旅レポ

ザルツブルクでモーツァルトとサウンド・オブ・ミュージックを感じる

名曲が生まれた「きよしこの夜」礼拝堂と国境の不思議な風景

モーツァルトの故郷ザルツブルク

 ヨーロッパの鉄道などが一定期間乗り放題となる「ユーレイル グローバルパス」を使って旅するプレスツアー。今回はベートーベンが活躍したウィーンを離れ、同じオーストリアでも反対側の西端にあるドイツとの国境に接する街、ザルツブルクを訪ねる。

 高速鉄道を利用すれば片道およそ2時間半。早朝に出発して日暮れまで街を散策し、夜に再びウィーンに戻るという日帰り観光も可能だ。

今回はユーレイル グローバルパスを利用して、ウィーンとザルツブルクを往復する(C)OpenStreetMap contributors

 ザルツブルクといえば、音楽家ヴォルフガング・アマデウス・モーツァルトの出身地。彼はベートーベン、ハイドンと並ぶ三大巨匠とも言われるうちの1人だ。アイネ・クライネ・ナハトムジークやトルコ行進曲(ピアノソナタ11番第3楽章)、きらきら星などはあまりにも有名で、多くの人が子供のころに耳にしたことがあるはず。軽快で、どことなく愉快な調子の曲が多いのがモーツァルトの特徴だろう。

 ところで、ウィーンにVienna City Cardがあったように、ザルツブルクにも「Salzburg Card(ザルツブルクカード)」がある。こちらも市内の公共交通機関が乗り放題となり、博物館やその他施設の利用料金が割引、もしくは無料になるので、観光するなら購入しておいて損はない。駅もしくは観光案内所などで購入でき、価格は24時間25ユーロ(約3200円、1ユーロ=128円換算)から。ハイシーズンとローシーズンとで価格は若干上下するが、2019年以降は1ユーロほど値上がりするようだ。

高速鉄道Railjetでザルツブルク中央駅に到着
ザルツブルク中央駅の外観と構内
Salzburg Cardも市内の公共交通機関が乗り放題。施設利用料金も割引となる

モーツァルトゆかりの地、サウンド・オブ・ミュージックのロケ地がそこかしこに

 モーツァルトがザルツブルクで生まれたのは1756年とされている。幼少のころから楽器演奏や作曲など音楽の才をいかんなく発揮し、25歳にウィーンへ移住するまでこの地で暮らしながら音楽活動に勤しんだ。

 列車で到着したザルツブルク中央駅からほぼ徒歩圏内にある、1606年建立の代表的なバロック建築と言われているミラベル宮殿の近くでは、モーツァルトが17~25歳まで住んでいたとされる家を目にすることができる。宮殿ではかつてモーツァルトがコンサートを開いたという記録も残されており、そのためか宮殿のすぐそばには本人の名前を冠するモーツァルト音楽大学が隣接している。

当時の大司祭が建てたミラベル宮殿。現在は市役所などとして利用
絢爛豪華な大理石の間。コンサート会場や結婚式場としても提供されている
宮殿1階出口付近の床には大きな衛星写真が描かれていた。赤い印のところがミラベル宮殿
ピンク色の建物がモーツァルトの家。ここでは200もの作品が生まれたと言われている

 ミラベル宮殿の庭園は、ミュージカル映画「サウンド・オブ・ミュージック」のロケ地としても知られている。ザルツブルク自体が映画の舞台となっているので、登場する風景はもちろんほかにもある。とはいえ、ミラベル宮殿は物語の中盤、子供たちが父親を驚かせるために歌を学び、ドレミの歌を歌いながら駆け抜ける印象的なシーンだけに、見覚えがある人もいるのではないだろうか。

美しいミラベル宮殿の庭園が広がる
この噴水や像も映画で見た記憶があるのでは

 ちなみに筆者も子供のころに何度か映画を見ているのだが、現地では残念ながらそこまで詳細に思い出すことができなかった。帰国後に改めて映画を見直したところ、ミラベル宮殿だけでなく、それ以外のいくつかのシーンでもザルツブルクの見知った風景があることに気付けたのだった。

庭園のすぐ向こう側にあるのがモーツァルト音楽大学
庭園ではモーツァルト作「魔笛」の登場人物であるパパゲーナの石像も見つけられる
Concerts at Mirabell Palace Salzburg

所在地:Mirabellplatz 4, 5020 Salzburg, Austria
Webサイト:Mirabell Palace(英語)

ザルツブルクを一望できる「崖」と、不屈の大聖堂

ミラベル宮殿の庭園ではるか遠くに見えていたホーエンザルツブルク城。川を渡ればすぐ、と感じてしまいそうだが、実際にはまだかなりの距離がある

 ミラベル宮殿の庭園から遠くに望むホーエンザルツブルク城の方角に向かって歩き、川を渡ると、高い崖が立ち塞がる。65mもの高低差があるこの崖は展望台にもなっており、エレベータで登ればザルツブルクの街を一望できる。ひとしきり眺めたあとは、再び下に降りて崖伝いに城の方向へ歩いて行くと、崖に埋め込まれたかのように建っている聖ブラジオス教会が現われる。ここでもモーツァルトがコンサートを開いたとことがあるという。

そびえ立つ崖。65mの高低差があるという
エレベータを使えばあっという間に崖上に登ることができる。往復料金は、内部にある博物館の入場料と合わせて9.1ユーロ(約1165円)から。欧文があれば無料だ
世界遺産に指定された旧市街の街並みも遠くまで見渡すことができる
ホーエンザルツブルク城の攻略は難しそうだ
ずっと眺めていたくなる景色
多くの人がその風景に魅入られていた
崖伝いに歩く。崖に張り付くように建っているカラフルな建物が印象的
雰囲気たっぷりのパン屋さん
崖に一部が埋まっているのではないかと思える聖ブラジオス教会
内部は奥まで入ることができなかったが、長い歴史の空気を漂わせている
移動途中で出会ったモーツァルト
目を引く変わった構造の建物も
サウンド・オブ・ミュージックのお店
17世紀に馬小屋として作られた建物。かなり立派だ
目の前には馬の洗い場。ここもサウンド・オブ・ミュージックに登場したスポット

 このあたりは歴史的建造物が多く、ユネスコの世界遺産にも指定された旧市街に近い。モーツァルトが洗礼を受け、一時期はパイプオルガンの演奏を担当したというザルツブルク大聖堂もぜひ見学したい。ここの大司教シュラッテンバッハは、モーツァルトのパトロンとして彼の音楽活動を支えたとも言われている。大聖堂のその偉容にはただただ圧倒されるが、774年に初めて建立され、その後何度も火災や戦争の影響で焼失の憂き目に遭い、そのたびに再建を繰り返してきた不屈の建物でもある。

人でごった返す旧市街の目抜き通り
ザルツブルク大聖堂
内部の装飾に目を奪われる
モーツァルトが洗礼を受けたときに使われたとされる洗礼盤
モーツァルト少年はここでパイプオルガンを弾いたという

 ザルツブルク大聖堂の隣には、こちらもサウンド・オブ・ミュージックで一瞬登場したレジデンツ広場があり、さらにそこから100~200mも歩けば、モーツァルト像と、その妻コンスタンツェが住んでいたという家も見ることができる。歩けば歩くほどモーツァルトや音楽にゆかりのあるものと出会えるのがザルツブルクなのだ。

レジデンツ広場
そこから目と鼻の先にあるモーツァルト像
すぐ裏手にある妻コンスタンツェが住んでいた家
レジデンツ広場にある、モーツァルト家族がよく利用したといわれる「カフェ・トマセリ」

クリスマスの定番ソング、「きよしこの夜」が生まれた地

オーベルンドルフのきよしこの夜礼拝堂

 クリスマスになると必ずと言っていいほど街で耳にする曲「きよしこの夜」。その始まりの地もオーストリアにある。ザルツブルク市街からクルマで30分ほど北上したところにある小さな街、オーベルンドルフだ。近隣で教師をしていたオルガニストでもあるフランツ・グルーバーが作曲を、1818年当時この地にあった聖ニコラウス教会の神父ヨゼフ・モーアが作詞を担当し、クリスマスイブのミサのときにその教会で「きよしこの夜」が初めて歌われたとされている。現在は教会は取り壊され、きよしこの夜礼拝堂として残されている。

こぢんまりとした、かわいらしい外観のきよしこの夜礼拝堂
歌詞と楽譜も掲示されていた
フランツ・グルーバーと神父ヨゼフ・モーアの像

 そして、礼拝堂から歩くこと1分で見えるのがこの景色だ。

川の中央が国境となる。対岸はドイツ

 オーベルンドルフはまさに隣国ドイツに接する街。国境線となる大きく蛇行したザルツァハ川のいわば外側にオーベルンドルフが位置しており、内側となる対岸はもうドイツとなる。ぽっかりと島のように浮かんだ景色は幻想的だが、一切のセキュリティがない近くにかかる一本橋を渡るだけで向こう側に行けてしまう、ごく身近な場所でもある。国境に関係なく付近の住民が当たり前のように橋を行き来している様子を目にするのは、なんだか不思議な気持ちだ。

カラフルな家と教会が建ち並ぶ
右手の方へ400~500mほど行ったところに橋がかけられている
中央に国境線を表すライン。金網には観光客が取り付けたものと思われる「愛の南京錠」が大量に見える。が、最近ではその重みで橋の一部が破損するなど問題になっているため、絶対に真似しないようにしたい
フランツ・グルーバーが教鞭を執っていた学校。現在も学校として使われているが、一部は博物館になっている
実際にグルーバーが使っていたとされる教卓、当時を再現した教室などが展示されている
ほかには、250年前に作成されたという精巧な木製の人形も展示
この地方独特の文化として、クリスマスに日本の雛人形のように飾るのだという

 日帰りでウィーンに戻ったあと、次回はウィーンを発ってチェコのオロモウツへ。劇場でオペラを鑑賞する。

次回はチェコのオロモウツとブルノでミュージカル、オペラを鑑賞(C)OpenStreetMap contributors

日沼諭史

1977年北海道生まれ。Web媒体記者、モバイルサイト・アプリ運営、IT系広告代理店などを経て、執筆・編集業を営む。IT、モバイル、オーディオ・ビジュアル分野のほか、二輪・四輪分野などさまざまなジャンルで活動中。どちらかというと癒やしではなく体力を消耗する旅行(仕事)が好み。Footprint Technologies株式会社代表。著書に「できるGoPro スタート→活用 完全ガイド」(インプレス)、「はじめての今さら聞けないGoPro入門」(秀和システム)、「今すぐ使えるかんたんPLUS Androidアプリ大事典」(技術評論社)などがある。