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ANA、「機内食総選挙2018」の試食会実施。約33倍をくぐり抜けた参加者が機内食工場見学や上位人気のカレーを堪能
中国・四国地方のご当地食材を使ったカレーが集まる
2018年12月10日 10:33
- 2018年12月9日 実施
ANA(全日本空輸)は12月8日~9日の2日間、10月に投票を募った毎年恒例の機内食投票企画「機内食総選挙2018」の試食会を実施した。総選挙に投票し、参加を希望した約2700名から各日40名ずつ計80名の参加で、倍率は約33倍という難関となった。
2019年の機内食総選挙は、地域活性化プロジェクトの「Tastes of JAPAN by ANA -Explore the regions-」と連動したものとなり、12月から特集する中国・四国地方のご当地食材を使ったカレー9品をエントリー。10月19日~28日に投票された結果の上位3メニューが11月21日に発表されている(関連記事「ANA、中国・四国エリアを特集する『Tastes of JAPAN by ANA -Explore the regions-』発表会」)。
今年で6回目を迎える機内食総選挙だが、食材の産地や、「カレー」のようにメニューを限定したのは今回が初めて。和食、洋食それぞれ4名ずつのシェフがメニューを考案したという。
試食会はANAC(ANAケータリングサービス)の川崎工場で実施。会場にはエントリーされた9品のご当地がカレーのサンプルが展示された。1~3位の結果は先述の関連記事でもお伝えしているとおりで、1位は全2万8593票の投票のうち9405票を集めた「フィッシュカツと蓮根カレー」(徳島県)。2位は8400票を集めた「大山どりのカツカレー」(鳥取県)。3位は3255票を集めた「牡蠣醤油のシーフードカレー」(岡山県)となっている。
来場者を前に、機内食総選挙の責任者を務めるANA CS&プロダクト・サービス室 商品戦略部 マネージャーの西村健氏が開会のあいさつ。試食会を楽しんでもらえるよう、さまざまな趣向を凝らした準備をしていることを紹介したうえで、機内食について言及し、「ANAはファーストクラス、ビジネスクラス、プレミアムエコノミー、エコノミークラスと用意しているが、今回はエコノミークラスが対象となっている。それぞれのクラスに力を入れて戦略を立て、具現化をしているが、今年度はとくにエコノミークラスに戦略を組んで、施策を講じてきた。今後も緩みなくやっていきたい」と、今回紹介するエコノミークラスの機内食についての意気込みを示した。
さらに、「今日は和やかに進めたい半面、私は勉強させてもらいたい。皆さまの生の声を聞くことが一番のマーケティングだと思っているので、忌憚のなくお話いただければ」との述べ、「ゆるい雰囲気で」と楽しく話をできる場となることを望んだ。
その後、7グループに分かれて順次、ANAC川崎工場の見学へ。食品を扱うことから衛生面に対する配慮はもちろん、飛行機に積載されるものを扱うために保安上の観点でも厳重な場となっている。金属類などは基本的に持ち込みが許されず、全員が使い捨ての衛生服を着用して入場。
特に今回は、食品を盛り付けるエリアなどにも入場することになっていたことから、キャップの上にさらに衛生頭巾を被ったり、靴の上に被せるフットキャップに加えて、パンツの足首にアンクルバンドを巻いて体毛の落下を防いだりなど、かなりの重装備で見学に臨むことになった。
今回の見学コースは、食材を準備するエリアから、一部窓越しとなったが調理場の見学、そして盛り付けのセクションを経て、カートへ機内食を積み込み、フードローダーへと運ばれていくという、実際の作業工程で行なわれる一連の流れに沿ったもの。
そしてこの工場見学は、参加者には勉強の場にもなっている。というのも事前の案内で、「工場見学時にいろいろなトリビアを紹介。試食会の最後に、そのトリビアをもとにしたクイズ大会を行なう」と予告されたためだ。5~6名ずつに1名のスタッフが案内し、各場所の説明ややっていることの説明。食材に使うまな板は食品ごとに色分けされていること、盛り付け時は1つの手袋では1つの食品しか扱わないことなどの豆知識を交えた説明が行なわれ、参加者は耳を傾けつつも、目の前の光景を興味深そうに眺めていた。
その後、試食会の会場に戻り、機内食総選挙の1~3位のメニューの紹介などが行なわれ、いよいよ試食に。CA(客室乗務員)が実際に機内で使われるカートを運んで、シェフとともに参加者に配膳。
参加者に配られたメニューは、1~3位のカレーのなかから事前に希望したものが用意された。今回の参加者のメニューの内訳は、1位の「フィッシュカツと蓮根カレー」が11名、2位の「大山どりのカツカレー」が13名、3位の「牡蠣醤油のシーフードカレー」が16名と、選挙結果とは反対に3位のメニューが1番人気という面白い傾向が出ていた。
会場ではCAやシェフが各テーブルをまわり参加者と会話を楽しむ様子が見られた。終了後にシェフに聞くと、「優しい方が多くて、厳しい意見はなかった」とのこと。ただ、ハードルが高そうだが、実現できたら面白そうなアイディアも聞けたそうで、シェフにとっても楽しい時間になったようだ。
そして、先述のとおりトリビアクイズが行なわれた。「食材を用意するエリアの名前は?」などの基本的な質問から、「賞味期限管理のために曜日ごとに色分けして在庫管理をしている。火曜日は何色?」「魚を扱うまな板の色は?」などの難問、そして「ANAケータリングサービスのオリジナルブランド『ANAのおいしいコレクション』の人気メニューは?」という少し変化球な問題を交えた計6問が出された。
その結果はほとんどのチームが全問正解という優秀すぎる展開になり、最後はじゃんけん大会で順位を決めることに。じゃんけんに買ったチームには、問題にも登場した「おいしいコレクション」のカレーとスープセットが贈られた。
また、全参加者に飛行機のぬいぐるみキーホルダーやお菓子、フライトタグなどのプレゼントが贈られ、最後に菊地恭大シェフからの「普通のお店と違ってお客さまと接することが少ないので、いろいろなご意見をいただけて参考になった。ANAにご搭乗の際には、機内にもアンケートがあるので、お時間があれば機内食の感想などを書いていただければ。肉が固かったとか、味付けが濃いなどお叱りの言葉でも参考にさせていただく。あと、たまに美味しいのがあったら褒めていただければ。私たちもお客さまの旅の思い出の一つになるような機内食作りを目指して頑張っていく」とのあいさつを持って閉会となった。
機内食総選挙のエントリー9品
「フィッシュカツと蓮根カレー」: 徳島県のソウルフードである「フィッシュカツ」とシャキシャキとした歯ごたえが特徴の「蓮根」を使用したカレー。
「大山どりのカツカレー」: しっとりとした旨味と歯ごたえのある鳥取県産の“大山どり”を使用したボリューム満点のトリカツカレー。
「牡蠣醤油のシーフードカレー」: 岡山県の牡蠣を使った牡蠣醤油を隠し味に入れ、海老、いか、あさりを使用した海の香り漂うシーフードカレー。
「生姜入りキーマカレー」: 高知県産の黄金生姜と、カツオのフレークをカレーに入れご飯にグレインズミックスを混ぜ込んだキーマカレー。
「長州どりの和風カレー」: 山口県のブランド鶏である「長州どり」を使用し、生姜の佃煮入りのご飯との相性が抜群の和風カレー。
「みかんカレー」: 愛媛の万能調味料である“塩みかん”を使用した、みかんの爽やかな香気と優しい甘さに程よい塩気が相まったカレー。
「しじみご飯と野菜たっぷりカレー」: 豊富な栄養素を含む島根県産のしじみをご飯に混ぜ込み、野菜や厚揚げをトッピングしたカレー。
「ミツワソース入りドライカレー」: 2008年に広島市選定の第1回「ザ・広島ブランド」に認定された“ミツワソース”を使用した甘味とコクのあるドライカレー。
「小豆島オリーブ入りカレーピラフ」: 香川県小豆島のオリーブやオリーブオイルと昆布茶で炊いたご飯との相性がバッチリの和風カレーピラフ。
和食シェフ考案のカレーが上位に。1位は「意外だった」
試食会のあと、今回の機内食総選挙のメニュー開発に携わった4名のシェフが取材に応じた。上位メニューのうち、1位と3位は和食シェフの田口公也氏、2位は洋食シェフの中嶋裕幸氏が考案したもの。
今回の9メニューは、洋食寄りのメニューを5品、和食寄りのメニューを4品用意したそうだが、1位と3位の2品が和食、2位の1品が洋食と、和食寄りのメニューが人気を集めた結果となった。
その1位と3位のメニューを考案した和食の田口シェフは、うどんやそばとカレーを組み合わせることはあるが、カレーライスを作ることはない立場とのこと。「和食としては、出汁を昆布と鰹をふんだんにつかって、通常より濃くしたお出汁でルーを溶いている。野菜や魚介類のエキスを入れたルーに仕上げている」と和食ならではこだわりのほか、「スパイスというほどではないが、コンデンスミルクを入れてコクを出すなど隠し味を入れている」とのこだわりも。
ちなみに、カレーライスを機内食として出す場合の工夫として、洋食の中嶋シェフは「機内なので味を少し濃い目にし、スパイスを効かせて分かりやすい味に。またある程度、万人受けする味わいを狙っている。ご飯を固めにしてご飯に染みにくくしたり、食べやすいように一口サイズになるようにカットしたりなどしている」と説明。
今回の機内食総選挙の結果について、菊地シェフは「カツは人気があり、ブランド力もある大山どりが1位になると思っていた」とし、「フィッシュカツは意外だった」と各シェフともに口をそろえる。
ちなみにカツのような揚げ物について伊藤シェフは、「機内食は75℃まで加熱しないといけないので固くなってしまうが、大山どりは肉が柔らかい。(この日参加した)お客さまにも柔らかいとおっしゃっていただいた」と、機内食に合う食材だったという。
また、伊藤シェフは、「機内食は温め直すときにご飯がべちゃべちゃになりやすい。ドライカレーの方が美味しく提供できると思っていた」と上位に入れなかったことに、やや落胆の色を見せていた。
今回の機内食総選挙では、「中国・四国地方の各県の食材を使う」「カレー」というテーマが絞り込まれたメニュー開発となったが、その点について伊藤シェフは「各県の特色を表現しやすいものを使って、調達部門と供給の確認をしながら考案した」と、機内食として3か月間提供できる食材であることも条件になる点を難しさに挙げた。
1位と3位のメニューを考案した田口シェフは、機内食総選挙のメニュー考案に参加したのは今回が初めてとのこと。その感想は「受け入れてもらえるか(の不安)が一番」とし、さらに「県の方の気持ち、思いも入れて作っているので、それが伝われば」と話した。
繰り返しになるが、提供路線などは未発表(2019年2月ごろ発表予定)ながら、1位の「フィッシュカツと蓮根カレー」(徳島県)、右が2位の「大山どりのカツカレー」(鳥取県)、3位が「牡蠣醤油のシーフードカレー」(岡山県)の3メニューは、2019年3月~5月にANAの国際線プレミアムエコノミー/エコノミークラスで提供される予定となっている。