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JAL、第71期定時株主総会。「ビジネス需要依存から観光需要でも収益性を高める構図へ」
2020年6月19日 14:30
- 2020年6月19日 実施
JAL(日本航空)は6月19日、第71期定時株主総会をTKPガーデンシティ品川(東京都品川区)で開催した。
代表取締役社長の赤坂祐二氏が議長を務め、株主の出席者は405名(12時閉会時点)、議決権を行使した株主数は8万1031名(議決権数は225万5436個)。なお、3月31日時点の株主総数は23万6234名で、株式発行数は3億3714万3500株、議決権を有する株主は23万730名、議決権数は336万8969個となっている。
2019年6月に開催した第70期の総会では株主の出席者数は1149名(閉会時点)だったが、新型コロナウイルス感染拡大防止のため、今回は書面またはインターネットによる議決権行使が推奨されており、出席者数はおよそ3分の1程度にとどまっている。
冒頭、赤坂氏は新型コロナウイルスの感染拡大による航空需要の減退を受けて、2020年3月期の期末配当を無配当とすることを説明し、株主に理解を求めた。
続いて、映像を使って2019年度の事業報告を行なった。詳細はすでに本誌でもお伝えしているとおりだが、2019年度のグループ売上高は1兆4112億円、営業利益は1006億円、営業利益率は7.1%であったことなどを報告した(関連記事「JAL、2020年3月期決算は減収減益、第4四半期は再上場後初の赤字に。株主優待の期間延長を決定」)。
映像が終わると、赤坂氏は「対処すべき課題」として、以下の点について言及している。
第1は「供給調整」で、新型コロナウイルスの感染拡大により、前年の1割未満まで需要が激減していることを挙げ、すでに大幅な減便を実施しており、燃油や整備費の抑制を図っていること、貨物専用便を運航して物流インフラに貢献していることなどを説明した。また、固定費は10%にあたる600億円を削減、投資は計画の25%にあたる500億円を削減するとした。
「資金調達」については、5000億円のメドが立っており、2000億円をすでに調達。手元資金は2019年12月末と同じ3000億円を維持しており、本邦他社と比べて借入金の残高は少なく、飛ばなくても支払いが生じるリース機が少ないことも好材料であるという。
テレワークが中心になり、出社を抑制している現況における「人材育成」については、昇格や資格維持に必要な訓練を集中的に実施し、動画やオンラインを活用して教育訓練を前倒しして展開していることを紹介。3万人を超える社員全員がテレワーク、オンライン教育に参加できる環境にあるという。
そして、「安全・安心」の面では、機内の換気や消毒、空港におけるソーシャルディスタンスの確保、乗務員のマスク・手袋の着用についてを説明したほか、株主割引券の有効期限を半年延長していること、上級会員のステータスを1年延長していることなどを改めて紹介した。
そのうえで、赤坂氏は「当初の見込みより早く需要が戻りつつある」と述べ、まずは国内線の観光需要を喚起したいという。観光庁や各地の観光局と連携するほか、旅行と仕事を組み合わせたワーケーションや、新しい生活様式(ニューノーマル)に対応した商品・ツアーを展開するなど、JALグループとしても新商品の投入を積極的に行なっていくと明らかにした。
一方で国際線の回復は遅れるとみており、ビジネストラベラーの減少、業界再編を想定。有利子負債の増加が経営に影響するのは避けられないとしつつ、リスク耐性の強化を目指し、テクノロジーの活用による生産性の向上、働き方改革を通じた固定費の削減、収益性の高い事業への選択と集中を進めると述べた。
さらに2019年度の収入割合を示し、これまでビジネス需要に大きく依存した構造だったが、観光需要においても収益性を高める構図へ転換し、例えば中距離LCCの強化や国際旅客・国内旅客・貨物のバランスを取っていくとした。
質疑応答抜粋
総会に上程した議題は2つで、取締役10名の選任(第1号議案)と監査役3名の選任(第2号議案)。質疑応答は総会終了時刻の12時までに13名が指名された。ここに主な質疑を抜粋する。
同社の100%子会社であるLCCのZIPAIR Tokyoについて、「LCCはフルサービスと違って(座席などを)密にしないと採算が取れない」とコロナ禍における収益と安全のバランスを指摘する声に対しては、消毒やマスクの着用を徹底し、機内食を個別梱包にする、トイレの清掃などをしっかりやることで対応していくと回答した。
前日の6月18日に、海外からの旅行者受け入れについて、まずは状況の落ち着いているベトナム、タイ、オーストラリア、ニュージーランドを対象にしていると安倍総理が述べたことについて、JALから省庁にどんな働きかけをしているかという質問に対しては、「入国制限緩和は航空局・経済団体を通じて働きかけ・提言をしている。昨今の動きには我々の影響もある」と説明。
2月1日から実施して、当初の予定より早く中止した2倍のFLY ONポイントを付与する特別対応について、かえって密になるのになぜ実施したのかという指摘に対しては、「結果として正しくなかった。2月の時点ではここまで長期化すると考えられず、不要な搭乗を促進することになってしまった」と陳謝した。
JALにとって大きなマーケットであるハワイ路線について、何か特別な施策を考えているのかという質問に対しては、「長く深く関わってきた市場であり、もっとも重要なデスティネーションの1つ」と強調し、いろんな筋を使ってハワイだけでも日本人を送客できるようにならないかと働きかけたが、往来が再開したら政府観光局と密に連携して需要の掘り起こしを図るほか、ZIPAIRもハワイに就航予定であると説明した。
なお、2つの議案はともに原案どおり可決され、総会は閉幕した。