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エアバス、A220-300テスト機をセントレアで公開。「日本の新路線開拓に適した機材」と訴求

航空会社関係者らを乗せてのデモフライトも実施

2019年8月5日~6日 実施

エアバス A220-300型機が、デモツアーの一環としてセントレアに寄港。航空会社やリース会社、報道関係者に披露した

 エアバスは8月6日、「エアバス A220-300」型機をセントレア(中部国際空港)で航空会社や報道関係者らに披露。デモフライトも実施した。アジア各都市をまわるデモツアーの一環として8月5日に到着したもの。

 エアバス A220-300型機は、元々ボンバルディアが開発し、CS300型機の名称で販売していたもので、同事業を買収したエアバスによりA220-300型機へと改称。併せて、ボンバルディア CS100型機はA220-100型機として販売している。

 エアバスには同じ単通路機のエアバス A320ファミリーがあるが、A220ファミリーは席数がより少ない100~150機クラスの機体となる。エアバス A320ファミリーがカバーする150席以上、三菱航空機のSpaceJetやエンブラエル E2ファミリーがカバーする100席未満のリージョナル機の市場の間に存在するギャップを埋める存在として訴求している。

 エアバス A220-300型機とA220-100型機の2モデルがラインアップされており、-300型機は中胴部が3.7m長いことが違いとなる。パイロットの機種免許は共通化されており、どちらも操縦可能だという。

説明を行なったエアバス マーケティング・ディレクター クリスティン・ド=ガニュ(Christine De Gagne)氏
エアバス A320ファミリーとリージョナル機とのギャップを埋める機体として訴求
A220-300型機とA220-100型機は中胴部の長さと、それに伴う席数の違いのみで、99%以上の共通性を持つ

 エンジンはプラット&ホイットニーのギアード・ターボ・ファンエンジンであるPW1500Gファミリーを使用。機体に高性能アルミチタンや複合材を使用することで軽量化したことと合わせて、高い燃料効率を実現している理由として挙げている。

 コックピットは大型ディスプレイ5枚を用いたグラスコックピットで、完全にフライ・バイ・ワイヤ化されたもの。特徴として、パイロットの状況認知度を高めるために、通常は下部に設置される無線の操作パネルを、前面部に設置していることを挙げた。

 客室は、説明にあたったエアバス マーケティング・ディレクター クリスティン・ド=ガニュ(Christine De Gagne)氏が「ワイドボディ(双通路)機のような」と形容する広さが特徴。2席+3席の5席が標準レイアウトで、デモフライトに使われた機体では異なるシートピッチを組み合わせて143席を装備。天井の高さ、垂直に近い壁による広々とした空間や、機内持ち込み可能サイズのスーツケースを4個収納できる大型のオーバーヘッドコンパートメントであること、「ボーイング 777型機より大きい」(ド=ガニュ氏)という11×16インチ(約28.0×49.6mm)の大きな窓などが特徴として挙げられている。

 ちなみにA220ファミリーはこれまで2016年にスイス インターナショナル エアラインズに納入したのを皮切りに、エア・バルティック、大韓航空、エア・タンザニア、デルタ航空の5社に対して78機を納入。エコノミークラスのみのモノクラスで利用する航空会社もあれば、大韓航空のようにシートピッチの異なる2クラス、デルタ航空のように3クラスといったように多様な使われた方をしているという。

先端素材の利用やギアード・ターボ・ファンエンジンの採用で高い燃料効率を持つことをアピール
客室の広さやオーバーヘッドコンパートメントの大きさ、窓の大きさなどをアピール
セントレアを中心として航続距離。中国、東南アジア全域や北オーストラリアをカバーする
導入済み航空会社では短距離から長距離まで柔軟に利用される
180分のETOPSを取得済み

 日本へのデモツアーはアジア6都市をまわるツアーの5番目の都市として訪問したもの。2019年6月末時点で21社から551機の発注があり、7月30日にはエールフランス航空が60機を発注するMOU(覚書書)を締結しているなか、アジア太平洋地域からは大韓航空がA220-300型機を10機、バヌアツ航空がA220-100型機を2機、-300型機を2機発注している状況となっている。

 一方、エアバスでは100~150機級の航空機に対して今後20年間で7000機以上の需要があり、その20%をアジア太平洋地域が占めると見込んでいる。今回のアジアデモツアーもそうした背景のなかで行なわれたもので、ド=ガニュ氏は、「アジア太平洋地域は重要な市場であり、そのなかでも日本は主要な市場。交渉中なので詳しくは話せないが日本のオペレータからも高い関心を持ってもらえている」と話す。

 ちなみにデモツアーの寄港地がセントレアとなったのは「日本の顧客からのリクエスト」であると明かした。セントレアには大韓航空がセントレア~釜山線で同機を運航(関連記事「広々とした機内が快適な大韓航空のCS300(エアバス A220-300)型機に搭乗。セントレア~釜山線から日本路線に導入開始」)しているが、エアバス保有のA220-300型機が寄港するのは初めてとなる。

 日本市場に対して、ド=ガニュ氏は「新規路線の開拓に適する機材」という点を繰り返した。いくつかの理由が挙げられたが、座席数がちょうどよいこと、高い燃料効率を持つことなどのほか、180分のETOPSを取得している点、短滑走路での離着陸、騒音が少なく都市部での利用に適応できることなどを紹介。また、大韓航空が国内線を中心に短距離路線で使用する一方で、ラトビアのエア・バルティックはリガ~アブダビ(アラブ首長国連邦)のように飛行時間が6時間半を超える長距離路線にも利用される柔軟性を持つことも特徴として挙げられた。

 逆に日本の航空会社やリース会社からの発注が現時点でないことについては、「交渉には長い時間がかかる。特に日本の会社は決定に対して慎重」との認識を語った。

エアバスが実施しているA220-300型機のアジア・デモツアー。日本のセントレアは5番目に寄港
エアバス A220ファミリーの発注や納入実績など
セントレアに寄港したエアバスのエアバス A220-300型機のテスト機(FTV8、登録記号:C-FFDO)
前面から。コックピットの窓は特徴的
主翼と水平尾翼
主翼端にはウィングレット
垂直尾翼
ランディングギア
メインギアと主翼の付け根部
ノーズギア。タイヤはミシュランの「Air X」を装着していた
エアバス A220ファミリー用のトーバー
客室
L1(左側前方)ドア
デモ機ということでヘッドレストカバーにも「A220」ロゴ。ちなみに3列席の左右席は18.4インチ(約46.7mm)幅、中央席は19インチ(約48.2mm)幅となっている
後方より。エアバス製の“安全のしおり”も
デモ機に用意されたエアバス製の“安全のしおり”
エアバス A220ファミリーを紹介するパンフレット
3列席のシート。シートはゾディアック(Zodiac)製
シート背面
シートテーブル
ヘッドレスト
機内持ち込み可能サイズのスーツケースを4個収納できるオーバーヘッドコンパートメント
最後部のラバトリー。ラバトリーは前方と後方の2か所
後方のギャレー
キャビン・マネジメント・システムには日本のパナソニック製を採用しているという
コックピット
壁面が垂直に近く、窓側席でも圧迫感が少ないことが客室の特徴
窓は11×16インチ(約28.0×49.6mm)と大きい
これはシートピッチ30インチ(約76.2mm)の座席だが、薄いシートを採用していることで、足下のシートポケットに500mL前後のペットボトルを2本入れても多少ゆとりがある。ただ、シートテーブルを広げてのノートPC(写真は12.5型液晶搭載機)の使用にはやや窮屈
上部の読書灯やエアコン吹き出し口など
シートベルトサインに加えてモバイルデバイスの使用禁止サインも
関係者を乗せたデモフライトの様子
南向きの18滑走路を使用し、滑走路の半分にも達しないあたりで離陸。満席ではないとはいえ1000mほどで離陸したことになる
デモフライトはセントレアから真っ直ぐ北へ向かい、富山県から長野県上空を経由。写真は左から濃尾平野、能登半島、名古屋市街地。大きな窓から景色を楽しめる
名港トリトンや金城ふ頭を眺めつつ、約1時間のデモフライトを終えた