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徳島県奥祖谷で“高低差世界一”265mの流しそうめんに挑戦した「伊右衛門の夏プロジェクト2015」

2015年7月19日 実施

「高低差世界一流しそうめん -伊右衛門の夏プロジェクト 2015-」のスタート地点。傘をさしている人がいることからも分かるように、朝から雨が降りしきるなかでの決行だったが、スタートするころには雨はあがった

 サントリーが販売する緑茶飲料「伊右衛門」や、世界流しそうめん協会が協力した「高低差世界一 流しそうめん実行委員会」による、「高低差世界一流しそうめん -伊右衛門の夏プロジェクト 2015-」が7月19日、徳島県三好市の奥祖谷の落合集落で実施された。

 このプロジェクトは、「もっと日本の体験しよう」のスローガンのもと、伊右衛門ブランドが発信する「日本を再発見するプロジェクト」の一環として行なわれたもの。2015年のチャレンジとなる“高低差世界一流しそうめん”は、日本各地で放置されて問題になっている竹林被害を周知する目的で、三好市でも問題になっている竹を1000本伐採。“繋ごう”の理念のもと、竹を繋いで高低差世界一の流しそうめんにチャレンジするというもの。併せて、日本の涼を「流しそうめん」を通じて楽しんでもらおうという思いも込められている。

 オープニングセレモニーで主催者代表として挨拶した、サントリー食品インターナショナル 食品事業本部 宣伝部長の三好健二氏は「私事になるが、ここから1時間ぐらい北にある香川県綾歌郡の出身。両親も三好、じいちゃんばあちゃんも三好、親戚一同三好ということで、この地で開催させていただくことに、本当に縁を感じている。今日の開催に至るまでに、事前準備の段階で台風直撃があった。関係者の皆様方、本当にご苦労があったと思うが、皆さんの頑張りもあり、思いも通じて、晴れ間が見えるような好天に恵まれて開催させていただけることになった」と喜びを述べた。

 ちなみに、この日は朝から雨模様で開催が危ぶまれたが、スタートを迎えることには雨も上がり、晴れ間も見えるような天気へ回復。そのことへの気持ちを述べたものだ。

 ただ、この天気の影響で、当初予定されていた三好市東祖谷地区の小中学生の参加は見送られ、5月~6月にWeb上で実施してい応募キャンペーンの当選者である20組72名と、落合集落の人達の参加となった。

徳島県三好市の奥祖谷地方。日本三大秘境の1つに数えられる絶景が見所。ここ落合集落は古い古民家なども残る

 三好氏は続けて、「伊右衛門は今年の5月にリニューアルした。今まで、ペットボトルのお茶は、年中同じ味ということを一生懸命やってきたが、『ちょっと待てよ』と。『日本の季節折々に旬というものがあるよね』と。食べ物の世界では、例えば、うどんやおそばにしても、塩や水の量を調整する。その季節ごとの美味しい味というのは違うのではないかというところに着目し、伊右衛門も四季に合わせて4回、味を変えることにチャレンジした。おかげさまで好評をいただいている。そして、今は夏の味に変わっているところ」

「今日は、伊右衛門の夏の味を皆様に美味しく体験していただこうと、この企画をやっている。日本の古来、夏の風物詩、夏の涼を取るというところの流しそうめん。これと一緒に、伊右衛門の夏の味を楽しんでいただけたら、より皆さんの笑顔が見られるのではないかと思っている。日本人で良かったなぁと思っていただける方がたくさんいらっしゃったら幸いだ。皆様、力を合わせて、世界一を達成しましょう」と、“夏の伊右衛門”をアピールするとともに、流しそうめん高低差世界一チャレンジへの意気込みを表わした。

ゴール地点で人々を見守るサントリー食品インターナショナル株式会社 食品事業本部 宣伝部長の三好健二氏
同じくゴール地点で笑顔を見せる徳島県三好市の黒川征一市長
季節によって味を変える伊右衛門。夏の伊右衛門は「抹茶、爽やか」がキーワード

集落を縫うように張り巡らされた竹のルート

 「高低差世界一流しそうめん -伊右衛門の夏プロジェクト 2015-」のスタート地点は、「浮生」と呼ばれる落合地区の伝統的古民家が選ばれた。先述のとおり、落合地区には伝統的古民家が数多く残る。落合重要伝統的建造物保存協議会も設立され、その伝統的建築物を後世に残そうと活動を行なっている。

 スタート地点では、その落合重要伝統的建造物保存協議会 会長の南敏治氏が応援。Webキャンペーンの当選者で、名古屋市から訪れた坂田潤哉さん、蒼哉さんの兄弟が、実際にそうめんを流し入れた。

 今回のチャレンジのために用意されたそうめんは、三好市の隣町である美馬郡つるぎ町で生産された「半田手延べそうめん」で、1束(85g)を流し入れ、1本でもゴールにたどり着けば記録達成となる。実際、流し入れた直後は塊となって流れていたそうめんも、中盤を過ぎることにはバラけ、1~2本が先行するという、まるでフルマラソンのような展開となった。

 途中、コースの紹介なども含めながら、流れていくそうめんを写真で追ってみよう。

スタート地点
落合地区は平家の落人伝説なども残るという
スタート地点となった古民家「浮生」の中。囲炉裏が中央にある床張りの居間など、古い民家がそのまま残されている
スタート。落合重要伝統的建造物保存協議会の南敏治会長の応援するなか、名古屋市から訪れた坂田潤哉さん、蒼哉さんの兄弟がそうめんを流し入れた
流しそうめんチャレンジには隣町である美馬郡つるぎ町の「半田手延べそうめん」が使われた
スタート直後の流しそうめん。勢いよく流れていく
民家の合間を縫ったり、古くは石垣だったのであろう里山の集落らしいコンクリートの壁に沿ったりして、コースが作られている。竹の加工には四国大学のボランティア、設営には地元の工務店が携わったそうだ
まだまだ序盤の流しそうめん。たばとなって流れるそうめんも目立つ
カーブではコースアウトしつつも、水の流れに引き寄せられてコースに戻っていく
6月らしく綺麗に咲き誇った紫陽花の間を抜けていくそうめん
所々にコースアウト防止用?のトンネルも
徐々にそうめんの塊を探すのが難しくなってくる
要所ごとに看板も立てられている
途中、成人男性の背丈の2倍はあろうかという高架橋のような場所も
橋を渡って流れてきたそうめん
急峻な坂となっている場所は、ジグザグにコースを設営。下に見えるのは、第1の試食ポイントとして予定されていた三所神社。雨で足場がわるく、当日はオープニングセレモニーだけの使用となった
そこを越えると再び高架方式のコースに。このあたりをどのように流れたかを想像するのも楽しい
第2の試食ポイントである古民家「晴耕・雨読」。多くの人が、流れてくるそうめんを待ち受けている
参加者がみなノリノリで、とにかく楽しそう
こちらは第3の試食ポイントとなった古民家「長岡家住宅」。落合集落のなかでも広く知られた古民家で1901年建築という。内部は公開されており、この日は参加者が家の中で流しそうめんを応援
このあたりまで来ると、そうめんもバラけてきている。1本だけ流れているのがお分かりいただけるだろうか
長岡家住宅で待っていた人達も、そうめんを見つけては指し示して歓喜の声
長岡家住宅の先のルートも複雑な組み方で作られていて印象的だった
長岡家住宅を過ぎ、蛇行する道を抜けると「高度差240m、距離3000m」の看板。この看板の先のカーブを曲がるとゴールが見えてきた
ゴールを待つ人達
先頭のそうめんの位置を、手を挙げて合図
ゴール時には銀テープが舞って祝福
参加者代表の小俣 華音さん、龍之介さん兄弟。世界流しそうめん協会 会長(NPO法人 日本農林再生保全センター 理事長)の上田悠貴氏より認定証が手渡された

 距離3250m、高低差265mという記録を達成した流しそうめん。スタート地点を12時54分に出発し、ゴールを迎えたのは14時09分。所要時間は1時間15分で、表定速度は2.6km/hということになる。人の歩行速度の目安は約4km/hなので、その半分とはいかないまでも、かなりゆっくりと進んだといえるだろう。

 記者はスタートからゴールまで、そうめんを追いかけて進んだのだが、坂が急なところなどでは明らかに人の歩く速度もよりも速く、逆に緩やかなところでは先回りしたものの「まだ来ないの?」とジリジリした気持ちで待たされる場面もあった。このような緩急があったものの、終わってみると想像以上に時間がかかるものだという印象が残った。

 ゴール後、代表者に認定証を手渡した世界流しそうめん協会の上田悠貴会長は「成功できて、本当によかったと思う。これは、みんなでできたこと。流しそうめんを通じて、スタートからゴールまでも繋いだし、人と人、地域と地域も繋げたと思っている。(高低差世界一流しそうめん -伊右衛門の夏プロジェクト 2015-について)このプロジェクトがなかったら、こんなイベントはできなかった。素晴らしいプロジェクトだったと思う」とコメントした。

 ただ、“高低差世界一”については少々曖昧なことになっている。今回は「ギネス世界記録」への申請は行なっていないため、あくまで世界流しそうめん協会が認定した結果となる。上田会長は「世界最長(3328m)の記録を作った(熊本県菊地高校の生徒による)熊本県の記録のときが高低差が約130mで、これが世界一だと認識している。そもそも、高低差を狙ってのチャレンジは初めて」としており、国内最高は間違いなく、ほかに記録がないと見られることから事実上の世界一だろうとの考えを示した。

 ちなみに、265mの高低差というと、日本の建造物では大阪の「りんくうゲートタワービル」(256.1m)が最も近い。東京では、東京タワーの特別展望台が地上250mなので、このあたりが参考になるだろうか。いずれにしても、その高さは日本の高層ビル並みということはイメージできると思う。

 こうした“偉業”を達成した参加者、関係者は、上田会長の音頭により伊右衛門で乾杯。「やましろ若葉連」による阿波踊りに、徳島県のマスコットキャラクター「すだちくん」も参加して会場を盛り上げたのち、夏の涼を感じられる楽しい「流しそうめん」に舌鼓を打った。

上田会長の号令下、伊右衛門で「乾杯!」
地元やましろわかば連による阿波踊り。途中から「すだちくん」も参加
流しそうめんの記録を見たあとは、流しそうめんを食べて日本の夏を味わっていた

会場となった徳島県奥祖谷と言えば……

 ところで、会場となった徳島県の祖谷といえば、冒頭でも触れたとおり日本三大秘境の1つにも数えられる奥深い山々に包まれた自然が見所だ。なかでも観光スポットというか、ある意味ではアクティビティとも言えるし、絶叫系アトラクションともいえるのが、有名な「かずら橋」だ。

 古来的な木造の吊り橋で、とにかく橋板の隙間が大きいことが特徴。しかも、カズラの弦を組み合わせて固定してあるだけ(のように見える)ので心許ないうえ、やたら揺れる。入場料は大人550円で、一方通行となっており、ほとんど人は橋の両側に捕まりながら渡っていた。この入場は「日没まで」とされており、夜間の19時~21時にはライトアップも行なわれている。

祖谷の名所の1つが「かずら橋」
渓流にかけられた吊り橋。前日までの台風で、下の渓流も激流という状況
3連休の加え、先述のチャレンジで遠方から訪れた人も多く、多くの人が渡りに来ていた
かずら橋の入り口。一方通行の入り口側
入り口からすぐの所で下を見たところ
下を見ない方がよいと言いたいが、見ないで渡り切っても面白さ半減だとも思う
こんな感じで弦を組んで固定している
かずら橋の出口から歩いて1分ほどのところに「琵琶の滝」。近くに寄れるわりに落差があって迫力がある
かずら橋は夜になるとライトアップされる。写真にするとおどろおどろしい色になってしまった。ぜひ実物を見てほしい
ゴール地点でも阿波踊りを披露した「やましろわかば連」。イベント終了後、記者が宿泊していた「ホテルかずら橋」でも興業を行ない、賑やかな音を奏でて人々の目を楽しませた。ちなみにホテルかずら橋も祖谷地方では有名なところで、ケーブルカーに乗って山の上の露天風呂に行けるというユニークな温泉宿
(編集部:多和田新也)