ニュース

ANAとシンガポール航空が共同事業に向け提携。6か国対象に両社で路線網・サービスを強化

2020年1月31日 発表

ANAとシンガポール航空が共同事業に向けた包括提携契約を締結

 ANA(全日本空輸)とシンガポール航空は1月31日、戦略的包括提携契約を締結し、都内で会見を開いた。2021年冬期スケジュールからのJV(ジョイントベンチャー、共同事業)開始を目指す。

 ANAではユナイテッド航空とアジア~北中南米間で、ルフトハンザ航空グループと日本~欧州間でJVを展開しているが、アジア・オセアニア地域では初めての取り組み。ANAとシンガポール航空はすでにスターアライアンスのパートナーであるが、さらに踏み込んで同一企業のように事業を遂行する共同事業を行なうことで、アジア・オセアニア地域でのプレゼンス向上や競争力確保を図る。

 対象国は日本、シンガポール、オーストラリア、インド、インドネシア、マレーシアで、各国当局に対し、航空法に基づく独占禁止法適用除外(ATI)となる協定の認可申請準備を進めていく。

全日本空輸株式会社 代表取締役社長 平子裕志氏

 会見では、ANA 代表取締役社長の平子裕志氏が、「シンガポールからの訪問数は年々拡大し、2019年は対前年で13%延び、49万人で過去最高を記録した。日本からシンガポールへは年間80万人程度の訪問がある。今回の提携強化により、日本、シンガポール間のみならず、アジア域内を移動される方の利便が大きく向上すると確信している」と対象国を結ぶ路線のポテンシャルに言及。

 今回の提携について、「提携を通じてシンガポール航空から多くを学び、サービスのさらなる高みを目指す。この提携がアジアの経済、文化・人の交流を促進する架け橋となることを願いたい」と意気込みを示した。

 JV開始後に行なう共同でのサービス展開などについて、具体的には決定していないとし、詳細は発表されていない。基本的には6か国を発着する両社便、例えば、シンガポールを経由した便や日本国内線などで共同事業を展開する。

 平子氏は資本提携などを含めたさまざまな提携の形のなかで「JVがもっとシナジー(相乗効果)を出す最も有効な手段」とコメント。「JVはメタルニュートラリティ(提携先の便を自社便のように扱えること)が最大のポイント。両社を合わせた供給量コントロールができる。成長が著しい市場だが、LCCもどんどん入ってきているので、JVによって適切な運賃設定、座席供給、ネットワークを提供することで市場シェアを伸ばしたい」と話した。

 また、運航スケジュールについても共同で設定し、乗り継ぎに適したダイヤの調整をしていくことなどを計画している。特に日本国内におけるネットワークについて平子氏は、「シンガポール航空は日本の首都圏以外にもネットワークを持っている。羽田、成田の国内線を活用し、さらにシンガポール航空の首都圏以外のネットワークでもシナジーを追求したい」との方針を述べた。

 すでに両社ではコードシェア便の運航も行なっているが、コードシェアの場合は各社がそれぞれ運賃を設定し、相手先との精算プロセスが入るのに対し、メタルニュートラリティは運賃設定から収入までを共通化。コードシェアでは精算のプロセスを考慮した運賃設定が必要になるが、メタルニュートラリティではそこを抑えた運賃設定が可能になることで、利用者にとっての価格面での便益が生まれる。

シンガポール航空 CEO ゴー・チュンポン氏

 シンガポール航空 CEOのゴー・チュンポン氏は、グループのシルクエアーとスクートを合わせて週108便を日本の7空港に運航していることに触れ、「より多くの日本の場所に足を運べるようになる」とコメント。そして、「お互いの強みを活用し、両方の航空会社の顧客にオプションを提供できる。業界をリードするさまざまなプロダクト、サービスを利用できるようになる」とした。

 具体的にはマイレージプログラムや企業プログラムの連携などを挙げ、「より多くの便、コネクションを利用できる。6か国への旅行の選択肢が増える」とメリットを語り、さらに「日本への旅行を促進するための共同の取り組みに着手できる。インバウンド観光を成長させるという国の方針に合わせ、東京とシンガポールの強力なコネクティビティで支援できる」との効果も語った。

 このほかチュンポン氏は、「シンガポール航空はほかにもJVを展開しているが、お客さまに対して便益を提供できれば成功につながる。提供できる顧客サービス、プロダクトなどにおいて、パーフェクトな提携だと思う」とアピールした。

両社代表が提携契約書にサイン
モデルプレーンを交換