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JAL、937億円の赤字決算。2020年度第1四半期は「極めて厳しい結果」ながら、需要の回復シナリオも提示

2020年8月3日 発表

JALが2020年度第1四半期の決算を発表した

 JAL(日本航空)は8月3日、2020年度(2021年3月期)第1四半期の決算を発表した。説明を担当したのは、代表取締役専務執行役員 財務・経理本部長の菊山英樹氏。なお、同社は今年度から「国際財務報告基準(IFRS)」を適用しており、前年度実績もIFRSに基づいた値に組み替えている。

 新型コロナウイルスの影響は2019年度第4四半期から始まっており、第4四半期単独では再上場後初めての赤字転落となっていた(関連記事「JAL、2020年3月期決算は減収減益、第4四半期は再上場後初の赤字に。株主優待の期間延長を決定」)。

JALグループ連結業績

 その影響は2020年4月~6月期でより強く出ており、世界的な入出国制限と国際線の運休・減便によって国際旅客数は前年対比98.6%減、国際旅客収入は1278億円減(97.9%減)の27億円。国内でも緊急事態宣言の発令や都道府県をまたぐ移動の自粛によって、国内旅客数は前年対比86.7%減、国内旅客収入は1081億円減(85.1%減)の189億円。一方、乗客を乗せない貨物専用便を3754便飛ばすなど積極運用しており、単価の向上もあって貨物郵便収入は前年対比38億円増(16.9%増)の265億円となっている。

 こうした背景を受けて、グループ連結業績の売上収益は前年同期比2724億円減(78.1%減)の763億円。EBIT(利払前税引前利益)は同1509億円減で1310億円の損失、純損益は1066億円減で937億円の損失となり、「極めて厳しい結果」と表現している。なお、この数字は2010年3月期第1四半期決算の最終損失990億円(値は以前の会計基準)に次ぐものという。

 営業費用の削減については、減便による運航費用の削減や人件費の削減などで1250億円減少。その内訳は、収入・供給連動費用(変動費)で減収額の4割に当たる1084億円を削減しており、人件費や広告宣伝費、IT経費といった固定費は前年対比で166億円減少。さらに、国際線の事業拡大などで費用増を見込んでいた当初の想定からは290億円の削減がすでに実現できており、緊急対応策として設定した年間600億円の固定費削減は、この第1四半期でほぼ半分達成したことになる。この状況を受けて、固定費の削減目標を300億円上積みし、年間で900億円の固定費削減を目指すという。

需要回復シナリオ

 新型コロナウイルスの収束時期が見通せないことから、2020年度の連結業績予想も「公表できる状況にないため引き続き未定」としたが、発表では同社が描く「需要回復シナリオ」を提示している。

 そのシナリオの範囲に収まる前提なら、2020年度の国際旅客収入は前年比10~20%程度、国内旅客収入は同55~65%程度で、合算すると同35~45%程度にとどまると見ている。この減収にほかの収入(貨物郵便、マイレージ事業、JALパックなど旅行事業、グランドハンドリング受託事業など)や、前述した営業費用の削減などを加味すると、連結売上収益の減収額の5割程度の悪化になる、と見通しを示した。

 なお、先行きの見えない状況と手元流動性の確保という観点から、株主に対する当期中間配当は見送りとしており、期末配当の見通しも未定とした。

日本航空株式会社 代表取締役専務執行役員 財務・経理本部長 菊山英樹氏(左)、常務執行役員 総務本部長 CSR委員会委員長 植田英嗣氏(右)