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ANA、全国の空港から精鋭18名を集め「第9回 空港カスタマーサービススキルコンテスト」実施

約4000名のグランドスタッフから接客スキルのトップが決まる

2016年12月7日 実施

「第9回 空港カスタマーサービススキルコンテスト」に出場したファイナリスト

 ANA(全日本空輸)は12月7日、グランドスタッフを対象とした「空港カスタマーサービススキルコンテスト」を開催した。このコンテストは、「旅客部門」と「保安部門」を対象としたものであり、今年で第9回目を迎え、今年度は「魅力ある空港」をテーマに、全国の空港スタッフが競い合う。

 旅客部門では、空港旅客サービス部門のサービスポリシーとして掲げている「安全」で「時間に正確」なオペレーションと、「待たせない」時間価値の提供、利用者が「見て感じよく」「受けて心地よく」を提供するスキルを評価する。

 国内、海外合わせて52空港、約4000名のスタッフのなかから、各空港にて予選出場者の選出が事前に行なわれ、9月6日~8日にかけて行なわれた予選においては106名が参加。予選を突破した国内線部門12名(当日1名病欠)、国際線部門6名で今回の本選を迎えた。ほか、実際のゲート業務を撮影し、各空港ごとに事前に評価した「ゲート部門」の結果発表もされる。

 保安実技部門では、保安検査係員が感じのよい対応をすることで利用客に保安検査に協力的になってもらい、ストレスのない環境作りとより確実な保安検査を実施することを目的としている。

 また、普段接点のない各地の検査会社同士が一同に会する機会を設け、互いを刺激しあい、検査会社全体の接遇や検査スキルの向上を目的として実施される。こちらは保安業務を担当する15の警備会社のなかから選ばれた3社の代表ペアが本選に出場した。

「空港カスタマーサービススキルコンテスト」の本選が開催された。コンテストでは、役員やゲスト審査員の視線を一身に浴びるなかでのパフォーマンスとなる

 審査については、印象審査と知識審査が行なわれ、印象審査は2名のゲスト審査員と2名のANAグループ内審査員が担当。知識審査は空港業務推進部員が担当する。その結果を踏まえ、グランプリ1名、準グランプリ2名、審査員特別賞1名を選出する。なお、本選出場者全員には、全国の旅客係員の模範であることを認定する「エクセレントインストラクター バッジ」が付与される。

 審査基準については、旅客部門は「身だしなみ」「挨拶」「笑顔」「コミュニケーション」「応対技術」「総合印象」の6項目の印象、質問に対する正確な回答、スムーズな受け答え、適切な介助といった知識が半々で審査される。

 先立って実施されたゲート部門については、「全体の印象」「安全性」「情報提供」「列の整理~改札業務」「魅力あるゲートハンドリング」の5項目で審査された。

 保安実技部門では、保安検査場での実技を行ない、利用客に対する検査および接遇スキル、手順と所要時間、印象面から審査される。

印象審査員(社内審査員)

・執行役員 山本ひとみ氏
・執行役員 浅井昌氏

印象審査員(社外審査員)

・コンラッド東京 サービスアンドクオリティ エグゼクティブマネージャー アズウィン・フェルドース氏
・上智大学心理学科教授 慶成会老年学研究所研究員 黒川由紀子氏

参加者が普段働いている空港の応援団も会場に駆けつけ、熱気の渦に包まれていた
誰もが真剣なまなざしで観戦

 開会式では執行役員 空港センター長の服部茂氏が「空港というのは、ときとして時間や施設面においてなかなか我々でコントロールしづらいような場面があります。そのなかでサービスとしっかりとした手順を順守するといった相反するような非常に難しい局面でも、皆さんは毎日機転を利かして働かれています。

 参加される皆さんに申し上げたいのですが、皆さんは各空港の代表であり、すべての旅客係員や保安検査員のまさにお手本でいらっしゃいます。応援団も多数いらしてお声のサポートもありますので、どうか落ち着いて日頃の力を存分に発揮していただければと思います」と挨拶した。

 続いて、2015年グランプリを受賞した長田恵未氏(羽田空港)が「もう一度深呼吸してください。ここに応援しに来てくれている方の顔をもう一度探してみてください。そのエネルギーを大きく吸い込んでパワーに変えて、パフォーマンスを発揮していきましょう」とエールを送った。

開会式において挨拶をする執行役員の服部茂氏
緊張を和らげるよう深呼吸をさせる前回グランプリの長田恵未氏

旅客部門(国内線)

 国内の乗客以外に訪日している外国人(英語応対)を含めた、個人および複数名への応対を3回行なう。

1.福岡空港所属、林絋平氏(勤続1年)

福岡空港所属の林絋平氏

 トップバッターで緊張するところを「今年の新チャンピオンの名は?」と応援団に問いかけられ、「林ちゃんだぞ!」と元気よく登場した林氏。マイレージカードについて尋ねてきた外国人観光客に対し、すかさずパンフレットを手渡し素早い応対を見せる。「福岡いいところだね。ラーメンがとっても美味しかったよ」と言われると、「私のオススメは『一蘭』です。一蘭知っていますか?」と、とてもフレンドリーに受け答えをしていた。

2.伊丹空港所属、増田未希氏(勤続2年)

伊丹空港所属の増田未希氏

 大阪らしく、阪神タイガースのハッピを着た応援団に声援を送られた増田氏は目の不自由な女性に応対。搭乗口まで案内するにあたり、「本日、増田が搭乗口までご案内させていただきますのでご安心ください」と話しかけ、補助する際は「左手後方斜めにありますので、いったん180度方向転換していただいてもよろしいでしょうか」「ここから2mほど前にゆっくりと進みます。途中、障害などもない平たい道ですのでご安心ください」と、分かりやすく、安心感を与えるように伝えていた。

3.羽田空港所属、寒川綾乃氏(勤続7年)

羽田空港所属の寒川綾乃氏

 寒川氏はマイレージを使って予約した飛行機が悪天候で欠航になり、払い戻しが可能かどうか尋ねてきた乗客に応対。払い戻しが可能なことを伝えた。有効期限が近いポイントについてはどうすればいいのかという質問に「“1マイレージ”から“1 ANA SKY コイン”にご変更できまして、“10 ANA SKY コイン”から使用できます。ANA SKY コインはインターネット上で使える電子マネーのようなものです。当社で用意している国内・国外の旅行商品をお買い求めいただけます」と的確に答えていた。

4.新千歳空港所属、新玉ゆか氏(勤続19年)

新千歳空港所属の新玉ゆか氏

「愛しているよー! 俺も愛しているよー!」と男女入り混じった声援で登場した新玉氏。天候不良で千歳空港への最終便の到着が1時間半遅れ、小樽まで帰りたい女性に応対。キャリア豊富な新玉氏はすかさず札幌まで電車で行き、そこからはタクシーでの帰宅を提案。「私がポケットマネーでタクシー代を出してあげたいのですが」といった場を和らげるコメントを入れつつ、最終便で悪天候といった状況で協力できる範囲を提示して無事に送り出した。

5.函館空港所属、岡本泰葉氏(勤続5年)

函館空港所属の岡本泰葉氏

 岡本氏はタクシーに乗ってここまで来たという、おばあさんに応対。タクシーの運転手に運んできてもらったという荷物を受け取り、搭乗までのなかで何か要望がないかを丁寧にヒアリング。孫に会いに羽田を経由して沖縄まで行くので、お土産の入った大きな荷物の持ち運びを相談されると、係員をつけることを提案。「どうせならいっそのこと、孫まで届けてもらえるとありがたいんだけどね」という言葉に「宅空便」をすかさず提案。今なら翌日到着だが、1000円で済むと伝え、機転を利かせた対応を見せた。

6.根室中標津空港所属、森崎沙也香氏(勤続3年)

根室中標津空港所属の森崎沙也香氏

 森崎氏は久しぶりに飛行機に乗るというおじいさんに応対。搭乗方法をたずねるおじいさんに対し「中標津から羽田空港行き、小さな空港ですので搭乗口は1カ所のみとなっております。2階の階段を上がりましたらすぐ正面に保安検査場がありまして、保安検査が済みましたら搭乗口は1カ所のみとなっておりますので、大変分かりやすい館内となっております」。

 通路側から窓側への席替え要望に対しても「本日、空席が十分にございますので、お外がよく見えます窓側のゆったりとしたお座席で手配させていただきます」とし、スキップサービスも順番を追って丁寧に説明した。

7.新千歳空港所属、沖田省吾氏(勤続1年)

新千歳空港所属、沖田省吾氏

「I LOVE YOU!」という声援を送られて登場した沖田氏は、スターアライアンス加盟のプラチナカード会員の外国人観光客に応対。ラウンジが使えるかといった問いに対し、にこやかな笑顔で利用できることを伝え、すかさず場所についても分かりやすく説明した。

「オススメのラーメン店があったら教えてください」という問いに、「私が好きなのは『あじさい』の塩ラーメンです」と答え、別れ際には「北海道は楽しめましたか?」「またの訪問をお待ちしております」と、フレンドリーに応対した。

8.福島空港所属、舘又千枝氏(勤続7年)

福島空港所属の舘又千枝氏

「ちーちゃん頑張れー」という温かい声援を背に登場した舘又氏。乳幼児を含む4人家族の「非常口近くの席を予約したかったんですけどできますか?」という問いに、幼児と一緒の場合は非常口近くが用意できないことを伝えつつ、「1列目の足元の広い席をお並びでご案内することはできますが、いかがでしょうか?」と意図をくみ取って対応。機内でミルクをあげたいという要望にもCA(客室乗務員)に申し送りしておくことを伝え、空港内で使用できるベビーカーを用意した。

9.関西国際空港所属、中内愛氏(勤続1年)

関西国際空港所属の中内愛氏

 中内氏は応援団の「笑顔ちょうだ“あーい”!」という声援に送られて登場。実家に戻って出産予定の妊婦に「5日くらいで退院できるので、10日後には戻ってきたいのですが、搭乗に際して何か制限はありますか?」と聞かれ、出産後8日以内の乳幼児は搭乗できないことを伝えつつ「お客さまのお体も心配かと思いますので」と気遣う言葉も。

 機内での授乳で周囲が気になると言うと、「当日カウンターでご要望いただければ、安心してお座りいただけるお席をお探しいたしますので」と不安が多い妊婦へ親切に対応した。

10.福岡空港所属、久重愛氏(勤続4年)

福岡空港所属の久重愛氏

 トップバッターの林氏と同じ福岡空港の久重氏は、大声援のなか登場。「プラチナ会員なんですが、ラウンジ使えますか?」と尋ねてきた外国人観光客に「もちろんです!」と笑顔で応対。

「ラウンジでお酒は飲めますか?」との問いに対しても「もちろんです。お好きなお酒は何ですか?」「日本酒もたくさん置いてあります」と答える。外国人観光客の「焼酎で、名前を忘れてしまったのですが、くるくるくるくる……」との質問に対しては「黒霧島?」と宮崎県の人気焼酎を即答し、会場を沸かせた。

11.羽田空港所属、塩田里奈氏(勤続4年)

羽田空港所属の塩田里奈氏

 地元・羽田の応援団に「いつものスマイルでお願いします!」と声援を送られた塩田氏。予約していた飛行機が整備作業でキャンセルになり、案内された便が2時間後で困っていた乗客に応対。「他社便に振り替え可能ですか?」との問いに、「ご心配おかけして申し訳ありません。こちら他社便の空席をお調べしまして振替させていただきます」とし、「もしくは、関西空港行きだけでなく、伊丹空港や神戸空港など、ほかの空港への変更もございますが」と時間を気にしている乗客へ別の方法も提案し、臨機応変に対応した。

いろいろと趣向を凝らして応援する関係者

旅客部門(国際線)

 こちらも同じく日本人/外国人(英語応対)を含めた、個人および複数名への応対を3回行なう。

1.成田国際空港所属、高野早希氏(勤続3年)

成田国際空港所属の高野早希氏

 国際線部門のトップバッターは成田空港所属の高野氏。「さきー、ガンバレー!」の声援を受けて登場。成田空港からロサンゼルスを経由してデンバーまで行きたいのだが、機材故障により30分遅れるとのメールを受けた男性に応対。遅れにより、ちゃんと乗り継いで行けるのか心配顔な男性に対し、「弊社の遅延により乗れない場合は現地で新しい便をご対応いたします」と答え、現段階での乗り継ぎの時間などを調べてからゲートで伝えることを提案。

 また、乗り継ぎができず、デンバーまでたどり着けない場合はホテルなどを手配することも伝えた。ロサンゼルス到着時には手荷物の引き取りを含め、なるべく早く乗り継ぎができるよう連絡するとし、笑顔で「行ってらっしゃいませ」と見送った。

2.羽田空港所属、児玉千穂氏(勤続3年)

羽田空港所属の児玉千穂氏

 地元・羽田の大応援団に声援を送られて登場した児玉氏。カナダのバンクーバーへスキー旅行する女性客2人に応対。チェックイン時刻の1時間30分前に到着したが、カナダへ渡航するにあたり事前申請が必要ですかとの問いに対し、「カナダへの渡航は『eTA』というビザのようなものを事前にWebで申請することになっています」と説明。

 慌てる乗客に対し、申請用のパンフレットを用意することを伝え、「もし、申請の際にご不明な点がございましたらお手伝いいたしますのでお申し付けください」と、落ち着いて対応していた。スキー板の預かりに関しても「292cm以内なら無料ですので、ご安心ください」と答えた。

3.セントレア(中部国際空港)所属、向井佑真氏(勤続8年)

セントレア(中部国際空港)所属の向井佑真氏

「フレーフレー向井! フレーフレー向井!」の声援を受けて向井氏が登場。骨折して歩行が困難なおばあさんと娘が現われ、人目を気にして車いすを嫌がるおばあさんに対し「お兄さんからも説得してもらえないですか」と注文を受ける。「名古屋空港は広いから大変だよ」という娘のセリフを受け、「上海行きの飛行機ですと比較的遠い搭乗口を予定しておりまして、私、毎日のようにご案内しているのでご安心ください。すぐに用意してご案内可能です」と丁寧に車いすの利用を勧める。

 それでも「大げさじゃないですか」と言うおばあさんに、「私の祖父も以前骨折したときに“早く持ってきて!”と言っていたので大丈夫ですよ」と身近な例をあげて応対した。

4.成田国際空港所属、深田裕美子氏(勤続7年)

成田国際空港所属の深田裕美子氏

 登場すると「深田さーん、成田パワー注入!」と声援を送られ、はにかみながら「ありがとうございます」と頭を下げた深田氏。小さな子供を連れた女性客からの、予約はないがベビーカーを借りられるかとの問いに、「すぐにお貸し出しできますので、ご用意いたします」と素早く応対し、寝てしまった子供を乗せた。

「100mL以上の液体物は持ち込みできないんですよね。ミルクはどうすればいいでしょうか?」という質問に、「ただ、お子さまのミルクですとか、お薬であれば、セキュリティエリアのスタッフに言っていただければ、確認してお持ち込みすることも可能です」と説明し、スーツケースから取り出し、その場で申告すればスムーズに通過できるとアドバイスした。

5.成田国際空港所属、佐伯里花氏(勤続2年)

成田国際空港所属の佐伯里花氏

 こちらも成田空港所属ということで大応援団からの声援を受けた佐伯氏。来週、ドイツに新婚旅行に向かうというカップルが登場、大雪が降るというニュースを聞き「来週飛びますか?」という質問に、「飛行機の変更事由などについては当日になってみないと分かりませんが、インターネットでも運航状況は確認できます」と説明。インターネットをいちいち見るのは面倒という乗客のセリフに対しては、予約や運航案内のメールサービスを勧めた。そして「新婚旅行ですか? おめでとうございます」と見送った。

6.成田国際空港所属、竹下寛恵氏(勤続3年)

成田国際空港所属の竹下寛恵氏

 国際線最後の出場者は成田空港所属の竹下氏。「ガンバレー!」の声援を背に登場した。現われたのは上海行きが機材故障による欠航で、次の便を予約しようにも満席で「いつもならすぐに振替してもらえるんですけど、どうすればいいですかね?」とイライラ感がMAXの男性。

 ダイヤモンド会員なので空席待ちは最優先で受け付けることを伝えるも、男性が調べたところ順番待ちが多く「ちゃんと入れてくれるんですよね。一番最初に。僕、ダイヤモンド会員長いんですよ」と厳しく注文を付けられたが、「ダイヤモンド会員さまのなかでもプライオリティがありますので、お調べしてお伝えします」と丁寧な応対を見せた。

「今日中に乗れないと困るんですけど、JALに振り替えは可能なの?」といった質問に、「ANA便が満席の場合は他社に振り替えることも可能ですと答え、「マイルは貯まるの?」との質問には「マイレージに関しては大変申し訳ございません。ANAやスターアライアンスにご搭乗したときのみとなっております」と説明。

「ANAに乗りたかったのにそうなんだ。ああそうなんだ。分かりました。最近多いんで、ホントしっかりしてくださいよ」と、今日一番当たりのキツイ乗客だったが、「申し訳ございませんでした。またの搭乗を心よりお待ちしております」とていねにいに見送った。

保安実技部門

 X線検査にあたり、手荷物の預かりからボディチェックなどを行なう。乗客は機内持ち込み不可のベルトのバックルに仕込まれたナイフを所持しており、発見、警察への通報なども含まれる。

1.松山空港 愛媛綜合警備保障、高須賀淳志氏(勤続7年)/中川綾弥氏(勤続1年)

松山空港 愛媛綜合警備保障の中川綾弥氏

 X線検査機の前で待機している中川氏が「いらっしゃいませ。こんにちは。お荷物をお預かりいたします」とにこやかに応対。荷物を預かる際は「横にしてもよろしいでしょうか?」と気遣いながら、「ポケットの中に鍵束、ハサミやカッターなどはございませんか」と乗客に尋ねると、ポケットの中からメリケンサックを付けたキーホルダーが見つかる。

「こちらのキーホルダーは機内にお持ち込みすることはできません」とするも、乗客が「おもちゃのメリケンサックでもダメですか?」と食い下がるので、「類似品としてお持ち込みできないので、本日お見送りの方はいらっしゃいますか?」「出発まではまだお時間ありますか?」と、預けることを前提にいろいろと提案。

 乗客が時間のないと言うので、「では、お客さま任意の元、航空会社を通じて放棄処分とさせていただきます」と持ち込み禁止物の放棄を承諾してもらった。

松山空港 愛媛綜合警備保障の高須賀淳志氏

 高須賀氏は金属探知ゲートで反応があった乗客に対し、失礼のないように応対。ボディチェックをする際にも「腰回りに反応がありました。上着をめくって確認してもよろしいでしょうか?」と同意を得ながら進める。ズボンのポケットからおもちゃの手錠が見つかり、おもちゃだから大丈夫と言い張る乗客に、「人を拘束できる道具であると、例えおもちゃであっても機内にお持ち込みすることはできません」と穏やかに諫める場面も。

 ベルトからバックルナイフを発見した際はゲートを一時封鎖し、警察官に通報。「申し訳ありませんがこちらは放棄処分となります。ご協力ありがとうございます」とし、「ほかのお荷物をお返しいたします。おカバンはこちらの1つだけでよろしいでしょうか。ほかにお手伝いできることはございませんでしょうか。ご協力ありがとうございました。いってらっしゃいませ」と見送って終了した。

2.熊本空港 熊本空港警備、太田啓太氏(勤続7年)/江嶋遥氏(勤続1年)

熊本空港 熊本空港警備の江嶋遥氏

 まずは江嶋氏が「こんにちは。お待たせいたしました。搭乗券を拝見いたします」と爽やかな笑顔で乗客を迎える。そしてポケットからおもちゃのメリケンサックが見つかると「お客さま、大変恐れ入りますが、こちらメリケンサックの鍵束、こちらの方だけは機内へのお持ち込みが一切できないものとなっております」と伝える。

 渋る乗客に「おもちゃでもほかのお客さまから誤解を招く可能性がございますので、航空機安全確保のためご協力いただいてもよろしいですか」と最終的に放棄処分を納得してもらう。そして荷物を預かり、「こちら荷物1点お預かりいたしました。行ってらっしゃいませ」と声をかけた。

熊本空港 熊本空港警備の太田啓太氏

 太田氏は乗客が現われると「どうぞお入りください。こんにちは」と、笑顔で迎える。金属反応があると「お客さま恐れ入ります。こちらによろしいでしょうか。金属反応がございました。ポケットに携帯電話、小銭、カギ、ライターなどございませんでしょうか?」と失礼のないように問いかける。

 ベルトのバックルナイフを発見すると「ゲートストップ! 警察官を呼んでください!」と、ただちに警察官を呼び、規則に従って素早く対処。そのほか、ポケットにあったハサミは確認したあと、乗客に返却。「ハサミは大丈夫なの?」との問いに、「そうですね。刃先が丸く、刃体が6cmを超えていないので大丈夫です」と答えていた。

 チェックが終わると「大変お待たせいたしました。どうぞお手荷物をお受け取りください。何かお手伝いできることはございませんでしょうか?」「ありがとうございました。お気をつけていってらっしゃいませ」と見送った。

3.伊丹空港 にしけい、松本紳吾氏(勤続15年)/吉山莉加氏(勤続4年)

伊丹空港 にしけいの吉山莉加氏

 乗客が現われると、待機していた吉山氏が「お待たせいたしました。こんにちはいらっしゃいませ。お荷物機械に通しますので、横にしてもよろしいでしょうか」と丁寧な応対でチェック作業を進める。

 乗客が拳銃の形をしたスマートフォンケースを所持していると申告すると、「お客さま、恐れ入りますが、こちらのスマホケースは拳銃の形に似ておりまして、類似品に該当いたしますので機内にお持ち込みすることができません」と、持ち込み不可能なことを告げる。「これはただのスマホケースなんですが、それでもダメなんですか?」と食い下がる乗客に、「ほかのお客さま、見る方によっては拳銃に見えてしまう可能性がございますので、こういった物はすべて機内にお持ち込みすることができないことになっております。もし、ご出発までお時間があれば、カウンターにて預けていただくことも可能ですが、どうなさいますか?」と落ち着いて対処した。

伊丹空港 にしけいの松本紳吾氏

 ボディチェックを担当する松本氏は「いらっしゃいませ。どうぞお入りください」と乗客を迎える。金属探知機が反応すると「お客さま、恐れ入りますが、こちらにお願いいたします。金属反応がございましたので保安検査にご協力お願いいたします」と失礼のないようにチェックすることを伝える。

 松本氏がチェック作業をしている際、吉山氏は「お荷物の中にハサミやカッターナイフなど刃物類をお持ちのお客さまは、あらかじめご提示をお願いいたします」と周囲にアナウンスし、スムーズに通過できるように配慮する場面も。ポケットからお土産に買ったおもちゃの手裏剣が見つかり、「おもちゃだけどダメなんですか?」と渋る乗客に、「ご提示ありがとうございます。お客さま、恐れ入りますが、こちらの手裏剣は機内にお持ち込みすることができませんので、出発までお時間ありますでしょうか?」「お見送りの方はいらっしゃいますでしょうか?」「お客さま任意の元、放棄処分となりますがよろしいでしょうか?」と丁寧に対応していた。

 チェック後も「ご協力ありがとうございました。お手荷物こちらでお返しいたしますので、お忘れ物にご注意くださいませ。ご協力ありがとうございました。いってらっしゃいませ」と、丁寧に見送っていた。

金属反応が出た靴などはもう一度、X線検査をする
ナイフが発見されたときは直ちに警察官に通報
「ゲートストップ!」の掛け声とともにゲートを封鎖

いよいよ審査結果発表

 すべての実技が終わり、結果発表と表彰式が行なわれた。まず事前に審査が終わっているゲート部門の結果が発表され、続いて保安実技部門、旅客部門と発表。結果は以下のとおり。

ゲート部門(カテゴリーA)

国内線「1日の就航便数が20便以上で、大型機が就航」
国際線「3クラス設定の便」
最優秀賞:熊本空港

カテゴリーAの最優秀賞は熊本空港が受賞

「係員同士の連携がよく取れている」「アナウンスの前に美しく揃ったお辞儀をしている」「美しい待機姿勢である」「通過する旅客に対して確実に目配りができている」「常に全員がお客さまを迎える姿勢が取れている」「搭乗動線を分かりやすく表示している」「常に笑顔で親しみやすい対応をしている」といったところが評価された。

ゲート部門(カテゴリーB)

国内線「1日の就航便数が10便以上、もしくひ1日の就航便数が10便未満だが、大型機・中型機が就航」
国際線「2クラス設定の便」
最優秀賞:函館空港

カテゴリーBの最優秀賞は函館空港が受賞

「アイコンタクトをしながら温かみのあるアナウンスを実施している」「丁寧かつ適切なスピードで英語アナウンスを実施している」「お客さまの様子に留意し積極的に動いている」「指先まで意識した美しい所作である」「アナウンスの前に美しく揃ったお辞儀をしている」「アナウンスを実施しながらも旅客の状況を監視している」「全員が安心を与えるお見送りをしている」「不慣れなお客さまにも適切にかざしのサポートをしている」といったところが評価された。

ゲート部門(カテゴリーC)

国内線「1日の就航便数が10便未満で、おもに小型機が就航」
国際線「該当なし」
最優秀賞:佐賀空港

カテゴリーCの最優秀賞は佐賀空港が受賞

「にこやかな笑顔でお見送りの挨拶ができている」「係員同士の連携がよく取れている」「積極的・能動的に動いている」「搭乗方法をパウチで視認化」「アナウンスの前に美しく揃ったお辞儀をしている」「常に適切な声のトーン・スピードで親しみを感じさせるアナウンスができている」「お客さま一人一人の顔を見ながら挨拶と監視業務を行なっている」「エラー発生時、確実に対応している」といったところが評価された。

保安実技部門

エクセレントセキュリティー賞:熊本空港 熊本空港警備、太田啓太氏/江嶋遥氏

エクセレントセキュリティー賞は熊本空港 熊本空港警備が受賞

 代表して太田氏が「金属探知機が鳴らないというハプニングがありましたが、見事に乗り切れたと思いました。常日頃から、お客さまにいかにストレスを感じさせず保安検査を通過してもらう、スマートな保安検査を目指しております。

 本日はその一端をお見せできたのではないかと思います。お客さまの笑顔を守れるように、わずかな力ではありますが頑張っていきたいと思います」と力強くコメントした。

旅客部門(国内線/国際線)

審査員特別賞:羽田空港 塩田里奈氏

審査員特別賞を受賞した塩田氏

「本日はこのような賞をいただき本当にうれしく思っております。日頃より支えてもらっている同じ会社の皆さんのおかけでいただけたと思っており、感謝の気持ちで胸がいっぱいです。

 私は高校生の頃からグランドスタッフを目指していましたが、このような舞台に立てたことを誇りに思います。これからも空港係員として、ANAを引っ張っていけるようなパフォーマンスをしていきたいと思っております」と喜びを語った。

旅客部門(国内線/国際線)

準グランプリ:福岡空港 久重愛氏

準グランプリを受賞した久重氏

「本日はこのような素晴らしい賞をいただきまして本当にありがとうございます。福岡空港は現在改修工事でお客さまにご不便をおかけしているのですが、ご利用いただくにあたってANAを使ってよかったなと思っていただけるようにいつも笑顔を心がけています。

 いつも周りのスタッフに支えられているので、福岡に戻ったら本日吸収したことを波及して、福岡空港からANAファンをどんどん増やしていきたいと思います」と抱負も述べた。

旅客部門(国内線/国際線)

準グランプリ:セントレア 向井佑真氏

準グランプリを受賞した向井氏

「皆さん遅くまでお付き合いいただきありがとうございます。1例目、マイクが入っておらずちょっとイレギュラーを感じましたが、常日頃からイレギュラー感をまとっておりますので、想定の範囲内でした(笑)。

 中部空港は日本のど真ん中にあり、就航している路線は限られているのですがアットホームな国内・国際空港だと思っております。これからも国内・国際のいいパイプ役になって業務を行なえたらいいなと思っております。中部にいらっしゃる際は、どうぞ向井を呼んでください」とコメントした。

旅客部門(国内線/国際線)

グランプリ:成田国際空港 高野早希氏

グランプリを受賞した高野氏

「ありがとうございます。自分自身ビックリしてしまい、何を言っていいのか分からないのですが、今回、このコンテストには成田空港から4名の係員が出場いたしまして、チーム成田として、一丸となって頑張ってきたからこその受賞だと思っております。

 日頃、成田空港ですと外国籍のお客さまを含め、いろいろなお客さまが来られるのですが、どのお客さまに対しても温かく、安心感のある接客を目指してまいりました。ですので、このようなグランプリをいただけて、本当にうれしく思います。ありがとうございました」とチーム一丸となって取り組んできたうえでのグランプリ受賞を喜んだ。

胸に燦然と輝く、金色の「エクセレントインストラクター バッジ」
表彰された4人。左から名古屋中部空港の向井佑真氏、成田空港の高野早希氏、福岡空港の久重愛氏、羽田空港の塩田里奈氏

第9回を振り返って

執行役員の浅井昌氏

 表彰式が終わると、社内印象審査員からの講評が行なわれた。まず、執行役員でオペレーションマネジメントセンター長の浅井昌氏が、「今日の場を実戦に活かすというのは言うまでもありません。多少、後ろ向きな話をしますと、定時制などについては苦しい戦いが続いております。遅れている飛行機が多いという現実をとらえて、今日のサービススキルをそうしたお客さまにきちっと向けていただいて、現在ANAに吹いているビハインドな風を変えていきたいと思っております。今日は大変な緊張のなか、ありがとうございました」と述べた。

執行役員の山本ひとみ氏

 続いて、執行役員で客室センター長である山本ひとみ氏が、「皆さまお疲れさまでした。ファイナリストになっただけでもトップだと思います。今回の審査は非常に悩みました。一人一人が持っている人間性を垣間見た瞬間、『あったかいな』と感じました。これがANAのよさだと思いますし、これからも決まりや保安はしっかりと守り、そのなかで一人一人の経験から出てくる、温かい人間らしさをこれからもしっかりと発揮していただきたいなと思いました。

 そして、私どもの仕事場である機内では、地上の皆さんからしっかりと受け継いだバトンを機上においても同じレベルでお客さまに安心して提供できるように、私たち“客室”も頑張っていきたいと思います」と語った。

コンラッド東京 サービスアンドクオリティ エグゼクティブマネージャーのアズウィン・フェルドース氏

 社外の印象審査員である、コンラッド東京 サービスアンドクオリティ エグゼクティブマネージャーのアズウィン・フェルドース氏は、「私は最初ポイントを付けるときにすごく難しくて、できたら全員に満点を付けてあげたいです。本当に素晴らしかった。どうもありがとうございました」とコメント。

上智大学心理学科教授 慶成会老年学研究所研究員の黒川由紀子氏

 同じく、社外印象審査員である上智大学心理学科教授 慶成会老年学研究所研究員の黒川由紀子氏は、「本日はお招きいただきありがとうございました。私も全員に“オール5”を付けたかったのですが、それでは審査にならないので悩みながら付けました。

 私は普段はシニア・高齢者を専門とする心理学をしておりまして、今日拝見しているととても丁寧な所作に、“ここまで丁寧にやっているんだ”と感動しました。このたびは本当におめでとうございました」と述べた。

代表取締役副社長 執行役員の内薗幸一氏

 表彰式では最後に代表取締役副社長 執行役員の内薗幸一氏が登場。「こういう順番できますと、話すことがだんだんなくなってきて、閉会式の篠辺社長に残しておかないといけない微妙な立場であるのですが」と笑いを誘いながらも、「私はオペレーション部門の責任者でありますので、フロントラインの皆さんの姿を拝見いたしますと頭が下がるというか、各現場現場でいろいろ工夫されながら一生懸命やっていただいている。これがANAのオペレーションの支えとなっております。あらためてお礼を申し上げたいと思います。求められるサービスというものが変化してきているというのが審査項目にも表われていまして、外国人のお客さまが増えてきていることからもユニバーサルなニーズが高まっています。ゲート部門のお客さまに快適に手際よく乗っていただくといった作業も難しく、各空港ごとに工夫をこらしている努力が見られました。

 セキュリティ部門におきましても、これからますます日本の空港においてもセキュリティが厳しく求められていくなかで、丁寧に応対しつつもきちっとされていることを拝見させていただきました。皆さんがこれだけ頑張っていただいているので、私たちヘッドクォーター側も負けないように頑張っていきたいと思います」と総評を語った。

代表取締役社長の篠辺修氏

 最後に代表取締役社長の篠辺修氏が、「本日のグランドスタッフのファイナリストの皆さんや、客室乗務員のファイナリストが付けているバッジは、“見える化”しているものです。代表である高い評価をいただいたというのは本当はバッジがなくても通用すると思っていますが、ほかの皆さんにぜひ目標になっていただきたい、そういう意味から“見える化”をしています。

 受賞した皆さんはぜひともファイナリストの名に恥じないように、後輩や同僚を代表して模範となるようなサービスを工夫をしていただきたいと思います」と激励。

 続いて「内薗副社長が言ったとおり、私どもの環境が変わってきているというのは経営レベルの話ではなく、お客さまの層、サービスの中身もIT化によって変化しています。これにどう対応するのかというのは、実は現場の皆さんがよく分かっているのだと思います。今回は第9回なのですが、第10回ではどう変わるのか楽しみにしております。次の第10回のためにも職場に戻って頑張っていただきたいと思います」と時代の変化に対応していく重要さについてもコメント。

 最後に「本当は審査員だけではなくて、外からたくさんの人にこのコンテストを見てもらいたいと私は思っています。私どもがどんな仕事をしているのかだけではなくて、その陰でやっていることをぜひ見ていただきたいので、少しずつそういったチャンスも作りたいと思っています。また、このコンテストをここまで仕上げてくれたスタッフに感謝いたします。そもそも、お客さまが主役であることから我々スタッフは全員裏方になりますが、あらためて裏方の重要さが認識できたことだと思います。

 ぜひとも、来年の第10回は今回を上回る素晴らしい大会を目指すことをお願いして閉会の挨拶とさせていただきます。本日はお疲れさまでした。ありがとうございました」と締めくくり、第9回の白熱したコンテストが終了した。

第9回 空港カスタマーサービススキルコンテスト、約4000名の頂点に立ったのは成田空港の高野早希氏