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日本旅行業協会、定例会見。「国内旅行マーケットにおける新たな役割研究会」を発足。ツーリズムEXPOジャパン2019の出展者数は「上方修正」
2019年4月11日 16:58
- 2019年4月11日 実施
JATA(日本旅行業協会)は4月11日、東京・霞が関の本部で定例会見を開いた。
JATA 国内・訪日旅行 推進部長の高井晴彦氏は「国内旅行マーケットにおける新たな役割研究会」発足について、理事・事務局長の越智良典氏は「2019年度JATA事業方針」について説明した。
国内旅行会社の新たな役割を検討し、新たな需要を創造する
3月26日の第1回会合をもって発足した「国内旅行マーケットにおける新たな役割研究会」は、国内の旅行会社などを主なメンバーにした研究会で、従来の商品、販売スキームだけでなく、利用客・サプライヤー・地域に対して新たな役割を果たし、新たな需要創造、ビジネスチャンスの創出のために「根っこから議論する」ことを目的に創設された。
市場としては、OTA(Online Travel Agent:オンライン旅行代理店)の事業拡大、Googleなどの事業参入があり、インターネットによるダイレクトマーケティングが広がり、訪日外国人旅行者増加により、宿泊施設との仕入れ交渉も難しくなっている。接客もリアル店舗からインターネットへと比重が移行し、ユーザーがネットで得られる情報量も増えている。一方、従来の旅行会社による旅行商品は差別化が難しく、価格競争に偏り収益性が低下している。これらの状況を受けて、国内旅行をメインに訪日旅行も含めつつ、国内旅行会社が今後果たしていくべき役割について検討、研究することを会の目的にしている。
「国内旅行マーケットにおける新たな役割研究会」メンバー
・株式会社日本旅行 取締役常務執行役員 営業企画本部副本部長 大槻厚氏 ※座長
・株式会社JTB 個人事業本部 国内仕入商品事業部 執行役員 平野利晃氏
・ANAセールス株式会社 執行役員 旅行事業本部副本部長 大木淳雄氏
・KNT-CTホールディングス株式会社 国内旅行部 課長 伊藤かおる氏
・株式会社ジャルパック 取締役国内企画商品事業本部長 谷吉一宏氏
・株式会社JTB 個人事業本部 事業統括部 担当マネージャー 加藤大祐氏
・東武トップツアーズ株式会社 企画仕入本部 推進チーム 国内旅行部長 瀬川靖氏
・株式会社農協観光 旅行事業部長 髙橋邦彦氏
・株式会社阪急交通社 東日本営業本部メディア1部 国内営業戦略室長 勝島亮介氏
・株式会社びゅうトラベルサービス 地域・営業戦略室長 西剛氏
・沖縄ツーリスト株式会社 執行役員 観光部部長 石坂彰啓氏
・株式会社ジャパングレーライン 取締役 浅野倫克氏
・株式会社アイ・ティー・ビー 代表取締役社長 周文氏
・株式会社JTB総合研究所 主席研究員 山下真輝氏 ※モデレーター
会はすでにキックオフミーティングとして第1回を開催しているが、5月の第2回から2020年1月の第6回までにわたって、4つのステップを設けている。ステップ1「視点の変化/意識の改革」では、領海内競争というミクロな視点、シェア争いではなく、大きな変化に目を向けたマクロな視点で企業間のリレーションシップ、アライアンスの可能性も含めて検討。
ステップ2「状況把握(内部環境/外部環境の理解)」では、3C分析(Customer/Competitor/Company)をもって、旅行会社の現状、顧客ニーズ、異業種の参入への理解を深める。ステップ3「新しい旅行会社の役割の設定」では、旅行会社の強みを理解したうえで、ターゲットの再設定、自社の商品・サービスのブラッシュアップ、顧客とのリレーションシップの構築方法を検討し、旅行会社としての新しい役割を考える。そしてステップ4として各社へフィードバックしていく。
第1回の会合では、OTAや新規参入などで各社苦戦しているのは共通理解だが、窓口業務の最適化、顧客の高年齢化に対する新規顧客の開拓、レンタカーや保険など旅行周辺産業への対応など、課題感が企業により異なることも見えてきたという。
ツーリズムEXPOジャパン2019の出展者数の推移は「順調」
旅行業界団体であるJATAとしての2019年度事業骨子が役員会で承認。総会での決議へと進めていくが、その内容を定例会見で紹介した。
指針の大枠はJATA 会長の田川博己氏による新春記者会見で語られているが(関連記事「日本旅行業協会、田川会長・新春会見。『ツーリズムEXPOジャパン』大阪開催や出国税(国際観光旅客税)を語る」)、2020年度までにアウトバウンド2000万人、インバウンド4000万人、計6000万人の双方向交流という目標に向けて、「チャレンジ&トライ」のテーマのもと、「事業領域活動」「経営環境整備活動」「業界団体活動」「組織・事務局強化」の各領域で、「環境整備や約款などの共通課題には、業界団体としての役割を果たしていきたい」と話す。
事業骨子の詳細はJATAがWebサイトにおいて公開しているが、例えば「事業領域活動」の「安全情報プラットフォーム推進」では、これまで外務省の海外渡航者向け登録制度「たびレジ」をプラットフォームに、旅行会社の編集機能を上乗せして、安否確認と利用客への案内ができるようにしていく取り組みがある。これは今はテスト段階で、7月あたりから順次導入され、付加情報を増やしていく可能性があるという。
国内旅行では国立公園・日本遺産活用への取り組みとして、「開放してくれるの?」と驚くようなエリアを観光商材として利用できるようになる動きがあり、文化財の開放は今後も続いていき、チャンスが広がっていくのではとのこと。被災地支援では、被災地への旅行を助成する復興割が北海道でも効果を発揮したが、実行までに約1か月かかったという課題があり、ある程度の準備をしておこうという働きかけをしているという。訪日では地方への送客や消費額のアップへの提案を継続していく。
ツーリズムEXPOジャパン2019 大阪・関西については、初の東京以外での開催ではあるものの出展者数の推移は「順調」で、当初8割見込みだったものを上方修正し、9割にするそう。2018年は不参加だったオーストラリア政府観光局も出展を予定している。