ニュース

日本旅行業協会、「通訳案内士法」「旅行業法」の一部改正について説明。制限の緩和/厳密化で地方の観光業を活性化

2018年2月8日 開催

一般社団法人日本旅行業協会 法務・コンプライアンス室 室長 堀江眞一氏

 JATA(日本旅行業協会)は2月8日、東京・霞が関の本部において定例会見を開き、法務・コンプライアンス室 室長の堀江眞一氏が「改正旅行業法」について説明した。

 旅行業法は消費者(旅行者)を守るためのもので、旅行業者を登録制とし、適正な運営・活動が行なわれるようにするための法律。悪徳業者の取り締まりを目的に1952年「旅行あっ旋業法」が制定されたことから始まり、改正の都度消費者保護の項目が拡充し、近年は観光立国へ向けての規制・制度見直しの方向へと向いている。

 2018年1月4日施行された「通訳案内士法」と「旅行業法」の一部改正にあたり、旅行業者に必要な知識・手続きについてJATAとANTA(全国旅行業協会)では、東京都、沖縄県、宮城県、北海道、愛知県、大阪府、福岡県の7カ所で説明会を行なってきた。そのことの報告と一部改正の概要について、定例会見で説明がなされた。

通訳ガイドの裾野を広げる

 今回の一部改正は「全国津々浦々に国内外の旅行者が訪れ、交流が促進され、安心して滞在できる環境を整備する」ことが目的とされている。

「通訳案内士」は外国人に付き添い、外国語を用いて旅行に関する案内をして報酬を得る人のことを指し、資格試験に合格し、居住する都道府県知事に登録している必要があるが、この呼称が「全国通訳案内士」となる。

 そして新たに業務エリアを限定した「地域通訳案内士」を創設する。これは特定の地域に限定した固有の歴史・地理・文化などの情報に通じ、各自治体が行なう研修を受講して登録している必要がある。

 また、通訳ガイドの量を地方も含めて増やすために制限を緩和。業務独占から名称独占へとなる。つまりこれまでは有資格者でなければ行なえなかった業務を無資格者でも有償提供できるようにする。ただし、無資格者が「通訳案内士」や似通った名称をパンフレットなどで名乗ることは禁止する。これにより全国通訳案内士、地域通訳案内士、それ以外の通訳ガイドらが提供するサービスを旅行者が利用しやすい環境を整えていく。

 一方で試験科目の見直しや、定期研修の受講が義務付けられるなど、通訳案内士の質の向上も図られている。

地域独自の旅行商品の企画・販売促進を図る

「旅行業法」の一部改正では、旅行サービス手配業(ランドオペレーター:旅行業者からの依頼を受けて運送/サービス/運送関連サービスについて代理・媒介・取り次ぎを対価を得て行なう者)に関しての制限を厳密にし、国内旅行商品の質の向上を図る。

 具体的には、これまでランドオペレーターは国内旅行において旅行者の安全確保について法律の適用がなく、一部業者には安全に対する責任意識が希薄な例が見られた。また、キックバックのために必要以上に旅程に土産物店などへの訪問を組む込み、旅行者を連れ回す業者も見られた。

 そういった問題を改善するためにランドオペレーターの登録制、定期的な研修を受けている旅行サービス手配業務取扱管理者を1名以上営業所に置くこと、土産物店への連れ回しなどの禁止事項明示などが盛り込まれている。

 また従来の旅行業務取扱管理者制度では、資格試験に例えば国内航空運賃の知識を問うものなどがあり、「地域観光を活性化したい」といった意向の人にとってハードルが高い資格となっていた。そこで「地域限定旅行業務取扱管理者」を新設し、有資格者が複数営業所を兼務することを認め、各地域の特色を活かした旅行商品の企画・販売促進を図っていく。

 そのほか旅行業者とランドオペレーター間では口約束の契約もあったため、書面に残すことの義務付け、第1種旅行業者は決算申告書などを観光庁に提出することなども改正には含まれている。