旅レポ
昼はイルカ、夜はカンガルーに触れて暮れゆく西オーストラリアのマーガレット・リバー
2019年9月9日 14:28
日本人にとってオーストラリアの観光地と言えば、東海岸というのが一般的な認識だろう。オペラハウスが知られるシドニーはもちろん、カフェ文化で知られるメルボルン、さらにはサーファーの聖地とも言えるゴールドコーストなどは、多くの日本人観光客が訪れることで知られている。
しかし、今最も注目されているオーストラリアの新しい観光地は、西オーストラリア州だ。というのは、西オーストラリアへの直行便として、9月1日にANA(全日本空輸)が成田~パース線を開設したから。以前はシンガポールやシドニー、メルボルンなどで乗り換える必要があったため、日本からはなかなか行きにくい観光地だった西オーストラリアだが、ANAの新路線開設により、日本の観光客にとってもぐっと身近な存在になった。
今回筆者は西オーストラリアの南東側にあるマーガレット・リバーを中心とした観光地を巡るツアーに参加してきたので、その模様をお伝えしていく。
パース直行便就航で沸く西オーストラリア州を旅する
ANAの直行便開設で日本から行きやすくなった西オーストラリア州
西オーストラリアの州都となるのがパースだ。パースと日本の関係は実は深く、西オーストラリアの主要な産業が鉱業であったこともあり、多数の日本企業が進出し、日本への鉄鉱石の輸出などにかかわってきた。それは今でも続いてはいるのだが、現在西オーストラリア州政府が最も力を入れているのは観光業で、パースには新しいホテルがどんどん建設されている。
日本から西オーストラリアに行く場合、州都パースが玄関口になる。ちなみに直行便以外のルートだと、シンガポールで乗り換えてパースに行くか、シドニーやメルボルンなど東海岸のゲートウェイ空港まで飛んで、そこから西オーストラリアまでのフライトという形になる。実際、ANAでは成田~シドニー~パースという三角飛びの国際線予約も可能なので、オーストラリアの東西を一気に楽しむという旅行が気軽にできるようになったわけだ。
今回筆者が参加したツアーでは、そんなパースを起点にして、西オーストラリアの南側に位置するバンベリー、マーガレット・リバー、ベムバートン、デンマーク、そしてオールバニーという各地を巡ることになった。
これら西オーストラリアの南部地域には多くのワイナリーが点在しており、ワインの試飲を楽しめる。もちろん買って帰ることも可能で、免税の範囲内で、あるいは範囲を越える場合には税金を払って日本に持ち帰ることができる。もちろん、ワインだけでなくオーストラリアの大自然も一緒に楽しむことができるのだ。
バンバリーにあるドルフィン・ディスカバリー・センターでイルカに近づく
ツアーの初日は前日にパース入りし、宿泊しているホテルから手配されたワゴンで移動することになった。朝一に出発して、向かった先はパースから南に約170kmのバンバリー(Bunbury)という街。バンバリーは西オーストラリアでは3番目に大きな街として知られており、さまざまな観光施設などが用意されている。
ツアーの一番最初は、アボリジニの名称で知られているオーストラリア先住民のガイドさんに、街を案内してもらうことから始まった。まずはオーストラリアの文化とも言ってよいカフェに入り、アボリジニの楽器をガイドさんが演奏してくれるのに聴き入る。
頼んだコーヒーは、オーストラリア独特の「フラットホワイト」だ。いわゆるエスプレッソにミルクを入れたコーヒーになるので、ヨーロッパ的な言い方をすればカプチーノだが、カプチーノよりもミルクが多いのがフラットホワイトの特徴。個人的にカプチーノ好きで、日本のカフェに行くときはだいたいカプチーノを注文するのだが、いつももっとミルク入ってるとよいなと思っていたので、オーストラリアに来たときは迷わずフラットホワイト一択だ。
カフェでアボリジニの文化についてガイドさんに説明されたあと、街に出て散策したりしながら、次に向かったのがバンバリーの浜辺にある「Dolphin Discovery Centre(ドルフィン・ディスカバリー・センター)」。その名のとおりドルフィン、つまりイルカに出会える施設だ。旅程にこの施設の名前を見つけたときは、てっきり日本の水族館のように飼われているイルカに近づいて触れあうことができるものだと思っていた。
だが、まもなくその認識は間違っていたことが分かった。施設に入って最初に案内されたのは施設のなかではなく、浜辺。そこで待っていると、向こうから船がどんどん近づいてくる。もしかしてコレに乗るの?とガイドさんに聞いてみると、そうだとのこと。
係の人に助けてもらいながらおそるおそる乗ってみる。慣れない船に揺られながらしばらくすると沖に到着。すると船のクルーからあっちを見ろというアナウンスが。そちらを見てみると、波間になんだか黒いひれのようなものが……あ、あれがイルカか!
よく見てみると、イルカは1頭ではなく、複数の群れになって行動しているようで、波にのって優雅に泳いでいる。ときどき海面からちょっとジャンプしてくれたりして顔がちょっと見えたりすると、一緒に乗ってるほかのお客さんも多いに盛り上がる。海の上だから正確な距離は分からないのだが、数mから数十mのあたりまで船が近づいてくれて、スマートフォンのカメラでもそれなりの大きさに撮れる距離。これまで野生のイルカなど見たことがなかったので、非常に貴重な経験をすることができた。
ウォリー、カンガルー、リングテイルポッサムなどに近づけるナイトツアーに参加
その後、本日のお宿に到着。この日と翌日に宿泊したのは「Smiths Beach Resort」というホテル。「Smiths Beach」という名の浜辺にあるホテルで、Yallingup(ヤリンガップ)と呼ばれるマーガレット・リバーの北にある街の郊外にあるリゾートホテルだ。なかに入ると、バスルームには欧米のホテルではめずらしい深いバスタブが用意されていたりするなど、日本人向きのホテルだった。
そのホテルでバスタブにお湯を入れてお風呂に浸かって疲れを取っていると、ナイトツアーに出かける時間に。夜のアクティビティは「South West Eco Discoveries」という西オーストラリアの大自然を感じるツアーとのこと。迎えに来たツアー会社のクルマに乗ると、到着したのは農園のような場所。
時間はまもなく現地19時というころで、オーストラリアの晩夏とはいえ、かなり暗くなっている。ガイドさんが持つ明かりを頼りに進んでいくと、広場のようなところに到着した。するとガイドさんが猫や犬に与える餌のような食べ物を出して、置いていく。そのまま静かに待っていると、まもなく小さなお客さんたちがやってきた。「ウォリー(フサオネズミカンガルー)」が最初のお客さんだ。その後待っていると、今度はやや大きいウォリーがやってくる。もちろんそれはウォリーではなくてカンガルーだ。人になれているのか、餌を食べるのに一生懸命なのか、近寄っても逃げようとしない。人間の方がおそるおそる近寄ってみると、後ろからカンガルーをなでたりして触れあうことが可能だった。
しばらくウォリーやカンガルーと戯れていると、ガイドさんが木の上を見ろと言う。それで見てみると、謎のリスのような生物が。ガイドさんに聞くと、「リングテイルポッサム(ハイイロリングテイル)」というオーストラリア固有の有袋類。木の上で生活している生物で、長い尻尾を木に巻き付けてぶら下がったりもするそうだ。
オーストラリアに来ないと見ることができない生き物たちと間近で触れあえるという、都会では絶対にできないことを体験することができて、大満足なナイトツアーだった。
西オーストラリアを体験するツアー初日はイルカに始まり、カンガルーに終わるといういきものづくしな一日で、なかなか満足度が高く、ホテルで夕食をいただいたあと、疲れ果ててベッドに入ったらすぐにぐっすり寝ることができた。