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ANA、国内線777と787の新シート公開。プレミアム/普通席にタッチ式モニターとAC/USB電源を完備
普通席はトヨタ紡織と共同開発
2019年5月30日 07:00
- 2019年5月29日 公開
- 2019年秋 導入開始
ANA(全日本空輸)は5月29日、秋から導入を予定している国内線の新シートを公開した。同社が「国内線主力機」と表現する双通路機のボーイング 777-200型機と787-8型機に搭載するもので、プレミアムクラス、普通席ともに一新する。
ANAは2017年から「今までにない機内での過ごし方の提供」をテーマに掲げ、プレミアムクラスの食事のリニューアル、国内線機内Wi-Fi無料化、機内エンターテイメントの充実などを実施してきたが、今回もその取り組みの一環となる。
プレミアムクラス/普通席ともに個人用モニターを装備しており、プレミアムクラスについては「席が取れない」という利用者の声を受けて、従来の21席(777-200型機)/12席(787-8型機)から28席(ともに)へ大幅に増やす。
導入対象は、777-200型機が8機、787-8型機が11機で、同社はすでに単通路機のエアバス A321neo型機で個人用モニター付きのシートを導入しているが、今秋の新シート導入開始から2022年上期までの間に、国内線の個人用モニター付き機材を計41機まで増やす見込みだ。
プレミアムクラスの新シート
国内線プレミアムクラスには、航空機シート大手のゾディアック・エアロスペースを買収したことで知られる仏サフラン(Safran Seats)の新型を採用した。シートの表地は、現行の本革からグレー基調のファブリックへ変更。15インチのタッチパネル式モニター、有線リモコン、収納式の大型テーブル、スマートフォンなどを置くのにちょうどよい小型テーブル、隣席とのディバイダ、ユニバーサルACコンセント、USB充電ポート、回転式読書灯などを備えている。
また、シートには電動リクライニング機構が備わっており、ボタン一つで離陸前の標準状態、背もたれとレッグレストを傾けた状態に遷移させることができる。リクライニング操作を行なうボタンは座面の横(太ももの位置)にあり、自然と指を伸ばせる場所にある。その隣には個人用モニターを操作するための有線リモコンがあり、タッチとリモコンのどちらでも操れるようになっている。
さらにその隣(膝の辺り)にはペットボトルなどがちょうど入るポケットが設けてあり、現行のシートではアームレスト前方にあるコンセント/USB充電ポートは、そのポケットの内側に移動した。このため、ACアダプタやケーブルを使うときに、前をのぞき込まなくても差し込めるように改善している。
実際に掛けてみると、がっしりとした安定感があり、フルリクライニング状態は自然に力が抜けて体を委ねられる角度だと感じた。また、ヘッドレスト横のガードと席間のディバイダのおかげで「囲まれ感」があり、搭乗者のプライバシーに配慮した作りであることが分かる。
普通席の新シート
普通席の新シートは、すでに国内線のボーイング 767-300型機で採用しているものと同じく、トヨタ紡織と共同開発したもの。トヨタ紡織はトヨタ自動車のシートを手がける業界大手で、自動車シート開発の知見とノウハウを航空機シートにフィードバックしたという。
普通席の個人用モニターはタッチパネル式の11.6インチ。有線リモコンは設定されていないため、タッチ操作のみとなる。モニターの下にはヘッドフォンジャックとUSB充電ポートが設けられている。
説明にあたったトヨタ紡織 ACT推進室 室長の梶雅雄氏は、「座り心地と使いやすさ」をキーワードに挙げ、座り心地では背もたれに工夫をしたという。着座姿勢がわるいと腰まわりの筋肉を使ってしまうため、リラックスして座ることができない。そこで、新シートは骨盤、お尻の前側と後ろ側をそれぞれ支持することで体圧を分散。また、痩せている人の棘突起(きょくとっき:背骨下部の突出部分)は、シートフレームにくぼみを設けて対応している。
使いやすさの面では、アームレストやモニターの取り付け位置・角度を工夫しており、背もたれは「倒さなくても十分な初期倒れ角度」になっているという。テーブルと膝との間隔、座面とアームレストの位置関係も見直すことで、体格を問わず座りやすいシートに仕上がったとのことだ。細かいところでは、テーブルのカップホルダーを丸い穴ではなくクローバー形にすることで力の「逃し」を設けてあり、液体の入ったカップを取り出しやすくしているといった工夫も見られる。
なお、発表会場には、プレミアムクラスのアメニティとともに6月~8月に提供する朝食と昼食も用意してあった。