【イベントレポート】パリ航空ショー2015

ボンバルディア、100~150人乗りの旅客ジェット機「CS100」の機内や「CS300」の飛行展示を披露

2015年6月15日~6月21日(現地時間) 開催

ボンバルディア「Cシリーズ」の「CS300」

 6月15日、世界最大の航空ショーであるパリ航空ショーが開幕した。今回の目玉の1つは、エアショー初参加となるボンバルディア「Cシリーズ」であろう。Cシリーズは、100~150人乗りの双発単通路機で、今回のパリ航空ショーには開発中の「CS100」(110人乗り)と「CS300」(130人乗り)が展示された。

 日本の航空会社からのCシリーズの発注はまだないが、ボンバルディアによると全世界で現時点で確定243機、オプションも含めると603機の受注を得ており、2016年からの引き渡し(ローンチカスタマーはスイスインターナショナルエアラインズ)を予定している。

 スイスインターナショナルエアラインズは現在運航しているアブロ「RJ100」の後継機としてCS100を導入する予定で、2016年にCS100を10機、2017年にCS300を10機、2018年にはCS100または300を10機導入する計画だ。アブロRJ100の主な就航地であるロンドン・シティ空港は騒音規制が厳しいため、静粛性に優れるCシリーズは後継に適している。

Cシリーズ導入計画について説明するスイスインターナショナルエアラインズCEOのHarry Hohmeister氏

小型機市場の予測

 航空ショー開幕に先立ち、6月14日(現地時間)に行なわれたプレスカンファレンスでは、小型機の今後20年の市場予測に関する発表とCS100をはじめとする航空機の公開が行なわれた。

 ボンバルディアは、今後20年間で60~150席クラスの旅客機に約1万2700機、金額にして6500億ドル(およそ65兆円)の需要があると見込んでいる。現在も大きな市場がある60~100席級については、今後も堅実な成長が予測され、20年間で5700機の需要を見込んでおり、ボンバルディアのラインアップではQ400やCRJシリーズがこれに該当する。このクラスにはエンブラエルERJや三菱MRJ、スホーイSSJなど競合機種も多い。一方、100~150席級についてはこれまでどのメーカーもあまり開発に力を注いでこなかったため競合機種が少ないが、ボンバルディアは今後20年でこのクラスで7000機の需要を見込んでおり、Cシリーズによりその需要を満たすことができると考えている。

地域別の需要予測(60~150席級)では、北米が3600機と最も多く、次いで中国(2450機)、ヨーロッパ(2100機)、中南米(1150機)、東南アジア(1100機)となっており、今後20年でリージョナル機市場の規模は中国がヨーロッパを追い抜くと考えられている。会見したボンバルディアの民間航空機部門責任者のFred Cromer氏も中国市場を重視している旨コメントしている。

小型機市場の現状
ボンバルディアの小型機市場予測
ボンバルディアの航空機ラインアップ

Cシリーズの特徴

 「Cシリーズ」は100~150人乗り級の単通路双発機で、ボンバルディアのラインアップの中では最も大型となる。エンジンはプラット・アンド・ホイットニー製「PW1500G」ギヤードターボファンエンジンで、ボンバルディアとしては初めて主翼下にエンジンを吊り下げる形式となる。

スイスインターナショナルエアラインズ塗装のCS100飛行試験5号機。コックピットの風防は、ボーイング787型機やエアバス350型機に似た大型の曲面ガラス4枚から成る

 燃料消費量は従来機と比べて20%以上低減されており、ライバルメーカーが開発中の既存機エンジン換装型(エアバス319neoなど)に対しても10%の燃費のアドバンテージがあるという。騒音についても、FAAによる制限基準Stage 4に対して、20EPNdB(人間の感覚を加味した騒音の単位)以上低くなっている。航続距離は、当初の計画では2950海里(5463km)であったが、設計の結果さらに伸び、現在は3300海里(6112km)とされている。室内空間も拡大されており、シート幅はライバル機に対して1~2inch広く、また通路幅も1inch広い。

 これら優れた性能の理由について、エアバス319のようなライバル機は、より大型のエアバス320からの胴体短縮形であるため胴体構造や主翼などに無駄があるが、対してCシリーズは100~150席級に最適化されているため効率的であるからとCromer氏は説明した。

CS100に取り付けられたPW1500Gギヤードターボファンエンジン。ファンブレードはチタン・アルミニウム合金製で18枚。ファン入口(緑色の部分と黒の部分)とバイパスエア出口にメッシュ状の吸音ライナが多く配され、騒音低減への配慮が伺える

 CS100は2013年9月に初飛行を行ない、2014年5月には地上走行中にエンジンのディスクが破断してカウルを突き破るという事故が発生し、試験が一時中断されたが、潤滑系などの改修を経て同年9月から飛行試験を再開している。CS300は2015年2月に初飛行を行なったばかりで、今回のパリ航空ショーでは飛行試験初号機(登録記号C-FFDK)が展示された。型式証明取得に向けた試験の進捗は順調で、全試験の70%を完了している旨が発表された。

Cシリーズの性能と型式証明取得試験の進捗についての説明

 今回公開されたCS100の飛行試験5号機(FTV5)は、機内に試験装置のほか試験用の客席やギャレー、ラバトリー(トイレ)も備えている。客席の配置は、ビジネスクラスが2-2の横4席配列、エコノミークラスが3-2の横5席配列で、エコノミークラスについてはシートピッチが32inchの場合と29inchの場合の2パターンがあった。

 シートは最近の傾向に則った薄型シートで前席との間隔をできるだけ広く取られている。また客室の天井は高く非常に開放感があり、通路を歩く際にも全く頭上が気にならず、110席級とは思えない室内空間で、より大型のB737(従来型)よりもはるかに広く感じた。

ビジネスクラスの座席
飛行試験機なので、試験装置も搭載されている
エコノミークラスの座席。2-3の横5列配置。窓も大型化されており、開放感が増している
後部非常口
機体後部に設けられたラバトリー
機体後部のギャレー

 コックピットは両席にHUD(ヘッドアップディスプレイ)を備え、ボンバルディアとしては初めてサイドスティック型の操縦桿を採用したFBW(フライ・バイ・ワイヤ)の操縦系統となっている。テストパイロットによると、操縦感覚は非常にナチュラルで、従来の操縦輪型からサイドスティック型への移行も違和感なくスムーズにできたという。

CS100のコックピット。5枚の大型の液晶からなるグラスコックピットで、両席にHUDも備える
コックピットの説明をしてくれたテストパイロットのMark Elliot氏
ボンバルディアとしては初めてサイドスティックを採用

 CS300については、機内の公開はなかったが、15日から飛行展示が行なわれ、旅客機らしからぬ機敏な動きで観客を魅了した

展示されたCS300飛行試験初号機。最前部の窓に取り付けられた熱線風速計や水平尾翼の風向計など、機体の随所にセンサー類が設置されている
飛行展示を行なうCS300

外江 彩