ニュース

JAL、平成29年九州北部豪雨で被災した福岡県朝倉市「博多万能ねぎ」をデカール機で応援

博多万能ねぎの輸送で約40年の絆

2017年12月7日 就航

JALが、平成29年九州北部豪雨からの復興応援として、「博多万能ねぎ」をモチーフにしたデカールを貼付した特別機の運航を開始

 JAL(日本航空)は12月7日、7月に発生した「平成29年九州北部豪雨」により甚大な被害を被った福岡県朝倉市の名産品である、JA筑前あさくら(筑前あさくら農業協同組合)の「博多万能ねぎ」を応援するデカールを貼付した特別機を就航した。

 JALでは、平成29年九州北部豪雨の被災者へ対し、義援金や社員募金による寄付、マイル寄付の募集などを実施(関連記事「JAL、九州北部豪雨に被害に義援金実施、マイル募金受付 JMB会員から1口500マイルで寄付を募る。7月11日17時開始」)。

 また、JALは1978年5月11日から約40年にわたって、JA筑前あさくらの博多万能ねぎを航空貨物で輸送し、関東圏、関西圏へ届けてきた。そのようなつながりから、豪雨が発生した直後の7月中旬からJAL貨物郵便本部らの有志が東京から4回、福岡のスタッフはこれに加えて5回の計9回、朝倉市の生産農家を訪れて、土砂をかぶったビニールハウスの復旧作業の手伝いなどを行なったという。一時期は落ち込んだ出荷量も前年並みへと回復しているとのことで、本格的な復興のフェーズへと入り、九州産農作物の販売量が増加する冬を迎えるタイミングで特別機を就航し、博多万能ねぎを盛り立てていく意向だ。

 就航した特別機は登録記号「JA8977」のボーイング 777-200型機。主に羽田と福岡、新千歳、伊丹、那覇を結ぶ路線で使用されている。12月7日のJA901便(羽田06時25分発~那覇09時20分着)で運航をスタート。約半年間、国内線で使用される予定となっている。

 デカールは「JALは朝倉の博多万能ねぎを応援しています。」のメッセージが描かれた14.71×14.00インチ(37.36×35.56cm、縦×横)のもので、多くの乗客が乗り降りする最前方左側のL1ドアの脇に貼付。Wi-Fi対応機のマーク、ワンワールドロゴの下に位置している。

 12月8日には、福岡から羽田への便(JAL316便:福岡14時00分発~羽田15時30分着)で、博多万能ねぎを輸送。JA筑前あさくらでは、翌12月9日朝に大田市場関係者を対象とした試食会を実施する予定で、この日輸送された博多万能ねぎが振る舞われる。

「博多万能ねぎ」を応援するデカールを貼った特別機(画像提供:JAL)
福岡から羽田空港に到着したJAL316便が8番スポットへ。徐々にL1ドア脇のデカールが見えてくる
L1ドア脇の下方に「JALは朝倉の博多万能ねぎを応援しています。」と博多万能ねぎをデザインしたデカールが貼られている

 JAL316便で到着した博多万能ねぎは、LD-3コンテナ3台分。トーイングトラクターで貨物エリアへと運ばれてきた博多万能ねぎのパッケージには、空輸での産地直送であることを示すJALの鶴丸マークもプリントされている。

 ちなみに、この日羽田空港へ届いた博多万能ねぎは、前日に収穫したもの。4~5本まとまっている株から傷みやすい外側を取り払った1~2本の束を選果場へ運び、オゾンで1晩殺菌。翌日の午前中に朝倉市から出荷され、お昼ぐらいに福岡空港へ到着。届いたものから順次、羽田空港行きの便へと積み込んで空輸する。そして、翌日の朝には大田市場に並ぶ。

 さらに関西圏へも空輸しているが、一度すべて羽田空港へ運び、そこから関西圏へと空輸している。そのため、関西向けの博多万能ねぎがもっとも早い便で運ばれるという。博多万能ねぎの空輸はすべてJALが担っており、8割が関東圏、1割が関西圏で消費されるそうだ。

トーイングトラクターに乗って、博多万能ねぎが入ったコンテナが貨物エリアへ運ばれてくる
コンテナのなかに入った「博多万能ねぎ」
空輸を担うJALのロゴがパッケージに描かれている
日本航空株式会社 執行役員 貨物郵便本部長 岩越宏雄氏

 ちなみに、この博多万能ねぎの空輸の歴史は先述のとおり約40年前に遡る。1977年に現JA筑前あさくらに、ネギ部会というものが発足した。当時、白いネギが中心だった東京では、「あさつき」のような緑色のネギは高級品扱いされており、ここに、「博多万能ねぎ」と名付けられた朝倉産のネギを売り込むことを目的とした部会で、料理の実演などを行なうPR隊なども結成したが当初は販売に苦戦。

 その後、1978年5月11日からJAL便での空輸を開始。鮮度がよいまま関東、関西へ輸送できるようになったことで需要も増加。この日インタビューに応じた、JAL 執行役員 貨物郵便本部長 岩越宏雄氏は、「我々の輸送量も増え、JA筑前あさくらさんのネギも売れたという相乗効果」と当時の状況を説明。

 さらに、2010年のJAL破綻時には、「ほかの選択肢もあるなか、JA筑前あさくらさんは真っ先に、JALを支援し続けるとの声明を出してくださった」とのエピソードも紹介。そのような経緯があり、今回の豪雨被害では「なにかできることはないか」ということで、先述のようなさまざまな取り組みを行なった。

 特に、現地を訪れての復旧支援について岩越氏は、「(非常に暑かった)夏場だったこともあり、東京から行って、どこまでお役に立てたか分からないが、その気持ちに感謝をいただき、気持ちの交換ができたのではないと思う」と、絆の強さを強調した。

日本航空株式会社 日本地区貨物販売支店 九州販売部 部長 濱田隆三氏

 JAL 日本地区貨物販売支店 九州販売部 部長 濱田隆三氏は、今回のデカール機について、「いくつかのアイディアの一つで、出荷量が安定したこの時期に実現した。盛り立てていけるお手伝いができれば」と説明。JA筑前あさくらには事前の相談はなく進めていたとのことで「とても喜んでいただけた」という。

 その朝倉市の被害について、「博多万能ねぎの出荷が途切れることはなかったが、7割のぐらい畑が冠水し、そのうちの2割ぐらいは泥をかぶって収穫できなくなってしまった。ほぼ復旧しており、出荷量も前年並みに回復している」と説明。九州全体では、農作物、水産物ともに比較的堅調であるという。

 今回の博多万能ねぎのようなJALによる地方産品の輸送では、夕張メロン(北海道)、吉野の柿(奈良県)、沖縄の菊などを長期にわたって輸送しているほか、7月にお伝えした山形県のさくらんぼ輸送(関連記事「山形空港から旬のさくらんぼをお届け。JALの“さくらんぼフライト”初便出発セレモニー さくらんぼ出荷最盛期に山形空港で航空貨物取り扱い」)のような期間限定の取り組みも始めている。

 こうした地方産品や生鮮品の輸送について岩越氏は、「空輸はリードタイムが強みだったが、今はほかの輸送の保冷技術が上がっている。保冷(リーファー)コンテナを使ってほしいというニーズも高いが、一般的に使われるドライアイスを使った壁の厚いコンテナは重い。これからは簡易保冷、軽いコンテナの技術について取り組みたい」との課題を述べたほか、8月に国土交通省が研究開発の実施を発表したボーイング 737型機用の小型保冷コンテナについても、実際の航空機運用者の立場から「共同開発となった折には取り組んでいきたい」と興味を示している。

日本航空株式会社 執行役員 貨物郵便本部長 岩越宏雄氏(左)と日本航空株式会社 日本地区貨物販売支店 九州販売部 部長 濱田隆三氏(右)