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ジムニー5ドアに電動ポップアップルーフ! 東京キャンピングカーショー2024を見てきた。寝ることを重視したシンプルキャンパー増

2024年7月20日~21日 開催

東京ビッグサイトの東7・8ホールにて、東京キャンピングショー2024が開催

 JRVA(日本RV協会)は7月20日~21日にかけて、東京ビッグサイトで「東京キャンピングカーショー2024」を開催した。

 キャンピングカーと聞くとアウトドア派のための旅クルマのように思えるが、そもそもキャンピングカーはホテルや旅館のような居心地のよい環境を宿泊施設がない旅先で利用したいというユーザーのための乗り物だ。つまり不便さや非日常を楽しむアウトドア趣味ではなくてインドア的な志向が強いものである。

ホテルや旅館の部屋のような居心地のいい環境をどこでも得ることを目的としたのがキャンピングカー。キャンピングという言葉は使うがアウトドアのキャンプとは異なる趣味嗜好といえる

 しかしここ数年、車中泊の人気が高まってきたことから、車内の装備を簡略化して「寝ること」を重視したライトなキャンピングカーの人気が上がっている。しかも直近の状況ではファミリーでの利用ではなく、ソロやペアといった少人数での利用を前提とするユーザーが増えているそうだ。

 理由として考えられることに「子供の成長」があるという。子供が小さいころは一緒に出かけることも多かったが、成長するにつれて一緒に行動する機会が減る。そうなると大きなキャンピングカーを所有している必要はなくなるので、車中泊レベルの機能に抑えたキャンピングカーに乗り換えるということだそうだ。

大型のキャンピングカーからソロやペアで利用するのに適したサイズに乗り換えるケースも増えているという

 余談だが最近増えているのが、子育てが終わった世代の人が、今度はペットを連れて旅行に出かけるというケースで、そのために装備が充実したキャンピングカーを求めるという傾向。

 実際、ここ数年のキャンピングカーショーではペット連れで来場する人が多く、出展者側もニーズに応えるためペット連れ旅を意識した作りの車両を製作している。

こちらはペット連れ旅行を意識した車両。キャンパー鹿児島のワンダーARというモデル。ペットが乗り降りしやすいようスロープもあわせていた。ベースはトヨタ ハイエース スーパーGL
シート素材を爪のひっかきに強いものにしたり、内装素材をニオイの付きにくいもの、水拭きしやすいものとしている。クーラーも標準装備でスイッチボックスの正面にはペットが触れても大丈夫なようにカバーが付く

 さて、話を戻すと装備を抑えたキャンピングカーは車内で過ごすより、車外にテーブルやチェアなどを展開する使い方になるので、出かける先もオートキャンプ場や車外調理OKのRVパークになってくる。そして就寝のスタイルも車内で寝るだけでなく、天気やロケーションなどによってテント泊も使い分けるというスタイルを取る人も増えているのだ。

 また、最近は日本各地で熊や猪など大型野生動物との遭遇が報道されているので、そこに不安を感じているとしたら、現地の状況に応じてテント泊と車中泊が選択できるスタイルに切り替えるのは大いにアリだと思う。

 なお、調べてみたところ、こうしたにキャンピングカーの利用法にぴったり該当する呼び名が見つからなかったので、本稿では和製英語である「オートキャンプ」と表現していこう。

テント泊と車中泊を使い分けるキャンプスタイルも増えている。ライトなキャンピングカーはこういった用途にちょうどいい。写真は神奈川県にあるロッキー2が出展していたホンダフリード(旧モデル)
こちらのショップは中古キャンピングカーも扱っていて写真のクルマも中古車だった。車両持ち込みでの製作も受けているという

ミニバン、軽ワゴン車向けのエアベッド

 テント泊と車中泊が選択できるスタイルは野生動物うんぬんだけでなく、天候の急変にも対処できるし女性キャンパーであればほかの利用者との関係に問題がありそうなときにも便利である。

 そう考えるとオートキャンプ仕様車を所有することに魅力に感じるかもしれないが、まずはいま乗っているクルマをオートキャンプに適した仕様に変えてくれるギアから紹介していこう。

 こちらはホワイトハウスキャンパーが出展していた「Wahahaエアベッド(ワハハ エアベッド)」だ。

 名前にあるとおり空気で膨らませるタイプのエアベッドだが、内部には数千本の柱があり、空気を入れることで張りがとてもつよくなる。そのためエアベッドにありがちな沈み込みの多さや、寝返りするたびの空気の移動による不自然な偏り感がないという。エアベッドでありながら寝心地は家庭用のベッドマット(しかも少し堅めのもの)のように快適なのが特徴だ。

ホワイトハウスキャンパーが出展していたワハハ エアベッド。以前は「TAKIBI」というブランド名だったが「Wahaha」に変更されている
サイズ展開、および価格(会場持ち帰り価格)。収納バッグ、補修キット、充電式のエアポンプは標準装備

 ワハハ エアベッドの装備サンプルとして展示されていたのは新型N-BOX。このクルマはシートアレンジとしてフラットな展開もできるが、シート形状からそれなりの凸凹ができてしまう。

 そこにマットレスとしても形状を保持するワハハ エアベッドを敷くと、就寝に適したフラットで適度にクッションが効いた環境を作ることができていた。

 マットサイズは数種類の設定があるので、所有するクルマの車内サイズに合わせて選択を。テント代わりの車中泊を手軽にやってみたいという場合は、こうしたエアベッドから検討してみるのもいいだろう。

どうしても段差できるフルフラットシートでもこのとおり平らなベッドになる。ベッド自体の張りが強いので段差の上に敷いても段差があまり気にならない
軽ワゴンにあわせた設定なのでN-BOXだけでなくも使用できる。ほかのサイズもあるのでミニバンなども同様に平らなベッド化はできるだろう。「クルマをテント代わりにする」仕様としてはもっとも手軽であり快適性も十分のように思えた

ルーフテントを利用する

写真はポルトガルの「ジェームス・バロウド」という世界的に人気のルーフテントメーカーのシリーズ

 SUVに似合うのがルーフテント。ルーフの上にキャリアを介して折りたたみ式のテントシェルを搭載。普段はたたんだ状態で積んでおき、キャンプ地で展開するという利用法だ。

 テントのルーフがまっすぐ持ち上がるタイプのほか、貝のように片側のみ上がるタイプがある。どちらもシェルは強度と耐候性に優れたFRPもしくはABS製。

 展開した際にサイドを覆うテントキャンバスは太陽光の反射性、紫外線、熱、そして雨への耐性にも優れたものとなっている。さらにソーラーバッテリで駆動する換気扇を装備するモデルもあるので、より快適に過ごすこともできる。

 ルーフテントは、車内で足を伸ばして寝られるスペースを取れないクルマにゆったりと寝るスペースを追加するアイテムなので、セダンやハッチバックのほか、N-ONEやアルトのような軽乗用車、そしてジムニーなどに装着されることも多いという。

居室が広いのがルーフがまっすぐ上がるタイプ。ルーフテントの重量は60kg前後。たたむと高さは抑えられるので高さ制限のある駐車場を利用するクルマにもあいそうだ
テントキャンバスには窓があり、さらにメッシュの幕もあるので開けると、高さとあわせて開放感が気持ちいい
クッションは寝心地のいいインナーウレタン製
ルーフ裏にはネット収納もある。また、LED照明も付いている

ジムニー5ドアに装着されていた電動ポップアップルーフ

日本未発売のジムニー5ドアに電動ポップアップルーフを装備したホワイトハウスキャンパーの展示車(参考出品車)

 ホワイトハウスキャンパーは日本におけるポップアップルーフの代表的メーカーで、品質、耐久性、居住性に優れた製品を多くの車種に設定しているが、ジムニー5ドアに装着されていたのは開発を進めている電動ポップアップルーフ。

 このアイテムは今年初めに幕張メッセで開催されたジャパンキャンピングカーショーで展示された「スカイデッキ」という電動ポップアップルーフをベースにしたもので、開発中のモデルはルーフトップをメタル製からFRP製に変更されてた。

 ルーフの開閉は電動式。それぞれのダンパーには専用マイコンで制御するモーターが取り付けられているので左右ダンパーの伸縮具合は完全にリンクしたスムーズなものになっている。

 また、挟み込みを判断するトルクセンサーも付いているので、もし、テント内に高さのある荷物が残っていたり、荷物などがはみ出していても自動で止まる安全機能も装備している。

ホワイトハウスキャンパーはポップアップルーフの代表的メーカーで、こちらのN-BOXのほか、多くのモデルにポップアップルーフ仕様を設定している
開閉用モーターは左右のダンパーにそれぞれ付いている。ストローク量は30cmほどで、ルーフはリンクを介して上下する。動作速度は安全を考慮してゆっくり目に設定している
ルーフを閉じた状態
ポップアップルーフへの入口。車体のルーフの一部を切断するが、車両ごとに開口していい場所とそうでない場所があるのでそこを見きわめながら作業する必要がある
スカイデッキはメタルルーフだがこちらはFRPなので軽量になっている。また、車種ごとの金型を必要としないので、適応車種を広げても製造コストが抑えられるのという利点もある

 電動ポップアップルーフはさらに開発を進めていき、その後に製品として発売していく予定とのことだが、同時に海外のキャンピングカー市場への輸出も開始するという。

 キャンピングカーの文化は海外から入ってきたものだけに輸入品も多く、ハイエースなどバンコンモデル用パーツは日本国内での流通が主なだけに、メイドインジャパンのキャンピングカー用品が本場の市場に出て行くことは応援したい気持ちになる。

日本未発売のジムニー5ドアに電動ポップアップルーフという組み合わせだけに会場での注目度も高かった。ジムニー5ドアは海外で人気モデルなだけに電動ポップアップルーフは海外向けとして発売していく予定とのこと

道具へのこだわりが強い人向けのキャンピングカー

 テント泊などを行なうアウドドア好きの方では、使用するギアへのこだわりが強い傾向もある。それだけに、オートキャンプ用のクルマを検討する際にも同様にこだわりがあるはず。そこでここからは道具的な視点でも魅力ある車両を紹介していこう。

軽トラック荷台のボックス内部を山小屋風の居室に仕立てているのがミシマダイハツの「クオッカ」

 ダイハツのハイゼットトラックパネルバンをベースにしたキャンピングカーが「クオッカ」。軽トラキャンパーのなかでは人気の高いモデルである。

 そんなクオッカの新作がこちら。内装材に富士ヒノキをふんだんに使用した「クオッカ・ジャパンデイ」で、パネルの内部、天井、壁、床には断熱材が入っているので空調の効きもよく、内装の壁は木チップやパルプなどから作られて、通気性、透湿性に優れたルナファーザーという壁紙を使い、さらに漆喰塗り風の仕上げにしているという凝ったもの。

クオッカ・ジャパンデイのインテリア。富士ヒノキがふんだんに使われている
漆喰塗り風の壁

 ベンチ兼ベッドの長さは1850mmあり、引き出しを開くように取っ手を引っ張ることで容易にベットへ展開できる。

 電源は100Aのサブバッテリーを標準装備しているので、オプションのエアコンを付けた際でも十分な時間稼動させることができる(弱での使用)。

 車内の雰囲気がいいのは見てのとおりだが、ボディカラーも標準のホワイトのほか、アウトドアシーンに似合うサンドベージュメタリック(展示車)とフォレストカーキメタリックを用意している。

ベンチを手前に引っ張ることでベッド展開できる。なお、ベッド展開のための足場を確保するため、あえて前後2分割にしている
手順としては片方を引き出したあと、今度は引き出したベッドの上に移動し、残りを引き出すというもの。これなら引き出しの作業のために車外に出る必要がない

働くクルマを作る工場が手掛ける軽キャンパー

 キャリィトラックがベースのキャンパー。モーニングワン キャンパージャストという車両だ。メーカーの新相武はマツダの新車ディーラーであり、さらに積載車やローダーダンプカー、クレーン車など特装車両の製作も手掛ける。

モーニングワン キャンパージャスト。NAの660cc、4ATという仕様だが、高速道路を80km/hほどで巡航できるという

 いわゆる働くクルマを作る工場が送り出す軽キャンパーなので、ボディ加工をする際の強度検討もしっかり行なっているし、細かい部分の作りも働くクルマ基準。ハデさはないが質を重視するアウドドア好きには響くメーカーだと思う。

 また、クーラー、105Aサブバッテリー&インバーター、外部AC入力、ポップアップルーフなど装備しつつ346万5000円と、この手の軽キャンパーのなかでは価格が安いのも特徴。

インテリア。過剰な装備がない。外調理や外でのリラックスタイムを楽しむオートキャンプでは車内のシンプルさはむしろ好印象
ポップアップルーフは寝る場所というより荷物置き場だったり、着替えや移動などで背をかがめることなく立てることが利点

大手キャンピングカーメーカー製の高品質軽キャンパー

ハイゼットベースのルネッタ

 続いてはバンテックというメーカーのルネッタ。バンテックは大型の高級キャンピングカーを数多くリリースするキャンピングカー界のハイブランドだが、ルネッタはそんなところが製作している軽キャンパーとなる。

 製作の狙いを聞いてみたところ、年齢層が高めのキャンピングカー業界にもっと若い層が入って来てほしいということから企画した車両とのこと。そのため車両価格は2WDで370万2000円に設定している。なお、ベース車はダイハツのアトレーである。

 車内は女性ユーザーも意識した明るい配色だが、男性でも抵抗なく使用できるもの。装備はステンレス製スクエアシンク、オーバーヘッドコンソール、着脱式マルチテーブル、フルフラットベッドマットとシンプルだがオートキャンプ用途では十分。

 ベッドマットは取り外せてリアに格納できるのでキャンプ用の道具も積み込めるし、セカンドシートも使えるので普段使いでも不便はないだろう。

エントリーモデルながらインテリアは高品質。シンク、オーバーヘッドコンソール、テーブル、ベッドマットは標準装備
オプションのプルダウンベッド。ベッド長は1600mmなので小柄な人か子供向け。もしくは荷物置き場として利用
プルダウンベッドを降ろした状態。操作は簡単だが車外に出る必要はある

親子で使える2段ベッドのキャンピングカー

フォーシーズの7Gアソート。キャンピングカーでは人気のトヨタ ハイエース スーパーGLがベース。ボディサイズも大き過ぎないので普段使いでも不便はないし、キャンプ場へ向かう山道での取り回しもいい

 親子でキャンプを楽しんでいる人も多いので、続いては2段ベッドのキャンピングカーを紹介しよう。

 千葉県にあるフォーシーズが出展していた「7Gアソート」というモデルだ。ベースはトヨタ ハイエースバン スーパーGLで乗車定員は7名、就寝定員は4~5名の設定。

 インテリアはビルトイン給排水(コンロ取り付け可)、フロントシート張り替え、キャンピングカー用セカンド&サードシート、2500mm埋めこみ式ロングスライドレール、両側サイドボックス、上段用ベッドマット、走行充電式サブバッテリー、天井・壁の断熱加工、カーテンなどが標準装備。

 ベッドは下段が2200×1300mm。大人が寝るには長さは十分だが幅が余裕がない。そのため家族で寝るには狭さを感じる。そこで上段のベッドを活用する。上段ベッドはスライドドアがある分、長さが取れず1450mm長のサイズとなる(幅は1450mm)。子供であれば寝られるだろう(斜めに寝れば長さも取れる)。

ファミリー向けのキャンピングカーでは装備が豪華になることも多いが、オートキャンプでは過剰装備になるし、装備が多ければ車両価格も上がる。その点、7Gアソートはちょうどいい
上段ベッドのサイズは1450×1450mmと大人は厳しいが子供なら使えそうだ

 今回はテント泊と車中泊を切り替えるというお題から装備がシンプルなものを選んでみたが、人によっては装備が充実したモデルが理想ということもあると思う。また、キャンピングカーはベース車が同じでもビルダーごとの特徴もあるので、本当に導入を検討するなら現物を見ることをお勧めする。

 今回のようなキャンピングカーショーは全国開催しているので、近くで行なわれるときに出かけてみてはいかがだろうか。