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1日7万台走る首都高羽田線、東品川桟橋・鮫洲埋立部の更新線全体がついに完成。まもなくルート切り替えへ

2025年10月22日 公開
更新区間の構造物が完成。2025年10月29日1時から下り線を更新ルートへ切り替え。荒天時は予備日(10月30日、31日)に順延

 首都高速道路は10月22日、1号羽田線「東品川桟橋・鮫洲埋立部」のリニューアル工事現場を報道陣向けに公開した。

 同区間は現在、暫定措置として先に更新が完了した上り線を下り線として運用しているが、工事着手以来約10年をかけて更新構造全体が完成。10月29日1時に本来のルートとなる更新下り線に切り替えられる。

 なお現在、仮設う回路を利用している上り線の切り替えは2026年以降を予定しており、それに伴う工事の一環として2026年春ごろの週末2日間を利用して下り線の通行止めを行なう予定。加えて、時期は明言していないものの上り線の切り替え時には大井JCT(湾岸線からの流入路)が長期間通行止めになることもあわせて予告されている。

東品川桟橋・鮫洲埋立部更新の概要

 首都高では「首都高リニューアルプロジェクト」として「池尻・三軒茶屋出入口付近」「竹橋・江戸橋JCT付近」など約9.1kmの区間で大規模更新事業を行なっており、東品川桟橋・鮫洲埋立部はその第1弾として2016年に工事着手したもの。

東品川桟橋・鮫洲埋立部の模型と断面図

 同区間は1963年の開通以来、東京と神奈川の臨海部を結ぶ動脈として利用されてきたが、1日約7万台もの交通量に加え、海水面に近いことから構造物が腐食しやすいなど過酷な環境にあり、近年では重大な損傷が多数発生していたという。

 そこで、海水面からの離隔を確保するとともに橋脚の防食対策を強化したうえで、維持管理の利便性を高める「恒久足場」の導入などを核としたリニューアル工事をスタート。ただし、この区間は東京モノレールと陸地に挟まれた狭隘なエリアであるとともに長期間の通行止めが難しいことから、う回路を設置して片方向ずつ撤去、新設を行なう工程を採用。

 具体的には、まず「上り線のう回路を設置」したあと「上り線を撤去し更新」、更新した上り線を下り線として利用しつつ、「下り線を撤去し更新」。上り線および下り線が完成したあとでそれぞれを「本来のルートに切り替え」、最終的に「う回路を撤去」して完成という複雑なステップを経ることになった。

 今回の下り線の切り替え後は、上り線の切り替え、大井JCT連絡路の切り替え、う回路の撤去と進み、工事完了は2030年度の予定となっている。事業費は当初912億円とされていたが、鋼材を中心とした部材や労務費の高騰などにより1627億円を見込んでいる。

更新計画
施工ステップ
今後の予定
大井JCT再接続
舗装盤下げ

リニューアル工事現場

品川シーサイド駅付近から東京方面
画角は異なるがほぼ同地点から2019年10月に撮影したもの
同地点から神奈川方面
下り線上。切り替え後はここをこちらに向かって走ってくる
速度標識などの看板類は準備済み
陸地側の側壁は透明樹脂だが海側は金網になる
ジョイント部は従来に比べて非常に少なくなっている
5mmほどの粒を固めた小粒径ポーラスアスファルト舗装を採用。いわゆる高機能舗装で撥水性、低騒音性に加え遮熱効果も有している
路肩部を広くすることで総幅員を17mから18.2mに拡幅
上下線間にある擁壁には将来的に遮音壁を追加可能にするための準備工事が施されている
桟橋部の下側。すべて恒久足場でカバーされている
従来の路面より大幅に高い位置に道路があるのが分かる
橋脚は大気部には金属溶射を下地とした重防食塗装が施され海中部および飛沫部(最高海面レベルから1m)はステンレスライニングでカバー
恒久足場外観。整備や点検を行なう足場としてはもちろん塩害を防ぐ役割も持つ
恒久足場の側面に出入り口を設けている
恒久足場内部。高さ1.8m以上を確保している
足場を兼ねる外板
非常口の表示もある
上を横切っているのが大井JCTからの流入路
う回路と更新上り線は高さが異なるため上下線の切り替えが終わったあとに主桁を持ち上げ接続する(2019年10月撮影)。合流部(イカの耳と呼ばれているという)はこの時点ですでに完成している
流入路下部。現在は橋脚下部にある梁を恒久足場部分に移設することで主桁の高さを変更する
イカの耳に近い「P7」橋脚。現在の位置から6mあまり主桁を持ち上げることになる
埋め立て部は古い道路を通路として部分的に再利用。右に見えているのがプレキャストボックス内への入口
プレキャストボックス内部。2m以上の高さが確保されており点検などを容易にしている
プレキャストボックスは1セグメントあたり幅5m(+梁3m)×長さ1.5m。セグメントを11個つないでブロックとしPC鋼線により上下を緊張して固定する。1日で3セグメント程度設置できるという
写真は25ブロックと26ブロックの接合部。ブロックごとに緊張されているのが分かる
隣の空間へ移動するための出入口が数か所用意されている

「100年先まで安全安心な道路」目指す

首都高リニューアルプロジェクト

 現場公開を前に、現場詰所において概要説明も実施した。

 首都高 更新・建設局 局長の高野正克氏は、「首都高の大規模修繕事業の第1弾で2016年に着手して、およそ10年が経過して下り線の部分の構造物が完成」したと述べ、「さまざまな新しい技術(の採用)や海沿いという環境への配慮、維持管理性を向上させた構造物など非常に多くの工夫」により、「100年先まで安全安心な道路」を目指しているとコメントした。

 2020年に先行して完成している将来の上り線(現在は下り線として運用)とあわせて、更新区間の構造物が完成したことから「我々としては大きな区切りであると感じている」と振り返った。

首都高速道路株式会社 更新・建設局 局長 高野正克氏

 続いて更新・建設局 事業推進部長の石田高啓氏が工事の概要を説明した。今回の工事区間は全長約1.9kmのうち都心側(東品川区間約1.3km)が桟橋構造、神奈川側(鮫洲区間約0.6km)が埋め立て区間と構造が異なると前置き。

首都高速道路株式会社 更新・建設局 事業推進部長 石田高啓氏

 まず、東品川区間においては海水面と道路面の距離が約3m(※)ほどしかないことから海水の影響で鉄筋コンクリートがかなり腐食しているうえ、満潮時はもちろん水位が下がっても中間梁により中に入ることができず、点検や補修が困難だったと説明した。

 そこで今回の更新では海水面から約12~20mと大幅に引き上げることで塩分の影響を受けにくくするとともに、道路下部に恒久足場を設けることにより点検のしやすさと飛来塩分を遮断する構造を採用。橋脚部は海水面に近いところをステンレスライニングとすることなどにより腐食を防ぐ構造にしていると述べた。

※東京湾の平均的な海面高さ(TP+0.0m)

東品川区間の損傷状況
更新イメージ
更新構造
橋脚部
恒久足場
工事進捗状況

 鮫洲区間においては、建設時に早期開通が要求されたことから「鋼矢板で仕切った内側を埋め立てて上部をタイロッドで固定」する工法が採られていたが、長期間の負荷によりタイロッドが破断し鋼矢板が変形、中の土砂が流出することで路面のひび割れや陥没が発生していた。

 対策としてグラウンドアンカーによる補強工事を実施したものの、「100年先まで安心安全な構造」を目指し抜本的な更新に着手。新たな躯体はエポキシ樹脂被覆鉄筋を採用したコンクリート製中空プレキャストボックスとし、耐久性および維持管理性を向上。プレキャストボックス下は液状化対策など地盤改良を行なっていると説明した。

鮫洲区間の損傷状況
更新イメージ
更新構造
プレキャストボックスカルバート
工事進捗状況