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JAL、定温輸送で地方の農産物を海外展開する取り組み

定例会見で農業総合研究所、世界市場との連携協定を発表

2017年7月12日 開催

地方の生鮮農産物をJAL CARGOで海外へ定温輸送する取り組みを始める

 JAL(日本航空)は7月12日、都内の本社で会見を開き、同日発表した4つのニュースリリースに基づいて説明を行なった。会見にはJAL 代表取締役社長の植木義晴氏、取締役専務執行役員 路線統括本部長の菊山英樹氏、執行役員 貨物郵便本部長の岩越宏雄氏が出席したほか、農産物の空輸で提携した農業総合研究所 代表取締役社長の及川智正氏と世界市場 代表取締役社長の村田卓弥氏も会見に臨んだ。

 会見で最初に言及したのは、本誌でも既報の10月29日からの羽田~ロンドン線の深夜増便や成田~バンコク線の期間増便について。

日本航空株式会社 代表取締役社長 植木義晴氏
日本航空株式会社 取締役専務執行役員 路線統括本部長 菊山英樹氏

 菊山氏は「特に羽田~ロンドン線は非常に強い需要がある」と前置きして、「従来便と似たような時間帯で増便しても意味がないので、まったく異なる時間帯を設定した」と説明、ロンドンへ早朝に到着することで、現地での時間を有効に使えるという狙いを述べた。

 到着時刻が早朝になる半面、羽田の出発時刻が冬季は深夜2時45分、夏期は深夜1時55分となってしまうことの対策としては、エコノミークラスを含むすべての(JL041便)搭乗客に国際線サクララウンジを開放する。また、ビジネスクラス以上では、乗客それぞれが希望する時刻に食事などを提供する「Anytime You Wishサービス」を実施しているが、エコノミークラスでは日本時間の昼食にあたる時間帯にメインの食事を提供して、離陸後しばらくの睡眠時間を確保できるよう工夫するという。

「テレワークを推進して働き方改革を進める」というニュースリリースについては、政府が主導する7月24日の「テレワーク・デイ」に最大約300人のJAL職員が午前中/終日のテレワークに取り組むほか、7月11日から25日には朝8時から10時の混雑時を避ける時差通勤「時差Biz」にも参加する。また、厚生労働省が行なう、ITを活用した障害者の在宅雇用推進のためのノウハウ蓄積事業にも参加する。

 さらに、7月から8月の2カ月間は「ワーケーション」期間として、旅先や帰省先でのテレワークを実施する。JAL職員は年休20日間と合わせてこの制度を活用し、休暇先で仕事をするという新たな働き方を取り入れる。ワーケーションはWork(仕事)とVacation(休暇)を組み合わせた造語で、旅行の機会を増やし、家族などと過ごす時間を増やす狙いがある。

 一方で、休暇中に働くという行為がネガティブに見えてしまうことについて植木氏は、「わざわざ旅行先で仕事したいとは思わないですよね。そういうことではないんです」と切り出して、例えば共働きの夫婦が旅行に出る際、2人の日程をなんとか合わせても、旅程の途中で1日だけ仕事が発生してしまう、というケースはよくある。これまではどちらかが遅れて合流するなどの対処しか選択できなかったが、テレワークがこれを解決してくれる、と説明した。

「木製車椅子を全国の空港に展開」というニュースリリースについては、主要部分を白樺の積層で形成し、留め具などを樹脂で構成したという車椅子実物を会場に展示した。車椅子はキョウワコーポレーション製。JALは以前、竹製の車椅子を一部の空港に導入していたが、量産が難しかったという。今回の木製車椅子はすでに80台が完成しており、2018年度までには250台を配備予定という。なお、羽田空港国際線ターミナルのみ、各社共通の車椅子を利用する。

白樺の積層でできた木製車椅子

地方初、国産農産物の輸出拡大を目指す取り組み

日本航空株式会社 執行役員 貨物郵便本部長 岩越宏雄氏
株式会社世界市場 代表取締役社長 村田卓弥氏

 この日最も時間を割いたのはJAL、農業総合研究所、世界市場の3社の連携協定についてで、「農産物の日本からの輸出拡大、地方発の農産物の取引拡大」を目指すという。

 具体的には、情報・物流・決済プラットフォームを構築して、登録生産者と全国のスーパーマーケットを直接つなぐことで需給のマッチングをIT化、原則1日で店頭出荷を可能にした農業総合研究所の流通システム「農家の直売所」と、そのシステムを前提に海外輸出を行なう世界市場の「NIPPON ICHIBA」がすでに稼働していたものの、海外輸出には船便が使われていたため、例えばイチゴのような鮮度がシビアな農産物については取り扱うことができないという現状があった。

 そこで、JAL CARGO(JALの貨物部門)が得意とする特殊輸送機材を使った定温(冷蔵・冷凍)輸送を行なうことで、「今までは青いときに収穫して、輸送中に熟していたが、このプラットフォームなら熟した状態で収穫・空輸できる」ことが訴求ポイントだという。

 現状では、北海道と和歌山の集荷拠点で農産物を預かり香港へ空輸、現地のスーパーマーケットで販売するという販路のみだが、将来的に国内の集荷拠点と海外販売拠点が増えれば、JALのネットワークがより活用できると見込んでいる。JALとしても、この取り組みを新たな航空需要と捉えていると説明した。

JALの特殊輸送機材を使うことでスピーディな低温輸送が実現する
「農家の直売所」と「NIPPON ICHIBA」を説明したスライド