ニュース

徳島県、「オール徳島」観光商談会を東京で初開催。飯泉嘉門知事が2018年以降の観光トピック紹介

宿泊者数全国最下位からの脱出に向け、首都圏攻略を図る

2018年5月15日 実施

徳島県が首都圏の旅行会社との商談会「『オール徳島』観光商談会」を実施

 徳島県は5月15日、旅行会社と県の観光施設の関係者を集めた「『オール徳島』観光商談会」を、東京都内で開催した。旅行会社19社の商品造成担当者や県関係者、県内観光施設の担当者ら、約200名が集まった。

 徳島県の首都圏プロモーションはこれまで、関西広域連合による商談会や、消費者向けのツーリズムEXPOジャパンなど、他団体が主催する商談会やイベントへの参加という形で行なってきた。しかし、今回の「『オール徳島』観光商談会」は、徳島県が主催する、初めての首都圏市場向け観光商談会となる。

商談会には旅行会社19社が参加。徳島県内の施設関係者が各旅行会社のテーブルをまわってセールス活動を行なった

 同商談会には、徳島県観光協会や旅行会社らで2017年に結成した誘客キャンペーン「徳島あるでないで」のプロジェクトチームも協力。「あるでないで」は徳島弁で「あるじゃないか」を意味する言葉で、徳島県のよいところを発見しようというキャンペーン。現在は4月6日~8月26日の期間に、SNS(Facebook、Instagram)へ徳島の観光に関する新発見、再発見を投稿するプレゼントキャンペーンを実施している。

 徳島県の観光事情として注目されるのは、2015年から3年連続で県内宿泊者数が全国最下位となっている点。2014年こそ最下位を免れたものの、それ以前も最下位またはそれに近い状況が続いている。ここから脱却するためにも、これまであまりアプローチできていなかった首都圏の旅行会社との商談会をセッティングし、理想では1泊は徳島県で過ごしてもらえるような旅行商品造成を促すべく実施した。

徳島県知事 飯泉嘉門氏

 この「オール徳島」観光商談会は、商談会、徳島県知事 飯泉嘉門氏による観光プレゼンテーション、懇親会の3部構成で行なわれた。

 第2部は飯泉氏による観光プレゼンで、まず地方創生と、徳島県がいち早く手がけた「サテライトオフィス」の誘致について紹介。

 徳島県は、東京一極集中の是正に向けた、政府関係機関の地方移転についても消費者庁と国民生活センターの移転に立候補。また、2010年ごろより県内で光回線の整備が進んでいたなどの理由から、サテライトオフィスの誘致を推進している。今日のように「テレワーク」という言葉もあまり聞かれない時代から展開しており、現在では県内12市町村に59社がサテライトオフィスを設ける規模になっている。また、

 その結果、2017年7月24日は飯泉氏が「徳島県にとってのトリコロール」というように3つの出来事が重なる日になった。2020年の7月24日は東京オリンピック・パラリンピックが開幕する日だ。

 1つ目は2020年東京オリンピック・パラリンピックの公式エンブレムについて、「組み市松門の藍色、藍色といえばジャパンブルー、ジャパンブルーといえば阿波藍」(飯泉氏)との連想で、7月24日を条例で「とくしま藍の日」に制定。7月を「とくしま藍推進月間」として、さまざまな藍関連イベントを国内外で行なった。

 2つ目は、東京オリンピック・パラリンピック開幕日の交通インフラ混雑を回避するため、総務省が2017年7月24日に「全国一斉テレワーク・デイ」を実施したことでサテライトオフィスを推進してきた徳島県に総務省から参画の声がかかり、徳島県庁150名がテレワークを実施した。

 3つ目は、移転先に立候補している消費者庁の「消費者行政新未来創造オフィス」を徳島県庁10階に開設。54名が業務を行なっている。充実した通信環境で東京との連絡をとれるほか、フリーアドレスやテレビ会議システムなども導入している。

 続いて触れたのが交通インフラ。まず道路については、割高な料金から「『平成の大関所』と呼ばせていただいた」(飯泉氏)という本四高速に対し、2004年に全国共通料金導入を提言。10年がかりで交渉を続け、2014年に実現。さらに、県内では2015年3月に開通した松茂スマートIC(インターチェンジ)が、県道徳島空港線を経由して、徳島阿波おどり空港とほぼ直結するようになっている。

 2019年には四国横断自動車道の徳島JCT(ジャンクション)~徳島東IC、2020年には徳島東IC~津田ICがそれぞれ開通予定と、高速道路が南伸。徳島自動車道も4車線化に向けた付加車線試行設置工事がはじまった。

 徳島東ICは、徳島小松島港のあるマリンピア沖洲とほぼ直結するICとなり、港の利便性が向上。2018年は客船12隻が寄港予定となっている。4月にはプリンセスクルーズが運航するマジェスティック・プリンセスが寄港し、乗客約3800名が観光バスに分乗して「うだつの町並み」や「勝浦さくら祭り」を楽しんだという。

 松茂スマートICによってアクセスが向上した徳島阿波おどり空港についても、2018年1月21日にCIQ(税関、入出国審査、検疫)施設を備えた国際線ターミナルが開業。香港、台湾とのチャーター便の運航がはじまっている。国内線では、ANA(全日本空輸)、JAL(日本航空)が東京・羽田路線を1日11往復、JALが福岡線をジェット機(エンブラエル 170型機)で1日2往復運航。夏期にはJALが新千歳線も運航している。

【お詫びと訂正:5月18日】初出時、四国横断道の開通時期に誤りがありました。お詫びして訂正いたします。

徳島県の地方創生の取り組み
交通インフラの現況と将来

 次に、「とくしまレガシーの創出」と題した、徳島県の地域の魅力を紹介。LEDの生産で知られる日亜化学工業の本社がある徳島県では、「とくしまLED・デジタルアートミュージアム構想」を推進しており、徳島県文化の森総合公園や、大鳴門橋架橋記念館「エディ」で、チームラボのデジタルアート作品を常設展示している。ちなみに、チームラボの常設展示が実現したのは、同社代表取締役の猪子寿之氏が徳島県出身という縁もあるという。

 さらに、西日本最大規模の映画祭となる「徳島国際映画祭」を3月に実施。2016年、2017年は短編映画祭として開かれたが、2018年から長編も含めた映画祭へと規模を拡大した。また、日本唯一となる4Kを対象とした映画祭も2017年11月に開催している。

 スポーツの分野では、2017年10月に22カ国から71チームが参加したラフティング世界選手権2017が大歩危で開かれ、地元チーム「ザ・リバーフェイス」が女子総合優勝を飾る盛り上がりを見せた。

 さらに、2018年から2021年にかけても、徳島県は毎年、国際大会に関与。2018年は8月30日~9月2日に池田湖(三好市)で「WWAウェイクボード世界選手権大会2018(30回記念大会)」が開かれる。

 2019年はラグビー・ワールドカップが日本で開かれるが、出場が決まっているジョージア代表チームの事前キャンプ地が徳島に決まろうとしているという。

 2020年の東京オリンピック・パラリンピックで、徳島県は出場国をホストタウンに誘致。徳島県がベートーヴェン作「第九」のアジア初公演の地となったことから10年間の友好交流が続くドイツ・ニーダーザクセン州との縁で、ドイツのホストタウンに決定。柔道、カヌー、ハンドボールが決まりそうだという。

 ハンドボールについては、2018年にジャパンカップ徳島大会を実施。世界ランク1位のドイツチームと日本代表チームが徳島で初対戦することになっている。

 このほか、徳島商業高校によるカンボジアの日本友好学園への支援活動が縁となり、カンボジアも徳島県をホストタウンとする。

 2021年は、30歳以上であれば多くの競技に参加可能な“生涯スポーツの祭典”「ワールドマスターズゲームズ2021関西」が開かれる。徳島県は四国で唯一、関西広域連合に参加していることから、公式競技6種目、オープン競技5種目の計11種目の会場となっている。

とくしまLED・デジタルミュージアム構想や、映画祭などの紹介
2017年から2021年にかけて、5年連続で国際的なスポーツ大会に関与

 訪日旅行(インバウンド)は、外国人延べ宿泊者数が前年比39.5%増加。来県が多い香港、台湾とのマッチングを進めている。また、在外公館から現地イベントへの阿波おどり派遣を依頼されることが以前から多かったというが、「これまでは派遣する財源がなかったので断わってきたが、基金を創設して応えるようにしている」(飯泉氏)と紹介。2018年は日仏友好160周年行事のジャポニズム2018に参加することになっているという。

 また、外国人向けの公衆無線LAN(Wi-Fi)サービスは、県内の防災/観光の主要拠点における整備率が全国1位の91.9%。「Tokushima Free Wi-Fi」を提供している。加えて、関西広域連合が提供する「KANSAI Wi-Fi(Official)」とも連携しているので、例えば共通認証アプリを使って関空(関西国際空港)で認証すれば、再認証することなく徳島県内でシームレスに公衆無線LANを利用できる。

 そのほか、中国・四国地方10県で高速道路が乗り降り自由となるNEXCO西日本(西日本高速道路)の「山陰・瀬戸内・四国エクスプレスウェイパス」も紹介。外国人リピーターはレンタカーを利用する人が多いことから、徳島県から提案したキャンペーンだという。

 続いて、2012年にアスティとくしまで行なわれた国民文化祭の閉幕式で、文化庁の代表として来場した三浦朱門氏から「文化の救世主・徳島」とまで言われたとのエピソードを紹介しつつ、徳島の文化「あわ文化」の発信に関する紹介があった。

 飯泉氏は、「オリンピック・パラリンピックのエンブレムの色である阿波藍。これにより倍の富を築いたことで、阿波おどりや阿波人形浄瑠璃を育んだ、そしてベートーヴェン第九アジア初演と合わせて『4大モチーフ』として取り上げてきた」と紹介。

 一方で、現代においてクールジャパンの象徴ともいえるアニメに関しても、徳島市で「マチ アソビ」を開催。「2009年に2万2000人の来場者を迎えてスタートしたが、第20弾は(2018年の)5月4日から6日の3日間開催し、8万4000人が訪れた」と規模の拡大に触れた。

 音楽についても、徳島市内で30年続く「ジャズストリート」のほか、西部の阿波池田(三好市池田町)でも「池田jazz横丁」というイベントを開催。人形浄瑠璃に必要な“ほう楽”の演奏アイドル「ほう楽★ガールズ徳島」結成や、3000名が参加した第九アジア初演記念演奏会などの取り組みを紹介した。

 こうした「あわ文化」の発信拠点として、文化の森 野外劇場も4月にリニューアル。文化の森 屋外劇場は雨の日には使えないなどの理由から年間10日ほどしか使われていなかったそうだが、幕構造の屋根を作って全天候型とし、1000名規模の収容が可能な「すだちくん森シアター」としてオープンしている。

インバウンド6000万人時代に向けて、外国人への訴求も図っている
「あわ文化」を発信、継承していく取り組み

 続いては、観光トピックを紹介。2018年下半期は徳島県の「食」をテーマに、「徳島に、『旅』して『食べる』楽しみ」を提案していく。

 地域別に見ると、東部エリアではマリンピア沖洲に4月にオープンした「徳島新鮮なっとく市」や、大塚国際美術館でのゴッホの「花瓶のヒマワリ」全7点の一挙公開、大鳴門橋架橋記念館「エディ」での4Kシアター新設などを2018年のトピックとして挙げた。

 西部は、米国の旅行誌「Travel + Leisure」で、祖谷渓(Iya Valley)が、「2018年に訪れるべき50の旅行地」に日本で唯一選ばれたほか、インバウンド施策でさまざまなアワードを取得。

 さらに、にし阿波は、観光庁が定める広域観光圏に常に選ばれているほか、農林水産省が進める「食と農の景勝地」の全国5カ所のうち西日本で唯一選定。さらに、日本農業遺産に選出されたあと、2018年3月に世界農業遺産にも登録された。飯泉氏は「(広域観光圏、食と農地の景勝地、世界農業遺産の)トリプル認定は徳島だけ」と誇った。

 また、JR土讃線の多度津駅~大歩危駅間を走る「四国まんなか千年ものがたり」も紹介。にし阿波の景勝地を車窓から眺められるほか、車内ではお弁当の「遊山箱(ゆさんばこ)」を味わえるなど、徳島の伝統文化を感じることができるという。

 南部エリアは、サーフィンなどのマリンスポーツのメッカとして紹介があった。特に取り上げられたのは、阿佐海岸鉄道 阿佐東線に導入される「DMV(Dual Mode Vehicle)」。フランジが付いた鉄道車輪で鉄路、ゴムのタイヤで一般の道路と、両方を走ることができる車両で、2018年内に1台目が完成する予定となっている。2020年の東京オリンピック・パラリンピックまでに営業運行を開始する予定で、本格的な営業運行としては世界初の試みとなる。

 このように2018年の観光トピックを中心に紹介した飯泉氏は、最後に旅行代理店関係者に向け「徳島なので損はさせない、トクをさせたいと思います」と話してプレゼンを終えた。

2018年下半期は「食」をテーマにPR
東部地域の観光トピック
西部地域の観光トピック
南部地域の観光トピック

 知事によるプレゼンのあとで行なわれた懇親会では、再び飯泉知事があいさつ。首都圏市場への訴求を目的とした商談会ということもあり、東京都内にオープンした2つの情報発信拠点を紹介した。

 1つ目は「blue2@Tokushima LED∝藍」で、日亜化学工業の青色LEDや、阿波藍などを用いた製品のショールームとなる。新宿パークタワー7階 リビングセンターOZONEの一角に、5月10日にオープンした。

 2つ目は県産品の物販のほか、レストランやホテルなどを併設して交流スペースを多く設けた「ターンテーブル(TurnTable)」で、渋谷区神泉町に2月にオープンしている。

 来賓を代表してあいさつしたのは、JTB代表取締役社長で、徳島県出身の髙橋広行氏。徳島県の観光振興の狙いとして、「1つは関空に訪れる年間1000万人の訪日旅客をいかに徳島に呼び込むか。もう1つは首都圏市場の攻略。徳島から見たら未開の市場」の2点を挙げ、「今日の商談会で分かっていただけたと思う。徳島には阿波おどり以外にもオンリーワンのコンテンツがたくさん“あるでないで”」と徳島弁を交えてコメント。

 加えて、「なにより肝心なのは足、交通」とし、会場に訪れていたANAやJALの関係者に「JALさん、ANAさんにかかっているといっても過言ではないと思っている。プレッシャーをかけるわけではないが、強くお願いしたい」と笑いを誘いつつ、リクエストした。

 また、徳島県で初めて首都圏での商談会が行なわれたことについて、「少しでも徳島を知っていただくのが意義深い。継続は力なので、ぜひ今回だけでなく、今後も定期的に続けていただければ」と要望した。

 乾杯のあいさつは、日本旅行 代表取締役社長の堀坂明弘氏が務めた。堀坂氏は、飯泉氏、髙橋氏の両氏のあいさつが充実していたので、「私は乾杯の音頭だけ。ただ一つだけ、先ほど交通で航空会社が出たが、鉄道がなかった。JRもある」と、前職がJR西日本(西日本旅客鉄道)であったことが知られる堀坂氏のこのコメントに笑いが起き、和やかなムードでの乾杯となった。

徳島県知事 飯泉嘉門氏
株式会社JTB 代表取締役社長 髙橋広行氏
株式会社日本旅行 代表取締役社長 堀坂明弘氏
阿波藍の展示
徳島県の地酒
名産のすだちを使ったお酒も多い
徳島県酒造組合が認定する「阿波十割」。徳島県の水と酒米を100%使った地酒であることを示す
写真左から「阿波牛」「阿波ポーク」「阿波尾鶏」を使用
こちらは鳴戸の海の幸。写真左が鳴戸わかめのサラダ、写真右が鳴戸鯛のカルパッチョ