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ANA、機内食総選挙2016の決勝メニュー試食会を開催
8月12日までSNSでも投票を受付
2016年8月10日 15:08
- 2016年8月5日~12日 投票受付
ANA(全日報空輸)は8月7日、「ANA機内食総選挙2016」の決勝候補メニューの試食会を、神奈川県にあるANAC(ANAケータリングサービス)の川崎工場にて開催した。機内食総選挙は、SNSでの投票により国際線エコノミークラスで提供する機内食メニューの一部を選定するもの。また、当日は機内食工場の見学も行なわれた。
ANA機内食総選挙は、メニュー候補から選んで1票を投じることで、乗客の意見を反映した機内食を作っていきたいという思いから2013年にスタート。今年で4回目の開催となる。FacebookやTwitterなどのSNS、特設サイトなどを通じて、誰でもこのイベントに参加できる。このように利用客がメニューを選ぶのは、日本の航空会社では唯一の取り組みだという。
年々このイベントに参加(投票)する人数は増えていて、初回の2013年は約3000名、2014年は約6000名、2015年には約8400名が参加している。2016年は、予選と決勝を分け、すでに終了した予選の時点で約1万1400名が参加している。予選は、質問に答えていくと好みのオリジナルメニューが完成するというもので、そのなかから人気の高かった和食4メニュー、洋食4メニューの計8メニューが決勝に進んだ。予選に参加すると試食会に応募することができ、応募者から抽選で30名が当選、当日はそのうち23名が参加した。
参加者は羽田空港から送迎バスで会場の川崎工場に到着。開会式では、メニュー開発などに携わっているANAのCS&プロダクト・サービス室 商品戦略部 部長の岡功士氏が挨拶し、「機内食工場は、一般の方にほとんど公開していない施設。バックヤードだが、こんなに多くの人が働いているのかと驚くと思う。機内食だけではなく、雑誌や新聞、トイレットペーパーなど1000種類以上があり、スペースが限られた機内で、どうすれば快適なフライトをしていただけるか工夫している」と、試食前に実施される工場見学の見どころを説明した。
食品を扱う工場見学のため、衛生管理上の注意点などについて詳細な説明があったあと、参加者は配布された使い捨ての白衣に着替え、2班に分かれて工場見学へと向かった。工場へは腕時計、携帯電話、指輪やネックレスなどのアクセサリー類、ピアスなども持ち込めない。入口を入ってすぐに、粘着ローラーを使って体中のホコリを取り、念入りに手を洗って準備が完了する。
最初に訪れたのは免税品などを管理している保税倉庫。インスタント食品や飲料、アルコール類、タバコや化粧品など、機内で扱うあらゆるものが棚に分類され、厳重に管理されている。印象的だったのが、機内に積み込む品々が、規格で決められたコンテナやトレイにキッチリとうまく収められていることだった。立たせたり寝かしたりと、うまく同じサイズのトレイに入れられ、すき間を無くした無駄がない収納だ。その後、雑誌や新聞を取り扱うエリア、洗浄した食器を紙ナプキンに包むエリアなどを巡った。
また、機内食がセットされたサーブ用のカートを工場から航空機のギャレーに運ぶフード・ローダー車のコンテナにも乗車した。エアコンが備えられて温度管理されたコンテナ内は快適で、参加者はエレベーターのように上の階に移動した。途中、航空機に積み込みをする高さでいったん停止し、入口とは反対側の扉を開けて景色を確認した。参加者たちは眼下に見下ろす地面に思わず「高い」と声にする人もいた。
工場見学から帰ってくると、会場のレイアウトが変更され、試食会の準備がととのっていた。参加者は4名ずつに分かれ、テーブルに着席。ANAC和食調理課長の森誠剛シェフ、洋食統括部長の清水誠シェフによる機内食総選挙決勝メニューの紹介が始まった。
和食メニュー1:牛すきやき丼
すきやきの特色を一つの機内食に凝縮して表現したいと作ったメニュー。牛肉、ゴボウ、シイタケは、それほど強くない割り下であっさりと仕上げている。豆腐は、あまり色を付けないように、割り下ではなくダシで味を付けた。甘ったるい感じが残らないよう、濃口醤油と砂糖のバランスを考えている。
和食メニュー2:海鮮ちらし丼
ちらし寿司は冷たいイメージがあるが、機内では温めて提供する。温めてフタを開けると酢の匂いが機内に充満してしまうため、酢は弱めにし、薄味の酢飯で仕上げてある。具材のイカ、ホタテ、エビ、カニは、素材の味を活かすため塩でボイル。酢飯のしつこさがなく、あっさりと具材と調和した仕上がりになっている。
和食メニュー3:焼き鳥・つくね丼
まさに鳥づくし。鳥の美味しさをいろいろな調理法で一つのプレートに表現した。焼き鳥とつくねは甘ダレで、しつこくなく仕上げてある。ネギは温めると痩せてしまうので、油を塗って仕上げている。焼き鳥とつくねはしっかりと味を付け、そぼろは色は濃いが味は濃くなく、ごはんと合うようにした。ごはんには海苔が挟んであり、味の変化を楽しめるようになっている。
和食メニュー4:牛肉スタミナ焼き弁当
焼き肉屋が弁当を作ったらどうなるか、と考えて作ったメニュー。スタミナの名前のとおり、牛肉はニンニク、ショウガ、コチュジャンを入れたタレに漬け焼き上げた。あしらいは、塩とゴマ風味でナムルのように食べやすくした。肉の風味と油のコクで旨みを出し、ガッツリ食べてもらいたいメニューとなっている。
洋食メニュー1:ビーフシチュー エッグヌードル添え
オーソドックスなスタイルでビーフシチューを仕上げた。牛バラ肉を赤ワインとデミグラスソースでコトコトとやわらかく煮込み、エッグヌードルとキャロットグラッセ、ブロッコリーを添えている。和食メニューに比べてボリュームがないように感じるが、濃厚な仕上がりで、パンと一緒に食べてほしい。
洋食メニュー2:鶏もも肉の煮込み カレークリームソース
鶏のモモ肉を白ワインとブイヨンでゆっくりとやわらかく煮込んだ。クリームソースにはカレーの風味を付けている。バターライスと一緒に食べると、ちょっとスパイシーでありながら、まろやかな仕立てとなっている。彩りはピーマン、赤ピーマン、マッシュルーム。味のアクセントとして、トマトのローストとブロッコリーを添えた。
洋食メニュー3:洋食屋さんのハンバーグ・デミグラスソース フライドエッグ添え
古くからある洋食レストランをイメージしたオーソドックスなスタイル。ハンバーグはジューシーに仕上げてあり、デミグラスソースをかけている。フライドエッグは、ヒーティングしても黄味の部分がトロっとやわらかく、黄味をソース代わりにして食べられるようにした。フライドポテト、キャロットのグラッセとホウレンソウを添えている。
洋食メニュー4:根菜入りチキンハンバーグ・黒胡椒ソース
少し変わった感じで、ヘルシーに仕立てたメニュー。味も洋食というより中華のように黒胡椒のピリッと辛いソースにしている。彩りとしてブロッコリー、タケノコ、シイタケを添えている。
決勝の候補メニューは全部で8つあるが、それぞれボリュームがあるため、和食と洋食1つずつが提供された。なかには、1人で3食以上も試食した参加者もいたが、多くはそれぞれ提供されたメニューをシェアするなどして、なるべく多く試食できるよう工夫していた。試食中は両シェフがテーブルを回り、味の感想を聞いたり、質問に答えたりなどして、参加者と交流していた。
ひととおり試食を終えてから、シェフが参加者の質問に答えるコーナーとなった。「今回食べたメニューはエコノミークラスの食事だが、ビジネスクラスとファーストクラスとはどの程度違うのか?」という質問に対し、清水シェフは「内容や豪華さで比較すると、エコノミーを1とした場合、ビジネスクラスは2.5~3くらい。ファーストクラスでは5以上かと感じます」と回答した。
最後に、今回の試食の印象をもとに、参加者はSNSで決勝投票をした。この試食会は、工場見学を除き、撮影やSNSでの投稿を推奨しており、どんどん感想を写真入りでアップしてほしいというスタンスだ。
閉会の挨拶をした清水シェフは、「私たち機内食のシェフは、最後の仕上げをCA(客室乗務員)さんに託している。そのため、実際にお客さまのご意見を聞く機会がなかなかなく、今日のような率直な感想や改善点などの意見をたくさん聞けたことはうれしい」と述べた。
最後に、参加者にサプライズでお土産が渡された。ANA国際線就航30周年の記念ノベルティグッズ各種のほか、ANA機内販売のチャーム付スターウォーズ・ポップコーンがあることが分かると、参加者たちからは喜びの声があがった。
ANA機内食総選挙2016の決勝は、8月5日から12日まで、ANAのFacebookとTwitterで投票を受け付けている。投票結果の発表は8月19日に、同じくFacebookとTwitterで行なわれ、和食と洋食の上位2メニューずつが12月以降の日本発のANA国際線エコノミークラスで提供される予定となっている。