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いよいよ3月20日開幕、「瀬戸内国際芸術祭 2016」の一部を事前紹介

瀬戸内の島々を舞台にアート作品を巡る旅

2016年3月18日 実施

「瀬戸内国際芸術祭 2016」の展示作品の中でゴロン。体全体でアートを体感できるのも瀬戸内国際芸術祭の魅力の1つ

 瀬戸内海の島々を舞台に3年に1度行なわれる現代アートの祭典「瀬戸内国際芸術祭」が3月20日に開幕する。その開幕を控えた3月18日、19日の2日間、プレス関係者を対象としたプレスプレビューが実施されたので、第1回目となる3月18日の模様をお届けする。

 瀬戸内国際芸術祭は、2010年の初開催、2013年の第2回に続く3回目の開催で開催期間は春(3月20日~4月17日)、夏(7月18日~9月4日)、秋(10月8日~11月6日)と3つの会期に分けられ、今回は春会期分のプレビューとなる。開幕時点で34の国や地域から参加した226組(人)の作家による206作品の展示と、38のイベントが実施される。

瀬戸内国際芸術祭の会場となる島々

全会期:直島、豊島、女木島、男木島、小豆島、大島、犬島
春のみ:沙弥島
秋のみ:本島、高見島、粟島、伊吹島
そのほか:高松港・宇野港周辺

 今回のプレスプレビューでは香川県の高松港から小豆島、男木島に渡り、9作品を見学した。

作品巡りは島巡り。その移動もまた楽しい

小豆島

 小豆島はこの芸術祭が開催される島の中で最も大きく、島内にホテルや旅館も多い。また島内はバス移動のほか、レンタカー利用や自家用車の乗り入れも可能だが、島の雰囲気を肌で感じながら作品を楽しめるバス+徒歩やレンタサイクルの利用がお勧めだ。

レンタサイクルで島内を走り回り、作品を見学するのがお勧め
島内はバスでの移動も可能
山間部の棚田が素晴らしい。緑に染まった夏が美しいとのことだ
「アートノショーターミナル」(コシノジュンコ/アトリエオモヤ、作品No.70)
コシノジュンコの作品

 既存の土庄港フェリーターミナルを改装した作品展示やイベントなどの開催スペース。コシノジュンコのファッション作品やアトリエオモヤとの共同作品などが展示されていた。なお、この作品は11月6日まで連続で展示される。

小豆島・土庄港フェリーターミナルがコシノジュンコ/アトリエオモヤの作品スペース
コシノジュンコとアトリエオモヤの合作が来場者を迎える
「大岩島2」(大岩オスカール、作品No.73)
「大岩島2」(大岩オスカール、作品No.73)。扉を開けようとしているのが大岩オスカール氏

 旧醤油倉庫に作られた立ち入りのできるエアドームの作品。倉庫の窓からの光や倉庫の水銀灯などが透けて季節や時間によってドームがその表情を変える。

かつての醤油倉庫が「大岩島2」の舞台
外の光によってドーム内の雰囲気も変化する
「迷路のまち~変幻自在の路地空間~」(目、※作品No.72)

 狭い路地が入り組む迷路のような土庄本町地区のたばこ屋や飲食店にさまざまな仕掛けを施した回遊型の作品。蟻の巣のような内部に見える窓などはすべて元となった建築物の構造どおりに活かしているのもおもしろい。

飲食店に仕掛けを施した「迷路のまち~変幻自在の路地空間~」
制作風景を見学
内部を歩くことができる
「オリーブの夢」(ワン・ウェンチー[台湾]、作品No.77)_

 オリーブをテーマとし約4000本もの地元産の竹で作られた巨大ドーム。内部は自由にくつろげる空間で、見事な棚田に囲まれたそのロケーションは圧巻。

棚田が美しい山間部が舞台の「オリーブの夢」
竹をドーム型に編んでいる

 小豆島での昼食は初開催時の2010年から棚田が美しいこの地で営業を始めた「こまめ食堂」でいただいた。島の近海で獲れた舌平目の唐揚げや手なが_蛸のてんぷら、小豆島オリーブ牛のハンバーグなど地元産の食材をふんだんに使った料理が味わえる。もちろんご飯は棚田米(コシヒカリ)だ。

「こまめ食堂」
地元産の食材をふんだんに使った「こまめ食堂」での料理

男木島

 平地の少ない小さな島ではレンタサイクルもしくは徒歩移動となるが、細く曲がりくねった坂道だらけのエリアが多いので徒歩での見学が向いている。山の斜面に張り付いたような古い集落の石垣に囲まれた小道の風情はそれだけで魅力的だ。

傾斜地に民家が密集する男木島
港にある作品(「男木島の魂」ジャウメ・プレンサ[スペイン]、作品No.53)
集落全体に張り巡らされているこのような道を歩き、集落に点在する作品を楽しむ
このように看板が設置されているので島に点在する作品を探すのは簡単だ
島にある図書館はこの島に移住してきた方が運営している
十分に作品を堪能したら次の島へ向かう
「アキノリウム」(松本秋則、作品No.58)_

 1階に「影絵の展示会場Sound Theater」、2階に「サウンドオブジェ屋敷」という構成。屋敷内のサウンドオブジェが奏でる自然の音と映像にしばし時を忘れ癒される。

1階の「影絵の展示会場Sound Theater」
2階に仕掛けられた数々のサウンドオブジェ
サウンドオブジェが美しい音色を奏でる
「自転 - 公転」(リン・ティェンミャオ[中国]、作品No.60)__

 空家を利用し、すでにその役割りを終えた道具や日用品が動きだす様は、ちょっと不思議な感覚だ。

1本につなげられたかつての日用品が回る
舞台となる空間は非常に趣のある部屋
連なっているのは見覚えのあるようなものばかりだ
「部屋の中の部屋」(大岩オスカール、作品No.64)

 小豆島でも作品を展開している大岩オスカール氏の作品。

90度回転した和室(写真の天地は間違っていません)
畳の垂壁にちゃぶ台
この家の中に回転された部屋があるのだ
「カレードスコープ ブラック&ホワイト」(川島猛とドリームフレンズ 、作品No.57)

 1963年からニューヨークを拠点に活動してきた川島氏の作品。2016年のこの芸術祭をきっかけに故郷の高松に活動拠点を移したとのことだ。

「カレードスコープ ブラック&ホワイト」
独特の模様による独特の世界観
入り口にはDream Cafeがある
「青空を夢見て」(レジーナ・シルベイラ[ブラジル]、作品No.66)

 男木小学校・中学校の体育館にペイントされた青い空と光はこの地の空をイメージした作品。晴れた夏の日には壁と空が一体化するという。

男木の青い空をイメージしたという「青空を夢見て」
夏の暑い日の空とつながる体育館の壁面
プレビュー当日は残念ながら曇り

 小豆島、男木島ともにそれぞれのロケーションと作品が見事に調和しているのが印象的だ。個々の作品の素晴らしさはもちろん、その地域の魅力も強く感じられ島全体が作品のような雰囲気を感じる。特に男木島ではこの芸術祭をきっかけに島に移住する者が増え、一度廃校になった小・中学校が復活するという全国的にも珍しいケースが生まれた。しかも今年度より学校が新築されたというから驚きだ。

 作品が島に人を呼び、作品が島を魅力的に魅せ、そして島が作家の創作意欲を刺激したり、作品のさらなる魅力を引き出す。そんな関係が非常に心地よい瀬戸内国際芸術祭。本記事で紹介したのは、全206作品中のわずか9点。制作過程のほんの一部の作品に触れたに過ぎない。

 季節ごとにその表情を変えるであろう島の風景と作品に出会うために瀬戸内の海へ足を伸ばしてはいかがだろう。

高松港付近にも作品が展示されている(「国境を越えて・海」リン・シュンロン[台湾]、作品No.172)
こちらも高松港付近の作品の一部(「銀行家、看護師、探偵、弁護士」ジュリアン・オピー[イギリス]、作品No.173)
公式ガイドブックには全作品の紹介のほか島々の飲食店や旅に役立つ情報が満載

(高橋 学)