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JAL系LCCのZIPAIR、貨物専用便で初便就航。旅客便就航時は「バージョンアップしたZIPAIRを」と西田社長

7月以降の旅客便運航は需要を見極めて判断

2020年6月3日 就航

ZIPAIRが初便就航。貨物専用便で航空会社としてのスタートを切った

 JAL(日本航空)が100%出資するLCC、ZIPAIR(ZIPAIR Tokyo)が6月3日就航した。最初の運航路線は成田~バンコク線で、新型コロナウイルスの影響により当初の5月14日から延期しての就航。当面は旅客便ではなく、貨物専用便として運航する。

株式会社ZIPAIR Tokyo 代表取締役社長 西田真吾氏

 ZIPAIR 代表取締役社長 西田真吾氏は、「旅客便の就航は叶わなかったが、貨物専用便として商業運航のスタートを切らせていただく。今日が航空会社としての第一歩だと思っている」とあいさつ。

 貨物専用便として運航することについては、ゴールデンウィーク直前から検討を開始。コードシェアしているJALの貨物部門にバンコク線の貨物需要を確認しながら準備を進めてきたという。

 この決定の背景には、酒造メーカーが自社設備を使って消毒用アルコール製品の製造を行なっているニュースに接したことがあるという。「我々にもやれるのがあるのではないかと考えた。ボーイング 787型機の広い貨物室がある。パイロットも(訓練を終えて)仕上がっている。グランドスタッフも準備できている」とし、「少しでも日本とタイの経済交流に貢献したい」と話した。

 ちなみに、旅客便運航の場合でも貨物スペースの販売は計画があったとのこと。旅客の手荷物が載っていない状態ではあるが、「仕組みはもともと計画していたもの」と話す。初便の日本発便は機械部品や化学製品など約13トン、バンコク発便は工業製品など約17トンで、重量に余裕はあるが容積は満載となっており「初便は満員御礼の状態」(西田氏)だという。

 ただし、国内外のFSC(フルサービスキャリア)で実施しているような客室への貨物積載は行なっていない。理由として西田氏は「客室への積み込みは人海戦術で時間もかかる。定期便では、短時間で給油して発着するスケジュールを組んでいるので滞在時間が短い。それだけで終わるオペレーションではなく、我々では無理だと考えている」と説明した。

 今回就航した貨物便は下記のダイヤで、週4往復の運航。初日は250番スポットから17時19分に出発し、17時35分に16R滑走路から離陸した。

ZG51便: 成田(17時20分)発~バンコク(22時00分)着、水・木・金・土曜運航
ZG52便: バンコク(23時30分)発~成田(翌07時45分)着、水・木・金・土曜運航

出発準備中のZIPAIR機
往路は約13トンの貨物を搭載して運航。復路は約17トンの搭載を予定している

旅客便運航開始時には「バージョンアップしたZIPAIRを見てもらいたい」

初便出発を祝ってZIPAIR社員が記念撮影

 この新型コロナウイルス感染拡大で世界的な人の移動需要が減退するなかではあるが、「我々がターゲティングしている、例えば親族に会いに行く必要がある方、仕入れに行かないといけない個人事業主の方、そしてレジャーも需要がなくなるとは思っていない。我々はアジアの一番東側にベースを持つのが大きい。アジアの成長が止まるとは思っておらず、アジアを訪れたい、北米を訪れたいお客さまも増え続けると思っている」としたほか、「大西洋ではLCCが10%以上のシェアを担っているが、これがいずれ太平洋でも起こるのは間違いない。目標を変えるつもりはない」とし、米国へ申請のあった2020年冬ダイヤからのハワイ・ホノルル線への就航についても、予定どおり進める意向を示している。

 旅客便の運航については、「需要を見極めて判断する」との姿勢を示した。バンコク路線のタイでは6月末までの空路での入国が禁止されている状態だが、「その制限が解除された場合でも、検疫体制などが強化された状態も考えられる。日本からタイ、タイから日本の両方がそれなりに見込めないと成立せず、需要を見極めて判断したい」とする。

 また、7月1日に就航を予定している成田~ソウル線についても同様で、「ビザ制限、検疫の現在の状況では難しいと思っているが様子を見極めたい。6月半ばぐらいには判断しなければならないと思っている」とした。

 加えて、成田~ソウル線の就航が不透明となった場合などに国内線に就航する可能性については、「可能性は否定しない。場合によっては国内線も選択肢にはなるが、具体的な計画はない」と説明。柔軟に対応する姿勢を示した。

 ただし、新型コロナウイルス対策にかかるコスト面については、「なにがスタンダードにお客さまの安全安心を実現するのにどのぐらいかかるか定まっているわけではないが、コストは使う方向になるだろうと覚悟している」とし、コスト増加による運賃への影響は否定しなかった。ただし、「他社も相対的に同じように上がると思うので、他社と戦える(競争力のある)運賃はご提示できると思う」としている。

 西田氏は今後の旅客便就航について、「我々は次々に新しいもの、改良したものを随時投入しようと考えていた。計画を予定した改良を進めていたので、旅客便開始時期がずれたときには改善したものを出せると思っている」とし、「今日の就航はロケットスタートのようなもので、第2段階として旅客便のスタートが控えている。旅客便のスタートは少し遅れることになったが、このいただいた時間を有効に使って、さらにバージョンアップしたZIPAIR Tokyoを見てもらえるように頑張ろうと考えている」と前向きに話した。

初便出発を見送る西田社長やZIPAIRスタッフ