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ZIPAIR、旅客便に就航。成田~ソウル初便の旅客は2名。冬ダイヤでは需要回復見込み増便
2020年10月16日 12:22
- 2020年10月16日 就航
ZIPAIR(ZIPAIR Tokyo)は10月16日、成田~仁川(ソウル)線の旅客便の運航を開始した。当初の就航予定から約5か月遅れで、ついに新たなLCCが旅客を乗せて飛び立った。
ZIPAIRは2018年に準備会社を設立し、2020年5月14日に成田~バンコク線、7月1日に成田~ソウル線の就航を予定していた。しかし、新型コロナウイルス感染症の影響で相次いで延期。これまで両路線で貨物専用便として、旅客機仕様のボーイング 787-8型機を運航してきた。
10月8日には旅客便就航日を発表するとともに航空券の販売を開始。これまで成田~ソウル線で貨物便として運航している週5便のうち2便を10月16日から旅客便として運航。さらに、10月25日から始まる冬期スケジュールでは、日曜日に旅客便の運航を追加。旅客便を週3便、貨物専用便を週3便の計週6便の体制とすることを発表した。
運賃は、18席を備えるフラットシート「ZIP Full-Flat」が3万円~14万1000円、272席を備える普通席の「Standard」が8000円~3万円、6歳以下の子供専用運賃「U6 Standard」が一律3000円となる。
ZIPAIRの成田~仁川線(2020年10月16日~23日)
ZG41便: 成田(09時15分)発~仁川(11時50分)着、火・金曜運航
ZG42便: 仁川(13時30分)発~成田(15時55分)着、火・金曜運航
ZIPAIRの成田~仁川線(2020年10月25日~2021年3月26日)
ZG41便: 成田(08時40分)発~仁川(11時15分)着、火・金・日曜運航
ZG42便: 仁川(12時40分)発~成田(15時05分)着、火・金・日曜運航
成田空港においては、チェックインカウンターに第1ターミナル北ウイングDカウンターを使用。航空券の販売から約1週間、かつ新型コロナウイルス感染症の影響による入国後の行動制限なども残るなか、初便の旅客はFull-Flatシート利用の2名。パイロット2名、CA(客室乗務員)8名とともに、定刻どおり9時15分に21番スポットから出発した。
出発時にはZIPAIRやJALグループの地上支援(グランドハンドリング)のスタッフが手を振ってお見送り。消防車によるウォーターキャノンをくぐって滑走路へと向かった。
冬ダイヤでソウル線を増便。「太平洋をわたるLCCに向かって一歩一歩進みたい」
就航にあたって行なわれたセレモニーでは、ZIPAIR Tokyo 代表取締役社長の西田真吾氏があいさつ。会社設立からこれまでを振り返り、「中長距離LCCを飛ばす、ゆくゆくは太平洋をわたる初のLCCを、という高い目標を掲げてやってきた。順調に準備を進めてきたが、最後の第4コーナーをまわったところで、多くの方が厳しい困難に直面しているように、私どももコロナの影響を受けている。しかし、ここまで社員が一緒に乗り越えてくれて、就航することになった」と話し、社員のほか、日韓関係各所や航空当局、成田空港や周辺自治体らに感謝の意を表した。
そして、10月25日に始まる冬期スケジュールから成田~ソウル線の旅客便を週3便に増便することを発表。「太平洋をわたるLCCという高い目標に向かって一歩一歩進んでいく。私どもの商品、サービスは本日からご覧いただけるが、私が一番ご覧いただきたいのは、私どもの厳しい訓練、準備をしてきた社員。私どもの姿をご覧いただいて、『これなら自分らしい旅ができそうだ』『これだったら快適に過ごせそうだ』と必ず感じ取っていただけると思う」と力を込めた。
続いて、来賓として国土交通省 東京航空局 成田国際空港長の鈴木英治氏がマイクの前に立ち、まずは就航に祝意を示すとともに、「我が国と韓国の国際往来は、10月8日より再開し、今後、ビジネス客を中心に需要が高まることが期待される。このたびの新規就航会社の初就航は、一つのエアラインのテイクオフだけではなく、成田空港全体、そして航空業界にも元気をいただいたと言っても過言ではない」とコメント。
航空局としては、感染防止対策と航空需要回復の両立を図るための取り組みを紹介し、「安全・安心の航空需要回復を支援したい」と述べ、併せて「今後、ZIPAIRが確実な安全運航で利用者に安心を届けるとともに、人々に愛される品質の高いエアラインに」とエールを送った。
同じく来賓としてあいさつした、NAA(成田国際空港)代表取締役社長の田村明比古氏は、「コロナ禍に新規就航を迎えられるのは私どもには、このうえない喜び。乗務員の皆さんの力強く希望にあふれた姿に大いに勇気付けられた」と切り出し、「日系航空会社としては、東京とソウルを結ぶ唯一の便となる。そして、フルフラットシートや日本品質のサービスということで、ニューベーシックエアラインを目指していると聞いているが、新しい形のサービスのエアラインが登場するということは、お客さまにも選択肢が増えるということで貴重な存在だと思う」との同社への期待を述べた。
さらに日韓交流についても触れ、「日韓間は大幅に往来が減少しているが、一昨年までは両国間で1000万人に達するような大きな規模の流動があった。ひとたび状況が収まったら、気兼ねなく飛べる距離でもあり、以前のように活発な往来が期待できると思う。私ども空港会社としても、お客さまが気兼ねなく、自由に安心して海外と往来できる環境を関係者と努力して作りたいし、そのような日が一日も早く訪れることを願っている」と話した。
「来たるべき需要回復に備えて」就航日決定。JALとのマイレージ連携はコロナ禍などで遅れ
初便出発後に報道関係者からの取材に応じたZIPAIR 代表取締役社長の西田真吾氏は、初便の就航をこの日に決めたことについて、各国の入国制限緩和が進み、乗り入れ先の状況が変わってきたことを挙げ、「少し早いかも知れないが、来たるべき需要の回復期に備えようとこのタイミングにした」と理由を説明。
販売期間が約1週間となり、初便の旅客が2名であったことに対しては「貨物需要が旺盛で運航に必要な最低限の費用をまかなえている。もちろん多くのお客さまにお乗りいただければありがたいが、少ないからといって残念な気持ちもない」と話す一方、「最低限の費用をまかなえているとはいっても、もうかっているわけではない」とし、需要が回復し、旅客が増加することで収益を高めていく考え。ちなみに、貨物は特にソウル発が高需要だという。
なお、冬期スケジュールでの増便については、予約動向を見据えたものではなく、関係当局からの認可があったことと、10月8日から日韓間でビジネストラックが開始されたことを挙げた。「これから需要は回復していくだろう。ソウル発の需要も十分にあると思っている。駐韓日本大使館でも韓国企業向けにビジネストラックの説明会を開いていただいて、引き合いは高いと聞いている」と、ビザや事前PCR検査など必要書類の準備などもあるので、今後の需要の高まりに期待を示している。
同社の現状については、コスト節減に努めており、そのなかでコロナ禍の影響もあって「JALマイレージバンクと我々の親和性をどう作っていくかはシステム開発が遅れている。順調にいけば年度内には実現できる」とした。その連携の詳細については現時点では明かされていない。
ソウル路線以外の計画については、バンコク路線は「バンコクは海外からの旅客便の乗り入れ自体が禁止されているのでソウルとは事情が異なる。ただ、日本から旅客便を旅客便を送るのは難しいが、バンコクから国外に出る便は禁止されていない。往路は貨物専用便、復路は旅客便という運航が可能なので、その準備を進めている」と話し、早ければ「冬期スケジュールの頭ぐらいに始められれば」と見通しを語った。
ホノルル路線については、「日米当局への手続きは順調に進捗し、10月5日にはETOPSの許可も得た。いくつかの手続きが残っているので、10月25日にレディ(準備状態)にしておきたい希望があるが、多少時間を要するものが残りそう。11月の早い段階でレディの状態にして、ハワイ州あるいはオアフ島の乗り入れが解禁されるのを待つ」と、運航開始時期や便数などは当局の意向に依り、それに即応して運航できる体制を整えることに注力する姿勢を示した。