルン歴史公園は5分ほどの距離にあり、セットで見学できる。クメール王朝時代の歴史ある遺跡にもかかわらず、立ち入り禁止のような場所はほとんどなく、自由に見て、触れることもできる貴重な文化遺産だ。

寺院の入口の1つ
下でヒンドゥー教の神の1つ、ビシュヌがナーガの上に横たわっている
内部はかなり暗い
シヴァ神の象徴とされる石柱。石柱は男性を、その下の台部分は女性を象徴しているとされる
天井から降ってきた雨水が石柱に当たると、それは聖水となって建物の外へと流れていく
ムアンタム遺跡
パノムルン歴史公園

入場料:100バーツ(約340円、1バーツ=3.4円換算、ムアンタム遺跡のみ)、150バーツ(約510円、ムアンタム遺跡+パノムルン歴史公園)

火山岩で染める、世界に1つだけの織物作りを体験

チャルーン・スック村でPhu Akkhaniと呼ばれる織物の染色を体験

 ブリーラム南部のチャルーン・スック村では、「Pha Phu Akkhani(パー・プー・アカニー)」と呼ばれる織物づくりが盛んだ。一番の特徴は、火山岩を用いて染色すること。付近には死火山があり、そこにふんだんにある火山岩を砕き溶かし込んだ液体に生地を漬け込むことで、落ち着いた赤茶色の布に仕上がる。

これが火山岩
ほかに染色や色の定着に使う樹皮、植物もある
火山岩で染めた織物はこのような赤茶色の色合いになる
ほかに植物も染色に使うことで、こうしたさまざまな色彩の織物に

 あらかじめヒモや輪ゴムで縛ってから漬けることで、着色されるところとされないところを作ることができ、複雑な模様を生み出せる。火山岩だけでなく、樹皮や花を用いて染めることも可能で、さまざまな色を組み合わせて鮮やかな色彩を表現できる。この布を使った服や帽子、ブランケット、小物入れなどが作られ、お土産物店でも販売されている。

 チャルーン・スック村で訪ねた施設では、この織物の染色を体験できるようにもなっていた。あらかじめ用意された白い布を、好きなようにヒモなどで縛るだけ。今回、そのあとの漬け込み以降はお任せしたが、縛り方によって仕上がりに個性が出る。世界に1つしかない自分だけの織物ができあがると、なんとなく愛着も湧く。自分用のお土産にぴったりの一品になること間違いなしだ。

染色体験には、この白い布を使う
まずヒモや輪ゴムで一部を縛る
それから火山岩を砕いて煮出した液体にしっかり漬け込む。15分ほど
次に樹皮などを煮出して作られた液体に移し、色を定着させる
液体から引き揚げて水洗い。最後に洗剤も使ってにおいも消す
最後に乾かして、世界に1つだけのオリジナル織物が完成
敷地内にはお土産店もある
バナナの若芽とココナッツを、バナナの葉で蒸した食べ物。中央の花はアンチャンと呼ばれる。バタフライピーや蝶豆ともいう
アンチャンを原料にした飲み物もある。甘さ控えめ
これにライムを搾ると……
藍色から紫に変化。藍色の状態だと少し渋味があるが、ライムを搾った紫の状態はすっきりした飲み味
アンチャンで染めた餅米のお菓子も

日沼諭史

1977年北海道生まれ。Web媒体記者、モバイルサイト・アプリ運営、IT系広告代理店などを経て、執筆・編集業を営む。IT、モバイル、オーディオ・ビジュアル分野のほか、二輪・四輪分野などさまざまなジャンルで活動中。どちらかというと癒やしではなく体力を消耗する旅行(仕事)が好み。Footprint Technologies株式会社代表。著書に「できるGoPro スタート→活用 完全ガイド」(インプレス)、「はじめての今さら聞けないGoPro入門」(秀和システム)、「今すぐ使えるかんたんPLUS Androidアプリ大事典」(技術評論社)などがある。