旅レポ
夏期増便のフィンエアーで行く! ヘルシンキとタンペレを巡るアート&グルメ旅(その3)
フィンランド第3の都市タンペレにオープンの「ムーミン美術館」を訪問
2017年8月20日 00:00
フィンエアーとフィンランド政府観光局は、文化や産業の発信地タンペレと首都ヘルシンキをまわるプレスツアーを6月15日から19日にかけて共同で開催した。今回は、2017年6月17日にタンペレにオープンした「ムーミン美術館」のオープニングイベントの様子や周辺地域のグルメなどを紹介する。
インタラクティブ要素も満載。「ムーミン美術館」で物語の世界へ出掛けよう
1987年にフィンランドのタンペレの市立図書館に「ムーミン谷博物館」がオープンして今年で30年。記念すべき節目の年に、コンサートや文化イベントを年間300回以上開催する北欧最大のコングレス・カルチャーホール「タンペレホール」に、「ムーミン美術館」が満を持してオープンした。1986年にトーベ・ヤンソン本人より寄贈されたオリジナルアートをはじめ、トーベのパートナーであるグラフィックアーティストのトゥーリッキ・ピエティラによる立体模型などを常設展示。フィンランドを旅するならば必ず訪れておきたい注目の場所となっている。
「タンペレホール」に到着すると、まず迎えてくれるのがムーミントロールのブロンズ像。大きな岩の上にちょこんと乗る姿の愛らしさは格別。記念撮影スポットとして人気があり、訪れる人が必ず足を止め、1枚撮影をしていく姿が見られた。ホールの側面にもムーミントロールのボードが掲げられており、入館前からムーミン気分は最高潮に。オープン当日に訪れたため、隣接する公園では「Suomi Finland 100」とロゴの入ったカラフルなバルーンが用意され、お祝いの準備が着々と進んでいた。
美術館のオープンに先駆けて、同ホールのCEOであるパウリナ・アホカス氏が挨拶。フィンランド独立100周年のお祝いの年に、「タンペレホール」をリニューアルし「ムーミン美術館」をオープンできることを誇りに感じるとスピーチを行なった。また、常に同ホールは人々に開かれた場所であり、文化や音楽、アートを通じ世界中の人々を笑顔にすることのできる場所であり続けていくことを約束した。
そして、「ムーミン美術館」のディレクターを務めるタイナ・ムハイユ氏も登壇。「最適なコンディションでコレクションを展示できることをうれしく思う」と話し「トレーニングを積んだ素晴らしいスタッフが美術館内にいるので、ぜひ質問があったら話しかけてみてほしい。きっと答えが見付かるはず!」と来場者に向けてメッセージを送った。
さらに、ムーミン・キャラクターズ社のクリエイティブ・ディレクターであるソフィア・ヤンソン氏もオープンのお祝いに駆け付け、同美術館を絶賛。「タンペレにすべてが揃っている!」と話し、「ムーミンシリーズのストーリーとともに、とても重要な部分を占めるアート。この美術館を訪れることで、アーティストであるトーベをより強く感じることができると思います。時間をかけてじっくり作り上げてくれた素晴らしいチームに感謝を捧げます」と笑顔で話した。
「ムーミン美術館」のオープニングセレモニーでは、タンペレ市長のアンナ・カイサ・イッコネン氏とともにソフィア・ヤンソン氏らがテープカットを行ない、美術館へ入場するゲストを笑顔で迎えるなどファンにはたまらない時間となった。また、テープカットと同時に、「タンペレホール」内外でパーティがスタート。ムーミントロールやムーミンママらが登場、ホール内には生演奏で軽快な音楽が響き、子供たちを中心にダンスが始まるなど大盛り上がりとなった。
世界で唯一の「ムーミン美術館」としてオープンした同美術館では、現在、常設展「それからどうなるの?」展を開催中だ。体験型美術館としてインタラクティブな要素をふんだんに取り入れている部分も見どころの一つ。
入場する際には、チケットカウンターにて入場券を購入しよう。大人は12ユーロ(約1560円、1ユーロ=約130円換算)、子供は6ユーロ(約780円)。チケットカウンター横では軽食を買うこともできるので、館内に入る前に小腹を満たすことも可能だ。
美術館横には大きなクロークも。大きな手荷物を無料で預けることができる。なお、ロッカーを個人で使いたい場合はクローク横に併設されているのでそちらを利用しよう。カラフルでキュートなデザインのロッカーに思わずほっこり。利用の際は1ユーロ(約130円)のコインを入れ、利用後にコインが返却される仕組み。
作品鑑賞の準備が整ったら、美術館へ入場しよう。グリーンの絨毯に導かれるように進むと、「たのしいムーミン一家」の表紙絵と常設展「それからどうなるの?」の文字が目の前に現われる。
足を踏み入れると目の前にはふんわりと優しい瞳をした「ムーミントロール」が来場者を迎えてくれる。ムーミンシリーズ1作目の「小さなトロールと大きな洪水」の巨大な本が見えたならば、横の棚にある鑑賞をより深める手助けをしてくれる館内限定の解説本を持ってムーミンワールドへと旅立とう。
「それからどうなるの?」展では「小さなトロールと大きな洪水」から「ムーミン谷の十一月」のムーミン一家の失踪の謎にいたるまで、すべてのムーミンシリーズを丁寧に紹介。大きな本の横には、元となった表紙の原画を展示。そして立体模型とともに、描かれているワンシーンの朗読も音声で楽しめる。いろいろな形の展示から多角的に、そして相互補完的に作品を見ることができるのだ。
朗読はフィンランド語、スウェーデン語とともに、日本語、英語、ロシア語にも対応。立体模型のブースのボタンのスウェーデン語を押すと、トーベ・ヤンソン自身の声が流れるなどファンにはたまらない工夫もされている。
また、作品内の挿絵もふんだんに展示されているため、お気に入りの挿絵を探す楽しみも。同時に、トーベ・ヤンソンのペン画の繊細さや技法の移り変わりも間近で感じられ、時間を忘れて見入ってしまうほどの魅力があふれている。
館内には「ムーミン谷の彗星」をイメージし、彗星が頭上をかすめるサウンドが流れ、フィンランドのアーティスト、Hanna Vihriälä氏により20万個以上のビーズを使って制作された彗星をイメージしたオブジェなども展示。その美しさに圧倒されるはずだ。横から見ると彗星が流れる様子、下から見ると自分にまるで迫ってくるような感覚になるなど、場所によって異なる表情が楽しめる。
館内にはさまざまな場所に驚きと発見が待っており、階段を降りる際に、目に見えない少女のニンニの影が壁に現われるのを見逃さないようにしてほしい。また、壁際に現われるニョロニョロにもご用心。触れると頭上の雲から雷がビリビリと彼ら目がけて落ちる演出など、展示された原画やアート以外にも楽しめる要素がたっぷりと散りばめられている。また、「たのしいムーミン一家」で大騒動を巻き起こす“飛行おに”の魔法のシルクハットもあり、中に入ると……物語のように違う生き物になってしまうことも!?
美術館の見どころの一つが、高さ約2mにもおよぶ「ムーミンハウス」だ。トーベ・ヤンソン、トゥーリッキ・ピエティラ、ペンッティ・エイストラによる作品で、豊かな想像力を駆使して、さまざまな部分にこだわりが詰め込まれている。例えば、ムーミンママの部屋の奥にはマドンナ&チャイルドを思わせる絵画が飾られ、冒険好きのムーミンパパの部屋は船のようになっていたり、さらに電気室のドアにはニョロニョロが描かれているなど。ぜひじっくり時間をかけていろいろな発見をしてみよう。
「それからどうなるの?」展では、初公開となる展示も見もの。立体模型を制作する際に使用した設計図や素材などをこの会場だけで見ることができるのだ。アーティストによる立体模型にも新作が展示されているので、目の前だけではなく、足元にもご注目を。
なお、作品をもっと知りたい、気になる部分があった際には、グリーンの制服を着た館内のスタッフに質問をしてみよう。知識豊富な彼らが笑顔でムーミンシリーズ、そして展示についてじっくり話してくれるはずだ。
スペシャルな「MOOMIN MENU」に舌鼓。ムーミンたちが大好きなあのスープも!?
ゆっくり展示を堪能したあとは、ムーミンメニューが味わえる「タンペレホール」併設のフィンランド料理レストラン「TUHTO」へ向かおう。ボートのベンチのことをフィンランド語で“TUHTO”と呼び、実際にレストラン内には大きなボートがデコレーションされている。また、キッズ向けのお絵描きエリアにも小さなボートを発見。ベンチ部分をテーブル代わりに絵本や小さなぬいぐるみ、色鉛筆などが用意され、ファミリーで楽しく食事の時間が過ごせるようになっていた。
同レストランは、「タンペレホール」の改装、そして「ムーミン美術館」のオープンに合わせてカジュアルダイニングとしてリニューアル。1人でもファミリーでも気軽にふらりと利用できる場所となり、「タンペレホール」を訪れるゲストを歓迎している。最大のトピックは、「TUHTO」限定の「MOOMIN MENU」が味わえること。ムーミンシリーズで登場したムーミンママ手づくりのメニューをイメージした1皿が目の前に運ばれてくるのだ。なお、テーブルセットのナプキンはフィンランド製、北欧家具も使い温かみのある雰囲気が広がっている。
「MOOMIN MENU」(39ユーロ、約5070円)は、「SALMON SOUP(L,G)WITH ASSORTED BREADS」、「PORK LOIN STEAK WITH SPRUCE TIP SAUCE, WILD MUSHROOM PIE WITH OVEN-ROASTED VEGETABLES(L)」、そしてデザートに「QUARK PANCAKES WITH COGNAC-LACED STRAWBERRY JAM AND WHIPPED CREAM(L)」の3品。
「SALMON SOUP(L,G)WITH ASSORTED BREADS」は、ムーミン一家が大好きなフィッシュスープをイメージ。シェフがナシ湖でスナフキンのように釣ってきたサーモンを使った1品。ムーミンママの描かれたミルクパンに入れたクリームスープをとろ~りかけて味わう。柔らかな肉厚サーモンの旨味がスープに溶け出し、ホクホクのポテトの食感とローズマリーの香りが幸せな時間を約束してくれる。付け合わせのブレッドも種類豊富で、これだけでお腹が一杯になるほどのボリューム感だ。
メインの「PORK LOIN STEAK WITH SPRUCE TIP SAUCE, WILD MUSHROOM PIE WITH OVEN-ROASTED VEGETABLES(L)」は、自社農場で育てた豚の肉をメインに、ムーミンたちのもう1つの好物SPRUCE TIP(トウヒの新芽)を使ったソースをかけた1皿。野生のマッシュルームを使ったムーミンシェイプのパイもキュート。しっかりした豚肉は噛むたびに美味しさがじんわり口の中に広がり、ソースとの相性も抜群。パイもふわっと柔らかな食感でキッシュ的な感覚で味わえる。
デザートは、「QUARK PANCAKES WITH COGNAC-LACED STRAWBERRY JAM AND WHIPPED CREAM(L)」。ムーミンママが作るパンケーキやストロベリージャムをイメージしている。外側サクッ、内側ふわっのパンケーキに自然の甘みがギュッとつまったベリーとクリームをどっさり乗せて味わおう。
なお、メニューには「タンペレホール」の屋上菜園で作られた野菜がふんだんに使われており、物語に出てくる食事がムーミン谷や周辺の森で採れる食材で作られるように、レストランのメニューも地産地消ですべてがまかなわれている。大人向けのメニューは1~2カ月で季節に合ったメニューに変更されるとのこと。
もちろん、「TUHTO」では、キッズメニューも用意。「MOOMIN MENU FOR KIDS」として「TUHTO BURGER and french Fries L」(6ユーロ、約780円)、「SNUFKIN'S FISH PLATE and mashed potatoes L,G」(7ユーロ、約910円)の2種類。ともにボリューム大でパークやホールではしゃぎ回ったあとにはぴったりだ。
物語の世界をたっぷり舌で楽しんだあとは、ミュージアムショップにて限定グッズをはじめとするムーミングッズを手に入れよう。「タンペレホール」のエントランスを入ったすぐ左側にあり、マグカップやチョコレート、図録をはじめ多くのアイテムが揃っている。
イチオシは「それからどうなるの?」展でもフィーチャーされていた「たのしいムーミン一家」の表紙絵がデザインされたグッズたち。ミルクチョコレートボックス2個で1つの絵が完成する「Muumimuseom suklaalevyt」(各4.9ユーロ、約640円)や、飾るのにぴったりなポストカード「Large panorama postcard」(4.4ユーロ、約570円)。さらにマグネットの「Muumimuseon panoraama Taikurinhattu magneetti」(9ユーロ、約1170円)など。なお、現在はフィンランド語と英語のみだが、図録の「Muumimuseon nayttely julkaisu」(28ユーロ、約3640円)もぜひ手に入れたい。
ホールにはほかにもさまざまなエリアが満載。「ムーミン美術館」の入口横には、フォトスポットが設置され「ムーミンパパ海へいく」の世界に旅立つことができる。小船に乗ったり、フォトプロップスを使ってポーズをしたりと、とっておきの1枚が撮影できる。
また、世界から寄贈されたムーミンシリーズの作品が自由に読める図書館「ムーミン美術館のライブラリー」も用意。現在20言語以上の翻訳本が並べられ、いつでも好きなときにムーミントロールたちに会うことができる。トーベ・ヤンソン作の短編や長編諸説、関連本などもあり、大人も子供も楽しめる空間だ。
ムーミン美術館
所在地:Tampere-talo, Yliopistonkatu 55, Tampere
Webサイト:ムーミン美術館
「ムーミン大好き!」なシェフによる創作料理をタンペレ市内でゆったり味わおう
「ムーミン美術館」から徒歩2分ほどの場所に立地するレストラン「Myllärit」では、幼いころからムーミンシリーズに親しんできたシェフ、Jarkko Seuranta氏が生み出す創作料理が味わえる。同氏は「幼少からムーミンシリーズを読み、とても刺激を受けてきました。
今回、美術館オープンに合わせ再度読み返し何か自分でもできないかと考え、創作メニューを生み出すことに挑戦しました。物語のなかの食事をそのまま表現するのもいいのですが、僕はひとひねり加えてオリジナル要素を加えました。食べ進めると物語を読んだ方ならばハッとする魔法もかけてありますのでお楽しみに。
しばしばよい物語は素敵な食事を生み出します。そして、その逆もしかり。ぜひ、僕なりのムーミンシリーズへの愛を味わってください」とコメントしてくれた。
訪れたのがメニュー提供初日だったため、スペシャルなデコレーションがテーブルに施されていた。ロリポップやクッキーがたっぷり入ったムーミンマグなどが並べられ、ちょっとしたパーティ気分に。テーブルセッティングのヒントも散りばめてあり、そのかわいらしさに釘付け。
今回味わうことのできたメニューは、前菜が「Grav lax and potatoes」(9.5ユーロ、約1240円)、メインが「Meat from a casserole」(20.5ユーロ、約2670円)。そしてデザートが「Rubiiniko」(10ユーロ、約1300円)の3品。セットでオーダすると33.5ユーロ(約4620円)で、14時以降のディナータイムに提供する。
「Grav lax and potatoes」は、「ムーミンパパ海へいく」のワンシーンからインスピレーションを受けて生まれた1品。ムーミンママのランチボックスをもとに、ポテトやグラブラックスをメインに仕上げている。
メインの「Meat from a casserole」は、「小さなトロールと大きな洪水」でムーミントロールとスニフが寒い夜に食べたものを想像して生まれたそうだ。スモークラムや大麦などとともに、トウヒの新芽が添えてある部分がポイント。優しい味わいで旅の疲れも忘れられる美味しさ。スモークラムの柔らかさもちょうどいい。
そしてデザート「Rubiiniko」はムーミンマグの新作でも使われている「たのしいムーミン一家」の表紙絵のようなカラフルな1皿。マグの底で作ったような、ぽってりフォルムのパンナコッタはすっとした口溶け。パンナコッタを食べ進むと飛行おにが探しているルビーの王さまのように真っ赤なベリーソースが流れ出て来るサプライズも。お皿のベリーをさまざまな愛に見立て、ときに酸っぱく、そして甘い感情を表現している。
Myllärit
所在地:Åkerlundinkatu 4, Tampere
Webサイト:Myllärit
1時間30分の快適な鉄道旅。ヘルシンキからタンペレへの移動はVRで
「ムーミン美術館」がオープンした「タンペレホール」はヘルシンキから北に160km、フィンランド鉄道(VR)で約1時間30分ほどの場所にある第3の都市タンペレにある。タンペレはナシ湖とピュハ湖の2つの湖の間にあり、高低差を利用した水力発電で繊維産業や機械工業などが発展した産業都市でもある。現在は工場跡を再利用し、商業施設や美術館などに改装、当時の趣はそのままに、多くの観光客らを迎えている。
今回タンペレまでの移動に利用したのは長距離列車。専用予約サイトから乗車したい列車を選択し、チケットを発券してクレジットで支払いを済ませるだけでOK。Extra Class とEco Classなどがあるが、Eco Classを選び18ユーロ(約2340円)。ヘルシンキ中央駅14時27分発、15時56分タンペレ着の列車でしばしの鉄道の旅を楽しむことができた。
列車の中は、清潔で比較的ゆったり。大きなスーツケースは、出入り口横のラックに収納しておくのが賢明だ。2~3泊用の小型のスーツケースなら、足元に倒して収納できるくらいの余裕はある。座席ナンバーを確認して着席するが、グループ利用の場合はテーブルを囲んだ4名席の予約がお勧め。テーブルは2段階に広げられ、サイドにはゴミ袋や電源も用意されている。なお、ゴミ袋はそのまま半分はがし、引っかけるようにして使おう。Wi-Fiも完備しており、速度テストをしてみたところ、下り1.24Mbps、上りが5.56Mbpsだった。
車窓から自然豊かな風景を眺めているとあっという間に「タンペレ駅にまもなく到着」とのアナウンスが流れた。途中、車掌による乗車チケットのQRコードの読み取り確認があるのでいつでも出せる場所に忍ばせておくことも忘れずに。
「ムーミン美術館」のオープン初日の様子を中心にお届けしたが、移動に使ったVRも快適で、バスに比べ時間短縮ができるため利用をお勧めしたい。美術館でゆったりと作品を鑑賞して、こだわりメニューで至福のひとときが過ごせるタンペレ。次回は、フィンランドで話題のアート地区や街を一望できる展望台などをご紹介する。