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赤坂社長、JAL/ZIPAIRハワイ線の見通しは「日米両国の状況しだい」。定例会見にて

2020年10月7日 実施

JALが定例会見を実施した

 JAL(日本航空)は10月7日、東京・品川の本社で定例会見を実施、代表取締役社長の赤坂祐二氏が安全への取り組み、地域活性化、次世代エアモビリティについて説明した。

 赤坂氏は新型コロナウイルスの感染拡大に直面した際、もっとも危惧したのは「航空輸送がコロナの拡大を促進してしまうこと」だったという。既報のとおり、運航制限・減便、機内の空気循環の周知、業界のガイドライン・ICAO(国際民間航空機関)のガイダンスへの準拠などを「スピードを上げて対応してきた」としつつ、マスクの着用やソーシャルディスタンスの確保など、利用者にも協力を得なければならない取り組みについても振り返った。

 そして今後は、自動手荷物預け機や指で触らないチェックイン端末、顔パスの搭乗手続き、アバターロボット、各種スマートフォンアプリなどを通じて、非接触化・非対面化を促進。すでに導入済みのものも含め、テクノロジーを使ったトライアルで新しい日常へ対応していく。

 当然そこには今後の出入国制限の緩和も視野に入っており、国際線の再開に向けて、移動の不安を取り除くための国際ルールを作っていかなければならないという。現状に目を移すと、羽田/成田両空港の1日あたりの出入国者数は1000人~2000人程度(2020年8月)で、これは前年同月比で約1.5%~2.5%という規模。その一方、政府は空港におけるPCR検査能力を1日あたり1万件まで拡大しており(9月現在)、将来的に1日2万件まで拡大することを発表している。

 同社としては、海外へのレベル3の渡航中止勧告や帰国時の14日間隔離・公共交通機関の使用禁止など、現在政府が一律に行なっている制限について、例えば感染リスクの低い国・地域からレベルを引き下げる、14日間隔離についても別のよい方法がないか、期間を短縮できないかなど、国に要望しているという。

 そんななか、JALが長年スポンサードしているホノルルマラソンが12月に開催予定であるなど、赤坂氏も「極めて重要な路線」とするハワイ線の見通しについては、「状況は変わっていない」とする。

 州外からの渡航者向けに10月15日から「事前検査プログラム」(出発72時間以内にPCR検査を受けて陰性が証明されれば14日間の隔離を免除する)が始まるが、米国の陰性証明の基準が厳しく、日本の検査結果で入国可となるかは分からないとのこと。なお、ハワイ州観光局のWebサイトによれば、隔離の免除には「臨床検査室改善法(CLIA)の認定を受けた機関で、アメリカ食品医薬局(FDA)が承認したPCR検査を含む核酸増幅検査(NAAT)を受けて、陰性であることを証明する英語の書類が必要」としており、日本でこの基準を満たしている検査施設・機関は「現在調査中」となっている。

 JALの100%子会社のLCC、ZIPAIR(ZIPAIR Tokyo)も2020年冬期スケジュールからホノルル線を就航予定としているが、現在貨物便で運航しているバンコク線とソウル線の早期旅客便化、その先にホノルル線就航があるとしつつ、こちらも日米両国の状況を見る必要があり、見通しを示せる段階ではないようだ。

 赤坂氏は今後の航空需要について、コロナ前に戻るのは国内線が2022年くらい、国際線が2024年くらいと見通しを示しつつ、特に外国人旅行者は来るのをやめてしまった人は戻ってこないとして、新たな市場開拓の必要性も示唆した。なお、2022年/2024年という見通しについては、「もう少し悲観的なシナリオも想定している」という。

 地域活性化の取り組みとしては、同社はこれまでも「空育」などの地域・社会貢献、「新JAPAN PROJECT」のような地域活性活動を展開しているが、「持続的に続けていくためにはなんらかの地域事業を我々が作っていく必要がある」として、社内に「地域事業本部」を新設した。対象の分野は観光や環境、インバウンド、医療、人材育成などを「自分たちの得意を活かせる事業」として例に挙げたが、有力な分野として赤坂氏が紹介したのは2次交通・物流。

「ドローン物流」や「空飛ぶクルマ」など次世代エアモビリティ領域についてはさまざまな実証事件が始まっているが、同社の強みを活かすという点では「運航管理プラットフォームの構築・事業化が可能性が高い」という。「ドローンなどがランダムに運航することはあり得ない。管理する仕組みが必要だが、誰でもできるようなものではない」として、天候を加味した飛行計画の提供、パイロットへの情報提供、飛行中の動態管理などに、これまでの航空機の運航管理のノウハウが活きると見ている。