旅レポ

夏期増便のフィンエアーで行く! ヘルシンキとタンペレを巡るアート&グルメ旅(その4)

アートの街マンッタとタンペレの2大タワーへ

ピューニッキ展望台で味わえる名物ムンッキ

 フィンエアーとフィンランド政府観光局は、文化や産業の発信地タンペレと首都ヘルシンキをまわるプレスツアーを6月15日から19日にかけて共同で開催した。レポート4回目は話題のエリア・マンッタを訪問。名画と自然を一度に楽しめて、地域産業をも知り得る場所として、多くの人々が訪れる場所だ。同時にタンペレの象徴でもある2つの異なるタワーも登ってみた。名所には美味しい料理が待っているもの。アートや絶景とともに、一度は食べたい名物メニューも紹介する。

湖畔にたたずむモダンな美術館で現代アートとクラシックのコラボを鑑賞

 フィンランドのアート好きがこぞって訪れる近年話題のアートタウン、それがマンッタだ。タンペレからバスで1時間半ほどの豊かな自然があふれる田舎町で、日帰りも可能。今回この地で製紙産業を興したグスタフ・アドルフ・セーラキウスと、甥のイェスタ・セーラキウスにより収集されたフィンランド屈指の名画が堪能できる「セーラキウス・ミュージアム・イェスタ」を訪れた。絵画鑑賞と同時に周辺の美しい自然のなかでリラックス、そして数々の賞を受賞した名レストランでこだわりの1皿が味わえる同美術館でのひとときをお届けする。

木をふんだんに使った「セーラキウス・ミュージアム・イェスタ」の「パビリオン」

「セーラキウス・ミュージアム・イェスタ」はセーラキウス家が生活していた邸宅を改装して生まれた「マナーハウス」と、2014年に完成した新館「パビリオン」の2棟から構成されるミュージアム。1933年に創設されたイェスタ・セーラキウス美術財団による約1万点以上ものコレクションをはじめ、クラシックアートと現代アートをともに見せる展示方法が特徴だ。

 常設展では、フィンランドの巨匠の作品や、独立前夜に制作された作品をはじめ、フィンランド文化への意識の高まりを感じさせる展示も印象的。同時に地下室にはワインセラーとともに当時パーティを楽しんでいた秘密部屋的空間もあり、人生を楽しむことを示唆する世俗的な絵もあるなど、さまざまな面を一度に見ることができる。

 さらに「マナーハウス」では企画展「PLEASURE」を開催。現代アーティスト3名の新作とともに、美術財団の保有する作品をアーティストが直感で選び、時代を超えたコラボレーションが実現している。

邸宅を改装し美術館として開放している「マナーハウス」
企画展「PLEASURE」では、現代アーティストのインパクト大な作品が並ぶ
美術財団が収集した作品が並ぶ展示室。地下室のワインセラーの壁にも多くの絵が残っている

 木材をふんだんに使った美しい「パビリオン」では、現在3つの企画展時を同時開催。「SUMMER DAYS」では、フィンランドに生きる人々が待ちこがれ、憧れる夏をテーマに北欧のアーティストをフィーチャー。広々としたギャラリースペースを贅沢に使い、夏らしい、色とりどりの色彩があふれる抽象的な作品が並んでいる。ぽつんと展示された作品から作者の思惑を読み取る作業が印象的な「PAINTINGS」、国境閉鎖に関してメッセージを放つ「CLOSING BORDERS」など、企画展では部屋に入るたびに新鮮な驚きを見る者に与え、アートを全身で感じられる空間に仕上げている。

夏をテーマにアーティストの思いが込められた作品が並ぶ「SUMMER DAYS」
「PAINTINGS」「CLOSING BORDERS」など見るだけではなく、考えさせられる展示も多い

 鑑賞後に脳や体をリラックスさせたいなら、ミュージアム周辺散策に繰り出してみよう。自転車やノルディックウォーキング・ポールなどの貸し出しを行なっているので、豊かな自然と美味しい空気を体いっぱいに感じることができるのだ。

 ノルディックウォーキング・ポールを借り、橋を渡りTAAVETINSAARI島へと行ってみたが、湖のほとりにもさりげなく作品が。ちょっとした冒険感覚で自然とアートとの共演を楽しめるのだ。

ノルディックウォーキング・ポールで敷地内の島へ出発
夕暮れどきの湖畔。白樺かと思いきや松にニットがかぶせられていた
チーフ・シェフのHenry Tikkanen氏

 散策後は、併設するレストラン「ミュージアム・レストラン・イェスタ」へ。収蔵されるコレクションからインスパイアされたメニューなどを提供しており、ヨーロッパ諸国でも幅広く知られている名レストランの1つだ。地元産の高品質な食材をふんだんに使っており、チーフ・シェフのHenry Tikkanen氏もタマゴやハーブをはじめミュージアム内のファームで採れた食材を積極的に取り入れていると話してくれた。

 今の時期にお勧めなのは、夏限定のコースメニュー「SUMMER DAYS」(44ユーロ、約5720円、1ユーロ=約130円換算)。前菜に「Creamy cauliflower soup, crispy pork and spruce」「Pike loaf and cold smoked pike, horseradish and crispy vegetables」、デザートとして「Mint chocolate, strawberries and olive oil ice cream」の3皿のコースとなっている。

「Creamy cauliflower soup, crispy pork and spruce」は、濃厚で舌触りのよいスープにスモークした鹿肉をトッピング。ブレッドと一緒に味わえば、これだけで満足ができるほどの美味しさ。

レストラン「ミュージアム・レストラン・イェスタ」
前菜の「Creamy cauliflower soup, crispy pork and spruce」

「Pike loaf and cold smoked pike, horseradish and crispy vegetables」は、フィンランドをはじめ北欧で愛される淡水魚のパイクパーチをふんわり柔らかに揚げた一品。季節野菜や自家製ハーブ、マッシュポテトと一緒にフィンランド伝統の味をクリーミーなソースに絡めて召し上がれ。

 デザートの「Mint chocolate, strawberries and olive oil ice cream」は、オリーブオイルがアイスにかかった1皿で、フレッシュベリーや、ブラウンバターのミルクチョコレートクリームのハーモニーがたまらない。

「Pike loaf and cold smoked pike, horseradish and crispy vegetables」
デザートの「Mint chocolate, strawberries and olive oil ice cream」
セーラキウス・ミュージアム・イェスタ

所在地:Joenniementie 47, Mänttä
Webサイト:セーラキウス・ミュージアム・イェスタ

ミュージアム・レストラン・イェスタ

所在地:Joenniementie 47, Mänttä
Webサイト:ミュージアム・レストラン・イェスタ

「セーラキウス・ミュージアム・イェスタ」とともに訪れたいのが地域の郷土資料館的な役割を持つ「セーラキウス・ミュージアム・グスタフ」だ。林業ならびに製紙業を営んでいたセーラキウスの旧本社ビルを改装し、一族と製紙業に関わる歴史をドラマティックに紹介した展示が見物となっている。

 エントランスをくぐり館内へ向かうとまず目に飛び込んでくるのが製紙業の歴史が一目で分かる絵巻風の作品。ぐるりと2階の吹き抜け部分にあるため展示室に入る前に一度見ておこう。

現在外観が工事中の「セーラキウス・ミュージアム・グスタフ」
エントランスの2階部分の吹き抜けには、製紙業の歴史が刻まれている

 英語の音声ガイドを受け取り、いよいよメインの常設展「PAPER DEVIL」へ。グスタフ・アドルフ・セーラキウスの人生と製紙業をなぞる内容の同展示。会場へ入ると演劇調のガイドがスタートし、臨場感たっぷりにその歴史を解説してくれる。資金難や敵など、彼が成功を収めるまでの困難の日々とともに雷や雨のサウンドなども響き渡り迫力も満点。アトラクションのような展示方法で没入感はかなりのもの。また、製紙業にちなみ、紙で一つ一つ制作された等身大の人形たちのリアルな表情と動きにも注目してほしい。

常設展「PAPER DEVIL」は等身大の紙製の人形でその歴史をたどるユニークな展示方法をとっている
セーラキウス・ミュージアム・グスタフ

所在地:R. Erik Serlachiuksen katu 2, Mänttä
Webサイト:セーラキウス・ミュージアム・グスタフ

 なお、日帰りでもマンッタを楽しむことは可能だが宿泊してゆっくり楽しみたい際は近隣のブティックホテル「ラプカルタノ」へ。スタンダードルームが7室、プレミアムルームが20室、スイートルームを2室用意。木調の暖かな雰囲気の客室からは雄大な自然が目前に広がり、リラックス効果は抜群だ。

木調のどっしりとした外観のブティックホテル「ラプカルタノ」
メルタのプレミアムルーム。客室数もほどほどでアットホームな雰囲気(写真提供:ラプカルタノ)

 スモークサウナや湖に隣接するログサウナに最新式のブラックエレクトリックサウナ、スイートルームの客室には個人用のサウナも完備。また、敷地内の「ベアーズ・デン」では、ミーティングをはじめ中央のバーベキュー用エリアを活用してダイニングも楽しめる。地産地消のこだわりの食材を使い、目の前でスモークしたサーモンや近隣の森で収穫した旬なキノコを使ったサラダをはじめ、ここでしか味わえない上質な食事が味わえる。シーズン中に提供される自社の管理する池で育てたザリガニを使ったメニューも大人気だ。日本語サイトもオープンし、今まで以上に宿泊しやすくなったのもうれしい。

サウナ後に飛び込むことのできる湖
スモークサーモンをオーダーすると目の前でスモークし、一番美味しい瞬間にサーブしてもらえる
スモークサーモンと季節の野菜とキノコのサラダ
「ラプカルタノ」で一番人気のザリガニ料理は7月からのシーズン中のみ提供(写真提供:ラプカルタノ)
ラプカルタノ

所在地:Koivuseläntie 77, 35700 Vilppula
Webサイト:ラプカルタノ

タンペレの2大タワーでそれぞれの絶景を楽しむ

頭上にそびえ立つ「ナシンネウラ・タワー」

 タンペレに戻り、続いてはフィンランドで独立したタワーとしてナンバーワンの高さを誇る「ナシンネウラ・タワー」へ。1人5.9ユーロ(約770円)の入場料を支払い早速展望台へ出発。全高168mで、エレベータで一気に120mの高さまで上がることができる。階段を登ると124mのエリアには高級レストラン「レストラン・ナシンネウラ」があり、そのロマンチックな眺めと空間にデートやお祝いごとでも使われる場所だ。

 展望台では、360度からタンペレの街並とナシ湖、ピュハ湖の両方を眺めることができる。また、フィンランド発のゲーム「アングリーバード」のアトラクションが有名な「サルカンニエミ・アドベンチャーパーク」も目下に広がるなど、ファミリーでレジャー施設とともに訪れたいスポットでもある。

120mの展望台からの眺め、タンペレを挟む2つの湖や「サルカンニエミ・アドベンチャーパーク」も一望できる

 なお、展望台には売店もありアイスクリームやブレッド類の購入も可能。地上120mの高さから優雅にスナックやアイスを頬張りながら、ブレイクすることも。

売店ではアイスクリームやブレッド類などを用意
ナシンネウラ・タワー

所在地:Laiturikatu 1, Tampere
Webサイト:ナシンネウラ・タワー

 続いては、地元民に愛され続けている名物ムンッキ(ドーナツ)が朝から味わえる「ピューニッキ展望台」と「ピューニッキ・タワーカフェ」へ。1888年に木製の塔として建てられたが、砲撃で損傷を受けるなどして1929年に現在の姿に。大人2ユーロ(約260円)、子供1ユーロ(約130円)でチケットを購入し、26mの高さの塔にエレベータ、または階段で登ることができる。

 エレベータで最上階に着き、そこから階段を登り屋上へ。比較的低めの展望台のため、鳥の鳴き声や木々のざわめきが聞こえ、心地よい風に吹かれながらのんびりできる。早朝で混雑もなく、自由気ままに360度の景色を楽しめたのもよかった。帰りは階段を利用。ちょっとした冒険感も味わえるのでエレベータ、階段ともに利用してみては。

地元民の憩いの場でもある「ピューニッキ展望台」と「ピューニッキ・タワーカフェ」
エントランスをとおり左がカフェ、右が展望台への入口。レトロな雰囲気のチケットは2ユーロ
自分で扉を開け閉めしてエレベータに乗り込む。ギシギシ音はするが一気に上がる
扉を開けて最上階へ。ひんやりとした空気が流れていた。ここから急勾配の階段を上り屋上へ
屋上からの風景。街や森との距離が近いので恐怖心もなく、のんびりできる
帰りは階段がオススメ

 塔に登ったあとは、お待ちかねのムンッキ(ドーナツ)の時間。「ピューニッキ・タワーカフェ」にて、自家製のムニッキ(2.5ユーロ、約330円)と紅茶(2ユーロ、約260円)をオーダー。1日1000個売れるという名物ムンッキはカルダモンが利いており、こぼれるほどたっぷりなシュガーで1口目はザクッ、そして生地のふんわり感が押し寄せてくる。出来立ててアツアツであることもうれしい。紅茶やコーヒーにとても合うと評判で、店内でムンッキを頬張る人々を見てみると紅茶とコーヒーが半々だった。

ムンッキと紅茶をオーダー
カウンターでは、ケーキなどのカフェメニューも販売している
ピューニッキ展望台

所在地:Näkötornintie 20, Tampere
Webサイト:ピューニッキ展望台

 なお、景色のよさならばピスパラもお勧め。タンペレから約2.5kmの場所にあり、かつては労働者階級の人々とアーティストが住んでいた場所で、現在は高級住宅エリアとして有名だ。湖を見下ろす丘に位置し、涼しい風が吹き上げ心地よさは抜群。湖まで直線で降りることのできる階段や、静かに景色が楽しめる公園などがあり、近隣住民の憩いの場になっている。

ピスパラ住宅エリアの公園は湖を見下ろす場所にある
湖へ住宅エリアからそのままいくことのできる階段が続く

各名所やミュージアムへのアクセス抜群。北欧感たっぷりの4つ星ホテルに宿泊

 タンペレに宿泊するなら、「ムーミン美術館」がオープンしたばかりの「タンペレホール」に徒歩3分、そしてタンペレ駅や中心部にアクセス良好な4つ星ホテル「ラップランドホテル タンペレ」が便利だ。全141室の客室はどっしりとした重厚な色彩でコーディネイトされ、落ち着いた雰囲気。老舗寝具メーカー「Høie of Scandinavia」のアイテムやトナカイの角も枕元の壁に飾られており、北欧感もたっぷり。フィンランドの写真家Antti Kurolaによる作品で飾られたバスルームや、各階により「Summer」や「Northern lights」などのコンセプトがあるなどこだわりも随所に感じられる。

各エリアにアクセス良好な「ラップランドホテル タンペレ」
ロビー周辺も温かみのある雰囲気
エレベータを降りると各階のテーマごとの写真が迎えてくれる

 宿泊した「デラックスキング」は、180×205cmのベッドの足下側に48インチの薄型テレビを設置。クローゼットには地元産、そしてラップランド産のスナックやドリンクが揃ったミニバーを用意。そして着心地のよいガウンと履き心地柔らかなスリッパや、アイロン台とアイロンが設置されていた。

180×205cmのベッドとトナカイの角
48インチのテレビと作業台
クローゼットにはミニバーと肌触り抜群のガウンとスリッパを用意。アイロン台とアイロンも同じ場所にある

 窓付近にはテーブルと椅子が2つあり、フィンランドの夏の光を浴びながらの作業や、窓辺に立って外の様子をのんびり眺めて楽しむことも。テレビの下にもちょっとした作業ができるデスクとチェアを完備。コンセントはSEタイプでWi-Fiは無料で利用ができる。

窓周辺にもデスクとチェアを用意。窓からは街の通りが見える
コンセントはSEタイプ

 バスルームには、アラビア社製のトイレと手動の洗浄ホース。浴室は水の出のよいシャワーとバスタブがある。ドライヤーはカゴにあり、アメニティはレモングラスが爽やかなSPA VITALによるシャンプー、コンディショナー、シャワージェル、ボディローションとともにバスフォームも用意。

バスルームにはアラビア製のトイレを設置
浴槽は比較的広々で足も伸ばせる。シャワーの出がよく、すぐに温かくなるのもよかった
洗面所全体は特大の鏡と写真家による作品を壁全体にデコレーション
ドライヤーは洗面所の下にカゴ入りで用意
アメニティはレモングラスの香りがポイントの5品目を提供

 朝食ではカレリアパイやムスタマッカラ(黒ソーセージ)など北欧料理がふんだんに用意され、名物が一度に味わえるお得感も。ベリーパイやベリージャムなどもあり、ついつい食べ過ぎてしまうほど。ガラス張りのレストラン内は、ホールなどが近いため常に多くの利用客がいる状態。早めの時間に足を運ぶのがベターだ。

朝食ではカレリアパイやムスタマッカラなどフィンランド料理が並んだビュッフェスタイル
ベリーをたっぷり使ったジャムも人気だった
ベリージュースやブレッド類などフィンランドならではのメニューがお皿に並んだ
ラップランドホテル タンペレ

所在地:Yliopistonkatu 44, Tampere
Webサイト:ラップランドホテル タンペレ

 フィンランドで人気のアートタウンから、地元で愛されるムンッキに、ほっと一息つける景色が楽しめる場所まで。観光エリアとともに、少し足を伸ばせば地元民が愛する風景や味に出会えると気付いたマンッタ&タンペレ。次回は、タンペレ周辺の工場跡地を再利用した商業エリアやミュージアム。そしてフィンランドで絶対に一度は体験すべき公共サウナなどをレポートする。

相川真由美

フリーライター/鉄鋼業やIT系やエンタメ関連の雑誌やWeb媒体の編集者を経て、フリーの記者として活動中。海外は一人旅がほとんど。趣味は世界のディズニーのパーク&リゾート巡り。最近は年間パスポート片手に日々舞浜通い。うなぎとチョコレートが好物で、旅の基本は“出されたものは全部食べる”。激辛とうがらしから謎の木の実まで挑戦するのがモットー。