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日本旅行業協会、田川会長・新春会見。「ツーリズムEXPOジャパン」大阪開催や出国税(国際観光旅客税)を語る

2019年1月8日 開催

一般社団法人日本旅行業協会 会長 田川博己氏

 JATA(日本旅行業協会)は1月8日、東京・霞ヶ関の本部で新春記者会見を開催。会長の田川博己氏が2018年の総括や2019年に向けた抱負などを語った。

田川会長:2018年を振り返ると国際観光はポピュリズムの台頭や自然災害にもかかわらず、先進国やアジアの安定した経済成長に支えられ、UNWTO(World Tourism Organization:国際連合の専門機関である世界観光機関)の発表では、2018年1~6月で6%の伸びを示しています。2017年の国際観光旅客数は13億2000万人、観光が占める世界のGDPへの貢献は10%、10人に1人の雇用を生み出すまでになり、その存在感がますます大きくなると同時に責任が増していると感じています。

 国連が掲げる17の「SDGs(Sustainable Development Goals:持続可能な開発目標)」の目標に対し、ツーリズムの果たす役割は大きいものがあり、地方の雇用を生み出す地方創生の役割、相互理解を促進し平和に貢献する役割、災害からの復興支援の役割などは、日本だけのものでなく、世界共通のものであります。

 市況は相次ぐ自然災害で、国内旅行は前年度割れの厳しい結果になりそうです。しかしながら、西日本に続き北海道でも「ふっこう割」が迅速に導入されたおかげで、旅行業界の取り組みと相まって、大きな成果がありました。

 インバウンドでも自然災害の影響で9月は前年割れを起こしましたが、10月には復活しました。9月20日が「ツーリズムEXPOジャパン2018」の開会日であったこともあり、関西国際空港全面再開のメッセージを世界に発信する絶好のタイミングとなりました。JATAも観光庁やJNTO(Japan National Tourism Organization:日本政府観光局・国際観光振興機構)の韓国市場の復活キャンペーンに協力させていただきました。訪日外国人旅行者数3000万人の大台を12月18日に達成できたのは、関係各所のリカバリーへの動きによるものと考えております。この災害を教訓として、緊急時の受け入れ体制の強化や、共同でのリカバリー体制の整備などを、将来への備えとして提案していきたいと考えています。旅行会社50社統計による1月~10月の海外旅行の取り扱いは107%となり、市場の伸びを上回ることができました。

 昨日(1月7日)から「国際観光旅客税」、通称「出国税」の徴収が始まりました。旅行会社は出国税徴収の窓口の一つでもありますので、円滑な導入に向けて旅行者・お客さまにご理解いただけるようていねいに説明をしてまいります。

 JATAでは出国税の使途について「交流大国こそ観光先進国である」との観点で、海外旅行の促進策や次世代の観光立国を実現させるための政策を提言してきました。観光庁の予算で海外旅行に関するものとして「旅行安全等に関する情報プラットフォームの構築」が予算化され、旅行会社を通じた安心・安全の取り組みがいよいよら旬の制度運用開始に向けて準備が進められています。

 2018年の春に私は2018年を漢字1文字で「備」、「備える年」として、「変革の時代の幕開け」に備えようと発信しました。2019年の漢字は「挑」、「挑む年」としたい。「ラグビーワールドカップ2019日本大会」が開催される年でもありますので、「チャレンジ&トライ」と言い換えてもよいかもしれません。昨年末に2018年を象徴する文字として「災」という漢字が披露され、安倍晋三首相は「転」を選びました。「災い転じて福となす」という気持ちで2019年に挑んでまいります。

2018年を振り返って――「てるみくらぶ」事件の再発防止や「働き方改革」「休み方改革」への取り組み

田川会長:2018年に観光庁の長官に田端浩氏が就任されましたが、かねてからの懸案であったロシア、中国、韓国、インドネシア、ベトナム、インドなど2国間の案件にJATAがさらに重要プレイヤーとして参画するようになってきました。また、若者の海外旅行を増やす案件における官民連携や、省庁横断の組織作りにもご尽力いただいております。

「株式会社てるみくらぶ」のような事件の再発防止を目指すガバナンスの強化策や弁済制度の改正への対応については、観光庁との協議のもと、業界の自主ルールや通報制度の運用を開始しました。幸いにも現状重大な通報はなく、牽制機能が働いているのではないでしょうか。

 ランドオペレーター(旅行業者からの依頼を受けて運送/サービス/運送関連サービスについて代理・媒介・取り次ぎを対価を得て行なう者)の登録制度や、通訳案内士(外国人に付き添い、外国語を用いて旅行に関する案内をして報酬を得る者)の制度改定などがあったが、ランドオペレーターへの登録は963件(2018年12月7日現在)あったと聞いています。管理責任者の選任と研修が義務付けられ、JATAでも研修を実施し、634名の参加がありました。インバウンドビジネスを質と量の両面で充実させる改革ですので、引き続き定着化に向けて全面的に協力してまいります。

 働き方改革、休み方改革関連については、2021年から祝日3連休をとりやめて「海の日」を固定化しようという動きがありますが、JATAとしては絶対反対の立場として働きかけを行なっています。そして年休70%の義務化に対し、旅行業界自ら取り組んでまいります。また、模範的な取り組みに対しては会長表彰することを始めています。

 市況は堅調とはいえ、市場は成熟し、販売チャネルの多様化が進んでいます。このような環境に対し、海外旅行は3年目を迎えるアウトバウンド促進協議会の活動を推進してまいります。企画プランナーのためのセミナー、各部会ごとに共通テーマを決めて活動しており、ヨーロッパ部会では「ヨーロッパの美しい街道・道20選」、東アジア部会では「世界遺産級台湾30選」、北・中南米部会では「アメリカ大陸 記憶に刻まれる風景30選」などを選定・推進し、成熟市場に向けて、プロのプランナーならではの切り口で旅行商品化が進められています。

2019年は「挑む年」であると語るJATAの田川博己会長

2019年に向けて――東京から大阪に舞台を移す「ツーリズムEXPOジャパン」

田川会長:2019年に周年を迎えるのは、国交樹立100周年のポーランド、外交関係樹立100周年のフィンランド、日本人移住120周年のペルーなどがあります。また、香港やメコンなどとの交流年も予定されています。G20大阪サミットが6月に、夏にはTICAD(アフリカ開発会議)も日本で開催されます。国内でこれら参加国への関心が高まり、双方向の交流機運が高まるのではと思われます。

 国内旅行では、国立公園や日本遺産をはじめとして地方自治体やDMO(Destination Management Organization)との連携を一層強化し、観光資源の磨き上げや受け入れ体制への参加など、旅行会社ならではの価値づくりを進めめたいです。DMOは86法人が正式に登録されており、DMOが自立して活動できることが地方創生のカギであり、そのために旅行会社の果たす役割は大きいです。

 ツーリズムEXPOジャパンは2018年開催では20万7352人の来場者を迎え、世界規模の展示商談会・観光産業博覧会として、観光業界だけでなく、幅広い産業の方々から認知された証と感じています。

 2019年は初めての地方開催・日本第2の都市である大阪・関西での開催となります。大阪・関西万博2025の開催も決定しました。JATAもツーリズムEXPOジャパンにおいてカリブ海諸国と接遇し、観光大臣に支援要請したこともあり、万博決定には感慨ひとしおであります。ツーリズムEXPOジャパンから2025年の万博まで関西が盛り上げるように、実行委員長としてぜひとも成功させたいと考えています。ちなみに万博に倣いまして、ツーリズムEXPOジャパン2019でも「大阪・関西」との表記で進めていく方向であります。

 ツーリズムEXPOジャパン2019でのポイントは大きく3つ。1つ目は「第2の都市・大阪とゲートウェイでもある関西の魅力の発信」です。万博開催も決まり、IR(統合型リゾート)や医療など新しいテーマもあるなかで「笑い」や「食」といった関西ならではの味付けをどうするか、関西の開催地連絡協議会の皆さんと意見を出し合っているところです。

 2つ目は「観光博覧会としてのテーマである『ツーリズムの新しいカタチ』」をさらに進化させます。2018年は日本経済新聞社と共催、総務省の協力を得て、インバウンド・観光ビジネス総合展を開催し、インバウンドの新しい技術の数々を紹介しました。環境省とエコツーリズムの関係者で出展いただいた国立公園の活用では、VR(Virtual Reality:仮想現実)技術を利用した疑似体験が評判となりました。日観振(日本観光振興協会)が主導する産業観光、酒蔵ツーリズムは、各地で有力な誘客のコンテンツになってきています。文化庁の展示、外務省の「ゴルゴ13」を起用した海外安全の展示も好評でした。これらはいずれも継続・発展させていく考えです。

 また、パラスポーツの体験コーナーも非常に好評でした。ラグビーワールドカップ2019、2020年東京オリンピック・パラリンピック、ワールドマスターズゲームズ2021関西と続くメガ・スポーツ・イベントのゴールデンイヤーを控え、「スポーツツーリズム」のカタチも見せていきたいです。

 3つ目は「国際交流の基点となる」ことです。2018年にUNWTOと我々で共催した観光大臣会合には世界13か国の観光大臣、UNWTO、WTTC(World Travel & Tourism Council:世界旅行ツーリズム協議会)、小池百合子東京都知事が参加しました。2019年は10月24日に大阪で開催します。ちなみにその翌日に北海道でG20の観光大臣会合「T20」が開催されます。両イベントを連携し、日本のプレゼンスを発揮できるようにしたいです。

 2019年は春に統一地方選挙、4月から5月に天皇陛下のご退位とご即位、それに伴う10連休、7月に参議院議員選挙など、通年にはない行事が続きます。さらにG20やTICAD、ラグビーワールドカップ2019など世界に注目される年になります。「国内」「海外」「訪日」を三位一体で展開できるJATAに期待されることは大きく、その期待に応える年にしたいと考えております。