旅レポ

JALの「どこかにマイル」でどこかに一人旅(後編)

ジャストシステム徳島本社など徳島ぶらり旅

 JAL(日本航空)が開始した、マイルを使った新たな特典航空券「どこかにマイル」。従来の特典航空券は、JMB(JALマイレージバンク)会員が自分で行きたいところを選び、空きのある日程で旅行に行くという仕組みだったのに対して、この「どこかにマイル」は、行き先はJALとNRI(野村総合研究所)が共同開発したシステムが4つの候補地を提案。提案に納得して申し込むと、システムが目的地を決めるというユニークな仕組みを採っている。マイレージ特典旅行版“ミステリーツアー”的な位置づけとなり、話題を集めている。

古くからのパソコンユーザーの聖地。ジャストシステム徳島本社前まで行ってみた

 前編記事(羽田から6000マイルでどこかに往復できる特典航空券)で紹介したように、筆者の場合、鹿児島、函館、長崎、徳島が提案され、その提案に納得したので12月12日に申し込みを完了した。

 3日後の12月15日、目的地が確定した旨がメールで送られてきた。JALのWebサイトにアクセスして、国内線の特典航空券のページにいくと、目的地が書かれており、その目的地が徳島だと分かった。特典航空券は、往路がJL453便(羽田07時10分発~徳島08時30分着)、復路がJL464便(徳島20時00分発~羽田21時10分着)と表示された。つまり、現地滞在時間が約11時間半になる。

JALより送られてくる、目的地決定のメール

 国内線の場合は、預け入れ荷物があるときは30分前に、預け入れ荷物がないときにはオンラインチェックインを済ませていれば15分前に保安検査場を通過すればよいとされている。今回は若干余裕を見て、6時半に羽田空港に到着し、朝食などをとりながらゲートへ向かうことにした。

 搭乗開始は15分前の6時55分頃から開始されたので、セキュリティチェックを通過してから中で朝食をとるぐらいの時間があった。筆者のスマートフォンはiPhone 7で、エアラインのチケットなどはWalletと呼ばれるソフトウェアに登録する形となる。JALのアプリから対象の予約を探して「Walletに登録」というボタンを選択すると、2次元バーコードがWalletに登録される。セキュリティチェックやゲートでの搭乗は、Walletで2次元バーコードを読み取り機にかざすだけでチケットの読み取りは完了で、非常に簡単だ。

JALのiPhoneアプリで予約を確認して、「Walletに登録」を押すと、iPhoneのWalletに登録される
iPhoneのWalletに登録されたボーディングパス。これを表示させたiPhoneをリーダーにかざすだけで、保安検査場も搭乗口のゲートも通過できる
無事に機内へ。機内からぱちり

 フライトは順調に進み、予定時刻より10分早く、目的地となる徳島阿波おどり空港に到着した。この徳島阿波おどり空港から、徳島市の中心地にある徳島駅に向かうには、フライトが到着したあと、乗客が到着ロビーに出たのを見計らってから出発するリムジンバスを使うと一番効率がよい。運賃も440円とコスパフォーマンスに優れている。しかし、今回は徳島駅に行く前に、訪ねてみたい場所があったので、タクシーを利用することにした。

阿波おどりの銅像もクリスマスバージョン?に
徳島阿波おどり空港のターミナルビル
羽田から乗ってきたJL453便

 訪ねてみたい場所というのは、ジャストシステムの徳島本社だ。ジャストシステムは、「一太郎」というワープロソフトで大きく成長したソフトウェアメーカーで、同社が一太郎の一部として提供していた日本語入力システム「ATOK」は、筆者のような記者には非常に人気が高い。ちなみに、その主力製品のATOKはその名称がAwa TOKushimaのAとTOKをとってATOKにしたいう話があるぐらい、ジャストシステムは地元に根付いているソフトウェアベンダで、タクシーで行き先を告げる際も、「ジャストシステムにお願いします」といえばすむぐらい地元の有名企業だ。

 ただし、筆者が普段関わっている広報部門はジャストシステム東京本社にある。今回徳島本社に行ったのは、単に同社のルーツである徳島本社には行ったことがなかったので、行って写真を撮るというそれだけのミッション。道路から同社のビルを撮影して満足したので、次の目的地である徳島中央公園に向かうことにした。

ジャストシステム徳島本社を道路から撮影

徳島城跡になる徳島中央公園を堪能、その後は阿波尾鶏レストランでランチを堪能

 続いて行ったのは「徳島中央公園」。この徳島中央公園は、かつての徳島城の跡で、建物などは戦禍により消失したり、明治維新時に解体されたりするなどして現在は何も残っていないが、石垣などは現存しており、戦禍で消失した大手門に相当する鷲の門が1989年に復元されるなど、公園として整備されている。

外堀
徳島市の観光案内
鷲の門

 かつての徳島城は、平時に利用する御殿と、本丸や二の丸などから構成されている平山城の2つから構成されていた。御殿の跡地には、現在は徳島城博物館などがあるが、訪れた12月12日は月曜日で、残念ながら休館日だった。

 平山城は自然の丘陵(城山)を利用した標高約61mの山になっており、ちょっとしたハイキングとして楽しむことができる。徳島城がユニークなのは、本丸には天守閣はなくて、東二の丸という本丸よりもやや下った所に天守閣があることだ。ただ、現在は建物はなく、天守台の石垣があるだけだ。

徳島城跡の説明
表御殿へと入っていく橋
御殿の跡地にある徳島城博物館がある。ただし、筆者が行った日は残念ながら休館日だった
到着したのが午前中だったので、まだ月がでていた
表御殿が建っていた裏側に位置する城山に、徳島城の本丸などがあった
弁天池(蓮池)
東二の丸へ登っていく階段
天守閣の跡地だが、碑がある以外は何も残っていない
天守台からの眺め、木々の間から吉野川まで眺めることができる

 本丸は徳島城の一番高いところにあり、現在は広場になっている。このため周囲の景色を楽しむことができる。自然を残すという方針のためか、結構高い木があるので、その間から景色を楽しむという趣だ。なお、この徳島城の麓にはJR徳島駅があるのだが、その徳島駅などで以前使用されていたSLが徳島城の麓に展示されていた。

天守跡地からさらに登ったところに本丸がある。天守閣が本丸以外に作られている城は珍しい
本丸跡地
本丸跡地からの眺め
ほかにも城の構造の跡地を確認できる
静態保存されていたSL
猫がひなたぼっこしていた

 公園をうろうろしていたら、お昼どきになったので、JR徳島駅周辺で昼食をとることにした。向かったのは、新町川水際公園の近くにあった「鳥巣亭」というレストラン。徳島名産の地鶏である阿波尾鶏(あわおどり)を利用した料理を出すレストランで、お昼時にはランチセットをやっている。

 筆者が注文したのは、「とすて定食」という700円の定食で、そぼろご飯に焼き鳥2串とつくね1串のセットだった。そぼろが必要以上に味が強いということもなくとても食べやすかったし、焼き鳥とつくねもタレとマッチしてなかなか美味しかった。

公園からの柵がなく、すぐそこがJR徳島駅の線路、東京に住んでいる身からすると、とても新鮮な光景
JR徳島駅
「とすて定食」。700円となかなかリーズナブルな価格設定
つくねと焼き鳥
ほかにも定食のメニューが用意されていた

偶然開催されていた「徳島LEDアートフェスティバル2016」で、水上アートを楽しむ

 ランチを終えてお腹がいっぱいになったところで、午後は徳島市内を散策したり、疲れるとカフェで休憩したりして時間をすごした。

 昼食後にレストランの近くにあった新町川水際公園を散策していると、新町川に謎の物体が浮いていることに気がついた。見てみると、バランスボールのような球体が川にたくさん浮いており、とても不思議な光景が現出していた。

 これは徳島市で12月16日~25日の10日間にわたり行なわれている「徳島LEDアートフェスティバル2016」というイベントの一環。この新町川水際公園だけでなく、市内各所でLEDを利用したアートが多数展示されており、この新町川水際公園はチームラボというアーチスト集団が作成した“光る川と光る森”というテーマのアートで、夜になるとLEDが点灯されて、幻想的な光景が広がるのだという。

新町川水際公園
謎の球体が浮いている新町川で開催されていた「徳島LEDアートフェスティバル2016」の光る川と光る森

 ここに来るまでそんなイベントをやっていることなど知らなかったのだが、夜になると光るといわれるとやっぱり見て帰りたいと思うモノ。ただ、問題は帰りの飛行機の時刻が決まっているので、あくまでその範囲内となる。

 帰りはバスで空港に向かう予定なので、帰りの便であるJL464に乗るためには、徳島駅18時25分発のリムジンバスに乗る必要があることが分かった。この時期だし、暗くなるのは17時半~18時ぐらいだと見込んで、それまで時間をつぶし、イベントを見て帰ることにした。

 17時半に再び来てみるとまだLEDは点いていない、であれば18時だと踏んでその10分前にもう一度来てみると、観客が集まり始めている。これは18時からなのだなと待っていると、やはり18時から点灯開始された。1色かと思っていたLEDは、色を変えることができるようで、音楽に合わせて次々と球の色が変化する様子を楽しむことができ、幻想的な光景だった。

点灯前
点灯後
幻想的な光景が広がっていった

 10分ぐらい堪能したあと、徳島駅前のバス停からリムジンバスに乗り、徳島阿波おどり空港へ。まったくノープランで訪れた徳島だが、博物館が休館日であったものの、徳島城跡を堪能できたし、予想もしていなかったイベントでとても幻想的な光景を楽しめ、なんだかんだと1日堪能できた。ハプニングあり、予想外のイベントあり、これこそが旅行の醍醐味。思わぬ場所に6000マイルで連れて行ってくれる「どこかにマイル」。“お主なかなかやるな”というのが、今回の筆者の偽らざる感想だ。

笠原一輝