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JR東海、新幹線新型車両「N700S」に乗ってみた。全席にコンセント、リクライニングはより快適に
停電時も内蔵バッテリーで最寄り駅まで移動可能
2019年10月31日 13:17
- 2019年10月30日 公開
- 2020年7月 営業運転開始予定
JR東海(東海旅客鉄道)は10月30日、新幹線の新型車両である「N700S」の確認試験車による本線走行と車内設備を報道公開。東京駅から豊橋駅(愛知県豊橋市)までの区間を883号として走行した。
N700Sは2020年7月に営業運転の開始を予定している。
新型車両「N700S」が目指したのは「ワンランク上の乗り心地」。フルアクティブ制振制御装置の搭載、リクライニング機構の改良、全席に搭載されたコンセント、グリーン車の装備改良など、快適性と利便性の向上に主眼が置かれている。
第2世代車両の700系は、700系、N700系、N700Aと改良を重ねてきており、今回のN700Sはシリーズ中で最高の新幹線車両を意味する「Supreme(スプリーム)」の頭文字「S」からとったという。
新幹線・新型車両「N700S」の普通車
普通車両の大きな特徴は、各座席にコンセントが備わったこと。今までは窓側の足元にあったものが、各座席に搭載されて非常に利便性が向上した。スマートフォンやノートPCを充電したいのに、窓側の席が確保できなかったときの落胆や焦りがこれで解消される。
次に紹介したいのは座席のリクライニング機構だ。今まではリクライニングさせると背面が後ろに倒れるだけであったが、新型シートでは倒すと座面も連動して沈み込み、より自然な姿勢でくつろげるようになった。
新幹線・新型車両「N700S」のグリーン車
グリーン車のシートも変更が加えられている。電動のリクライニングシートは背もたれと連動して深く沈み込むようになっており、非常に楽な姿勢を取れるようになった。体験してみたが、油断するとあっという間に寝てしまいそうな感覚は、ワンランク上の居心地のよさを語るには十分なものだった。
そのほかでは、テーブルの脇にはフックが用意されているので傘などを掛けるのに便利になり、読書灯はより広範囲(+70%)を照らせるように改良されている。
また、グリーン車にはフルアクティブ制振制御装置が備わっており、身体に感じる横揺れが軽減されている。従来のセミアクティブ制振制御装置はダンパーの強さを変えて動揺を減衰させる仕組みであったのに対し、フルアクティブ制振制御装置は油圧ポンプで力を発生させ、動揺を打ち消すような仕組みになっている。フルアクティブ制振制御装置はグリーン車のほか、揺れが強い先頭車両や最後尾、パンタグラフを備える5号車と12号車にも導入されている。
新幹線・新型車両「N700S」全体の特徴
全体としては、各車両の先頭と後方にある案内板がLEDディスプレイから1.5倍の大きさの液晶ディスプレイに変更され、見やすさと情報量が多くなっている。また、荷棚部分は駅停車前には明るく照らすようになっており、荷物の置き忘れを防ぐ工夫が施された。セキュリティ面も強化されており、従来までは車内の前方と後方の2か所にのみ設置されていた防犯カメラを客室内の天井に4台追加することで、合計6台のカメラで監視するようになっている。
また、11号車に車いすを置けるスペースを2か所設置しており、車いすのまま乗車できるスペースが増えている。従来は1か所であったスペースを増やすために、車両に対する客室スペースを長めにしたり、各シートピッチを調節、設置近辺のシートを少しコンパクトにしたりするなどして確保している。車いす横の通路幅は400mmが義務付けられているが、車内販売ワゴンが通れるように450mmの通路幅が確保されている。さらに、車いす利用者側からの要望を受けた工夫も施されており、デッキから丸見えとならないように自動ドアの開口部は通常の場所より150mmほど左側に設置されている。加えて、歩行者がドアの前に立った際は通れる幅だけ開き、車いす利用者が停車した際にはそれを検知して全開になるようにし、不必要にデッキから丸見えにならないようになっている。
見えない部分では、高速鉄道の車両としては世界で初めてバッテリー走行が可能になっており、駅間で万が一停電した際も駅まで移動したり、トンネル内であればトンネルを脱出して安全な場所まで移動したりといったことができる。
車体の駆動部分などを小型化することでさまざまな編成長を容易に構成できる「標準車両」といった特徴も備え、国内外問わず、低コストでタイムリーに提供できる点もN700Sの利点になっている。
現在も試験走行が行なわれているN700Sの営業運転開始は2020年7月を予定しており、さらに快適になった新幹線を楽しみに待ちたい。