ニュース

ハワイ渡航前に知っておきたい「DMAP」。現地で歓迎されるポノトラベラー(責任ある旅行者)とは!?

2022年6月6日~9日 開催

HTA ディレクター・オブ・プランニングのキャロライン・アンダーソン氏に「DMAP」について伺った

 6月初旬にハワイ・ホノルルで実施された約3年ぶりの「ジャパンサミット」。ハワイ州観光局日本支局(HTJ)主催の、日本ならびに現地の旅行業会関係者向けの商談会・懇談会が中心のイベントだが、今回は「マラマハワイ(ハワイを思いやる心)」プログラムを初実施。

 また、観光戦略の4本柱(1. 自然保全、2. 文化継承、3. コミュニティリレーション、4. ブランドマーケティング)とともに実施している「DMAP(Destination Management Action Plan)」についてもサミット会場のプログラムで耳にすることが多かった。今回は、「DMAP」を統括するハワイ・ツーリズム・オーソリティ(HTA)ディレクター・オブ・プランニングのキャロライン・アンダーソン氏に話を聞いてみた。

「皆で一緒にやればなんでもできる」とキャロライン氏

 ハワイ観光といえば、美しいビーチでのバケーションやショッピングなど華やかなイメージを持つ人も多いはず。そんななか、2019年に年間渡航者が1000万人を超えたハワイでは、自然環境への多大な影響や住民の観光業に対する満足度の低下、さらにコロナ禍での観光客の減少による海の水質改善など複数の要因が重なり、マーケティング戦略を転換。前述の4本柱を軸に、各島のローカルコミュニティと観光戦略を練り、持続可能な観光と社会を目指して動き始めている。

旅行者は「DMAP」を渡航前に参考にすることを推奨

 そのなかでスタートしたのが「DMAP」。観光経済と地域コミュニティ、さらに自然資源と文化資源、住民の生活の質のバランスを保つための3年(2021~2023年)に渡るアクションプランで、「DMAP」内では、島の現状から、観光に関する計画や目標などを提示。旅行者は渡航前に参考にすることで、レスポンシブル・ツーリズムに貢献し「ポノトラベラー(責任ある旅行者)」としての自覚を持つことができる。

 HTA ディレクター・オブ・プランニングのキャロライン・アンダーソン氏は「DMAPを作る際は、しっかりとローカルコミュニティと対面・協議をし、連動・コラボレーションをする。この2つをものすごく重要視しています。アクションプランは、その島の住人が作り上げたもの。しっかりと自分たちで考えることが重要で、どのようなメッセージを島として流したいか、どんな滞在をしてほしいか、島のコンテンツをどう伝えたいかを考え協議し、どう啓蒙していくかまでをアドバイザリーグループとともに考えます」と話す。

カウアイ島の"Getting Around Kauai"
ラナイ島で活用できるモバイルアプリ「Lānaʻi Guide app」

 例えば、"Getting Around Kauai"というプログラムもその1つ。レンタカーによる渋滞が問題化していたカウアイ島で、交通量を減らすために、ウォーキングや自転車レンタルで景観を楽しむことや、シャトルバスでの移動を推奨するなど、自治体と観光局が一緒になって観光客に“こうやって島を巡ってください”と提案している。また、ラナイ島ではモバイルアプリを開発し、歴史や文化、さらに安全に旅するためのメッセージを発信している。

 HTAとしては「Community Enrichment Program」「Kukulu Ola Program」「Aloha Aina Program」などの支援プログラムにより、観光業と住民のつながりも肌感覚で感じることができるようにしている。「観光は州税のなかでも大きな部分を占めるため、それにより受ける恩恵と、どう自分たちにつながっているのかも啓蒙・教育しています。伝統・文化を守るためとともに、前向きな形での関与を、地元に対し資金でも貢献していることをしっかり伝える意味もあります」とのこと。

文化や自然保護などの活動にHTAとしても支援を行なっている
「Aʻohe hana nui ke alu ʻia」というハワイのことわざを紹介

 なお、同氏は「今回のパンデミックがwake-up callとなりました。観光再開にあたりきちんと考え、変えなければダメだという時間をもらったと考えています」と新たな旅の形を歓迎し、現在地元と行政が一丸となり動いていると話す。そして「渡航前にハワイが大切にしていることしっかり啓蒙し、賛同する人に来てもらう。そうすることで、少しずつ現在のハワイの意識・方向性とマッチングしない旅行者が減っていく。実際にハワイの人たちはそれを望んでいる」とも。最後には「JOIN US!」と呼びかけ「Aʻohe hana nui ke alu ʻia(皆で一緒にやればなんでもできる)」と、ハワイのことわざで締めた。

ハワイを知るためには言語から。ハワイ語講座とワークショップで文化に触れる

 ジャパンサミットでは、より一層ハワイを深く知るために「ハワイアンカルチャーワークショップ」を初開催。言語から、文化まで幅広く紹介し、参加者はハワイへの造詣を深めた。

 まずは講師としてミイラニ・クーパー氏を招いて「ハワイ語レッスン」からスタート。「Aloha mai kakou!(みなさん、こんにちは!)」のあいさつから、ハワイ語は自分と相手など2名での関係、または大勢のいずれかで表現され、誰に話しているかが重要視されるなども教えてくれた。

ハワイ語をレクチャーしてくれた講師のミイラニ・クーパー氏
maiを間に入れるとリズムがよくなりネイティブらしさが出る

 さらにハワイ語の由来に口頭言語から文字へ、さらに言葉遊びや隠された意味なども紹介。かわいい赤ちゃんに「Pupuka(醜い)」と逆の意味の言葉を使い人々からの嫉妬や災いを遠ざけることや、「Holoholo(散歩)」は実は、“隠れてこっそり楽しいことをしにいく”意味があり、「Holoholoする」と言われたら、それ以上は深掘りしてはいけないなども。「ハワイの文化を学ぶにはハワイ的な考えを理解するのが大切。人々が言葉のなかになにを込めて守ってきたかを知ることで、より近い存在になるはず。正しくお互いの文化を理解し尊重しながら、1語でも多くハワイ語に触れてほしい」とした。

相手が災いを避けるためにあえて逆の意味や醜い言葉を使うことも多いという
「Holoholo」はちょっと楽しいことを秘密でやるときに使うとか

 続いては「ラウハラ編み」講座へ。ハワイ固有の植物ハラの乾燥した葉を活用して作る工芸品で、バスケットやハット、ランチョンマットなどが人気。今回はブレスレットを45分かけて編むことに。講師のビル・ケウア・ネルソン氏は、ハワイ島コナ出身のラウハラ職人の6代目。祖母から教えてもらった技術を惜しみなく伝授してくれた。

ラウハラ職人の6代目講師のビル・ケウア・ネルソン氏
まずは自分の腕のサイズをチェック
ラウの葉を3本に割いた素材を組み合わせて模様を浮かび上がらせる
ドットを組み合わせるように丁寧に編む。アレンジOKの自由な雰囲気だった

 なお、ロイヤル・ハワイアン・センターでも毎週水曜の11時に講師として1時間の「ラウハラ編みレッスン」を開催中。先着順とのことなので、機会を見つけてぜひ学んでみては。ジャパンサミットの会場では基本を学んだあとは、個々に応用編もチャレンジOK。“Aloha”などの文字を編んだり、オリジナルパターンを組んだりと参加者は作品作りに集中していた。

いろいろなパターンで編んだブレスレット。イマジネーションが湧いてくる
最後の仕上げは先生が手際よくしてくれるので安心

 さらにオヘ・カラハ(竹細工スタンプ)にもトライ。講師として、伝統航海カヌー「ホクレア」にも参加したナル・アンドレーデス氏が登場。今回のワークショップのために「2年間人々が耐えてきた思いを解放するデザイン」を施した竹を使ったスタンプを新たに制作してくれるうれしいサプライズも。こちらは日本の和紙と同様の素材を用いて自由にスタンプを押していくスタイル。デモンストレーションでは、太陽や波、エイをはじめハワイを彷彿させるモチーフを迷うことなく押していく姿に参加者は釘付けに。

オヘ・カラハの講師としてナル・アンドレーデス氏が参加
スペシャルなスタンプを制作し、この日のために持ってきてくれた
竹のスタンプを使ったデザイン例。紙の素材は和紙と同じもの

 なお、同氏は「そのときのフィーリングを大切に。同じスタンプでも押し方でデザインが変化するので試してみてほしい」と声をかけながら、自由にスタンプを押す参加者を見守っていた。

デモンストレーションも披露
太陽が沈み、そして上がるデザインとのこと
夢中でスタンプを押す参加者。手元にはあまり迷いがなかった

 もう一方のグループでは、腕につける「クペエ」と呼ばれる小さめのレイ・メイキングを実施。王冠のようなフォルムが美しいクラウンフラワーや、葉のポツポツがポイントのラウアエなどホノルルの街中でも見かける草花を活用して自由に制作。それぞれ参加者の個性がでる仕上がりに、皆大満足だったよう。

ハワイの街中でも見かける草花も織り交ぜて「クペエ」を制作
自分の使いたい植物を選んで作れるのが楽しい
できあがった「クペエ」。とても華やかだ
「ラウハラ編み」のブレスレットと「クペエ」

 さらに「フル(フェザー)」を使ったフラワー制作も。こちらは爪楊枝と糸を使った非常にこまやかな作業で、以前はハワイ固有の鳥の羽根を使用していたが、現在はアヒルなどの羽根を使っているなどの豆知識も教えてくれた。できあがったハイビスカスはとっても可憐な1品に。「レイ・フル(フェザー・レイ)」と並べると作業量がイメージでき、制作には時間がかかることも知ることができた。

爪楊枝と糸、羽根を組み合わせて制作していく
できあがったハイビスカスと参考資料の「レイ・フル」

体験することで、「こんなハワイがあったんだ」を発見。次につながるトレードショーも初実施

 なお、今回のジャパンサミットでは参加者向けに商談や懇談会だけでなく、ボランティアやNPOとの交流も実施。カネオヘではNPO団体「パパハナクアオラ」とともにボランティア活動に従事。“アフプアア(ハワイアンの人々が生活をしていた土地区分・山から海へとつながる)”を管理し、文化と固有の生態系を保護、未来へとつなぐ活動を行なう彼らとともに、タロイモ畑周辺の雑草抜きなどを2時間ほど実施。雄大なハワイの原風景のなかで行なう作業は、ハワイの人々が守っていきたい自然や環境、そして独自の文化を肌で感じることのできる時間に。こちらでは、ボランティア活動のサポートのほかにも同団体はハワイの歴史から、“アプフアア”での生活、ハワイの人々が大切にする文化などが学べる教育プログラムも実施している。

ハワイの原風景を管理し、文化を伝承する「パパハナクアオラ」が管理する“アプフアア”のエリア 写真提供:Hawaii Tourism Authority (HTA)/Heather Goodman
タロイモ畑でのボランティア作業や教育プログラムに参加できる 写真提供:Hawaii Tourism Authority (HTA)/Heather Goodman

 また、ハワイ最大の博物館「ビショップ・ミュージアム」も訪問。ハワイの歴史の研究と保存を目的とする同館にて「ハワイアンホールツアー」「固有植物ガーデンツアー」、海洋汚染に関する教育を目的とする施設「Parley Air Station」の見学なども。さらに「ジャパンサミット」としては初の現地NPOとのトレードショーも開催。「Oahu Invasive Species Committee」「Surfrider Foundation」「Beelive Hawaii」に「Hawaii Wildlife Center」をはじめ9団体が、それぞれブースで日本の旅行関係者らと交流した。

ハワイ最大の博物館「ビショップ・ミュージアム」写真提供:Hawaii Tourism Authority

 今回のジャパンサミットにおけるワークショップやボランティア、さらに現地NPOとの交流についてハワイ州観光局 日本支局 日本支局長のミツエ・ヴァーレイ氏は「ハワイ州は再生型観光として、新しい啓蒙をしていく必要があります。旅ナカの体験を深くするため新規の商品開発も不可欠で、やはり作っていただく旅行会社さんらに実際に体験してほしかった」と話す。

 そして「ハワイで行なわれているSDGsや再生プログラムに関わる人々と知り合っていただき、“こんなハワイがあるんだ!”と感じていただく、これが1つの目的です」とも。「わたしたちが押し進めるマラマハワイを日本のマーケットはしっかり理解してくれていて、ニーズも感じています。ビショップ・ミュージアムをはじめ、ハワイの資料やコンテンツ資源、人はとても深い。ぜひ興味を持っていただき、そして各会社さんのキャラクターにあった企画を少しずつでも作っていただけたら」とした。