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ハワイ観光のキーマン3人に聞く。「体験型ツアーと地元への還元が満足度につながる」とハワイ州観光局ミツエ・ヴァーレイ日本支局長
2022年6月15日 12:00
- 2022年6月6日~9日 開催
ハワイ州観光局日本支局は旅行業界パートナーを対象とした「ジャパンサミット」を3年ぶりに6月6日から実施した。その期間中、ハワイ・ツーリズム・オーソリティ(HTA)ブランド責任者のカラニ・カアナアナ氏をはじめ、ハワイ州観光局 日本支局 日本支局長のミツエ・ヴァーレイ氏、ハワイ島観光局 局長のロス・バーチ氏それぞれにインタビューを行なった。
日本マーケットの再開・復活に向けての思いや、人気観光エリアに導入された予約システム、さらに今後のトレンドや期待する部分などを聞いてみた。
ハワイが今後リードしていきたい再生型観光を同じ島国の日本と分かち合う
今ハワイ・ツーリズム・オーソリティ ブランド責任者 カラニ・カアナアナ氏は、ハワイ文化事業ディレクターとして、ハワイの文化と自然資源の継承の指揮を取るとともに、「ハワイ州観光戦略プラン 2020-2025」でさまざまな取り組みの責任監督を担ってきた。ハワイ語やハワイの文化に非常に詳しく、ハワイ語とハワイ学の両方で学士号を取得している。
「私たちは4本柱(1. 自然保全、2. 文化継承、3. コミュニティリレーション、4. ブランドマーケティング)を観光戦略の柱にしています。日本マーケットのみならずマーケット全体で大切なのは“ALOHA”ですね。言葉では言い表わせないフィーリングなのですが、地元の人との交流などを通して感じてほしい。そして“WELCOME”されているということも。ハワイアンが守っていきたいものをしっかりと未来へと継承していくことが大切なのですが、その部分を理解し、我々の価値観を一番伝えやすいのが日本マーケットだと考えています」とカラニ氏。
「ダイヤモンドヘッド州立記念公園やハナウマ湾などでオンライン予約システム(PROS:Parks&Recreation Online System)が始まり、ホットスポット(混雑観光エリア)の人流のコントロールが始まりました。自然を守るため、そして体験をよりよく、さらに近隣住民の負担を減らすためですが、ハワイがリードしていきたい再生型観光(Regenerative tourism)を島国である日本の皆さまと分かち合いたいと考えています。マインドフルネス意識が高い、そして自然に実行できる旅行者が日本人観光客であり、そのような意味でも日本のマーケットを復活させるのはとても大事なことなのです」という。
ちなみに、気になるオンライン予約に関しては「現在さまざまなデータを集め学習しているところ。どのエリアに時間帯も含め集中しているかなど、パークマネージャーと共有し、問題を炙り出し検証ながらアップデートしています。全島の10もの州立公園のオンライン予約化を計画中で、まだ先ですが日本語にも対応予定」とした。
ハワイにおける新型コロナウイルス感染症対策については、「第一に旅行者を迎えるにあたり安全が非常に大切。それは州民の安全にもつながります。ハワイはワールドクラスの医療機関が整備され、もしもの際にはHTAがサポートする非営利団体の存在もあります。防御、そして対応・対処をしっかり行なっています。また、ハワイアンの価値観として、人を受け入れた責任というものがあります。ハワイアンの血のなかには、自分のホームに来てもらった人に対ししっかりケアをする責任・アロハスピリットが宿っているのです」と話す。
最後に、観光局として、そしてハワイアンとして、訪れる観光客にどのような体験をしてほしいかも聞いてみた。
「一言でいうなら“ALOHA&WELCOME”です。いろいろなことが世界で起こっていますが、ハワイを訪れているときは癒しや平和な心、アロハスピリットを感じてほしいです。それがハワイアンのプライドでもあるし、願っていること。ハワイという土地はそういう力を持っていますから。
リージョナル・キュイジーヌはもちろん、木からもぎ取ったばかりの甘いマンゴーをはじめ、ファーマーズマーケットで地産地消の、そしてローカルのハンドメイドのプロダクトを手に取ってほしいです。土地を愛し、そこに住むコミュニティに触れることがとても大切。その土地のカルチャーを感じ、ヒストリーを学び言語を聞く、旅のなかでの体験がいろいろな意味でコネクションとなります。そして、受け取った気持ちをぜひ広めていただけたらうれしいですね」と述べた。
オーセンティックな体験にしていかないと旅行先としての価値が下がる
ハワイ州観光局 日本支局 日本支局長のミツエ・ヴァーレイ氏にも再生型観光について聞いてみた。
ヴァーレイ氏は、「オーバーツーリズムは、コミュニティにも観光客両方にとってマイナス。どのような形がベストなのかを考えたとき地元のコミュニティの参画が必要となるわけです。自然や文化、自分たちが守りたいものをより明確にし、そして旅行者が体験できるプロダクトをともに考え手伝ってもらう。
地元の人が収入を得て、案内すると、観光客も接点ができライフスタイルの話を聞くことができるうえ、人数制限があるので滞在にも余裕ができて満足度につながる。地元の人が軸となって、どういう人に来てほしいのか、自分達の考えていることをメッセージとして打ち出し行動しなくてはいけない、その流れがコロナ禍のハワイでは大きくなりました」という。
今後については、「ハワイはさまざまなマーケットの人が来る場所なので、知っていただく努力がハワイ側も必要。これからの観光は、ハワイの人々が守っていきたいことを尊重した、今までのような造られた・決まった形の観光ではなく、もっとオーセンティックな(本物志向の)体験にしていかないと旅行先としての価値が下がると考えています」と同氏。日本のマーケットは観光局が打ち出している「マラマハワイ」が一番浸透し進んでいる国とのことで、ムーブメントを起こし、さらにハワイの考え方に理解をしてくれる客層を今後呼び込みケーススタディを作っていきたいという。
そして「旅行会社さんたちにとって大きなチャンスだと私たちは考えています。ニューノーマル後の旅は絶対に変わりますから。パッケージツアーの魅力は自分たちでは手配できない、見つけられない体験に出会えて、しかも安心・安全。現在その意見交換を各所でしています。
FIT(海外個人旅行)ではアレンジできない体験と地元への還元、さらに文化にも触れられるもの。パッケージ化するのは難しいことですが、必要性は十分にあります。それを始めるのに絶好のタイミングなんです。旅行に来てお金を使ってくれる旅行者だけでなく、もっと具体的な特性に対してターゲットしていかなければと。ハワイが伝えたいことを体験し一緒に広めてくれる、そんな新たな旅の形に期待しています」と話した。
コナ空港のアップデートでも話題のハワイ島は、歴史上最高にマグマの見学ができる状態
8月のJALコナ線復活、さらにコナ空港のアップデートと話題のハワイ島の現状について、ハワイ島観光局 局長のロス・バーチ氏に聞いてみた。2018年にキラウエア火山の大規模噴火があったが、その後一番溶岩が噴出し影響を受けた「フィッシャー8」では、すでに見学ツアーが始まっているという。
ハワイ島はまさに生きている島で現在も火山活動は継続中だが、バーチ氏によると「歴史上最高に見学できる状態。以前は『トーマス A・ジャガー・ミュージアム』(現在は無期限閉鎖中)から、ハレマウマウから上がる煙を眺めることだけしかできませんでしたが、現在はマグマがかなり上まで上がってきている。オレンジ色のマグマを見ることができます。ハワイ火山国立公園を訪れるにはベストな時期」という。なお、昼間だけでなく、夜も美しいそうだ。
コナ空港のアップデートのきっかけについては、「1996年から2006年、そして再就航時もイミグレーションがテントだったため、国際空港としてしっかりとした設備を整えるべきだと市議会で長い間協議していました。コロナ禍に決定してから約14か月で完成となりました。ガラス張りで自然をしっかり取り入れられるデザインなので、サンセットも楽しめます。すでに運用は始まっており、USマーケットからのフライトも増加し、空港自体もオーバーフローしていたので、よいタイミングでした」とのこと。
なお、コロナ後のプロダクトについては、「島自体が大きいので、新しいニュースが増えています。コロナ禍で休業したり、仕事を変えていた企業も日本からのコナ直行便復活に合わせて人材の確保に動いているところ。
1980~90年代は日本のマーケットシェアが40~45%ほどの時期もありましたが、ここ10年で約10%まで減少。観光局としては日本のシェアを増やしてバランスのよいビジターパーセンテージにしていきたいです。1つのマーケットに頼るのではなく、ビジネス的に考えてもバランスがよい方がいいですから。マーケットを増やすにあたっての鍵は、やはりハワイ島の多様性。オファーできる体験がほかの島にないものがあるので、そこをどう出して行くのかが大事になってくると考えています」とした。